【悲報】どうやらパラドクスに転生したらしい【助けて】   作:プロトタイプ・ゼロ

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えぇ、コロナでしんどい中、なんとかこれだけでも頑張った。ちょっとくたばります


絶体絶命!?

 

 

 

「……学校、行きたくないなぁ」

 

 ベッドの中の温もりに包まれながら柊野乃花はもぞもぞと動く。布団から顔を出し、スマホの画面をつける。時間を確認しだるい体を無理やり動かして制服に着替えた。

 

 パジャマから制服に着替え終え一階に降りた野乃花は、洗面所へ行き髪を綺麗に整えるとリビングにある椅子に座り食パンにバターを塗りオーブンに入れる。パンが焼けるまでの間時間があるためコーヒーを入れテレビをつける。朝ということもあり特に面白みのある番組はないが、それでも暇をつぶすのに十分であった。

 

 チンと音が鳴ってパンが焼けると芳ばしく美味しそうな匂いが周囲に広がる。パンをサクサクと音を立てながら食べ進め空になった食器をすべて台所に置くとそれらを洗う。

 

「…………行ってきます」

 

 歯を磨き終えカバンを持ち誰もいない家に向けてそう言うと、野乃花は外へ出た。

 

 野乃花が通っている鈴鹿第一中学校は家から少し歩いた場所に存在する。そのため野乃花が遅刻寸前でもならない限りは歩いても大丈夫。

 

(学校に着いたらまた地獄が始まる……嫌だなぁ。どうせ誰も助けてくれないのに)

 

 暗い感情が心の奥底から湧き上がってくるのをなんとか我慢する。学校に着いてしまう……それだけで吐き気がもこみ上げてくるほど野乃花は学校が嫌いだった。

 

 それでも野乃花には中学校を卒業しなければならない理由がある。そのためにも自分に向けられる痛みを我慢しなくてはならない。

 

「……石?」

 

 道端に落ちていたなんてことのない少し綺麗で「なぜか目が離せない」普通の石が転がっていた。普段の彼女なら石程度にそこまで足を止めることなどなかっただろう。だがなぜかその石から目が離せなくなり、気づいたときにはその石を拾っていた。

 

「……まぁ、1個くらい持ち帰ってもいいかな」

 

 誰に言うわけでもなく一人でそう呟きながら石をスカートのポケットに入れ、そしてまた重い足を動かした。

 

 教室につきまず最初に目に入ってきたのは自分の机の上に置かれた花瓶。そして一本のスノードロップ。花言葉は「あなたの死を望みます」。そして聞こえてくるクスクスという笑い声。

 

 心の底からため息が出そうだった。この地域だとスノードロップなんてそうそうお目にかかれないであろう花をわざわざ持ってきてこのようなくだらないことをしてなにが楽しいのだろうと思う。

 

(はぁ……憂鬱)

 

 花瓶をどかし椅子に座ろうとして画鋲がたくさん置かれていることに気づいた。あと少し遅かったら座っていただろう。

 

(そこまでして私の反応を楽しみたいのか……クソかよ)

 

 口に出して悪化させるわけにもいかないため心の中で悪態をつく。こんな一日なんて早く終わればいい、そう思いながら野乃花は学校を過ごし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 長い時間のように感じた学校の授業が終わり、家に帰ってきた野乃花は床にカバンと制服を放り投げ、ベッドの上に身体を沈ませる。

 

(はぁ……疲れた。もう嫌だ……どうしてこんな目に遭わないといけないのさ)

 

 自分が虐められている原因なんてわからないし、学校の教師に一度だけ言ったことがあったが頼りにはならなかった。そもそも面倒事を嫌う傾向の強い教師が真面目に取り合うことなんてあるわけがなく、虐められていることを言った日に言われた「貴女が虐められていると感じるのは気の所為です。そんな事をする生徒がいるわけがないでしょう?」という言葉は今でも記憶に新しい。それを言われたことから野乃花は学校という存在が嫌いになった。

 

「死にたい……もう、生きたくない」

 

 ご飯を食べる気力も湧かなかったためシャワーだけ浴びベッドの中へ潜り込む。疲れた精神はすぐに睡眠を必要としていたのか野乃花の意識はすぐに薄くなっていった。

 

(誰でもいい……誰だっていいから自分を守ってくれる存在が欲しい。自分と対等に接してしてくれる存在が欲しい、自分と対等に遊んでくれる存在が欲しい……)

 

 心の中でずっと抱えていた願いを小さくて口にする。そして完全に野乃花の意識は闇の中へ落ちていった。手に持っていた石の輝きとともに自分の体から現れた赤と青の光を見ることもなく……。

 

 次の日の朝、昨日よりは軽くなった肩を伸ばし欠伸をする。土曜日のため学校はない。そのことに少しばかり精神が落ち着く。学校に行かなくていいからだ。

 

(どこかに出掛けようかな)

 

 パジャマを脱ぎ捨て私服に着替える。白いワイシャツに青っぽいデニムのズボン。おしゃれに興味がそこまでない野乃花の外に出るときの服装だ。

 

 家を出て数分、休みの日だというのに人のいない公園にやってくると、ベンチに腰掛け空を眺める。人がごちゃごちゃしてる時が多い公園だが、休みの日でも時々人のいないときがある。それが感覚で分かる野乃花はこうやってたまに公園に来ていた。

 

「そう言えば、昔ここで歌って女の子……もう見かけないな」

 

 記憶の片隅に存在する青い髪の少女。まだ野乃花が小さかった頃ここの公園で楽しそうに歌っていたのをなんとなく覚えていた。今どうしてるのだろう、そう思ったがただ歌ってるのを見かけただけに過ぎない関係でしかない。

 

「よぉ、こんなところでなにしてんだ?」

 

 そんなとき後ろから声をかけられた。びくってなりつつ後ろを振り向くと、そこにいたのは奇抜と言える服装した青年だった。黒い上着にマゼンタのズボン。そして服からはなぜか数本のコードが伸びている。

 

 はっきり言って不審者にしか見えない。恐怖心から野乃花はベンチから立ち上がり青年から離れる。

 

「そんなに分かりやすいと傷つくんだけど……」

 

 青年は困ったような笑みを浮かべ頭を掻いている。

 

「あ、貴方はいったい……それに私に何のようですか?」

 

「あぁ……用って言っても俺安価に従ってるだけだしなぁ、なんて言えばいいんだろ」

 

 ブツブツとなにかを考え込むように喋るその姿が、人とあまり関わらない野乃花にとってより恐怖に感じた。だからだろう、野乃花はその場から逃げ出した。

 

「え? あ、ちょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「はぁはぁ、はぁ、はぁはぁ……も、もういいよね」

 

 思わず青年から逃げ出し公園を飛び出た野乃花は普段行かない商店街に来ていた。なぜ商店街に行かないのかと言われると……

 

「あっれぇ? 柊じゃん」

 

 学校での苛めっ子が暮らしてるからだ。

 

「ちょうどよかった。今私たち遊びに行こうと思ってたんだよねぇ。ねぇ、お金……持ってるよね?」

 

 拒否権を与えない言い方をしてくるリーダー格の女子。長い金髪をカールのように巻いている、その見た目からお嬢様っぽい感じの女子である。その取り巻きも見た目だけはお嬢様のように見えるだろう。

 

「あ、えっと……今、持ってない、かな」

 

「はぁ? んなわけないだろ」

 

 リーダー格の女子が取り巻きの一人に顎で指示すると、もう一人が野乃花の服を漁り始める。すぐに飛び退こうとしたが手を掴まれてしまいできなくなる。

 

「ちっ……本当になにも待ってねぇじゃん。つっかえねぇ」

 

 野乃花が本当にお金を持っていないことを知り盛大に舌打ちをするリーダー格の女子は、野乃花の髪の毛を掴むと裏路地に連れていきズイッと顔を寄せる。

 

「明後日までに20万円持ってこいよ」

 

「え、そ、そんな……無理だよ。そんなお金、持って……ぐっ!?」

 

「うるせぇな。持って来いって言ったら持って来いよ、カス」

 

 髪の毛を離し手をハンカチで拭くとその場を去っていく。地面に座り込んだ野乃花の目から涙が溢れてきた。

 

「なんで……あいつらばかり……私がこんな惨めな思いを……」

 

 誰でもいい。あいつらに……。そう思った時だった。彼女たちが去っていた方から甲高い悲鳴が聞こえてきたのだ。その声にバッと顔を上げ思わず駆け出した。そして野乃花が目にしたものは、トライデントと呼ばれる槍を持ったオレンジの頭をした物体達が苛めっ子達に襲い掛かってる場面だった。

 

 バグスターウイルスという感染した人間から分離した怪人の一つである。そしてこのバグスターウイルスは戦闘員と呼ばれ、元となったゲームの怪人と共に感染者の存在力を奪う存在である。

 

 だが、そんな事を野乃花が知るわけもなく、彼女たちを見捨てるように走り出そうとして……

 

「とりゃあ!!」

 

 野乃花の横を通り過ぎていった黄色の風のせいで足を止めてしまった。

 

「さぁさぁ悪い子ちゃん達ィ! このキャラメルタイガーがみーんなお仕置きしてあげるからね〜!!」

 

 ライオンヘアーの黄色の髪をした少女がところどころお菓子のような飾り付けがされたヒラヒラした服装でくるりと回り、手に持ったキャンデーのようなステッキをバグスター戦闘員に向けてニカッと笑う。

 

「やぁ!! とぅ!!」

 

 その姿はまるでプリキュアや魔法少女のようで可愛らしい。だが、やってることはただの物理である。キャラメルタイガーと名乗った少女はステッキから魔法を出すわけでもなく、そのステッキでバグスター戦闘員をぶん殴ったりしていた。

 

「おらおらおらぁ!!」

 

「キュオォ!?」

 

「えぇ……」

 

 その戦い方は可愛らしい見た目から魔法少女やプリキュアらしい戦いが見れるのかと多少の期待があった野乃花としては少し引いてしまったが、今のうちに逃げようと足を動かそうとして……なぜか動けなくなっていた。

 

(な、なんで……今ここで逃げないと、いけないのに!)

 

 誰かに足をつかまれているわけでもない。何かに足が挟まっているわけでもない。なのに野乃花の足は動かない。

 

(動け……動いて……動いてよ!!)

 

 なぜ動かないのか野乃花にもわからない。動かしたいのに動かせない衝動に苛つきが募る。足を叩き前を見る。そして駆け出した。野乃花の視線に助けられたはずの苛めっ子達がまた襲われていたからだ。

 

「魔法少女じゃないのに覚悟ありまくりじゃんあの子!!」

 

 わけの分からない怪物に攻撃が通るのかとかそういうのをなにも考えず、咄嗟にバグスター戦闘員に飛び膝蹴りを喰らわせる。やはり大したダメージにはならなかったのか相手は少し驚いたような様子だったが、それでもその隙に苛めっ子達を連れ出すことに成功した。なんかキャラメルタイガーが感心したように見てた気がするが、この際無視する。

 

「ちょ、アンタ……なんで」

 

「理由なんか分かんないよ!! 考えるよりも先に体が勝手に動いてた!! 今逃げたら絶対後悔するって!!」

 

 苛めっ子達の手を引き、必死に逃げる。道なんて特に考えていない。とにかく走った。後ろを見れば数体のバグスター戦闘員が追ってきていた。

 

 野乃花達が逃げた先は学校だった。残り少ない体力を振り絞り屋上まで駆け上がると、バグスター戦闘員が入ってこれないように鍵を閉める。そしてようやく息を整える時間を確保できた。

 

「はぁ、はぁ……こ、こんなに走ったの初めて、かも……」

 

「はぁはぁ、はぁ……はぁはぁ……あ、アンタ……いい足してんじゃ、ないの……はぁはぁ」

 

「み、見直したッスよ〜」

 

 一緒に走ってきた苛めっ子達から急に褒められ、少しだけ照れるように赤くなる。今まで誰かに褒められたことなんてなかったからだ。

 

「それにしてもあのとき出てきた女の子、誰だったんだろう」

 

「さぁな……なんかよくわかんない服装してたけど」

 

「可愛い服ッスよね」

 

 なんとか振り切れたから安心感からか三人は壁に背をつけて座り込む。ようやく息が整い、頭の中を整理することができそうになって……やはりできそうになかった。情報量が多すぎて訳が分からない。

 

(そういえば……あいつらって、昔見てた戦隊系の敵に似てるような? それに朝に会ったあの男の人も)

 

 野乃花が一人そう考え込んでいると突然ドアがどんどんと叩かれる。その音に3人の肩がビクッと跳ね上がる。教師ではないことは何となく分かる。この屋上にはめったなことには上がってこないし、仮に教師だとしたら叩くだけでは済まないはずだ。

 

 それはつまり――

 

「も、もうここまで……!?」

 

「や、ヤバっ!」

 

 バグスター戦闘員が一人だけ現れた。他の戦闘員は下にいるのかその戦闘員は辺りをキョロキョロと見回すと奥の方に三人が固まっているのを見つける。

 

「ひっ……」

 

 バグスター戦闘員が手に持つ槍を振り回し3人に近づく。

 

「ど、どどどどどどうしよう!?」

 

「に、逃げ場なんてないわよ屋上だもの!」

 

「死ぬッスか!? 死ぬんッスか!?」

 

 慌てふためく3人の様子などお構い無しに目の前まで近づくと勢いよく槍を振り上げる。そしてその槍を振り下ろす前に何者かによって屋上から突き落とされた。

 

「えっ……?」

 

「はぁ……学校に向かってるのが見えたから追いかけてきて正解だったぜ」

 

 野乃花達に手を差し出しながらそうぼやくのは、朝に出会った不審者ゲフンゲフン青年だった。

 

「ほら、ぼさっとしてないで早く逃げるぞ。立てるか?」

 

 今朝の言動を含めても怪しさ満点のその手を、今は逃げるためにも掴み立ち上がる。青年は野乃花が立ち上がるのを目にすると続けて二人にも手を貸し立ち上がらせる。

 

「ほら、時間はないぜ? バグスターとの鬼ごっこゲーム開始だ」

 

(バグスター……? 何処かで聞いたような)

 

 

 

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