ヒロアカの世界に異物を一つ 作:きょうぞうちゃん推し
“個性”。
それはこの世界の人間に突如として現れた不思議な力である。内容は様々であり、物を動かす、炎を出す、相手の心を見る。その名の通り一人一人能力は違う。
今や世界の総人口のうち、約8割がこの個性を持った超常社会となっている。しかし、当然ながらそのような力を持った人間は犯罪に使用するようになり、彼らはヴィランと呼ばれるようになった。そして、そんな彼らがいるように力を平和の為に使う者もいる。彼らはヒーローと呼ばれ、世界の平和に貢献していた。
光と闇、ヴィランとヒーローが入り乱れるこの世界。そんな世界にある日、突如として一つの波紋が投げ込まれた。そして、それによりこの世界は本来辿るべきはずだった道をずれ、大きく変貌していくことになる。
それは一つの事件から発生した。関西地方のとある雑居ビルの一室。その中にいた人たちが衰弱死したのだ。目立った外傷はなく、抵抗した様子もないことからガス漏れの線も疑われたがそれも確認できなかった。そして、この時間にこのエリアを訪れた人物がいないために外部によるヴィランの犯行とも言い切れない状態だった。
これを受けて警察は事件の可能性を考えながらも事故として処理したがその一週間後、今度は岐阜県の地方都市で同じ事件が発生した。今度は2階建ての施設丸々一棟で犠牲者が出て、この時点で死者は100人を超えていた。
その後も衰弱死した遺体は数日から10日置きに各地で見つかるようになり、ここにきて警察は何らかの個性を用いた連続殺人事件として捜査をするようになったが手がかりが見つかる事はなかった。現場が監視カメラのない場所であったことと、犯行時間と思われる時間帯に人通りが一切なかったことから、犯人どころかどのように殺したのかさえ分からなかった。
そしてだいぶ先になるがその犯人の姿を初めて捉えたのは最初の事件より半年後、犠牲者の数が4桁を越えた頃になる。
「ぐっ! なんという……!」
某日の夕暮れ時、地方で活動をしていたとあるヒーローは路地裏で怪しい人物を発見。交戦したがその結果は彼の惨敗だった。彼は自らが流した血だまりの中で倒れこみ、死を待つ状態にあった。最早指先一つ動かす余力は、彼には残されていなかったのだ。
「残念ですわ。
「お、のれ……!」
彼は限界が近い中必死に目を動かし、自身をこのようにした相手をにらみつけるように凝視する。そして、場違いとも取れる
赤と黒を基調としたドレスの様なゴスロリ服を身にまとい、左右非対称なツインテールに端正な顔立ち。どこかのお嬢様と思えそうな彼女が持つは博物館でしかお目にかかれない古風な二丁拳銃。ちぐはぐとも取れる装いの彼女は笑みを、見る者すべての心臓を握りつぶしてくるような狂った笑みを浮かべていた。
「ですが、訓練していたとはいえ無事に
「何、を……!」
彼女が何を言っているのか、彼には分らない。だが、ここで止めねばいけない最悪のヴィランである事は理解できた。だが、それを止める術も、彼に残された時間も残されていなかった。
「それではさようなら、有象無象さん。この私、時崎狂三の初陣のお相手、ありがとうございました」
そういってスカートの端を持ち上げお辞儀をする彼女。やはりヴィランとは思えないな、と感じながら彼は息を引き取った。彼女、時崎狂三はそんな彼を冷たい視線で見下ろした後、コツコツとブーツの音を立てながらその場を後にするのだった。
地方都市のマイナーヒーローの死。だが彼が常備したカメラに映された映像より時崎狂三の名と顔は広まり、新たなヴィランとして世に広まることとなった。だが、そんな彼女が連続衰弱死事件の犯人と知れ渡るのはまだ先の事であった。
ありきたりな転生。ありきたりな特典。それをもってありきたりな漫画の世界に転生した。
特典のせいだろう。性別は変わり、かつて好きだった女性の肉体を得てしまった。
本当なら主人公たちと合流し、巨悪と立ち向かっていくのだろう。二次創作では大概そういう話が多い。
だけどな、選び、望んだとはいえ俺にはそんな精神は持ち合わせていない。転生先だって死ぬ直前で読んでいた作品だったから選んだだけだ。俺には誰かの為に立ち向かうなんてできやしない。
だから俺は好きに生きようと思う。
俺の行動はヴィランと呼ばれ世界中の人より敵意を向けられるだろう。主人公たちが敵となるだろう。二度と堂々と生きていくことは出来なくなるだろう。
だけどそれでいい。どうせ偶然得られた二度目の人生と力だ。好きに使って好きに生きよう。
「さあ、今が私のオリジンですわ」