縄文時代…ある集落…
蛇舞羅「ギャォォォン!!ギャオオオォン!!」
村人「化け物じゃ…!逃げろ!逃げろ!」
村人「嫌だぁ!死にたくない!!」
逃げ惑う村人たち、後に伝説で蛇舞羅(タブラ)と名付けられたその怪物は人を食い、家々を踏み潰しながら村を蹂躙した。
その逃げ惑う人々をかき分けるように、1人の少年が立ちはだかった…
「ミタマ!!」
女性の声が響き、少年は銀色に輝く光の巨人へと姿を変える。
巨人は蛇舞羅との激闘の末、光の刃でその首を切り落とし村に平穏をもたらしたのだ…。
「ま…ミタマ…!御珠!」
母「御珠!」
御珠「ぁ…おはよう母さん」
母「おはようじゃないわよもぅ…遅刻するわよ?」
御珠「ぇ!…ヤバ!」
それが、この街に伝わる巨人「天人(アマツビト)」のタブラ退治伝説。この街アオナ台の老人から子どもたちへ細々と語り継がれ、知る人ぞ知るマイナー日本神話として遺されている。
こと、この少年・光来 御珠は伝説発祥の地光来神社の初孫。こうしてタブラ退治の夢をみることもしばしば…。
御珠「行ってきますばあちゃーん!」
彦命「これ、御珠?ちょっとええかの?」
慌てて玄関横の祖母彦命(ひこみ)の部屋に声をかける御珠を彼女が呼び止めた。
御珠「な、何ばあちゃん…!俺急いでんだけど…」
彦命「お前さん、今日が15の誕生日じゃったろ?今年は禍年(マガツトシ)じゃからの…これを持っておいき?」
彦命は、縄文土器状の紋様が刻まれた石枠に嵌め込まれた、小さな勾玉を差し出した。
御珠「これ…!アマツヒの勾玉…?」
アマツヒの勾玉。それは光来神社に伝わるアマツビトの依代で、タブラ退治以降千年に一度やってくるとされる不吉な年…マガツトシに人々を守ってくれるのだという神具だ。
光来神社では次期神主候補の元服の際に代々け継がれ、こうして御珠の手に渡ってきたというわけだ。正直アマツビト伝説を壮大な御伽話くらいに見ている御珠にとっては、ちょっといいお守り程度のものだろうとは思いつつ…そっと勾玉を受け取った。
御珠「ありがとばあちゃん!大切にするね。それじゃっ行ってきまーす!」
かくして、御珠の高校生生活1日目が始まった。
ウルトラマン外伝‐アマツビト‐
御珠「天明!」
天明「む、遅いぞ御珠」
錦田天明。御珠の実家光来神社とは長く親睦のある山寺、錦田寺のひとり息子。堅苦しく生真面目で気難しいが、幼少期から付き合いのある御珠にはわりかし甘い。
御珠「ごめんごめん!寝坊しちゃってさ…」
天明「こうしまったものは仕方あるまい、急ぐぞ!神仏に仕える俺達二人が授業初日から遅刻など以ての外だっ」
御珠「う、うん!」
急いで街を駆け抜け、何とかチャイム前に校門を抜けた二人。「遅いぞー、気をつけるように!」と声を掛ける体育教師に平謝りしつつ、自己紹介や初回授業の説明だのと特別面白みのない1日が過ぎて…
過ぎて…くれればよかったのだが…
本間「見つけたぞ!!光来御珠くん!!」
御珠「うわっ出たよ…」
机をバン!と叩いて御珠に詰め寄る男、本間 清。本校2年生で校内で非公認オカルトサークルSuper Spiritual Searching Survivor Personこと『SSSSP』を立ち上げ、日々心霊スポット探索や因縁物収集をしている変わり者だ。
本間「さぁ答えを聞こうじゃあないか!入学式の際は取り逃したが…今日はさせんぞぉ!!」
御珠「やめてくださいよ…見て?俺新入生なんですよ!?皆びっくりしてヒソヒソしてますから…!」
本間「ふん!!これは失敬!!ならば!放課後また来ようでないか!良い返事を待っているぞ?なんせ今度の探索目標は君の生家!光来神社の奥の院なのだから!!」
御珠「ちょっと!前にもいいましたけど…奥の院は!」
ドシドシ音を立てて教室を去る本間…。
御珠「はぁ…」
厄介なのに絡まれたと心底肩を落とす御珠。厄介なのは彼だけでは無かった…。
光来神社奥の院。それは普段一般公開されていない特別な宮が建てられた禁足地。タブラの首が埋められているとされ、決して遊び半分で行かないよう彦命にも厳しく言い聞かせられている。
きっと彼らは自分が入団を拒否しようと行かないように諭そうと、勝手に突き進んでいくに違いないという確信があった。本間清の態度には、それだけの説得力があったのだ。
御珠「じゃあ天明のところにも?」
天明「あぁ、もちろん俺は断った。」
放課後、天明はきっぱりとそう言った。
天明「世の中自業自得だ。善い行いをすれば善い結果に繋がるし、悪行もまた同様…。祟りを受けるなら当人たちの自己責任だろう。お前はちゃんと注意喚起したのだ、自ずから進んで危険な連中に関わることはない」
御珠「でも…そうだけど……」
御珠には、もう一つ気がかりな事があった。
入学式の際団員全員で御珠の行く手を遮ったSSSSP。メンバー構成は本間含め男子が2人、女子が3人…。そのうちの1人、本当にオカルト好きなのか?というほど浮かない顔をした少女が…強く印象に残っていた。
哀しそうとも、不機嫌とも違う、でも何処か物憂げな雰囲気を纏った彼女に御珠は不思議な魅力を感じていた。
極論天明の言う通り、彼らが禁足地を訪れて何らかの障りを受けても、それは彼らの自己責任。ちゃんと引き止めたのだし、すべきことはした。自分には何の責任もない。
只ただ、あの娘だけが気になった。単なるオカルト好きとは思えない、もしかして自分のように無理やり勧誘されて巻き込まれた…?ならばそれで障りを受けるのは、いささか理不尽ではなかろうか、御珠は悩む。悩んで悩み尽くして……
ーーーーー
本間「いやーー!誠に感謝するよ光来くん!」
御珠「いや…別に…本当に危険だから、すぐ帰るって約束してくれますね?」
本間「もちろんだとも!まさかあの奥の院にガイドまでついてくれるとはなぁ!」
取手「いやはや本間さん!流石の人脈ですなぁ!」
なっはっは!と笑いあう本間と、その舎弟とも言えるカメラを携えた心霊写真マニアの取手。そしてそんな2人を少し後ろで生暖かい目で見つめる女子3人…。
サブカル好きでミステリアス、泣きぼくろと黒髪ボブヘアが特徴の黒川。
金髪ツリ目でゾンビ映画大好きなギャル、井村。
そして…今日も何処か物憂げな、明るい茶髪が闇夜にも美しく透き通って見える不思議な少女…久遠 緋真(クオン ヒサナ)
他4人と明らかに雰囲気の違う緋真に、なぜこのグループにいるのかと真意を確かめたい御珠であったが、ガヤガヤと騒ぎ進んでいく本間から目を離すわけにもいかず、奥の院へと続く決して整備されているとは言えない参道を進んでいく…。
井村「すっご!…ここが?」
黒川「なんか雰囲気あるね〜、エモい」
本間「素晴らしい!!歴史書にあった通りだ…」
取手「光来神社…奥の院!!」
緋真「…」
テンションを上げた取手がフラッシュを焚きまくり撮影している。
本間「いいかね諸君!ここにはあのタブラが眠っていると言われている!今でも山奥からアマツビトへの復讐の機会を伺っていて、山奥からゴーゴーと唸り声がするというんだ、これは近年山と山の間を抜ける風の音と結論が出たというが…ボクはね、タブラは宇宙怪獣なのではないかと考えている!!なぜなら……」
御珠「………!!!」
うるさく本間が歴史や持論を語る最中、御珠は何かとてつもない力を感じ取りビクリと身をすくませた。ライトの端で御珠を捉えていた本間も突然の動きにびっくりしたようで…
本間「うぉあ!?…な、なんだね光来くん!突然…」
御珠「来る…」
井村「へ?」
御珠「静かにして!!」
強い気迫で一行を黙らせる御珠…いつしかボロボロに古びた本殿の向こうから、ゴーゴーと噂のうめき声が聞こえる
井村「う、ウソ…タブラ来ちゃったわけ…?」
取手「そんなまさかぁ…だってこれは…か、風の音って」
『ギャオオォオォオン!!!』
一行「!!!!!!」
突然の金切り声。象の咆哮とも、ライオンの咆哮とも違う、不気味で甲高く、とてつもなく大きな…
ズル…ズル…ミシミシ
何かを引きずり、山奥から木々をかき分けるような音が近づいてくる…。
井村「な、何…」
黒川「ヤバイの来ちゃったかなぁ…?」
本間「あ、あれは…ッ!!」
音の方を照らす本間…。幸か不幸か、彼が手にした高性能ライトはその先を昼のように照らし出し、音の主をはっきりと映し出す。
蛇のような鋭い目と、むき出しの上下の牙…真っ黒い肌にびっしりと並んだ鱗…。それが、首だけの格好で、ズルズルとこちらに向かってきているのだ。
本間「た…た…」
取手「タブラだぁぁ!!!」
取手の声に皆が一斉に走り出した。首だけでありながら、タブラはとてつもない速さで木々を薙ぎ払い一行に迫る。
タブラ「ギャオオォオン!!」
まるで憎悪に狂っているように目をギョロギョロさせて、何度も大きな口を開いて、彼らを狙ってくる。そしてついに…
緋真「ぁ…っ!」
真っ暗な中道を慌てて走る中緋真が何かに躓き、それにタブラが気付いてしまう。
まっすぐ緋真の方に向かっていくタブラを見た御珠は、思考より先に反射が出てしまった。
御珠「久遠さッ…!!」
緋真「!!……」
タブラの進む先にいた緋真を突き飛ばして割り込み、その口の中に消えてしまった…。目の前で御珠が飲み込まれるのを見てしまった緋真は尚も動けず……タブラは依然として緋真を睨んでいる…
「どうしよう…俺死んじゃった…?」
「やりたいこととか…まだいっぱいあったのに…ってか、あのままじゃ結局、久遠さんたちも…犬死にじゃんか俺…!」
「まだ…久遠さんと何も…何も話せてな…」
『ミタマ…』
「え?…」
『ミタマ…!』
タブラ「…!?」
むせ返るように、その場でグフグフも喉を鳴らすタブラ。
本間「な、なんだ!?一体何が…!」
タブラ「グルルルルゥ!?…グフッ!グァァア!!」
その口から白い光が溢れ、身悶えするタブラ。次第にその口が内側から割り開かれ、白く大きな手が現れる
蛇舞羅「ぐるるるるぅ!?…グエッ!!」
ついにはその光を吐き出した。吐き出された白い手は…次第に帯状の白い光を収束させて、腕、肩、胸…頭、そして下半身を形成して、巨大な身体を作り上げていく。
まばゆい光が引いていくとそこには、透き通るような銀色の体に縄文土器のようなきめ細かい紋様を携え、胸に大きな勾玉を輝かせた…巨人が立っていた…。
井村「ウソ!?あれ、アレじゃね!?」
黒川「アマツビト…」
井村「そうそれ!」
本間「いや、ウルトラマン…」
井村「うるとら?…なんすかソレ」
本間「ウルトラマン!アマツビトはウルトラマンだったのだ!知らないかね!宇宙飛行士たちの間では長らく噂されている…人類に友好的な巨大宇宙人だよ!!」
自慢げに持ち寄った書籍『妖怪・UMA大全』からウルトラマンの項目を見せる本間。そこには破損した宇宙船を救助する巨大なグレイ宇宙人の想像図…
井村「いや似てなくない!?」
本間「コレはあくまで再現図だ!!天から降りてきたという巨人…アマツビトはウルトラマンだったのだよ!!」
アマツビト「シェア!!」
タブラ「グルルぅ!!ガウゥ!!」
首だけになりつつも、過去の恨みを晴らすためか、巨人の腕に食らいつくタブラ。
アマツビト「ゥウ…!ヘァア!!」
脳天に手刀を叩き込み大きく腕を振ってタブラを振り払い、間合いを取る。しかしタブラはまたすぐに飛び上がり、顔めがけて大口を開ける…
井村「危ない!!」
アマツビト「!…」
瞬間、巨人の脳裏に蘇る記憶。両手を胸の前で合掌し、右手を手刀のように前に振りかざす。記憶の中では、完全な胴体を持っていたタブラの首が胴体から切り離され…
アマツビト「シェアァァ!!!」
タブラ「ギャッ!!!?グォァァァッ!!!」
頭を過ったビジョンと同じ動作をしてみせ、蛇舞羅に向かい手を振りかざす。すると手先からは虹色に輝く光の刃が飛び出し、タブラの顔が縦に両断され巨人の左右に崩れ落ちる。黒い血を噴き出し青い炎を上げて、タブラの首はまるで元から無かったかのように溶けて霧散していく…。
本間「うぉぉぉぉ!?やったぞ!!」
アマツビト「……シェア!!」
静かに天を見上げ飛び去る巨人。そして…
ガサガサ…
御珠「皆無事ですか!?」
本間「光来くん!?無事かはこっちのセリフだぁぁ!!!」
取手「無事だったんすねぇ!!僕らも何とか元気っす!」
井村「マジ!?みかちどうやって助かったん!?」
黒川「さっきタブラに…」
御珠「助けてくれたんだよ、アマツビト様が、口をこじ開けてくれたんだ」
本間「そうか…あの時の…!やはり人類に友好的な巨人…!アマツビトウルトラマン説は…」
緋真「光来くん…っ!」
本間のうるさい言葉を遮りつつ、初めて緋真が声を上げた。
御珠「久遠さん…?」
緋真「さっきは…本当にごめんなさい…あたし…っ」
御珠「っ、良いんだよ!俺も無事だったし…それにこういうときはほら…ありがとうの方が…嬉しいかなって…」
緋真「…っ、ありが…っ」
彦命「何しとんじゃあ貴様らぁぁ!!!」
本間「ぎゃあぁぁあ!?今度は山姥か!?砂かけ婆か!?ターボ婆!?」
騒ぎを聞きつけとてつもない形相で駆けてくる彦命と駐在の警官たち。こうして一行は夜通しこっぴどく叱られて家に帰される事となったが、取手の撮影したウルトラマンとタブラの写真がネット上で一世を風靡することとなった…。
ある施設、それを事細かに調べ上げているスーツ姿の集団…
「間違いありません、合成、加工の形跡はありません。」
「チルソナイト線組成検査の結果、地球外からの来訪者の可能性が極めて高いと考えられます」
「なるほどねぇ、ついにお出ましになったっちゅうことか。…第2級、N案件やな……」
続く。
こんにちは、タソガレンと申します!この度は読んでいただきありがとうございます!
ここ最近は鬼滅から始まり、呪術廻戦刃ダンダダンなど、オカルト好きな僕にとってはたまらない作品が流行っていて嬉しい限り…!元よりウルトラマン×妖怪!怪奇!みたいな者を書いてみたいと模索していたので、この度初投稿してみました。
知ってる方にしか伝わらないネタではありますが…ぬら孫の清十字怪奇探偵団みたいなお騒がせ軍団とか、禁足地に眠る姦姦蛇螺!みたいな…自分の好きなエッセンスを多分に盛り込んだごったネタの煮ストーリーですので、楽しんでいただける方がいらっしゃいましたら…今後とも読んでもらえたらなと思います!