学園一の美少女に脅されて付き合うことになりました。 作:赤瀬 涼馬
「ああーもう、全然わからないよ」
その日の週末、宣言通り九音の提案により中間考査に向けた勉強会の記念すべき第一回目が俺の家で開催されていた。
だが、正面の座っている胡桃が一時間も経たないうちに早くもギブアップを宣言している。一方、隣に座る九音は黙々と問題の答えをノートに書いている。そして、透哉は机につっぷして寝ていた。
俺も九音ほどではないが淡々と問題を解いていた。
「もう少し頑張れよ」
前に座ってもう無理~~~!これ以上頑張ると死ぬとか言っている胡桃にエールを送るがまったく効果が見られない。
そんな泣き言を言っている胡桃を透哉は励ますどころか、一緒になって諦めようとしていた。
「二人ともユウマくんの言う通りもう少しだけ頑張ってみようよ」
既にやる気をなくしている二人に対して九音が頑張るように説得する。
「そうだぞ。西園寺もこう言ってくれているんだから頑張れよ」
生気を失ったアンデットのような顔をしている二人に九音に続いてそう言う。
すると胡桃が、「でもこのままだとやる気でないよ―――なにかがご褒美とないの?」
と、図々しいことを要求してきた。
「そんなの――――」
胡桃の要求を却下したよう口を開こうとしたとき…………。
「わかった。もし勉強会を頑張れたら、私がご褒美をあげるよ。だからもう少しだけ頑張ろう?」
九音が優しい微笑みを口元に浮かべながらそう言う。
「…………ホント?それじゃあ頑張ってみようかな」
まるで幼い子供のように九音が差し出した手を握る胡桃。
なんて現金なやつなんだと思いながら「良いのか、西園寺」
訊いているこっちが不安になってしまい九音にそう確認すると。
「大丈夫だよ。ユウマくん、それで胡桃のやる気が出るなら安いもんだよ」
聖母のように優しい笑顔でそう言う九音。
「透哉くんもなにかいる?」
透哉にも同じこと言うつもりらしくそう訊くと…………。
「俺は遠慮しておくよ。それに女の子にそこまで言わせるなんて男としてだせえし、女子の奢ってもらうのはちょっと気が引けるからな」
真剣な表情でそう言い先までの体たらくが嘘のように黙々と問題の答えをノートに書き込んでいた。
「フッフッフ…………その調子で頑張って二人とも」
やる気を出した二人を嬉しそうに眺めながら呟く九音を見てすげぇと将来、学校の先生とかに向いているんじゃないのかとそんなことを思ってしまう。
「さぁ。ユウマくん、私たちも頑張ろう!」
やる気満々の九音に苦笑しながら「そうだな」と答えて止まっていた手を動かす。
きがつくと、周りが暗くなっており、壁にかけてある時計に目をやると夜の十六時を回ったところだった。
「さて、今日はここまでにしておくか」
三人にそう呼びかけて今日の勉強会を終わりにする。
帰り際、九音が「今日はありがとう。ユウマくん」
はにかんだ笑顔でお礼を言ってくる。
「お礼を言われることのほどではないよ。俺もしっかり勉強できたからな」
三人を途中まで送っている最中にクレープを販売する出店が目に入る。それを見た胡桃が「クレープだぁ―――ちょっと買ってくるね」
脱兎の如く速さで出店へと向かっていく胡桃をしょうがないわねという顔で九音が見つめている。
―――そう言えばさっき、驕るとかなんとか言っていたけれど…………。
九音の方を見ると片手に財布を持って九音の後を追いかけていた。
―――マジで出すのか、と感心していると。ポンと後ろから肩を叩かれる。振り返ると、透哉が「このまま女の子に出させていいのか?」と透哉は訊いてくる。
「そこまで言うんだったら、代わりにお前が出してくれ」
そう言って右手を透哉の前に出すと、「あいにく俺は金欠なんだ」
と、真顔でそう言ってくる。
「お前の辞書には‘’恥‘’という言葉は存在していないのか」
「悪いが俺の辞書にはそんな言葉は存在しないな」
軽口を叩いている間に二人が帰ってくる。
心なしが二人とも楽しそうに見える。
「ありがとう!九音、すっごくおいしい」
嬉しそうにクレープを頬張っている胡桃に「ほら、クリームついてるよ」
そう言って九音がハンカチで胡桃の頬を拭いてあげていた。こうして見ているとまるで姉妹のように見える。きっと本当の姉妹だったら、九音がお姉ちゃんで胡桃が妹だなとみたいなことを考えながら楽し気にしている二人をそっと見守る。