黒いバンに揺られ何処かに連れて行かれる一行。たどり着いたのは、奥多摩湖畔に設営された、自衛隊の臨時拠点のようなテントで…
副官の女「貴方たちはこっちよ?」
発電所員とSSSSPメンバーは別々のテントに案内され、おずおずとパイプ椅子に腰掛ける。全員が座ったのを確認し、スーツの女性も向かい合うように座り…。
副官の女「さて…まずは突然こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい。貴方たちに危害を加えるつもりはないからまずは落ち着いて…私たちの話を聞いてほしいの。」
緊張しつつも話の出来そうな人物だと分かり、少しずつ平静を取り戻す一同…。
副官の女「私は涼香。小鳥遊涼香よ。さっき話した通り公安組織…それもちょっとスペシャルな団体に勤めているの。」
取手「公安…スペシャル…?」
本間「ま、まさか!?…宇宙人とコンタクトしたものを秘密裏に抹殺するという…ブラックメン!?」
小鳥遊「落ち着いてって言ったでしょう?市民に危害を加えることはないわ。でもブラックメン…あながち間違いでもないかしら」
本間「そ、それでは本当に宇宙人対策を…?」
小鳥遊「それだけじゃないわ?怪獣と宇宙人の存在をすでに認知している貴方達には今後色々協力してもらうかもしれないし、場所を移しましょうか。貴方たちお家も都内だったわよね?送りがてら…もう少し深いところまで見せてあげるわ。」
自衛隊の特殊車両に乗り換え、SSSSPと小鳥遊達は東京を目指す。そうして車両は新宿区某ホテルの裏口から地下道へ入っていき、地下鉄路線より深く…秘密裏に建造された基地施設へと入っていく。
本間「新宿地下世界!本当にあったのか…」
黒川「よく駅に秘密の出入り口があって…なんて都市伝説は聞いてたけど…あんなところに入り口があったんですねぇ〜」
一同はきょろきょろと長い通路を案内され「特殊作戦室」と札のついた大きな自動扉の前へ。
小鳥遊「ここで見たことは他言無用…誰にも話さないこと。約束できる?」
こくこくと頷く彼らを見て優しく微笑んだ小鳥遊…。
小鳥遊「んっ、よろしい…。」
自身の人差し指をセンサーにあてがうと、認証音が鳴りドアがスライドする。
御珠「これって…!」
本間「す、すごい!!」
そこには作戦室の名のごとく高さ、広さ共にかなりの空間が広がっており、中央に司令塔らしきデスクやオペレーション席。そこから一望できるように1段低くなった所に、司令塔を囲うように分割された3つの施設が並んでいる。
そんな光景に驚いているSSSSPメンバーの前に、小鳥遊に続いて2人の各組織の隊長がやってくる。
小鳥遊「向かって一番左が…宇宙人、宇宙飛来物の監視及び研究を担当するJ-AS。隊長は彼女、芽平リサ」
芽平「やあやあ。改めて、宇宙人研究担当の芽平だ。覚えておいてくれたまえ?」
小鳥遊と同乗していた制服の少女が、なんとJ-ASの隊長のようだ。目鼻立ちの整った顔に少しつんと立たせたショートヘア、口調も相まってボーイッシュに見える。そんな彼女に取手は…
取手「か、かわいい…!!」
井村「へぇ〜とりでんああいう子がタイプなんだぁ」
小鳥遊「続いて右側の施設…怪獣観測、迎撃担当の巨大生物及び特殊害獣対策本部、通称巨獣対。隊長は私。改めてよろしく。続いて…」
スラッとしたイケメンだが、何処か胡散臭い糸目の男が前に出てきて…
小鳥遊「最後に中央の施設が…亡霊や悪霊対処、国家の風水管理などを務める"陰陽公団"。そして彼がその団長、及びこれら3組織を統合した"護国作戦群"の総指揮官、蓮乗院 栄研。」
蓮乗院「よろしゅう、SSSSPの学生さんたち」
井村「え!この人結構イケメンじゃん…!」
黒川「でもぉ…ちょっと胡散臭くない?」
蓮乗院「お嬢さんたち〜?聞こえとるで?」
実在した機密組織とのコンタクトに興奮冷めやらぬ本間と取手。思いの外早く順応している井村と黒川に対し、未だ目的の見えない彼ら護国作戦群に警戒心を隠せない御珠と緋真…。
小鳥遊「…そうだったわね。なぜ一般の学生である貴方たちをここに呼んだか、それが重要な説明事項よね。」
そんな2人の雰囲気を察してか、小鳥遊が話を本題に戻す。
小鳥遊「貴方、光来御珠くんよね。少し調べさせてもらったわ?光来神社のお孫さん。」
御珠「は、はい」
小鳥遊「貴方たちの住む街、アオナ台に遺る伝説では、5000年前に妖怪タブラが現れ、巨人アマツビトが退治して以来…1000年に一度不吉なことが起こると言われているのよね。」
御珠「それは…マガツトシのことですね」
芽平「そう、君たちはそう呼んでいるね?一般的には、仏教における厄年のような統計学的風習と捉えられているわけだが…見てみたまえ?」
芽平が司令室の大型モニターを指さすと、太陽系の再現CGが映し出される。映像が次第に遠景となり、銀河系の一部が映し出され…
本間「むむ!?…この黒い影は…」
映像では、太陽系が次第に黒く星の光が見えない宙域へと飲み込まれていく。
芽平「これが、マガツトシの科学的な正体だ。我々はアンバランスゾーンと呼んでいる。」
御珠「アンバランスゾーン…?」
芽平「そう、太陽系の公転軌道上に存在する重力波やエネルギーの流れが異様に乱れる魔の宙域さ。宇宙規模のバミューダトライアングルと言ってもいい。きっと先人たちは、この現象を不吉なことが起こる1年…マガツトシとして後世に遺したのだろう」
蓮乗院「早い話、妖怪、怪獣、宇宙人やらがえらい出やすい年言うわけや」
小鳥遊「だから私たちはアンバランスゾーンに接近するに連れ増加傾向にある怪事件を、市民の目に触れる前に極秘に解決してきた…。ただ、マガツトシ本番の怪現象発生率は私たちの予想を遥かに超えていたのよ…。
すでに、貴方たちのように怪現象を目撃してしまった人も大勢いるの。」
蓮乗院「どっかの誰かさんは映像までネット公開してもうたしなぁ…」
当てつけにも聞こえる蓮乗院の言葉にギクリと息を呑むSSSSP一同…。
蓮乗院「ま、そんなんええ。せっかくやし僕らも人手欲しくてなぁ。目撃者には臨時の民間協力職員になってくれへんかと頼んでんねん」
本間「民間協力…!それって!」
小鳥遊「もう全国区でUMAや幽霊、宇宙人の目撃情報が多発してる…。私たちも通報や情報から感知することはできても、場所や状況によっては大々的に動けない。だから貴方達には、現地に行っての情報収集や事実確認を行って欲しいの」
本間「おおおおお!!!ついにSSSSPが学校はおろか政府公認組織に!!やります!やらせていただきましょう…!!」
蓮乗院「ほんまに?いやぁありがたいわぁ」
井村「おぉー!なんか本格的!!」
仰々しく大きなジェスチャーと共に硬く蓮乗院と握手を交わす本間。メンバーたちも状況を本当に理解しているのかいないのか…思いの外乗り気の様子で頭を抱える御珠…。しかし
緋真「…っ」
御珠「久遠さん…っ」
御珠の目をまっすぐ見つめて頷く緋真。彼女としても超常現象を信じてくれる公的機関の後ろ盾がつくというのは、今後のフーファイター調査を進めていく上で重要と考えたのだろう。自分には力がある、いざとなれば戦う事ができる…そんな思いが、御珠の軽率に乗るべきではないという引き止めの言葉を抑え込んだ…。
芽平「まあ安心したまえ?お願いするのはあくまでも現調…。実戦担当は私たちだし、事が起これば必ず守る。安心して…」
芽平の話を遮るように、室内にブザー音が響く。
小鳥遊「何事!」
『浦賀水道にて船舶の座礁を確認!巨大生物との衝突と報告あり!』
『こちら巨獣対潜水艦"深鯨"!ソナーにて生物の存在を確認できません。質量探知機に切り替える!……全長約50メートル…速度50ノット以上!遊泳方法は両生類に類似、クジラではない!…映像、モニターに送ります!』
暇なくなだれ込んでくる情報…司令室のモニターにて映し出された映像は、ぼんやりと魚影のように映る巨大な魚のような、イグアナのような…
小鳥遊「シーサーペントタイプね…」
本間「シーサーペント…!実在したのかぁ!」
シーサーペント。古くから存在が囁かれていた大きな海蛇のような海獣UMA。広義として、海で撮影されたネッシーのような未確認生物の多くがこれにカテゴライズされる場合もある。
『防衛省より目標の国際共通コードネームが発表されました…!以後目標を、大海魔ボクラグと呼称する!』
蓮乗院「クトゥルフ神話に出てきよるトカゲの怪物やな…あのシルエットにはぴったりなネーミングや」
『深鯨より小鳥遊隊長へ、ボクラグはこのままだと三浦半島に上陸するコースを進行中、進路変更を試みます!フォノンメーザーの使用許可を!』
小鳥遊「よし…フォノンメーザー出力を40%に制限、威嚇攻撃を許可する!」
『了解!フォノンメーザー出力40%…発射!!…命中を確認!!』
しばしの静寂が続き…息を呑む一同
『…目標の行動に変化無し!尚も三浦半島沖に向け進行中!』
小鳥遊「進路変更は無理ね…駆除を許可!フォノンメーザーを最大出力、対生物魚雷使用も解禁する!!」
『了解!ボクラグを攻撃対象に認定、駆除します!』
その後本格的な攻撃が開始され、モニターに映る魚影のようなボクラグの身体が見る見る削られていく…しかし
井村「な、なんか治ってきてない!?」
小鳥遊「再生している…っ」
『ボクラグ、損傷箇所を瞬時に復元しています!こちらの攻撃をまるで受け付けません…!』
小鳥遊「流石はトカゲもどき…異様な再生能力持ちだと言うの…」
芽平「いや…これを見たまえ」
芽平が端末を手にやってくる。
芽平「ボクラグの体組織は多分に海水を含んでいる、塩化カリウムと水の塊と言ってもいい…だから質量センサーで薄ぼんやりとしか感知できないわけだ」
小鳥遊「身体のほとんどが海水と混ざっていると言うの…!?」
芽平「いかにも。よって物理的な攻撃はほとんど無意味と言っても過言ではないねぇ」
小鳥遊「なんてこと……かんがえられる対処法は?」
芽平「高熱を与えて体内の水分を気体に昇華させることで、生物としての形を保てなくする…という手はあるが…水中では海水に邪魔されるだろうし、陸上では…付近一体を水蒸気爆発で更地にする覚悟が必要だろうね」
小鳥遊「…っ、今から陸に誘導しても…市民避難の説明や時間を考えたら日が暮れる…!」
芽平「もしくは電気分解させるかだが…これも膨大な電力が必要だからねぇ…たとえば怪獣捕獲用のショックアンカー程度では、足止めくらいにしかならないだろう」
御珠「…!」
何かをひらめいた御珠は、コソコソと司令室を抜けて廊下へ…
芽平「どこへ行くんだね?」
御珠「うわーーーッ!?」
出たはずなのに、さっきまで小鳥遊と会話していたはずの芽平がすぐ後ろに立っていて…
御珠「芽平さん…い、いつの間に…?」
芽平「ん、君が突然出ていくのでどうしたのかな?とね」
御珠「と、トイレに…行こうかなぁなんて…」
ハハハと乾いた笑いを浮かべて、我ながら苦しいと感じる言い訳…
芽平「ぁぁ、お手洗いはあちらだよ?」
御珠「!…すみませんありがとうございます!」
しかし思いの外信じて貰えたのか、慌ててそちらへかけて行く御珠…。
映像では、ついに港に上陸したボクラグが三浦を侵攻し始めていた…
小鳥遊「とにかく陸上部隊の展開と市民の避難を急いで!!最悪の場合水蒸気爆発作戦発動を念頭に置いて、窒素爆弾ハゲタカの用意も…」
アマツビト「シェァアー!」
ボクラグ「グォッグォッ…グェェア!?」
本間「きたぁぁー!!」
小鳥遊「ウルトラマン…来たのね」
ボクラグの脳天にウルトラマンの急降下キックが叩き込まれる。相当の威力で地面に叩きつけられたボクラグは大きく頭を損傷するも…
アマツビト「…!」
ボクラグ「グォ!グォッグォッ!」
当然のように完全に修復してみせ、巨体でウルトラマンに掴みかかる
アマツビト「グ…!シュァ…!」
ボクラグ「グォッグォッ!!」
アマツビト「デァア!?グッ…!」
その上、ハサミのような手先からは電撃を放ちウルトラマンを苦しめる。
小鳥遊「電撃!?ボクラグには毒ではないの…?」
芽平「おそらくだが…あのハサミ状の手先…体組織の中であそこに鉄分を集中させているのだろう。生物は活動時に微弱な生体電気を発している。それも怪獣となれば相当なエネルギーになるだろう?
ボクラグは、そうして発生した生体電気で自身の身体が電気分解しないよう、伝導体である手先から定期的に逃がしているんだ。逆に言えば、それほどまでにボクラグは電気が体内に蓄積されるのを避けている…。」
小鳥遊「…ッ!深鯨!艦載の演武にショックアンカーを装備して!ウルトラマンを援護するわよ!」
なおも電撃を放ち、ウルトラマンを離そうとしないボクラグ…そこに
ボクラグ「グェ!?…グォ…グォ!!」
突然の痛みに悶えるボクラグ。ウルトラマンはすかさず距離を取る。背後から飛んできた巨獣対特務戦闘機"演武"から発せられたショックアンカーにより、局所的な電気分解を起こされ隙が生まれたのだ
アマツビト「…!」
電撃を放つボクラグに効果を疑問視していたウルトラマンも、ボクラグが電気分解で悶える姿を目の当たりにし飛び上がり、空中で天高く手を掲げエネルギーを込める。次第に黒い雲が空を覆い、稲光が起こる…
アマツビト「ハァァァア…!!!」
もう一度力を込めると、雲からは何発もの落雷が降り注ぎ、ウルトラマンに降り注ぐ。避雷針のようにエネルギーを受けきったウルトラマン。
アマツビト「…っ!」
演武パイロット「雷を体内に蓄積させている…!そういうことか…よし!」
演武に頷いて見せ、合図を送り撤退させる。そして…
アマツビト「シェァア!!!」
そしてすかさず両手を前に突き出し、1回で15億ジュールとも言われる落雷数十発分の電撃を、一気にボクラグに叩き込んだ
ボクラグ「…!!!」
多量の電撃を浴びたボクラグの身体は電気分解を起こし、体組織のほとんどが水素ガス、塩素ガスとなって空気中に昇華してしまう。
残ったのは結晶とかした砂のような塊で、とどめに…
アマツビト「サァ!!」
アマツイカヅチによって、完全に消失する。
小鳥遊「ウルトラマン…やはり私たちの味方をしているの…?」
芽平「おまけに我々に伝わるジェスチャーやコンタクト方法を知っている…と。」
蓮乗院「ほんなら今後とも、彼が僕らの味方で居てくれることを…願うしかあらへんなぁ」
それから数日後、SSSSPの仮部室には小さく政府公認!と新しい吹き出しが張り付けられ、護国作戦群からの依頼を心待ちにしていた。
本間「よーし!これにて新生SSSSP始動だ!」
井村「張り切っていこーー!ウェーーイ!」
黒川「うぇ〜いっ」
狭い部室でうるさくはしゃいでいた所、ドアがノックされ全員黙りこくる…。普段来客などはなく、騒ぎすぎて先生が苦情でもいいに来たのかと全員がうっすら考えたのだ。
本間「ど、どーぞー…?」
本間が言うと、ゆっくりとドアが開く
取手「えぇ!?」
御珠「どうして…?」
そこにいたのは、それまでの黒いセーラー服ではなくここ、アオナ台高校の制服を身に纏った芽平であった。
芽平「やぁ、久方ぶりだねぇ。早速だが、J-ASより依頼を申し込みたいのだが…いいかね?」
続く。