学園一の美少女に脅されて付き合うことになりました。   作:赤瀬 涼馬

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4話 九音の述懐とユウマの苦悩

 彼を好きになったのは入学式からしばらくしてからだった。きっかけはほんの些細なことで入学祝いにもらったお守りを廊下で落とした時に拾ってくれたことだった。その時にみた笑顔が忘れられずに気が付くとユウマのことを目で追うようになっていた。

 

 休み時間や廊下ですれ違う時、昇降口で見かけたときなど、彼を見かけるたびに胸がドキドキと高鳴っていた。

 

 この何とも不思議な気持ちに名前を付けるとするなら、きっとこの感情の名前は…………。

 

 そんな自分自身の気持ちと向き合っていった結果、とある一つの感情が浮かび上がってくる。そう、それは‘’恋愛‘’と呼ばれる感情だ。いつの間にか私は彼に恋をしていたのだ。

 

 最初はただ、気になっただけだったのに。それがいつしか興味から異性としての好きに変化していった。

 

 だから私は―――――あんなことをしてしまったんだと思う。

 

 いくら脅して付き合っても本当の意味で相手の心までは手に入れることはできない。

 

 そんなことはわかっている。でも、そう思えば思うほど彼を好きだと言うこの気持ちはどんどん膨らんで溢れだしそうになる。私は一体どうすればいいの?と自問自答しながら眠りにつく。

 

 その日、私は不思議な夢を見た。

 

 遠い未来で私とユウマくんが笑い合いながら歩いている風景だった。

 

―――こんな幸せな未来が私に訪れるのかな、と不安になりながら夢の続きを見る。

 

 

 

 九音との関係が始まってかれこれ二週間が経過しようとしていた。

 

 どうやって別れようかと考えている間にここまでズルズルと来てしまい彼女の俺への想いは日に日に増すばかりだった。いくら俺よりも相応しい相手がいると言っても‘’ユウマくん以外は考えられない‘’と一蹴されてしまうばかりでまったく取り付く島もなく困り果てていた。

 

 どうして俺なんだろうかと疑問に思う。社長令嬢の彼女ならば釣り合う相手なんていくらでもいるはずなのになぜそこまで俺にこだわるのかがわかない。

 

 そんな疑問が九音と一緒に過ごすたびに大きくなっていくばかりだ。考えれば考えるほどに、答えが出ないものに悶々とした想いが積み重なっていくばかりで気づけば深いため息が口から漏れていた。

 

 そんな答えの出ない悩みを抱えて休み時間に廊下を歩いていると――――。

 

「どうした?そんなしけた顔なんかして」

 

 いきなり失礼なことを言う声が背後から聞えてくる。本当は振り返りたくなかったが、仕方なく振り返ると、黒色のVカラージャケットに身を包んだ漆黒のような艶のある黒髪に蒼い瞳を持つ女性教師が憎たらしい笑みを浮かべながら立っていた。

 

 彼女の名前は昼神琴音―――俺の実姉であり今年度から常盤学園に赴任してきた新米教師だ。

 

「姉さんか――――何か用?」

 

 鬱陶しそうにそう訊くと、「違うだろ? ‘’姉さん‘’じゃなくて‘’先生‘’だろ?」

 

 良いおもちゃを見つけたといわんばかりににやりと唇を歪めながらそう言ってくる。

 

「ねえ――――」

 

「だから違うだろ? せ・ん・せ・いだろ」

 

 にやりとした顔のまま、指摘をしてくる意地の悪い姉に辟易しながら、「はいはい、先生」と口にする。

 

「ホントに可愛くない奴だなお前は」

 

 そんなことを言いながらわしゃわしゃと頭を撫でてくる。

 

「で、何の用なんだよ。早く用件を言えって」

 

 休み時間も終わりに近づいてきたため急かす様に言うと、「お前、あの‘’学園のお嬢様‘’から告白されたらしいな」

 

 唐突にそんなことを言ってくる。

 

「なんで、それを姉さんが知っているんだよ」

 

 驚いて聞いてみると、「なにをそんなに驚いているんだ?当たり前だろ、相手はあの西園寺グループの一人娘だぞ、逆に知らない方がおかしいだろう」

 

 妙に納得できる理由を口にする琴音。

 

 どうなんだと肘でツンツンと脇腹を突いてきながら事の顛末を訊いてくる。

 

 時間もないのでとりあえず掻い摘んで説明をする。俺の説明を聞いた琴音は「ふーん」と興味なさげな反応をするだけだった。

 

 と同時にキーンコーンカーンコーンと次の授業の知らせる予冷が廊下に鳴り響く。

 

「ッ!まずい、次の授業が始まっちまうじゃねぇか」

 

 慌てて教室に戻っていく弟に「おーい!廊下を走るな」と言って見送る。

 

 

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