学園一の美少女に脅されて付き合うことになりました。 作:赤瀬 涼馬
ユウマくんがお見舞いに来てくれてから数日後、すっかり元気になった私はいつものようにユウマくんと肩を並べて学校に向かっていた。
私は大好きな人と一緒に登校できて幸せな気分なのだが隣を歩いているユウマはなんだが元気がないように見える。
「どうしたの、ユウマくん。どこか具合悪いの?」
心配になり声を声かけるが…………。
「別に何でもない」
そわそわと落ち着きがない様子で話すユウマ。
「…………?」
そんなユウマの姿を見てもしかして?と閃いた私は少しだけ悪戯をしてみる。
「もしかしてこの前のこと思い出してるの?ユウマくんのむっつりスケベ―――――」
「な、な、なんのことだ!?」
明らかに動揺した素振りから図星であることを確信した私は「そんなに見たいなら見せてあげても良いよ」と見せつけるように制服の第二ボタンをはずして胸元を近づける。
「ッ…………!からかうのも大概にしろ」
照れ隠しのためなのか、強めに否定してくる。
「………」
前回のこともあってかどうしても言い方が強くなってしまう。
「そんなに怒らないでよ。ただの冗談だってば――――」
あはは―――と大声を出して笑う九音だが、ほんの一瞬だけ悲しそうな顔をしたように見えたような気がした。
昼休みにもはや当たり前のように学食で九音たちとお昼ご飯を食べていると…………。
前触れもなく九音が「私、決めた!」
と高らかに宣言する。
「どうしたの、九音」
不思議そうに瞳をぱちくりとさせながら胡桃が九音に訊き返す。
周囲の生徒も何事だと注目しているがそんなことはお構いの九音は「フッフッフ…………」と含み笑いをしながら俺を見てくる。
そしてただごとではないと思った透哉も驚愕した表情で九音に視線を向ける。
「なにを決めたんだ、西園寺」
そう九音に尋ねてみると。
「気になる?ユウマくん」
見上げるような上目遣いをしながら九音がそう訊いてくる。
こういう顔をしたときの九音はなにか企んでいるに違いないとこれまでの付き合いから確信した俺は、返答に窮していると。
「ユウマくんがどうしても訊きたいっていうなら教えてあげても良いけれど――――?」
煽るような口調で捲し立ててくる九音。
なにを企んでいるのかを知りたいと思う気持ちとそれとは裏腹にまたしてもなにか良からぬことを考えているのではという警戒心もありなんとも言えない気持ちになる。
したがって今の俺の答えは決まっている。
「いや、遠慮しておく」
俺の言葉を訊いた九音は先ほどとは打って変わって意気消沈してしまう。
「テンションの上げ下げが激しいな、大丈夫か?」
「だ、ダイジョブだから気にしないで」
覇気のない声で返事をしてくる。
そんなに俺に訊いてほしい話だったのか、と逆に申し訳なくなってくる。
そんなことを思いながら九音に視線を向けると、「うぅ~――――ユウマくんに言い出せなかったよ」
机に顔をつっぷすようしてぶつくさと独り言を口にしている九音を胡桃が慰めていた。
「いったい、どうしたのよ。九音」
胡桃がよしよしと頭を撫でながら事情を聞き出す。
「実は…………」
そう言って胡桃に耳打ちをする九音。
「なるほどね、だからあんなこと言ったんだ」
話を訊き終わった胡桃が納得したように呟く。
「なにがそんなことなんだ」
気になった俺は胡桃に理由を尋ねるが、「ダメ―――!ユウマには秘密だから」とはぐらかされてしまった。
「別に教えてくれてもいいだろう」
と、もう一度、胡桃に訊いてみるが、頑なに首を縦に振ってくれないため致し方なく諦めることにする。
そのやりとりを見ていた透哉が「ドンマイ!」と言ってオレの肩にパンと手を置いて励ましの言葉をかけてくる。
「はあ、言い出せなかった」
自室のベッドで落ち込んでいると胡桃から電話が来る。
「もしもし―――九音、まだ落ち込んでるの?」
呆れたような声が電話越しに聞こえてくる。
「だって――――」
毎度毎度のことでもはや胡桃にとっては恒例行事になっているようだ。告白の相談をしたときもこんなだったなとデジャヴを感じる。
「結局のところ九音はどうしたのよ、このままズルズル行ってもしょうがないでしょ」
真剣な口調でそう訊いてくる胡桃。
「私だってもっとユウマくんと仲良くなりたいよ」
お見舞いの一件でお互いの気持ちを知れてあとはきっかけさえあればいいのに…………。
「ふーん、なるほどねぇ―――――」
なにかを考え始める胡桃。
「ねぇ九音、こういうのはどう?」
妙案が浮かんだらしい胡桃がそう話を持ち掛けてくる。
興味を持った私は一旦、話を訊いてみる。それから一通りに説明を訊いた後、これならいけると思った私は「良いね。それでいこう」と賛成する。
週明けの月曜日。
学生食堂にて、胡桃の肝いりの作戦をユウマたちに話す。
「確かにテストも近くなってきたし良いと思うが………どうして俺の家なんだ?」
話を訊いたユウマ勉強会を開くことには賛成していたが自分の家ですることを不思議に思っていた。
「私や胡桃の家では両親がから遅くまではできないから」
さりげなくフォローしてくれる胡桃に感謝しながら、ユウマの提案してみる。
「確かに俺は一人暮らしだから融通が利くとは思うが本当に良いのか」
どこか不安そうに確認してくるユウマに小首を傾げながら「やっぱり迷惑だったかな?」と訊くと、「全然、良いんだけれど隣に姉さんがいるからちょっかい出されないとも限らないしさ」
とどこか申し訳なさそうに言っているユウマ。
「私は気にしないから大丈夫だよ」
太陽のように眩しい笑顔でそう言う九音と。
「え?ユウマってお姉さんいったんだ――――」
意外そうに聞いている胡桃と何か考え始める九音。透哉は既に知っているので特に反応は示さなかった。
「ああ、今年からこの学園に赴任してきたんだ」
そう話すと、胡桃が「もしかして!?あの黒髪の美人な人のこと?」
と、思い出したように言う。
「ユウマくんのお姉さん………」
色白な細長い指を顎に添えてそう呟く九音をよそに俺たちは学校が休みの週末に勉強会を開くことになった。