ウルトラマン外伝-アマツビト-   作:タソガレン

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第2話 -炎の牙獣を伐て!-

 東京都新宿区、とある施設にて…

 

京都弁の男「SSSSP…ねぇ」

 

副官の女「はい、都立アオナ台高校の非公認サークルです。調査資料によれば、禁足地への潜入取材中に事件に出くわしたと…」

 

京都弁の男「何や、模範的学生さんとは言えへんなぁ…ま、話くらいは聞いたほうがええちゃうん?」

 

副官の女「了解。私と"芽平隊長"が担当しましょう。」

 

京都弁の男「ん、よろしゅう」

 

 

 

 その頃、アオナ台高校1年A組…

 

友人A「おいおい光来…!お前いつの間にあんな可愛い子と友達になったんだよ!…ってかまさか彼女じゃねーだろうな!?」

 

御珠「可愛い子?…」

 

 昼休み、突然友人に声をかけられた御珠。友人の指さす方を見れば、こちらに手招きしている緋真の姿…

 

御珠「久遠さん…!べ、別に彼女とかじゃないって!部活の子…!」

 

 慌てつつ緋真の方にかけて行く御珠。

 

緋真「…今日、集会だって。光来君まだLINEグループ入ってなかったから…伝えとく。後で招待するからQR見して」

 

御珠「っ、うん…ありがと…!」

 

 こうして意図せぬ所で緋真の連絡先を受け取った御珠。別段彼女に感じる魅力、向ける感情は恋心のそれとは違うと考えていたものの、可愛い女子との関わりが増えるというのは悪い気はしないもの。

 

2人を繋ぐ関係がこんな面倒な同好会で無ければ…だが。

 

本間「よーし集まったかね諸君!!」

 

 小さな空き部室を半ば占拠するように使用するSSSSPアオナ台支部。支部といってもここにしか無いわけだが、本間のネーミングセンスによるものだろう。室内いっぱいに置かれた長机と、窮屈そうに腰掛けるメンバーを一望しながら、嬉々とした表情で週末の予定を発表する。

 

本間「今回の調査テーマはこれだ!」

 

 バン!とホワイトボードに張り出された手書きのポップ

『奥多摩の牛鬼!?蘇った化龍牙(ゲロンガ)を調査せよ!』

 

黒川「おぉ〜♪化龍牙知ってるよ〜」

 

取手「確かあれっすよね、錦田君とこの…」

 

本間「そう!錦田君の生家!錦田寺の祖とされる出家武人、錦田小十郎景竜が若武者時代に封印したという恐ろしい妖怪なのだよ!彼を招待できなかったのがますます口惜しいが!ここは、我らSSSSPでその姿を突き止めようではないか!!」

 

 相変わらずの暑苦しい演説。盛り上がる面々と、相反して何とも言えない表情の御珠と緋真…。

 室内の空気に温度差はありつつも反対意見を出すものはおらず、土曜日朝9時より一行は奥多摩を目指すこととなった。

 

 

本間「んん〜!!いい眺めだ!」

 

井村「普通に休日ハイキングとしてめちゃ映えですねぇーっ!」

 

発電所員「やあやあ、君たちがえっと…SSSP?」

 

 一行を迎えるように、作業着姿の男がやってきた。近くの火力発電所員のようだ…

 

本間「今日は取材協力ありがとうございます!あっ、SSSSPです!」

 

御珠「協力…?」

 

本間「そう!!じつは最近…奥多摩火力発電所では不審な事が起きていると聞いてね!ゲロンガと何か関係があるんじゃないかと思って取材のアポイントメントを取っていたのだ!」

 

黒川「それってぇ結構迷惑なんじゃ…?」

 

発電所員「いやいや良いんだよ。あたしゃこの地域の出身でね、ゲロンガの伝承にも詳しいし、何より発電所も…今は一定時間しか稼働させてないから暇なんだ」

 

取手「一定時間…?全面稼働させて無いんすか?」

 

発電所員「そうなんだよ、実は最近…不審な熱源不足で炉が完全燃焼しない不具合が頻発しているんだ」

 

 発電所員はボードに挟まれたここ一カ月ほどの炉の温度グラフを見せる。確かに一カ月ほど前から温度が低下し、ついには数日前不完全燃焼を起こして炉が緊急停止してしまったのだ。

 

本間「僕はこの件に…ゲロンガが絡んでいると考えている!」

 

井村「そんなことありますぅ?だって伝説の妖怪じゃないっすかぁ」

 

本間「考えてもみたまえ!そうして僕らは…本物のタブラに遭遇したんだ!ゲロンガは伝承によると火を吐く牛鬼だという。きっとゲロンガの仕業に違いないのだ!行くぞーSSSSP!発電所の危機を救うのだっ!」

 

 と意気揚々と山道を歩き回り、ゲロンガの関する史跡を巡っていく一行…。

 

 そして、それを付け回す怪しい車の影…。

 

副官の女「こちらA班、目標を追跡中。動きがあったので尾行を続けます…。」

 

制服姿の少女「ほう、彼らがSSSSP…?」

 

 そんなことは露知らず、一行は歩みを進めて……

 

 

発電所員「き、君たち大丈夫かね…?」

 

取手「ふ、ひぃ…ッ!ま、まだまだぁ…!」

 

本間「だ、大じょ…うぷっ…これしきぃ…ッ!」

 

 一番乗り気だった割には、チーーン…と効果音でも聞こえて来そうなほどに疲弊してぐったりしている本間と取手…。決して道が険しかったというわけでもなく、単に日頃の運動不足が祟った様子…。

 

井村「先輩たちダッサーー…」

 

黒川「ほらほらぁ、あと一箇所ですってよ〜?頑張りましょーよー」

 

御珠「あはは…っ、てか久遠さん、元気だね?」

 

緋真「…そう?」

 

黒川「確かに…!息切れ一つしてないね?」

 

井村「ひさちなんかスポーツしてたっけー??」

 

緋真「いや…なんていうか…お父さん、自衛官だったから、日頃からしっかり体力つけるようにって…」

 

 

 

 それを遥か遠く、高性能集音マイクで確認する黒いバンの2人。

 

副官の女「自衛官でクオン?…まさかね」

 

無線機からの京都弁『なんかおました?』

 

副官の女「いえ…監視を続けます。」

 

 

 一行はさらに山道を登り、化龍牙の井戸と呼ばれる洞穴にたどり着く。

 

発電所員「ここが伝説の終着地…ゲロンガの井戸さ。井戸とは名ばかりで、この深い竪穴を形容したものだけどね。」

 

本間「お、おおぉここが…!」

 

 息も絶え絶えながら、興奮で少し元気を取り戻す本間。

 

発電所員「見てのおり、まるで獣が岩を砕いて作ったような穴だから、今でも多くの人がゲロンガがこの穴の底に眠っていると信じているんだ」

 

 その横に備えられた古ぼけた解説看板を補足するように、発電所員が語り出す。

 

発電所員「かつてゲロンガは、この付近一帯の村を襲って暴れまわった。人を襲い、火を吹き、それはそれは恐れられていそうな…。しかし、それを討ち取ろうという勇敢な男が現れた」

 

本間「それが…錦田小十郎景竜というわけですね!!」

 

発電所員「その通り、後に多くの妖退治伝説を遺す景竜も、このときはまだ10代、これから名を挙げようという無銘の若武者だったそうだ。熊をも凌ぐ獣相手に、景竜は得物の大薙刀を振りかぶり、ゲロンガとの一騎打ちに出た。

しかし、流石は妖獣…とてつもない怪力と炎で、あっという間に景竜は追い詰められてしまった!だが…

一瞬の隙を突き、景竜は薙刀をその牙に叩きつけた。幸運にも、それがゲロンガの弱点だった…!片牙を折られすっかり戦意喪失したゲロンガは、こうして穴を掘り地の底に逃げ去った。というのが、ゲロンガ退治の伝説さ。」

 

ほうほうと真剣に聞き入る一行。取手は動画レポート制作にと、しっかりと撮影、録音をこなしている。すると…

 

井村「うぇ!?…な、何!?」

 

黒川「地震…っ!」

 

発電所員「落ち着いて…!すぐに収まるよ…」

 

発電所員の言う通り、地震はすぐに収まった…

 

発電所員「最近この小さな地震が、発電所付近で群発的に発生しているんだ。この現象が始まってからなんだよ…発電所の炉に異常が発生しているのは…」

 

本間「うーむタブラが実在したのを考えると…コレはゲロンガもいると見ていいだろう!!…ならば早速…!…」

 

 というには、穴は深く狭く…言い出しっペの本間は足をすくませている…。かなり細身の人間でないと出られなくなりそうな空間で…

 

緋真「…団長行かないなら私行きますよ?」

 

躊躇いなくすっぽりと身体を投げ入れ、もう上半身しか見えない状態の緋真

 

本間「い、いやいやいや久遠くん!?」

 

発電所員「危ないよ君!」

 

緋真「すぐ戻りますから…」

 

 

 

するすると暗闇に消えていく緋真を追うように…

 

本間「ちょちょ…!光来くん!?」

 

御珠「俺が連れ戻します!30分戻らなかったら通報を…!」

 

 

 

発電所員「…素人2人じゃ危ない、すぐに警察と救急隊を…うぉ!?」

 

 木がミシミシと揺れる程の地震。全員が立てないレベルでよろめいてしまう…そして

 

本間「久遠くん!!光来くん!!」

 

 

ゴロゴロと入り口の岩壁が崩れ、ついには完全に塞がってしまう…

 

井村「う、ウソ!?」

 

黒川「塞がっちゃった…!」

 

 一方、何とか地底に足がついたものの、出入り口が塞がって閉じ込めらた2人。しかし内部には風が通っていて、少なくとも他にも出口がある事が分かる…

 

緋真「大丈夫?付き合うことなかったのに」

 

御珠「そんなこと言うなよ…!俺も皆も…久遠さんが心配なんだよ!」

 

 薄暗い地下道…ポタポタと滴る水の音と…緩やかに通る風の音だけを頼りに、御珠と緋真は歩いていた…。相変わらず感情に起伏のない緋真に対し、あまりの事態に取り乱しつつも緋真を止めようとする御珠。ついにはその手を取り、無理やりに歩みを止めさせる。

 

御珠「理由があるならちゃんと教えてよ…っ、…なんでそんなに周りに無関心なんだよ!!…オカルト好きって感じでもないのに、なんでそんなに1人で突き進んじゃうの!…」

 

緋真「…光来君……っ、ごめん…言わないと伝わらないことだもんね……。じゃあ…あたしが今から話すこと、誰にも言わないって約束してくれる?」

 

 少し真剣に、いつもと違いまっすぐに御珠を見つめ返す緋真…。空気の変化を感じ取った御珠は静かに頷いた。

 

緋真「あたしのお父さん、自衛官って言ったでしょ。」

 

御珠「うん…」

 

緋真「…航空自衛隊の優秀なパイロットだったんだって。」

 

緋真の父、久遠貴一は航空自衛隊、F15Jのベテランパイロットであった。5年前の12月24日、クリスマスイブ。緋真に贈るプレゼントを用意して帰宅日が翌朝に迫っていた貴一は突然のスクランブル要請を受け発進…。未確認の飛行物体は…

 

 

御珠「青い光?」

 

緋真「そ、お父さんのフライトレコーダーには青い光見えるって報告だけが残ってた…。見つかったのは戦闘機の残骸と、その記録だけ。自衛隊では疲労やストレスから来る幻覚と操縦ミスって片付けられたけど、お父さんはそんな人じゃない…!絶対青い光に襲われたんだと思って必死で調べた…。そしたら見つけたの…フーファイターって超常現象…」

 

 フーファイター。かつて第二次大戦期の戦闘機パイロットが見たという恐ろしく速く不気味な飛行物体…。戦後も各国で観測されているというが、正規の報告をするとパイロットは精神衰弱と判断されて地上勤務にされるという都市伝説がある。

 

緋真「きっとお父さんはフーファイターにやられたんだよ…今は自衛隊も国も取り合ってくれないけど…きっと!…きっと本物の超常現象をたくさん証拠として集めれば…!」

 

御珠「久遠さん…」

 

 御珠の中で合点がいった。オカルト好きなんで浅はかな目的ではない。彼女は、父の真実を知るために、フーファイターの正体を知るために…

 

御珠「でも…それでもだめだよ…!絶対に…」

 

緋真「…え?」

 

御珠「お父さんの真実を知るために頑張って、頑張りすぎて…死んじゃったら元も子もないだろ…!…」

 

緋真「光来くん…っ」

 

御珠「久遠さんは俺に秘密を教えてくれた…なら俺、久遠さんの味方、仲間だから!…お父さんの件…協力するって約束する…だからもう無理なこと、しないで……」

 

緋真「…!」

 

 再びゴトゴトと揺れ出す洞穴…外では…

 

 

 

発電所員「あ、あれは!?」

 

地盤を破り、土埃を巻き上げ、不気味な咆哮を上げ…

 

ゲロンガ「ゲォォォォッン!!ゲォオォォッン!!」

 

ゲロンガが現れた。

 

本間「ゲロンガだ!」

 

 

黒いバンの集団も動く。

 

 

副官の女「緊急事態発生…!緊急事態発生!支給緊急救護の活動願います…!本部からは"演武"発進の許可を!」

 

制服の少女「演武は間に合わんよ」

 

副官の女「間に合わなくても呼ばないでどうすんのよ!」

 

制服の少女「間違いないさ、必ず彼が…来る」

 

 

ゲロンガの背後、地盤を突き破り…

 

アマツビト「……」

 

ゲロンガ「…!ぐるるるるぅ……!」

 

その手には驚いた表情の緋真が大事に乗せられていて、そっと安全な広場に降ろされる。

 

緋真「光来くん…光来くんは!?…」

 

 アマツビト…ウルトラマンは深くうなづき、ゲロンガに向き直る

 

アマツビト「シェア!!」

 

ゲロンガ「ゲオオオォオオン!!!」

 

 2体が取っ組み合うのを見つめる一行…

 

発電所員「伝説では熊をも凌ぐと言っていたが…あれほど巨大なのか…!?」

 

本間「熱源…発電所の熱源を吸収して、急激に成長したのでは?」

 

発電所員「そうか…!だから炉が不完全燃焼して…」

 

 そんな一行の背後にキキィーー!!と激しいブレーキ音を立て、例の黒いバンが乗り付ける…!

 

井村「な、なに!?」

 

副官の女「公安の者です!事情は後で話すからとにかく乗って!!」

 

一方で、ウルトラマンはゲロンガのパワーに押されつつあった。

 

アマツビト「グッ…シェァア…!」

 

ゲロンガ「ガルルルゥ…!!ゲォオォン!!」

 

熱源を腹一杯に溜め込んだその巨体はとてつもない力で、ウルトラマンを押しつぶそうと体重をかけている。

 

アマツビト「グッ…ダァア!!」

 

ゲロンガ「ゲオオォオン!!?…ガァァ!!」

 

アマツビト「ウァ!…ディァア!!…っ」

 

腹に蹴りを入れ何とか距離を取るが、ゲロンガは高熱の火炎放射を放ち、胴体に直に食らったウルトラマンは体勢を崩し…

 

…キコンキコンキコンキコン…

 

 

取手「な、なんですかあれ!」

 

副官の女「おそらく危険信号ね…巨人のエネルギーが尽きかけているのかも…」

 

 そんな状況を車内で見守る一行、心配そうに皆が見守る中、制服の少女だけが不敵に微笑んでいる。

 

 

 

アマツビト「ゼェ…ゼェ…ハッ!」

 

ウルトラマンは思い出す。ゲロンガの牙を見てみれば、確かに右の牙には不自然に生え変わったような痕が…伝説は本当だったと確信したウルトラマンは、両手から切断光輪、ウガツヤイバを放ち…

 

ゲロンガ「!?…キャォォォオッ!?」

 

 両方の牙を折られたゲロンガは慌てふためく。

 

アマツビト「シェァア!!」

 

 

 その隙をついて掴みかかり、天高くゲロンガを運び出すウルトラマン。遥か上空で放り投げ、ゲロンガに向けて手を十字に組んだ。そして十字の手から強力な破壊光線、アマツイカヅチを叩き込む…!!

大量の熱源を携えたゲロンガは…

 

 空を真っ赤に染めるような大爆発を起こし、消失する…。

 

 

 

 

御珠「久遠さん!」

 

緋真「光来くん…!」

 

 そうして人の姿へと還った御珠は、緋真の元に駆けつける…が

 

副官の女「やっと見つけたわ」

 

御珠「…!…貴方達は…」

 

突然の事態に緋真を庇うように前に出る御珠。

 

副官の女「説明は後…とにかくついてきて貰うわ?」

 

 

続く…。

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