それは、あこと千尋のデートの帰りの時だった。
「東雲さーん!久しぶり~!」
「行こ、あこちゃん」
「えっ?」
「千尋をイジメていた奴だから」
「小学生の時の!」
「よく、覚えているね…逆に感心したわ。
どう?羽丘女子学園での、
お嬢様ライフは?さぞかし、楽しそうね」
「ちーちゃんに、何の用?」
と、あこは、小学生時代、
千尋をイジメていた、溝端という、女の子を睨む。
「ちーちゃんに、嫌がらせしたら、あこが、許さないから!」
「ふーん、恋人ごっこは、続いているようね…」
「言わないで」
「は?」
「これ以上、あこちゃんの悪口言ったら、
息の根を止めて、アンタを地獄に堕とす」
と、千尋をイジメていた子を脅迫。
千尋の瞳は、ドス黒い瞳をしていた。
「こわっ、それに、気持ち悪」
「いこ、あこちゃん」
「そーだね、ちーちゃん」
二人は、この場を後にする…
東雲千尋は、軽度の発達・精神障がいを持っており、
さらには、自閉症を持っていた。
生まれつきの障がいと、その美しい容姿と、その天使の歌声から、
あこ以外のクラスメイトに、イジメられていた。
それを、宇田川あこは、ずっと、守って来た。
あこは、思うのだった。障がいがあるからって差別したり、
容姿が美しいからといって嫌がらせをしたり、
歌が上手だからという理由で嫉妬するのは、
間違いだと、思っている。
(ちーちゃんは、特別そうに見えて、普通でもない。
唯一無二の存在で、あこのことを一番に思ってくれる恋人!)
あこにとって、千尋は、守らないといけない存在。
あこがナイトとして守るなら、
千尋はプリンセスとして守られる存在。
あこは、思った。
これから、ずっと、何としても、
千尋を守りたい。ちーちゃんを守りたい。その一心だった。
(ちーちゃんは、いつも、いつも、あこのことを、
思ってくれるけど…逆に思いすぎっていうか…
でも、ここまで、あこのこと、思ってくれる人って、
きっと、世界中、どこを探しても、ちーちゃんだけだよ!)
と、あこは、確信した。
一方、千尋は…悪夢にうなされた。
(千尋ちゃんは、顔は良いし、スタイルも良いし、
歌も上手!アイドルじゃん…)
(容姿や見た目や歌声に優れていて、
おまけに、発達・精神障がいって、
付き合いずらいな…)
(何て言うか、千尋ちゃん、人間じゃないよね?)
(人間じゃなくて、天使?)
(そうそう、千尋ちゃんは、人間じゃなくて、天使だよ。
彼女の前世は、間違いなく天使。
だって、悪行を起こすように見えねーし)
(だとしたら、虫を殺したことねーとか?
もしくは…悪行を一切、してないか、知らねーとか?)
(心がキレイな程、逆にムカつく。
千尋ちゃんは、人間じゃないよ。見た目が可憐な天使サマ。
心は残酷な悪魔だよ)
千尋は、目を覚ました。そして、泣いた。千尋が囚われのプリンセスなら、
あこは、それを助けるナイトかプリンス。
「うぅ…辛いよ…あこちゃん…ギュッってしたいよ…
助けてよ…あこちゃん…」
しばらく泣いた後…
「この世は、おかしくで残酷で、哀しい…
汚れと醜さ、憎しみに満ち溢れている。だからこそ…千尋は…」
(ようやく、感じ取ったか)
「!?」
(私は天使、東雲千尋と契約している天使です)
「へっ?」
(貴女は、いずれ、天国に行き、天使としての、使命を果たすために、
全ての悪人を、この世界から抹消しなければなりません)
「フフッ…そうだよね?
千尋をイジメた奴等は、みーんな、地獄に堕ちればいい。
千尋が神様の代わりに、天罰を下してやるんだから…」
と、千尋の瞳は、再びドス黒く悪に染まっていた。
星状の瞳には、悪の色に染まっていた。
千尋は、元より、心の中は、天使に乗っ取られており、
善行しか出来ないようにしている。
故に、虫の一匹も殺すことも、許されないし、出来ない。
肉や魚や卵を食べたことが無い。
そう、彼女は、悪行を起こさないように、
天使が無理矢理コントロールされているのであった。
故に、悪の心や普通の心を一切持っていないのだ。
しかし、この時から、千尋は、悪の心を持ちつつあった。
天使によって、新たな感情を植え付けられる。
東雲千尋の悪は、宇田川あこをわがものにする為のみに、
植え付けられた悪である。