あれから三日。もはや習慣となってしまったように俺は支部へ向かう。
「あ、おはようございます比企谷さん!」
「おう」
「あ、おはよ〜お茶よろしく」
「私のもお願いしますの」
と、こんな感じで完全に下っ端が定着していた。なんでこうなっちまったんだ…。まぁこき使われるのは馴れてる。むしろ挨拶されるだけマシか。
「初春も飲むか?」
「あ、お願いします…」
俺はいつものようにお茶を淹れる。この動作もいつものことになってしまっていた。それで、三人の前にコトッと置く。
「ありがとうございまーす」
「お、さんきゅ」
「てか御坂、なんでお前ここにいんの?」
「あーほら、私も途中まで首突っ込んじゃったし、手伝えることないかなーって」
「白井、いいのか?」
「本当は部外者に協力してもらうのは余りよろしいことではないんですが…事態が事態ですので」
それでいいのか…まぁ確かに御坂はレベル5だからこれほど強力な助っ人はいないだろう。でも、所詮中学生だ。油断すれば怪我もする。
「べつに参加するのは構わないが、怪我しても自己責任で頼むぞ」
「私を誰だと思ってるわけ?その台詞、そのまま返してあげるわ」
ま、それならいいか。俺は特にすることもないし、ソファーでゆっくり…
「休ませないですのよ?」
ですよね…白井さん、あの一件以来厳しいです…。
「つっても、俺はなにすればいいわけ?」
「することがないなら私と一緒に見回りでもする?」
言われて振り返ると固法さんが後ろに立っていた。
「や、あの俺お腹痛いんで」
「御坂さん、白井さん。この人借りても平気?」
「「どうぞ」」
俺をなんだと思ってるわけ?とか思いつつも固法さんに引き摺られた。
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外を歩く。暑ぃ…なんでこのクソ暑い中、外で見回りなんか…どういうわけなの?
「比企谷くんはさ、どうして風紀委員に入ったの?」
「自主的に入ったわけじゃないんですよ。能力開発レポート出したら怒られてここに来たんです」
「一応聞くけど、どんなレポート出したの?」
「聞きたいんすか?」
「……やめとく」
そのまま二人で歩く。端から見たらデートしてる男女に見えなくもないはずなのに、俺の心はまったく揺れない。おそらく、腕に着いてる腕章のせいだ。
「でも、結構毎日来てるよね?それって…」
「べつにやる気あるわけじゃないですよ。仕事を早く終わらせるには仕事をやるしかない。だから毎日来てるだけです。まぁ正義感がまったくないわけじゃないですけど」
「ふーん…やっぱ君、捻くれてるなぁ」
余計なお世話だ。そこで、急に電話が鳴る。もちろん俺のじゃない。
「もしもし、固法です。え?白井さん?どうしたの…」
しばらく話し込む二人。その間、することないので携帯をいじることにした。が、すぐに俺の腕を固法さんが掴む。
「どうしたんすか?」
「緊急事態よ。今すぐ支部に戻るわよ」
「は?」
そのまま走る俺と固法さん。支部に着くと、大方の説明をされる。掻い摘んで説明すると、レベルアッパーの作成に使用されている脳波が木山先生のものだと判明したそうだ。うわあ、掻い摘み過ぎ。
「それで、初春さんが木山と一緒にいるのよ!」
御坂がそう説明する。つまり、俺達の一番の味方が敵になったわけだ。
「お姉様方はここにいて下さい!私が…」
と、空間転移しようとした白井の肩をバシッと叩く御坂。なんか変な声で痛がる白井。そーいえばこいつ、この三日間結構ボコられてたからなー。
「お姉様…気付いて……」
「こんな時くらい、お姉様に頼んなさい」
「なぁ、前から気になってたんだけどお前ら姉妹なの?」
その瞬間、空気が凍る。で、全員が俺を睨む。
「比企谷くん…」
「あなたは本当に…」
「空気読みなさいよ…」
こんな責められたのは久しぶりだ。必要悪の教会で飼ってたザリガニが共食い戦争の末、全滅した時以来だ…。
「とにかく、私は木山の所に向かうわ。初春さんが危ないんだから」
「なら、私と白井さんと比企谷くんはここでバックアップするわ。それで…」
「ダメですね。バックアップに三人も必要無い。俺も行きます」
俺の一言に、御坂は「なに言ってんのこいつ」みたいな顔をする。
「無能力者のあなたが来たところでなにも変わらないわよ!むしろ足手まといだわ!」
「誰が戦うって言ったよ。俺は初春を回収するだけだ。その後は頼む。俺痛いのやだし」
それに、戦闘となるなら魔術を使わなきゃいけなさそうだしな…。
「わかったわ…ならあなたは初春さんを頼むわね」
「あぁ」
御坂が承諾すると俺達はタクシーに乗る。しばらくすると、怪獣の攻撃が掠ったみたいな感じで煙が上がってる高速道路が見えた。そこで御坂が降りた。俺も降りようとすると運転手から声が掛かる。
「ちょっと!お金お金!」
あの野郎…払ってけよ。あとで絶対返してもらうからな。
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道路まで上がると、ひどい惨状だった。
「警備員が、全滅…?」
「……」
すると、近くに高そうなスポーツカーがあった。中では初春が目を閉じている。
「初春さん!しっかりして!」
「心配するな。戦いの余波を受けて気絶しているだけだ」
聞き覚えのある声が耳に届く。そいつはたくさんの人が倒れてる中、唯一立っていた。
「君達に一万の脳を統べる私を止められるかな?」
……上等だ。と、その前に俺は手を上げた。
「木山先生、とりあえず初春助けたいんで車の鍵もらえます?」
「あぁ、それなら車は開いてる。その娘は好きにしたまえ」
言われて俺は初春を車から出しておんぶする。そして、ここから離れる時に御坂に言った。
「あとよろしく」
「なんか腹立つわあんた」
そのまま、とりあえず道路から降りて地面に着地。近くのボロビルに隠れた。
「ん……」
初春が目を覚ました。
「って!比企谷さん!?なんでおんぶされて…ってそれより木山先生が…!」
「あー全部知ってるから大丈夫」
初春を降ろす。初春は顔を赤くして聞いてきた。
「な、なにか変なことしてませんよね?」
「してねぇよ。してたら殺されるわ、色んな人に」
「そ、それにしてもよく私を助けられましたね…レベル0じゃなかったんですか?」
「あーいや御坂と一緒だったし。今頃あいつ、木山先生と戦ってんじゃね?」
「え!?それって危ないんじゃ…」
「まぁ、そうだけど俺やお前が行ったって足手まといだろ?ならここでおとなしくしてた方がいい」
「で、でも…!」
「デモもクラシーもねぇよ。いいからおとなしくしてろ。俺はちょっと様子見てくる」
それだけ言うと、ボロビルから俺は顔を出す。だが、そこにあったのは御坂でも木山先生でもなかった。
「おいおい、なんだよあれ…」
そこにあったのは、でっかい胎児みたいなのが浮いていた。