第一話 邂逅
日ノ本学園
日ノ本学園。キヴォトス最多の生徒数を誇り、ミレ二アム以上の技術力を持つと噂の学園だ。その学園を統治する組織である日ノ本学園生徒会で今日、緊急の会議が開かれていた。
「キヴォトスの急速な治安の悪化に対する対策会議を始める。まずは現状報告をセツ」
「はーい。本学園の治安は維持できてるよ。だけど、他の学区が壊滅的だね。不良やら不法武器やらが増えてきているのが現状だよ」
日ノ本学園は治安維持の組織として、『旭日隊』というゲヘナの風紀委員会やトリニティの正義実現委員会に匹敵、もしくはそれ以上の組織がある。その組織のトップが冬花セツである。彼女らのおかげで日ノ本学園の治安は守られていると言えるだろう。
「次にこちらから。セツの報告にあった不良や不法武器が増えている原因の一つを部下の報告によって判明いたしました」
セツの後に声を挙げたのは無刈ミヤビ。日ノ本学園が誇る諜報機関『霧』のトップである。そこに所属している彼女らは主に他学区の諜報や工作などを行っている。その対象は連邦生徒会にまで及び、どの学区でもいち早く情報を得ることができる。
「連邦生徒会会長の失踪。それが一番の原因と推測します」
場が静まり返る。それ程までにこの報告はとんでもないものだった。
連邦生徒会会長は、キヴォトスを国家として例えるとそのトップ、いわば首相や大統領と似た立場にいると言っても過言ではない。そのような存在がいきなり失踪したとなれば、キヴォトス全体が混乱に包まれるのは想像に難くない。
「ようするにサンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなり、連邦生徒会が機能していないということか?」
「その通りです。また、連邦生徒会が対応できるリソースの大半を連邦生徒会会長の捜索にあてているとの情報が入っています。よって、この混乱は長引く可能性があります」
「他の学園の対応は?」
「ひとまず連邦生徒会に話を聞きに行くそうです。現地諜報員からの情報によると、連邦生徒会会長の失踪を知っていないと思われるいうことです」
「ありがとう」
ユカは少し考え込む。連邦生徒会会長は超人と言われており、その二つ名の通りの運営を行ってきていた。そんな彼女が、なんの対策をしないで突然失踪したとはユカには思えなかった。
「カイト、行けるな?」
「そう言うと思ったよ。内容は連邦生徒会に行って現状を聞きに行くのとその対応策か?」
「御名答。頼んだよ」
「了解。いい結果を期待してて」
「他の者たちは引き続き治安維持と混乱が伝わるのを阻止することを前提に行動してもらいたい。
これで会議は終了する。カイトが戻り次第、再び会議を開く。それでは解散!」
約30分に及ぶ、長いか短いか分からない会議が終わった。
「カイト、少し話がある」
「何ですか?」
「連邦生徒会所有の建物に矯正局から脱走した生徒や地域の不良が集まっている。もしかしたら戦闘になる可能性がある」
「戦闘……わかった。なるべく気を付ける」
ユカのその情報も現地諜報員からの情報だ。ユカは矯正局から脱走したある生徒の動きを追うように命令していた。
「主犯格は恐らく七囚人の1人『狐坂ワカモ』だ。彼女はその付近にいるとの情報が入っている」
「捕まえるのか?」
「いや、捕まえない。こちらの自治区内に入ったら別だが、連邦生徒会に行って現状とその対応策を聞くのが優先だ」
ユカはキヴォトス中に広まっている混乱を危険視していた。ここからさらに広まって治安が悪化したりすると、あちこちで鎮圧する必要が出てきて対処できなくなってしまう。そうなれば、自治区内の混乱をさらに助長させる結果となり、負の連鎖となり得る。故に危険視しているのだ。
「とにかく早めに行ってほしい。幸いにもこちらの自治区は何の変化はないが、他の自治区はそうでもないからな。いつこちらにも波及するかわからない。できるだけ急いで行ってきてほしい」
カイトはそのユカの言葉に頷くと、言葉通り急いで連邦生徒会に向かって行った。
カイトが連邦生徒会本部に着くと、既にミレミアム、トリニティ、ゲヘナから派遣されてきた生徒が集まっていた。その生徒たちを海斗は知っていた。海斗がその生徒たちに近づくと同時にエレベーターから音がなった。そのエレベーターから出てきたのは連邦生徒会会長の代行をしている首席行政官の七神リンだった。その後ろには謎の大人の人が立っていた。
「ちょっと待って!見つけたわよ!!連邦生徒会会長を読んできて!!」
そうリンに抗議するのはミレ二アムサイエンススクールの早瀬ユウカだ。
「首席行政官、お待ちしておりました」
「連邦生徒会会長にお会いしに来ました。風紀委員長が今の状況について納得のいく説明を求めています」
そう言うのは上からトリニティ総合学園の羽川ハスミ、ゲヘナ学園の火宮チナツだ。この場にいるのはこの3人の他に同じくトリニティの森月スズミ、そして先程到着した日ノ本学園の船橋カイトがいた。カイトはそこで他の自治区の詳しい現状を知ることになった。
ミレ二アムでは風力発電所がシャットダウンし、連邦矯正局では一部退学中の生徒が脱走し、それ以外だと出所が不明の武器の不法流通が2000%増加するなど、様々な面で混乱が見られた。カイトは現地諜報員の報告をミヤビを通して聞いていたために大まかな現状は知っていたが、ここまで混乱しているとは思いもしていなかった。日ノ本学園の生徒会長であるユカが混乱が伝わるのを防ごうとするのもうなづける。
「こんな状況で何週間も姿を見せない連邦生徒会会長は何やっているの?今すぐ会わせて!!」
「連邦生徒会会長は今席におりません。正確に言うと…」
「失踪したんだろ?リン代行。それによってサンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなり、連邦生徒会の機能が停止した……合ってるか?」
「「「!?!?!?!?」」」
カイトのその言葉に皆が驚く。リンは噂は流れているがここまで正確に把握できているとは思ってもいなかったと驚いていた。連邦生徒会会長失踪は連邦生徒会内で箝口令が敷かれており、機能停止の件も箝口令が敷かれていた。それでも噂は流れるもので、その噂から現状を推測することはできる。日ノ本学園の治安は維持されていて他の学園より余裕があり、連邦生徒会は混乱の真っ只中なために調べるのは容易だった。
「その通りです。今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。サンクトゥムタワーの認証を迂回できる方法を探していましたが、先程まで見つかっていませんでした」
「それでは今は方法があるということですか?」
「はい、この先生こそがフィクサーになってくれるはずです」
「“私が?”」
(大人…)
その後のリンの説明で何故先生がここにいるのかを一同は理解できた。
先生は連邦生徒会会長が直接指名した人物で、元々連邦生徒会会長が立ち上げたある部活の担当顧問として呼ばれていたこと。その部活は『連邦捜査部シャーレ』といい、連邦組織のため、キヴォトスに存在する各学園の生徒を制限なく加入させることができ、各学園の自治区で制限なく戦闘も可能な、一種の超法規的機関だ。
リンは今いる場所から約30km離れた外郭地区にあるシャーレの部室に先生を案内するために、先生を連れて行かなければならないと言った。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
「シャーレの部室?今、そこ大騒ぎだけど?」
モモカからの説明によると、矯正局から脱走した停学中の生徒が騒ぎを起こしているとのことだ。連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に巡航戦車まで持ち出して辺りを焼け野原にしているらしい。また、連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようともしているらしい。
そこまで説明して、モモカは昼ごはんのデリバリーが来たからと通信を切った。リンは怒っているのか、肩を震わせていた。
「“大丈夫?”」
「だ、大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
リンはそう言ってジーとカイトたちの方を見る。その視線の意味を唯一察したカイトは「マジか」みたいな表情をした。
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので私は心強いです。ギヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が必要です。行きましょう」
「ちょ、ちょっと待て!!どこに行くのよ!?」
「やっぱりか…」
そう言ったリンは外に向かっていった。カイトは「はぁ」とため息をついた後、リンの後を追いかけていった。
作者です。
ようやく第一話を更新できました。私の別の作品である「皇国の幻想〜異世界へ〜」の執筆の合間に当作の執筆をしていたため、時間がかかってしまいました。またこういうのがあるかもしれませんが温かい目で見てくれたら嬉しいです。
日ノ本学園の設定
日ノ本学園
・生徒は全員、前世が日本皇国国民である。そのため、生徒数はギヴォトス最大となっている。
・文化は一部は百鬼夜行連合学院と似ていて、それぞれの学園の一部生徒どうしでの交流が盛んである。
・生徒会はネクロマンスが運営している。メンバーはユカが生徒会長、レンとミクが副会長、カイトが書記兼会計、セツが治安維持部隊『旭日隊』の隊長、ミヤビは諜報部隊『霧』の隊長となっている。このメンバーにさらに追加する可能性がある。
・日ノ本学園は海に面しており、海軍を保有している。所属しているのは旭日隊所属の生徒。
・陸軍も保有しているが、実は旭日隊のことである。
・空軍も旭日隊所属の生徒が所属している。
・旭日隊の指揮権は生徒会長が持っている。生徒会長の命令を受けてセツが旭日隊を動かす。優先命令は生徒会長の方。
・日ノ本学園内には様々な企業があるが、全て日本皇国時代に存在した企業である。よって、創業者は生徒である。
・技術レベルはミレミアムを超えている。
・日ノ本学園には神秘の他に魔力や能力などの日本皇国時代に存在した特殊な力が存在しており、扱いは神秘とほぼ同じである。またこれらによる攻撃は神秘による攻撃と同じである。そのためダメージ量は神秘による攻撃と変わらない。
ここからさらに追加するかもしれません。ひとまずの初期設定は以上の通りです。