迷子の歌姫は精神障がい者と惹かれあう 作:アッシュクフォルダー
有希の部屋に真希がやって来た。
「有希お姉ちゃん…」
「どうかしましたか?」
「怖い」
「私に人生相談しても無駄よ?」
「そうじゃない。一人じゃ寝られないのよ」
「19歳にもなって、一人で寝られないなんて、
パリコレのトップモデルが何を言っているんですか」
「だって、怖いもん。お化け。
それに一人でトイレに夜、行かれないし…」
「わかったよ。要はトイレの時に付いてきて欲しいのと、
一緒に寝たいの?」
「うん…」
「わかりました」
「もう寝たいよ。夜更かしは美容に悪すぎるからね」
真希はお化けと暗い場所が大嫌いであり、
19歳の女子大生にして、現役のトップモデルではあるが、
未だに、一人で夜の外出と夜のトイレが一人で行くことが出来ないらしい。
さらに、セレブの友だちのパーティーにも行くが、あまりに乗り気じゃない上、
将来の為の人脈づくりの程度でしかなく、すぐに帰るようだ。
なお、行きと帰りは、姉である、有希が迎えに来てくれるようであり、
夜道を、この年にもなって、一人で歩けないのだ。
(有希談)
このことは、姉妹全員が知っている。
「あーやっぱ、お姉ちゃんと寝ると、安心するわ」
「みっともないですよ。未だに夜道とトイレが一人で行かれないって」
「だって、怖いもん」
「わかりますけど。私がいなかったら、どうするのですか?」
「その時は、その時の状況で考えるわ」
有希と真希は、性格や口は悪いが、二人きりの時は、心を許すような間柄である。
夜中の3時。
「お姉ちゃん。起きて」
「トイレに行きたいの?」
「うん」
「はいはい、わかりました」
有希が先導に立ち、真希が有希の袖を掴む。
「歩きにくいですけど」
「だって、怖いもん。変な人や幽霊とか、怪物とか…
襲われたら、嫌だ!」
「その時は、私が姉の威厳をかけて、助けます」
「ホントに?」
「私が襲われても、真希だけじゃない、華菜や流歌が、
助かるなら、死んでもいい」
「お姉ちゃん…」
「トイレに着きましたよ?」
「う、うん…」
「お姉ちゃんに頼ってね」
トイレの後、寝室で二人はベッドで寝ていた。
世の中は荒んでいるから、何が起きてもおかしくないのだ。
翌朝。
「あっ、真希が有希と一緒に寝ている。超キモイんですけど?」
「華菜…」
「それに、流歌まで」
「だいたい、19歳にもなって、一人で夜道を歩けない上、
トイレに一人に行かれないって…」
「悪い?」
「私は気にしない」
「有希はロリコンだし、真希は夜道やトイレに一人で行かれないんだし、
こんな、お姉ちゃんを持っている、華菜の身にもなってよね?」
「流歌。華菜姉と一緒に、そろそろ学校に行くから」
「今何時?」
「もう、8時過ぎているよ?」
「あっ、あたし!大学のレポート提出しないと!」
「妹達は大変だな~」
「有希も、華菜たちの姉なんだから、しっかりしないと、
こっちが、ムカつくんだから!」
「華菜も可愛げがあると思ったけど、ここまで口が悪いとは…」
「有希に言われたくなんですけど?」
「早く、学校に行ったら?」
「言われなくても、そうしますよ?」
「んじゃ、流歌も、そろそろ支度するから」
「大学まで送ろうか?」
「いいの?」
「何だか、心配になって来ただけです。今日だけ。今だけですけど」
「心配性ね?」
「お節介なのも、誰かに影響されているのも知れませんね。私」
何がともあれ、有希は真希を女子大まで、送り届けるのだった。