ヒロアカの世界に異物を一つ 作:きょうぞうちゃん推し
「何あれ?」
「何かのコスプレ?」
その日、静岡県某所にて注目を集める人物がいた。その人物はボロボロのコートを羽織り、頭には人の腕の部分のみの装飾をつけていた。まるでアイアンクローをされているような状態の人物が流石に誰でも見てしまうだろう。
「……そろそろか」
ふと、彼は胸元からお洒落な時計を取り出し時間を確認する。彼の師匠からの贈り物で絶対に壊さないように大切に扱っている。壊した結果、更なるトラウマを植え付けられるなどごめん被るからだ。
「いくぞ」
そして、彼は自身の足元の地面に触れた。
瞬間、地面は一瞬にしてひび割れ、粉々に砕けていく。それはあっという間に周囲に伝播し、周囲のもの、車やビルだけではなく人すらも崩壊させていく。
「きゃあぁぁぁっ!!??」
「た、助け……!」
「いやあぁぁぁぁぁっ!!??」
崩壊に気づいた周囲の人々が我先にと逃げ出していくがそれよりも素早い速さで周りが破壊されていく。触れたものは数秒も経たずに塵と化し、彼の回りは更地と化していく。
そして約1分後、彼の周囲には塵と化した町が残されるのみとなった。騒がしかった町は消えてなくなり、人々の悲鳴すら聞こえない程の静寂が支配していた。
そんな周囲を軽く確認した彼、志村転孤はまずまずの結果だと自己分析を行った。彼の師匠である時崎狂三により自他への評価を過少も過剰もせず、寸分も違わずに分析する方法を教えられていた。その結果として想定よりも崩壊のスピードが遅いと判断を下すと
「おのれ! なんという事を!」
次の目標、ヒーローが約10分後に到着すると転孤は最小限の予備動作で飛びかかった。突然の事に一瞬硬直したヒーローが動き出す前に頭に触れると数秒も経たずに体は崩壊し、塵と化した。
彼が現在伝播させずに出せる最大速度の崩壊。それは触れることさえ出来れば必ず相手を殺せる程にまで成長していた。伊達に
「なっ!? これは一体……!?」
「次」
そして、続々と到着するヒーロー達。転孤は無意識のうちに笑みを浮かべながらヒーロー達へと飛びかかった。
『ご覧ください! 町が更地と化しています! たくさんいた市民の姿は一切確認できず、塵と化した町の後だけが広がっています!
あ! あそこ! 中心部分! この惨状を引き起こしたヴィランでしょうか!? 複数のヒーローと交戦しています! あ、ああ!!! ひ、ヒーローが一人、こ、殺されました! ヴィランはどうやら触れた相手を塵にする個性を持っているようです! それで街を破壊したと思われます!
っ!? ヴィランの周りにはいくつもの血だまりが! 恐らく、ヒーローの……! ああ、なんてことなの! こんなのって……! あ! また一人ヒーローが! 遠距離から戦うようにしているようですが相手が素早く意味をなしていません! これでは虐殺です! ヴィランによる一方的な虐殺が眼下で行われています! ヒーローが全く太刀打ちできていません! このままではヴィランは更なる凶行に及ぶ可能性すらあります! 誰か、誰かこの惨状を止められる人はいないのでしょうか!?
このままでは、周囲から人も、街も、全てが塵に変わってしまいます!
あ、悪夢です! 下では悪夢が広がっています!』
「あ、ああ……! そん、な……!」
転孤が起こした崩壊ギリギリのライン。そこで一人の少年が死を免れていた。
しかし、その少年は真っ赤な鮮血で染め上げられていた。体中は震え、声はあまりの事態に全く発せていなかった。一人分の血としてみれば致死量と呼ぶしかないそれだが幸いな事にこれを浴びた少年に傷はない。
「う、うう……!
ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!」
真っ赤に染まる両手を震えながら見る少年は大粒の涙を流し、何かに耐えるようにうめき声をあげる。しかし、そんなことは直ぐに耐え切れなくなり、絶叫と呼ぶにふさわしい悲鳴を上げた。
声帯は瞬く間に破損し、声は枯れて出なくなるがそれでも少年は声なき声で鳴き続けた。
「あ、あ……!」
「なんだこの餓鬼?」
暫く、そうし続けていた為か、彼に声をかけるものがいた。しかし、それはヒーローなどと言った少年を救う者の声ではなかった。声の方に顔を上げればこの状況の現況、志村転孤が暗い瞳で見下ろしていた。
「あ……」
「まぁ、いいか」
転孤は即座に興味を無くして少年を殺そうと手を伸ばし、寸前で動きを止めた。
「っち! ここまでか。ゲームオーバーになるにはまだ早いからな」
転孤は遥か彼方を見ると何かに気づき、その場を即座に離れていった。再び、死を免れた少年は何が起こったのか分からず、ただ茫然としていたがそこに一人の男が姿を現した。
「少年よ! もう大丈夫!
何故って? 私が来た!」
その正体、少年が憧れ、
だが、少年、緑谷出久はあこがれを前にしても心は全く揺れなかった。何故なら、彼の姿を共に見たいと思っていた友は、今まさに
「……か、ちゃ……ん……」
緑谷出久は友のあだ名を呼び、意識を失った。