千尋は軽度の発達障害で、自閉症スペクトラムを持っている。
だから人になかなか心を開けない。
極度の人見知りで、人付き合いが非常に苦手。
幼馴染で、きっと千尋を一番理解してくれていると思う、
宇田川あこちゃん以外の人とは、心を開くのが難しい。
─時は遡ること二週間前。あこちゃんに招待されたことだ。
「いい席とったから、ち-ちゃんもRoseliaを応援して!」
ライブのチケットを渡された。
一人でライブ行くのは唯一の光である、
あこちゃんのお願いでも、人の視線に敏感で、
人を見ることや見られること、人に触れられる、
果ては人の体温を感じることにも強い抵抗を感じる、
千尋には少しハードルが高かった。
メジャーデビューしたことで、さらにRoseliaのファンが増え、
必然的に人口密度も高くなった。
Roseliaの魅力をたくさんの人に知ってもらえて嬉しい反面、
この人だかりは怖いなあ…。でも、声出して、
あこちゃんに声援を届けないと!
ライブが始まった瞬間、みんなが歓声を上げた。
千尋も声出していこう。
ここで勇気を振り絞らなきゃいつ出すんだ。
「Roselia頑張れー!あこちゃん眩しいよー!」
あらん限りの声を張り上げ、
ほかの観客との距離感に対する恐怖もなぎ払い、
精一杯声を出して応援する。千尋だって、Roseliaのファンだもん。
あこちゃんのファンだもん。
その気持ちは一緒だもん。怖さなんかに負けてたまるか!
ライブが終わって、控え室にこっそりお邪魔した。
「ちーちゃん!視線合ったよね?応援バッチリ届いてたよ!」
「嬉しいな。今日も素敵だった」
すると、スッと誰かが寄ってきた。Roseliaのボーカル、
湊友希那さんが千尋に話しかけてきた。
ガチガチに固まりながらも「お疲れ様…」と頭を下げた。
「あこが絶賛している、
東雲千尋さんはあなたのことね。応援ありがとう」
「あこも、凄いって思います!
だって、ちーちゃんと、蘭さんと友希那さんって、
羽丘三大歌姫って、言われているから、
もう、身近に、こんなに凄い人がいて、
あこも、嬉しい!」
あこは、ぴょんぴょんとその場を跳ねます。
「ありがとう。あこちゃん、千尋も、とっても嬉しい」
「千尋、あなたの歌声は、少し粗削りだけど、
でも、歌の才能は、間違いなく本物よ」
「友希那さん…」
「聖歌隊で、培ってきた、その経験、
これからも、生かしてちょうだい。
そして、開花させるのよ」
「ちーちゃんは、天使の歌姫って、
言われているからね!」
「うん、千尋、頑張る」
「聖歌隊で培ってきた、その経験、
才能に生かしてちょうだい。
そして、才能を開花させるのよ」
「頑張れ!ちーちゃん!
後、友希那さんは、素直じゃないな…
でも、ちーちゃんは、あこの自慢の幼馴染ですから!」
やっぱり、あこちゃんは、特別に輝く存在。
優しくて、素敵な世界一のドラマーです。