視線を感じる。
最近、あこちゃんといる時に、
そう気付くことが増えた。
「どーしたの?ちーちゃん?」
「あこちゃん…最近、変な人に話しかけられたりしない?」
「ううん?ないけど?」
「良かった」
あこちゃんは、気付いていないけど、
気のせいかな…?
「誰?」
と、後ろを振り向いても、
人がいなかった。
すぐさま振り返れば、隠れる音。
人影は確かにあった。二つも。
気のせいじゃなかった…
確かあれは…
「ちーちゃん?」
「千尋の勘違いかも…なんでもないよ」
「ほんとにー?
なんか、今日、ちーちゃん、変だよ?」
「もしかしたら、お腹が空いているのかも…」
「そっか!じゃあ、一緒に何か食べる?
クレープとか!あこもお腹空いたから!」
「うん、行こう。
千尋、イチゴのクレープが食べたい」
ストーカーはダメだよね?
あこちゃんを狙っているなら、千尋が許さないし、
あこちゃんの隣にいるのは、千尋の特権だもん。
もしも、あこちゃんに危害を加えるなら、
誰であっても、絶対に許さないから。
と、千尋は、そう胸に秘めるのだった。
「おーい?ちーちゃん?」
「あっ、あこちゃん!」
後日、羽丘女子学園 高等部の屋上にて…
千尋は、ある二人の女の子を呼び出した。
「何?私たちに聞きたい事って…」
「まさか…!?」
「単刀直入に言うね、
あこちゃんのストーカーって、貴女達?」
「ス、ストーカー!?
わ、私達は…あこちゃんと仲良くなりたいだけで…」
「それをストーカーって、言うの。知らなかった?」
「…」
「…」
どうやら、この二人で間違い無い。
クラスメイトの二人の女の子。
一年生の頃から、あこちゃんと話しているのを、
見たことがある。
二人とも、あこちゃんのファンだってことは、
知っているけど、でも、あこちゃんは、千尋のあこちゃんだから、
誰にも渡さないよ?
「もしかして、あこちゃんの盗撮をしているの?」
「そんな事、していない…」
「えー?千尋、知っているよ?
この、あこちゃんのプロマイド写真、
貴女の机の中に入っていたよ?」
「…!」
「で、でも!
あこちゃんは、みんなのあこちゃんだから、
東雲さんに、独占されても、私達…困るんだけどな…」
「あこちゃんと仲良くなりたいだけだし!」
「東雲さんには通用しないよ…」
東雲千尋にとって、
宇田川あこが、可愛くて、カッコよくて、
素敵な女の子であることは、東雲千尋が良く知っている。
東雲千尋にとって、宇田川あこは、一番大切で必要な存在である。
そして、もう一人の女の子が、東雲千尋に対して、
こう言い放つのだった。
「そもそも、なんで、東雲さんが、
あこちゃんのことで、そんなに怒っているの?
あこちゃんは、貴女の為だけに、存在する訳じゃないから!」
「わからないの?
あこちゃんは、千尋のあこちゃんだよ?」
他のクラスメイトも反論した。
「宇田川あこは、貴女だけの人間じゃない!」
千尋の瞳が、病み堕ちしてしまう。
この瞳は…漆黒に染まって、瞳のハイライトが消えて、
瞳の奥がハートになっていた。
まるで、あこちゃんが千尋のあこちゃんだと、
千尋自身が、確信するのだった…
「ううん、違うよ。
あこちゃんの隣は、千尋だし、
あこちゃんは、千尋の一番なの。
千尋はあこちゃんが大好きで、
千尋の全部を受け止めて、受け入れてくれて…
あこちゃんと千尋はね、運命なの。
千尋が不安な時でも、あこちゃんが、
いつでも隣にいてくれる。
あこちゃんを抱きしめたら、
嫌なことや悪いことが、全部、忘れてしまうの。
千尋はね、あこちゃんと結婚して、
幸せな家庭を築くの、だから、邪魔しないで?」
あこちゃんの愛を語るたびに、
千尋の中で、あこちゃんが一番大事だと、
そう言い放った。
そうだよね?
あこちゃんへの愛だった、誰にも負けないし、勝てる訳ないもん。
あこちゃんは、千尋のあこちゃんだから…
例え相手が、友希那さんでも燐子さんでも、
巴さんでも、あこちゃんのことは、渡さないよ?
「で、でも、私だって、あこちゃんと友達になりたいし!仲良くなりたい!」
「わ、私だって!」
「それは、いいけど、友達や親友以上、恋人未満にしてね?そうしないと…」
「わ、わかっているって!」
「う、うんっ!」
千尋は、その場を立ち去った。
二人の女の子は、しばらく、怯えながらも、帰路に着くのだった。