第三話 ブラックマーケット
先生がシャーレの顧問になってからしばらく経ったその日、先生がアビドス砂漠に向かったとの情報が入った。今日はカイトの当番ではないし、他の生徒の当番でもない。つまり、先生は1人でアビドス砂漠に向かったことになる。
アビドス砂漠の広さは、アビドス高校の次に知っているのは日ノ本学園だと言ってもいいほど熟知していた。それは一連の諜報の効果であるが、一番はアビドス高校の許可を得て日ノ本学園の駐屯地を置かせてもらっているからだった。新兵器の実地試験の場所も砂漠での訓練もこの場所で行われていた。
「カイザーの動きは?」
「今のところありません。しかし、カイザーから依頼を受けたヘルメット団がアビドス高校に度々襲撃しているのが目立つかと」
ユカは目の前にいるミヤビに聞く。ミヤビ曰く、カイザーは裏からヘルメット団に依頼してアビドス高校を襲撃させているという。
日ノ本学園はカイザーを警戒している。それはカイザーの動きを追っていることから分かることだが、何故追っているのかといえば、それは企業どうしのいざこざが発展したからだ。日ノ本学園の生徒の一部は日本皇国時代に築いた企業を起業している。幸いにも当時の記憶は残っているし、技術もある。それもほとんどはギヴォトスより高度な技術をだ。それらの企業を国家首脳部と同等の扱いである日ノ本学園生徒会主導で保護、支援していた。つまり、安い値段で高性能な家電や工作機械が手に入るということであり、それに需要が集まるのは当然であった。その結果、様々な企業が大打撃を受ける訳で、キヴォトス中に事業を展開しているカイザーにもその影響は絶大であった。日ノ本学園の企業に鞍替えする企業が出るなどカイザーの利益や事業に関わる影響が出てきて、日ノ本学園の企業を敵視するのは必然であると言えた。その問題が発展して紛争擬きになったりもした。だからこそ、日ノ本学園はカイザーを敵視していて、同じく敵視しているアビドスと同盟を結び、同校を支援していた。
「度々とは、どのくらいの頻度だ?」
「バラバラですが、多い時で週4回は」
「大丈夫なのか?いくら支援で月一に物資を送っているとはいえ、足りるのか?」
「その件についても報告が」
ミヤビが報告したのはシャーレの先生のことだった。アビドス砂漠に向かった先生はアビドス高校に到着し、借金問題の解決に協力しているらしい。弾薬などの補給もシャーレが行っていて、少なくとも物資がなくなるというのはなくなった。
「それで、今先生はどこに?」
「それが………今ブラックマーケットで何やら調査をしていると…」
「は?」
「数が多いッ!」
アビドス生徒と先生、不良に追われていたトリニティの生徒のヒフミは合同で敵の迎撃を行っていた。数は向こうの方が圧倒的に上だが、こちらは先生の指揮でなんとか保っている状況だった。
「おらー!!これでもくらえ!」
「“ホシノ!”」
「はいよ〜」
ホシノは敵の攻撃を盾で防ぐ。その間からシロコとヒフミとセリカが牽制を放ち、ノノミで一掃する。そのようにしてどんどん倒すが、敵の数が多く倒しきれない。
「“みんな!!撤t…”」
「撤退はまだ早いよ!!」
先生が撤退を指示しようとした時、横からある人物が乱入する。その人物は上空に跳躍して、空中に氷の槍を生成する。
「
そして、その氷の槍が敵に降り注ぐ。みるみるうちに敵は減っていき、気がつけば全滅していた。上空に跳躍していた人物は綺麗に着地する。その人物を見たヒフミは「あっ!」と声を上げた。
「セツちゃん!!」
ヒフミはセツに駆け寄る。実はヒフミとセツはペロロが好きという関係で知り合い、それから何回も交流していた。ヒフミからすればセツはペロロが好きというところが合う初めての友達で、セツもペロロが好きで知り合った初めての友達がヒフミだった。だからだろう。2人が会った瞬間にペロロ談笑が始まるのは。
「セツちゃん、その制服って日ノ本学園のだよね?どうしてこの場所にいるの?」
ホシノから質問が飛ぶ。その質問に、セツはヒフミといつの間にか談笑に混ざっていたノノミに声をかけて、彼女は離れてホシノに近付く。一定のところまで接近するとセツはこう言った。
「ペロロを手に入れるためだよ。そしたらヒフミと君たちに遭遇したんだよね」
「セツちゃんもですか!?私も限定のペロロ様を手に入れに来たんです!!」
「わー⭐︎モモフレンズですね♪私も大好きです!ちなみに私はMr.ニコライが好きなんですよ⭐︎」
「わかります!哲学的なところがカッコいいんですよね!最近だとニコライさんの本「善悪の彼方」も買いましたよ!」
会話がもはやオタクの会話だ。モモフレンズを知らない他の人たちは話についていけず立ち尽くしていた。
その時、倒した不良の増援がやってきた。アビドスのメンバーは戦闘態勢に入るが、それをヒフミが静止した。
「待ってください!!これ以上やるとマーケットガードが来てしまいます!!」
「マーケットガード?」
「はい!とにかく、みなさん早く逃げましょう!!」
ヒフミは切羽詰まった表情で皆を捲し立てる。それにセツが乗り、アビドスメンバー一同と先生はその場から逃走することに渋々賛成したのだった。
逃走に成功した彼女らは、付近にあったたい焼き屋で休憩していた。
「お〜!!美味しい!!こんなところに隠れた名店があったとはッ!!よし、皆にも教えよう!」
セツは一口食べただけで興奮しており、モモトークでたい焼きと自撮りした写真を知り合いに手当たり次第に送りつけていた。
彼女らが食べているたい焼きは生地の中に餡が入っているデフォルトのものだが、生地はカリふわ、餡は旨味と甘味がマッチして絶品に仕上がっていた。彼女ら曰く、想像するだけで涎が出そうな、ブラックマーケットで商売しているのがもったいないぐらい美味しかったという。
「ん?あれは?」
突然、セツが何かに気付く。一同は彼女の視線と同じ方向に視線を向ける。そこには現金輸送車が闇銀行に入っていく姿が捉えられた。一見、ブラックマーケットでは普通の光景に見えるが、アビドスにとってはそんなものではなかった。
「あ、あの現金輸送車は!!」
セリカが叫ぶところをホシノが急いで口を塞ぐ。セリカが何やらモゴモゴしているが、それは置いておく。
件の現金輸送車を睨むように見つめるアビドスメンバー。実はこの現金輸送車はアビドスの借金を返済するために手渡した現金が入っている現金輸送車だった。
「………もしかしてアビドスの借金ってカイザーグループから?」
セツは現金輸送車と闇銀行とのやり取りからカイザーグループが繋がっていることを推測した。彼女は時々勘が冴えることがある。今回はそれが発動したのだ。
「うん、そうだよ〜。でも、日ノ本学園は知っているんじゃない?」
「確かにそうかも……でも、私は治安維持の方が仕事だから」
これまた意外である。ヒフミも知らなかったのか、目を見開いている。
セツは前世から治安維持を請け負ってきた。彼女は書類仕事は苦手なのか、やり始めて数分で
現金輸送車を観察すること数分。アヤネが闇銀行にハッキングを仕掛けようとするもオフラインなのか無意味に終わり、カイザーグループの証拠を掴む方法が潰えたかのように思えた。
「ん、こうなったら
シロコが目を輝かせながら、一同にそう言う。その意味を察して、その方法しかないと思ったアビドスメンバーと先生は苦笑しながらシロコに賛同する。一方、何するか検討もついていないヒフミとセツは首を傾げていた。
「何をするのですか?」
ヒフミが聞く。その間にもアビドスメンバーは着々と準備をしており、顔に色取り取りの覆面を被っていた。その姿からセツは察することができ、「はっ!」と声を上げた。ヒフミはまだわかっていなかった。
「ま、まさか……」
「セツちゃんが思っている通りだよ〜。君たちに見られる以上共犯者になってもらわないと〜」
シロコとホシノがそれぞれの肩をガシッと掴んで逃がさないようにする。ネクロマンス首脳部一の問題児であるセツもこればかりは苦笑いするしかなかった。ヒフミはいきなり肩を掴まれてアワアワしている。
「ヒフミ、ここは諦めた方がいいよ。ちょうどたい焼きの袋が二つあるし、これを被ってついていくしかないよ」
「わかってるね〜。先生、お願いね」
「“わかった。
みんな、銀行を襲うよ!”」
その後について語ろう。
銀行の内部でアビドスメンバー+αは原作通りの行動をしていた。銃を突きつけ脅迫し、帳簿と莫大な金をバッグに詰め込むと、それを片手に逃走した。ある程度逃走することに成功すると、ちょうど現場に出会した便利屋68とその社長の陸八魔アルが追いかけてきてアウトローに関する話を少しだけしてからかっこよくその場から去った。
銀行員が間違えてバッグに入れた大量の金はセリカが借金返済に使おうとするも、それを他のメンバーが阻止、説得した。大量の金はその場に放棄して一同はアビドスに戻る。放棄された大量の金は便利屋68が拾った。
日ノ本学園生徒会室兼ネクロマンス本部
「はあ………」
ユカはため息をついていた。それは書類仕事が嫌になったからではない。それはユカが今手に持っているとある報告書の内容が頭を抱えるほどの内容だったからだ。
『冬花セツとアビドス高校生徒及び阿慈谷ヒフミによるブラックマーケット地区の銀行強盗について』
報告書の表紙に上のことが書いてあるのだ。見る前にため息をつきたくもなるのも頷ける。
ユカは報告書を読み進める。誰もいない一室に紙をめくる音が響き渡る。内容は主にセツの行動についてだが、ところどころユカの手が震えていた。
「あいつは……」
怒っていた。セツはネクロマンス首脳部の中で一番の問題児であるが、それはもはや慣れてしまっておりどうとも思わなくなった。だが、これは別だ。いくら闇銀行だからとはいえ銀行強盗はおかしい。アビドスの事情は理解しているが、もう少し待てなかったのかと聞きたい。それがユカの本心だった。
「明日強制捜査する予定だったのに………」
恐らく、旭日隊警察隊は仕事とられたとかいって大騒ぎだろう。現に、執務室に来るまでに謎の雄叫びが廊下まで響き渡っていた。まぁ、雄叫びをあげた警察隊所属の生徒はその後ミツルに締められていたが。
「まぁ、先生にカイト以外のネクロマンス首脳部の1人が接触できたことは結果オーライとして見て良いか……。セツは帰ってきたら説教するとして…」
ユカはこの件を黙認した。
数日後、
補足1:アビドス自治区にある日ノ本学園租借地について
日ノ本学園はアビドス高校名義になっている土地を借りている。過去のアビドス生徒会がカイザーグループに売る前に日ノ本学園生徒会が租借したという経緯がある。ちなみに当時の日ノ本学園生徒会がアビドスの土地を租借したのは幼いユカが日ノ本学園生徒会に指示していたと思われるが、真相はわからない。
この回のラストで風紀委員会が攻撃したのはちょうど租借している土地にギリギリ入っている柴関ラーメンだった。よってアビドス自治区及び日ノ本学園に攻撃したことと同然でありゲヘナ学園風紀委員会に完全に非があるのは確定した。
補足2:アビドス自治区にある日ノ本学園租借地の範囲
日ノ本学園租借地はアビドスーゲヘナ間の国境に沿うようにあり、広大な土地を租借している。その分租借料は高く、またカイザーグループが買い取った土地の相場の数倍を原価として計算しているため余計に高くなっている。日ノ本学園生徒会側はこれをアビドス高校への経済的支援と称していて、実際にアビドスの借金返済の手助けになっている。そのおかげか、原作では約9億あった借金は現在は約3億近くまで減っている。
ープロフィールー
名前:セツ
フルネーム:冬花セツ
レアリティ:星3
役割: STRIKER
ポジション:FRONT
クラス:アタッカー
武器種:AR
遮蔽物:ー
攻撃タイプ:神秘
防御タイプ:特殊装甲
学園:日ノ本学園
部活:日ノ本学園生徒会組織ネクロマンス
年齢:17歳
誕生日:10月27日
身長:157cm
趣味:明石ユウヒと太田トヨヒコと遊ぶ、ゲーム
市街地戦闘力ーS
屋外戦闘力ーS
屋内戦闘力ーB
EXスキル:
COST:4
扇形の範囲にいる敵全員を氷漬けにして10秒間行動停止状態にする。その時、氷漬けになっている敵は自身の攻撃力の1500%のダメージを1秒ごとに与える。
ノーマルスキル:遊ぼう♪
30秒ごとに氷の槍を7本降らす。氷の槍一本につき自身の攻撃力の1000%のダメージと氷結を与える。
氷結:寒さで凍えている状態。氷結は重複可能で氷結効果がついている間は1段階ごとに敵の移動速度、回避率ともに5%ずつ減少する。最大5段階。
パッシブスキル:元日本皇国陸軍副総司令官
味方全員の回避率60%増加、自身の攻撃力が60%増加。
サブスキル:絶対零度
ネクロマンス首脳部以外の敵味方の移動速度50%減少。味方の防御力50%増加。
固有武器:アイストリック
セツが愛用する39式自動小銃。カラーは水色でグリップにはペロロのキーホルダーがついている。銃の普通の見た目とは裏腹に、普通の自動小銃よりも高い連射能力と破壊力で敵を圧倒する。
ネクロマンス首脳部一の問題児でも銃の手入れだけは怠っていないらしく、いつも綺麗なままである。