ウルトラマン外伝-アマツビト-   作:タソガレン

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第6話 -覚醒 ウルトラマン-

 

 

御珠「……ぅ…ぐっ…」

 

 あれからどれほどの時間が経ったろう。真っ暗な世界でうなされている御珠…。

 

『…マ…ミタマ…御珠…』

 

遠くから

 

 遠くから誰かの声がする。目を開いて声を方を見れば、ぼんやりと遥か視界の果てに、小さな点のような何かが見える…

 

御珠「君が…君が俺を呼んでるの…?」

 

『そうだ…私…は…』

 

御珠「待って!!」

 

 声の主に手を伸ばすが、先に進むことは出来ず…ひたすら暗い中、世界がぐにゃりと歪んでいくのが分かる。気付けば自分の身体が落ちていく感覚だけが残り…そして

 

御珠「待って!…え?」

 

天明「む、目が覚めたか御珠」

 

御珠「天明…?」

 

 さっきのは夢だったのか…気がつけば自室の布団の上、ご近所の天明と…

 

芽平「いや、ずいぶんうなされていたようだが…大丈夫かね?」

 

御珠「芽平さん!?」

 

 この前のようにアオナ台制服姿の芽平が立っているのだった。

 

天明「彼女に礼を言うといい。お前が放課後廊下で倒れているのを見つけて、介助してくれたのは芽平女史だ。」

 

御珠「…ぇ、あ…」

 

 おかしい…。自分は確かに怪獣との戦いに敗れ、意識を失ったはず…しかし天明に言わせれば、御珠は校内で意識を失っていたという…寝起きということもあり、思考がまとまらない。

 

天明「ま、大事無ければそれでいい。母上殿を呼んでこよう。」

 

 天明が部屋を出ていくと、相変わらずしたり顔にも似た微笑で見つめてくる芽平に目が行く。わけが分からない状態が続く今、事情を聞けそうなのは彼女しかいない…

 

御珠「あの…どうしてこうなったんですか?」

 

芽平「どうしてって?」

 

御珠「いや…だって…おかしいですよ!…だって俺…ぁ…」

 

 言葉が続かない。この先に続く言葉は、俺はウルトラマンに変身して負けたはず…どうして校内に…。となるわけだが… 

 

芽平「おかしい?私はただ、貧血で倒れた君をここまで運んできただけさ?」

 

御珠「……っ」 

 

 

 危うく自分からウルトラマンであると自白しかけた所でハッとする。

 作戦群の中でも、芽平はどこか油断ならない。バルタン星人事案の際にはちゃんと助けてくれたし、悪人で無いことは確か…だが、不可解な点が多すぎる。

 宇宙人探知機などとんでもな発明をやってのける彼女のことだ。人々の意識を曲げ、御珠を校内で倒れたことに出来る不思議マシンでも持っているのだろうとシンプルな推理を立てることは出来ても、その目的や理由までははっきり見えてこない。

 …何より、あの戦場で御珠を拾ったというのなら、正体までバレている…?研究者気質の芽平のことだ、厄介な質問攻めにあうのでは…?等とほんの数秒の無音の間に思考を巡らせていると…

 

母「御珠!?…大丈夫だった?…もぅ〜心配かけさせて…!リサちゃんもごめんなさいね〜もっと早く仕事上がれればよかったんだけど…重かったでしょ〜」

 

芽平「いえいえ、御珠君は大切な友達ですからっ」

 

母「天明くんもね〜…ほんとにいつもお世話になっちゃって…!」

 

天明「滅相もない、俺も御珠や母上殿にはお世話になっております故…!」

 

 慌ただしい様子の母が天明に連れられて駆けつける。そんないつもと変わらぬ母の様子に、場の緊張感が緩んでいく。結局質問攻めにあうこともなく、芽平と天明は母からお菓子を受け取って帰っていった。

 

御珠「はぁ…」

 

 病み上がりのような気だるい身体を布団に横たえる。1人になると次第に思考がクリアになっていき、今自分が解決すべき課題が次々に思い出される。

 あの怪獣との決着…今の自分に勝てるのか、緋真の容態…弱虫の自分に、彼女にまた向き合うことが出来るのか……

 

『ミタマ…』

 

御珠「…!」

 

 また、あの声がした気がした。気付けばパジャマの上に上着を一枚羽織り、玄関へ…

 

彦命「おや御珠?もう大丈夫かの?」

 

御珠「…ばあちゃん…俺、奥の院に行きたい。」

 

彦命「……何をしにだい?」

 

御珠「…アマツビト様に、お祈りしたいことがあるんだ。」

 

彦命「……そうかい、そういうことならええじゃろ。参道をお清めしてやろ」

 

御珠「…ありがとう、ばあちゃん」

 

 光来神社本宮に供えられたアマツビトの依代は鏡。これはあくまでも神を下ろした器とされ、アマツビト本来の依代は…

 

御珠「…アマツビト様…」

 

 奥の院の祭壇、縄文時代からの遺物…アマツビト遮光器土偶である。

 

御珠「アマツビト様…聞こえますか?俺を呼んでいたのは…貴方なんですか……?」

 

 暗い本殿の中…祭壇の土偶を見上げる御珠……。

 

『だ…ミタ…』

 

御珠「…!!」

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 その頃、緋真は暗い部屋で布団に潜り、1人スマホを眺めていた。画面には何でもないSNSの広告やインフルエンサーの投稿がスクロールされている。父失踪の真実と、より深まった謎…。多感な時期の1人の少女が背負うにはあまりにも重すぎる状況…なるべく何も考えない様にこうして時間を潰して……

 

緋真母「緋真ちゃん?起きてる?」

 

 不意にノック音がして、ドア越しに母の声がした。今は答えられそうにない…このまま寝たフリを…

 

緋真母「部活のお友達が来てるんだけれど〜…」

 

緋真「え…!?…」

 

 突然の訪問者に思わず返事が漏れる。

 

井村「やほー、大丈夫そ?」

 

黒川「はいこれ差し入れ〜」

 

緋真「ぁ…どうも」

 

 やってきたのは井村と黒川。SSSSPメンバーで話し合い、大人数で押しかけるのもどうかと考え、女子2名が代表で来たのだという。見て見れば差し入れは、緋真が気に入っているメーカーのコーヒー牛乳と、いちご大福…。

 

緋真「これ…」

 

井村「うん!ひさちこれ好きだったなってさ?」

 

 正直なところ、自分はSSSSPメンバーに特別好かれているとは思っていなかった。基本的には1人でいることが多く、活動中もさして発言が多いわけでもない。そんな自分が、食の好みまで知られてるくらいに関心を持たれているというのは…どこか気恥ずかしくもあり…

 

緋真「ごめん…気遣ってもらっちゃって…」 

 

黒川「も〜緋真ちゃん?」

 

井村「こーゆーときはっ」

 

緋真「っ……ありがとうっ…」

 

 優しげに微笑みかけてくる2人に、緋真の表情もほころぶ。

 

緋真「……」

 

 2人を見送った後は、布団に入っているのも不健康だととりあえずベッドを出て、机に向かい腰掛ける。こうなれば気になるのは御珠のことだった。井村たちからは早退したと聞いている…

 先日、八つ当たりするように泣きじゃくってしまった…いくら協力してくれると言ったって、あんなに取り乱したところを見せたら幻滅されたろう…まずは謝らなければ…

 スマホを手に取りLINEを開くも、指の動きがおぼつかない。もし出てくれなかったら?嫌われてたら…そんな思いが緋真を躊躇させていた…。

 

緋真「え!?…ぁっ」

 

 そんな風に画面とにらめっこを続けて1分程だろうか、画面が切り替わり着信中の表示…。

 

緋真「光来くん…っ」

 

 かけてきたのは御珠であった。友達登録してすぐの、漢字も分からず「みからいくん」と書き込んだ名前が、画面でチカチカと主張してくる。

 一瞬出るか迷ったものの、ここを逃せば自分からかけ直す勇気もない…意を決して、電話に出ることに…

 

緋真「も、もしもし…久遠です」

 

御珠「あ!久遠さん…よかった…出てくれた」

 

 電話の向こうからは、どこか安堵した様子の御珠の声…まずは謝らなければ…

 

緋真「あ、あの…」

 

御珠「っ…この前はごめん!」

 

緋真「!」

 

 先に謝られてしまった。

 

御珠「俺…仲間だって言ったのに…何も出来なくて…その…」

 

緋真「ま、待って…!…あれはほんと…あたしも取り乱しちゃったっていうか…謝るのはあたしの方だから…」

 

御珠「そんな…!俺は…何も…」

 

緋真「…今から…ちょっと会えない?」

 

ーーーーーー

 

 緋真の自宅からバスで20分ほど…そう遠くない場所にある光来神社。

 

緋真「突然呼び出しちゃって…ほんとごめん。さっき…黒川さんたちがお見舞い来てくれてさ、調子悪いって聞いてたのに…どうしても顔見て話したくて」

 

御珠「全然大丈夫だよ…!むしろ来てもらっちゃって…」

 

緋真「…ありがと、あたし…思ってたより皆に心配されてたんだなって」

 

御珠「…?」

 

緋真「黒川さんも、井村さんもさ、思ってたよりずっとあたしのこと気にかけてくれてたみたいだし…もっと、皆のこと信頼していいのかなって思えたんだ…」

 

御珠「…そうだよ、前にも言ったでしょ?俺たち皆、突っ走ってた時の久遠さんを心配してるって」

 

緋真「…っ」

 

御珠「俺、お父さんの件はSSSSPの皆に話してもいいと思うんだ、黒川さんや井村さんは優しいし大丈夫だと思う。取手くんや本間先輩も…普段はうるさいけどさ?…きっと、まじめに聞いてくれると思うんだ。」

 

緋真「…!」

 

2人の会話を引き裂くように造成地を突き破り、アオナ台にクローンゴルメデが現れてしまう。

 

クローンゴルメデ「グオォオオッ!!ゴォオ!!」

 

緋真「怪獣…!」

 

御珠「勇気を出して秘密を教えてくれた久遠さんに…俺も、1つ大事な秘密を教える…っ。」

 

緋真「…っ!」

 

 火球を吐き出し暴れるクローンゴルメデ。2人に向かってその1つが飛んでくる。御珠は冷静にアマツヒの勾玉を突き出し、目の前で火球が消失する…。

 

緋真「光来くん…!」

 

御珠「俺は…俺は…!」

 

 

ーーーーーー

 遡ること数時間前、アマツビト土偶の祭壇にやってきた御珠の脳内に声が響き、真っ白な世界で巨人と邂逅した。

 

御珠「その姿…ウルトラマン…!いや、アマツビト様…?」

 

『そうだ、この星では、私はアマツビトと呼ばれている。今から1万年前、この星の危機を救うためやってきた。』

 

御珠「やっぱりアマツビト様なんですね…!1万年…ってことは、伝説よりずっと前から…」

 

『1万年前…私は君たち地球人と共に厄災を鎮めた。しかしそれ以降…千年周期でやってくるアンバランスゾーン通過の度、私の力の一部を継承者たちに託してきたのだ。』

 

御珠「じゃあ…俺の力も」

 

『そうだ、復活したタブラから少女を守った君の勇気に感銘を受け、力を託したのだ。だが…此度のアンバランスゾーンは異質だ。やってくる怪獣たちの力や頻度も過去の比ではない…。君に託した力の片鱗だけで戦い続ければ、君の肉体と精神に甚大なダメージが出てしまう』

 

御珠「…!」

 

 御珠にも身に覚えがあった。元よりさほど運動が得意なわけでもなく、そんな運動神経は戦闘時にも反映される。

 結果としてなるべく敵の間合いに入ることを避け、光線技に頼る戦法を取らざるを得ないでいた。その分エネルギー消費も激しく、ついに前回はガス欠を起こしてしまったわけだ。

 

『完全一体化を果たせばこの問題は解決する。だが…それは同時に…君をさらなる戦いに巻き込んでしまうこととなる。私はそれを望んではいない。』 

 

御珠「…でも、誰かがやらないと、たくさんの人が傷ついてしまうんでしょ…だったら…俺は…」

 

ーーーーーー

御珠「俺は…!守りたいんだ!!」

 

 緋真の前でまばゆい光が煌めいて、巨大な肉体を形成していく…。

 

緋真「ウルトラマン…光来くん…!」  

 

クローンゴルメデ「ガウウゥ…!!」

 

アマツビト「……シェァア!!」

 

 身長45m、体重3万8千トン…。銀色の瞳に、銀のボディ、そして今までに無かった、人の血潮を彷彿とさせる紅いライン…。

 ここに、アマツビトと御珠は、完全な一体化を果たしたのだ。

 

クローンゴルメデ「ガウウゥ!!!」

 

いつぞやの相手と気づいたクローンゴルメデは、今度こそ決着をつけようと息巻いて突進してくる。

 

アマツビト「シャッ!!」

 

 それを側転でかわし、尻尾を掴み上げ…

 

クローンゴルメデ「…!!」

 

アマツビト「シェァァ!!」 

 

 市街地から引き離すように、クローンゴルメデを大きく放り投げる。

 

クローンゴルメデ「ガウウゥ…!?…ガァァ!!」

 

 一気に距離を取られたクローンゴルメデは火球を放って牽制するが、ウルトラマンは飛び上がり、地上に被害が出ないように攻撃をかわし…

 

アマツビト「シャァァアッ!!」

 

クローンゴルメデ「グォォア…!!?」

 

 クローンゴルメデの真上にやってきたアマツビトは急降下、そのまま脳天に向けキックを叩き込む…!

 

クローンゴルメデ「グルルルル……」

 

アマツビト「…!」

 

 大ダメージを受けグロッキー状態のクローンゴルメデ…。しかしウルトラマンの研ぎ澄まされた感覚には、遺伝子異常で悶え苦しむ魂の悲鳴を聞く。

 

アマツビト「ハッ!…シュァァァ…」

 

 ウルトラマンはその魂を鎮めるため、右手で大きな円を描き…

 

アマツビト「シェア!!」

 

 腕を前に突き出すと、虹色の粒子が放たれクローンゴルメデを温かく包んでいく。

 

クローンゴルメデ「…グォォォオ………」

 

 クローンゴルメデは光に包まれて、光の粒子と共に天に昇っていく…。

 

アマツビト「…シェア!!」

 

緋真「…光来くん…っ!」

 

 緋真の方へ深く頷いて、戦場を去っていくウルトラマン…。

 

 

緋真「光来くんがウルトラマンだったんだね…」

 

御珠「…うんっ、アマツビト様から力をもらったってだけだけどさ…っ」

 

緋真「あの時も…あたしを助けてくれたんだ」

 

御珠「そんなっ、自分の出来ることをしただけだよ…」

 

緋真「…ありがと、御珠くん…」

 

御珠「…っ!」 

 

緋真「2人だけの秘密…出来ちゃったね?」

 

御珠「……うん、でも…」

 

緋真「?」

 

御珠「もうちょっとだけ勇気がでたら…皆にも」

 

緋真「うん…っ」

 

 

 平和になった夜空、明かりの少ない境内からは、星がよく見えた。

 

 

続く

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