ヒロアカの世界に異物を一つ   作:きょうぞうちゃん推し

11 / 16
第十一話「オリジン」

「全く! なんという事じゃ!」

 

 蛇腔総合病院の創設者兼理事長にしてAFOの部下であった殻木球大は未だ目を覚まさないAFOの診察をしながら悪態をついた。個性により100年近く生き続ける彼はかつてとある説を提唱したが聞き入れてもらえなかったところをAFOと出会い、彼を信奉する事となった関係であり、これまでずっと医者として活躍しつつ裏ではAFOの主治医として活動していた。

 そんな彼だがオールマイトとの決戦でAFOが瀕死の重傷を負ってしまい、回収には成功したが部下は全滅。AFOの意識も5年が経過する現在も戻っていないと最悪の状況にあった。

 

「頭部の損傷が酷すぎじゃ。脳死ではないがこのままでは植物状態で目を覚まさない可能性も高いのう……」

 

 さすがの殻木もAFOの生命を維持する事が現状では精いっぱいであり、目を覚まさせたり失った部分を回復させることは出来なかった。個性であれば可能かもしれないがAFOの力なくして個性を奪う事は出来ない。故に今はその個性を移植する事さえ難しかった。

 

「先生、目を覚まさんか。このままでは儂と先生の100年間は無駄になってしまうぞ……!」

 

 オールマイトも深手を負っている事は把握している。それにより弱体化しつつあると分かっていてもリベンジマッチは当の本人が覚醒しないと難しい。既に裏の世界ではAFOは死んだと噂される程であり、統率を失った裏の社会は急速に縮小を始めていた。

 

「儂が、儂が何とかしないと……!」

 

 殻木はAFOの様子を一通り確認すると最近力を入れている改造人間の研究をするべく部屋を退室する。そこに現状の彼を治す手がかりがあると信じて。

 

 

 

 

 

 あの家では僕の気持ちはそんちょうされなかった。父さんはヒーローにあこがれた僕を否定した。ひていしてひていしてひていして、ひていした。

 さいごはどうなったんだろう。もうわからない。でも、すべてをこわしたとき、きもちよかった。

 全てがこわれた。それが……。だから……。

 

「あらあら。この子がヒーローが探している子供ですか」

 

 ……だれ?

 

「よくもまぁ、3年も捕まらずに生きてこれたものですわ」

 

 あっちいってよ。

 

「っと。個性的に手に触れるのは危険ですわね。刻々帝。【二の弾(ベート)】」

 

 あ。

 

「今、貴方の時間を遅くしましたわ。でも、意識はちゃんとあるでしょう?」

 

 ぜんぜんうごけない。

 

「これでお話が出来そうですわ。……現在、貴方は複数のヒーローにヴィランとして追われていますわ」

 

 な、んで……。

 

「それは勿論、貴方が人殺し、だからですわ。まぁ、捕まったら最後、二度と普通の暮らしは出来ないでしょう」

 

 ぼく、何もわるいこと……!

 

「ええ。ええ。そうですわ。貴方は何も悪いことはしていませんわ!」

 

 しんじてくれるの?

 

「勿論ですわ。たとえ世界の全てがあなたを嫌い、否定しようとも私だけは貴方の味方ですわ!」

 

 う、そ……。

 

「いきなり現れてこんなことを言われても疑うのは理解します。そういう環境に置かれていたんですから。だから、まずは私が信頼してもらえるようにしますわ」

 

 ……。

 

「……っ! そろそろ時間のようですわ。さぁ、行きましょう」

 

 

 

 

 

「貴方はこれから私が引き取りますわ。志村転孤くん?」

 

 

 

 

 

 

 

 ヒーローという立場は彼女に膨大な情報をもたらした。個性を知っておきたいと言えばヒーローやヴィランの個性を警察は簡単に教えてくれる。個性の訓練で周囲を巻き込まない為と言えばだれもが疑わずに地下に巨大な訓練場を作る事が出来た。

 全ては順調と言える中、彼女に転機が訪れたのだ。

 きっかけは家族を殺した子供がこの辺で目撃されたというものだった。個性事故の可能性が高いがしぶとく3年も逃げており、本格的にヴィランとなる前に保護したいと活動場所が近い彼女に要請があったのだ。

 

 そして、その子供を見つけた時、彼女はその子供から目を離せなかった。

 何かしら異形があったわけではない。美形というわけでもない。

 

 ただ、目に引き込まれたのだ。全てを恨み、憎悪し、悲しむ。全てを壊したいという思いがあふれ出るその目に。

 

「貴方はこれから私が引き取りますわ。志村転孤くん?」

 

 故に、彼女は気づけば彼を引き取っていた。そして同時に贋造魔女の力を使い、志村転孤の死を偽装した。複数名のチンピラと相打ちで死亡。チンピラが持っていた火炎瓶や近くにあった油が引火し大火事となり全員焼死体となった。

 警察にはそう報告し、この件は終了することとなった。

 

「五指で触れた物を崩壊させる個性。危険ですわね」

 

 志村転孤を引き取った彼女が最初にやったことは体を綺麗にすることだったがその際に五指で触れたシャワーを崩壊させた事で彼の個性が危険な物だと理解した。特に触れれば強制的に発動する点が危なく、今後は彼に五指で触れても破壊しないようにする訓練が必要かもしれないと考えていた。

 

「ですがどうすれば……。いえ、違いますわ……!」

 

 ふと、彼女の脳裏に浮かんだ案。それはあっという間に脳内に広がっていく。

 

「……ふ、ふふ。これなら、行ける。行ける! 行けるんだ!」

 

 近くにいた転孤は突然の変化に後ずさってしまう。先ほどまでのお嬢様口調は消え去り、まるで別人のように話し出したからだ。

 

「そうだ! 行けるんだ! 姿を変えられるなら! 生物に使えるなら! 遺伝子だって!」

「ひっ!?」

 

 ぐるり、と自分を見る彼女を見た瞬間、転孤は息をのんでしまう。そこには、まるで悪鬼羅刹の如く凶悪な笑みを浮かべた時崎狂三がいたのだから。

 

 そして、彼女は贋造魔女を顕現し、ゆっくりと近づいていく。それに合わせて転孤も後ずさるがやがて壁に追い詰められる。

 そこへきて漸く彼女はやさしい笑みを浮かべるが先ほどまでの笑みを見た後では素直に受け止める事などできるはずがなかった。

 

「転孤くん。貴方はこれから生まれ変わるのですよ。大丈夫ですわ。私には記憶を消したりすることは出来ませんが貴方が傷つかないように体を変化させる事なら出来るのですから」

 

 そういった瞬間、転孤の視界は光で包まれた。

 




原作だとAFOに拾われた転孤君ですが運悪く彼のオリジンとAFOとオールマイトの決戦が被った結果見捨てられることとなりました。本当ならすぐにでも保護されそうですがそこはなんか色々重なって3年逃げ回ったという事で。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。