追憶のロマンティックス   作:赤瀬 涼馬

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第五話

「翔子姉さん?」

 振り返った先にいたのは、小さい頃からの年上の幼馴染である昼神翔子だった。オレを見てすぐに駆けつけてくるかと思ったのだが隣にいる凪紗の姿を見た瞬間に笑顔から一転した驚愕した表情になる。

「な、凪紗ちゃん!?どうしてここに」

 常に冷静な彼女からは考えられないくらいの慌てっぷりに逆こちらが驚いてしまう。翔子の姿を見た凪紗も「っ!翔子義姉さん!?」と目を見開いていた。

「二人とも知り合いなのか」

 何気ない風に訊いてみると。

「何言ってるの。勇太、翔子義姉さんは私の命の恩人だよ」

「凪紗ちゃん。それは言いすぎだって。私は移植コーディネーターとしての仕事を全うしたに過ぎないんだからさ……」

 凪紗の言い分を訂正するかのように補足説明をする。

「違くないよ。翔子さんが毎日、毎日、温かい寄り添った看護をしてくれたからこそ、今の私がいるんだよ」

 心から感謝するようにそう話す凪紗。

 そんな彼女を嬉しそうに見ている翔子。

 傍から見たら本当に姉妹のようだなと思っていると。

「ゆーくん、今、変なこと考えているでしょ?」

 見透かすような視線をオレに向けてながらそう話しかけてくる。

「何の事だ」

 とぼけてみるが小さい頃から一緒にいるせいで、オレの性格をよく知っている翔子にはそんな小細工は通用しないらしく、「慌てちゃって可愛いな――――」とからかうような笑みを口元に浮かべていた。

 隣で見ていた凪紗が「二人とも仲が良いな」

 口元に手をニヤニヤしていた。

「おい!姫城、からかうのも大概にしろ」

 ムッとして睨むように凪紗を見る。

「きゃあ―――翔子さん、勇太がいじめてくる」

 翔子の二の腕に抱き着き訴えかける。

「こら―――ゆっくん。あまり凪紗ちゃんをいじめちゃだめよ」

 と冗談っぽく言う翔子を見て、勝ち誇ったような顔をしている凪紗に「でも、凪紗ちゃんもあんまり意地悪してると、ゆっくんに嫌われちゃうかもよ?」

 片眉を上げそう口にする翔子に顔を紅潮させて懸命に否定する凪紗、妹をいじる姉といじられる妹のような関係になっていた。

「勇太からも違うって言ってよ」

 凪紗が助けを求めるように言ってくるが翔子を止めることはオレにもできないためどうようもない。

 そっぽを向いて無言の拒否を示すと、「薄情者―――!」という罵倒が聞えてきたが知らないふりをする。

「二人とも本当に仲が良いんだね」

 クスっと笑いながらそんなことを言い出す。

「どうしたら『そう見えるんだ・のよ』」と図らずも凪紗と声が重なる。

 それを見てまたニコニコする翔子に二人で頭を抱える。

「そんなことより、ふたりはこれからどこ行くの」

 話題を変えるように翔子がそう訊いてくる。

「特には決まってないけど」

 質問に対して凪紗がそう答える。

 すると「明日は二人ともお休みだよね。せっかくだし三人でどこか行かない?」

 唐突に遊びに誘われるが、オレは一人暮らしだから問題ないが、凪紗はそうはいかないだろう……と考えていると、スクール鞄からスマホを取り出してどこかに電話する。

「もしもし、お母さん?翔子さんと出かけることになったから少し遅くなるかもしれないけどよろしくね」

「凪紗ちゃんちょっと代わってくれる」

 途中で翔子が電話を替わって事情の説明を始める。

「分かりました。ありがとうございます。では失礼します」

「ありがとう。凪紗ちゃん」

 ぽんと掌に借りていたスマホを置く。

「さぁ行くよ。二人とも」

 オレたちの手をグイグイと引いて歩き出す翔子に「どこ行くの?翔子さん……」と訊いてみるが「それは着いた時のお楽しみだよ」とぼかされてしまった。

 近くのコインパーキングまで歩きそこから翔子さんの運転で移動する。助手席に凪紗、後部座席にオレという席順で座る。

 大人しい翔子のイメージとはかけ離れた豪快かつダイナミックな車でありボディーカラーがホワイトで内装がベージュ色とオシャレで翔子のセンスの良さが窺えた。

 しばらく走りとある場所に到着する。そこは子供用のおもちゃなどが販売されている場所で、フードコートやボウリング場も併設されているところだった。

「お待たせ―――到着したよ」

 駐車場に車を止めて翔子が声をかける。隣の車の当てないように注意しながらドアを開けて外に出る。

「おーい二人とも――――」

 子供のようにぴょんぴょんとはしゃいでいる翔子を持て思わず笑みが零れてしまった。凪紗も同じように感じたようでクスクスと笑っている。

 それからボーリングして遊んだりと色々とした。帰るころには夕方になっており、帰宅ラッシュで道がすごいことになっていた。凪紗を自宅に送り届け、オレも近くまで送ってもらった。

 帰り際に「じゃあ、またね。ゆーくん」と言って頬に口づけされる。

「っな……!翔子姉さん。もう子供じゃないんだから、あんまりそういうことはするなよ」

 声高に抗議すると軽く舌を出して謝ってくる。

「それじゃあね……」

 今度こそお別れと言わんばかりに車窓からバイバイと手を振ってくる翔子。

 走り去っていく翔子の車を見送り家の中へ入る。

 

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