ヒロアカの世界に異物を一つ   作:きょうぞうちゃん推し

15 / 16
第十五話「自立」

「今回の件で分かった事だが、一人じゃ無理だな」

「でしょうね」

 

 静岡県の某都市を壊滅させた志村転孤は時崎狂三の影を用いて現場から即座に撤退。ヒーローからの追跡を無事に逃れる事が出来ていた。そして、本拠地であるテンペスト事務所地下に戻ってきた転孤が最初に発した言葉が上記のものだった。そして、それは彼女の方も理解しており、転孤の言葉に同意を示した。

 

「私ですら分身体に助けられることがありますわ。転孤君ならもっと必要でしょう? 協力者や仲間が」

「ああ。RPGと同じだ。一人でボスを倒すなんて無理だ。レベル上げも簡単じゃない。なら、強い味方が必要だ」

 

 空いている時間はゲームに没頭する転孤らしい視点だが真っ当だと彼女は頷く。元々、転孤に仲間を集めさせる気ではいたのだ。デビュー戦で華々しい活躍を見せればヴィランの中には興味を持ち、近づいてくる者もいるだろう。そういった者達を厳選。強者や仲間として相応しい者達と共に裏の世界で活躍する。

 そもそも、彼女は転孤を育てたとはいえ彼を配下にする気はない。だからと言って配下になる気もなく、今まで通り自由に過ごすつもりでいた。つまり、これ以降は気まぐれに協力する事はあれどずっと一緒にいるつもりはないのだ。

 

「それで? どのように集めるつもり?」

「裏には裏なりの集め方ってもんがあんだろ。どういったやつかは知らねぇがヴィランの中にはサポートアイテムで強化している奴もいた。そういったやつに売りつける商人がいる。そんな奴がいるくらいだ。人の斡旋をしている奴もいるはずだ。先ずはそいつを探す」

「へぇ……」

 

 やはり転孤は素晴らしいと彼女を口角を上げ、笑みを浮かべる。彼がヴィランとなったのは僅か5歳の時であり、一度として教育機関にお世話になったことはない。彼女が一通りの教育は必要最低限行っているがそれでも転孤は頭の回転が良かった。最近では彼女を唸らせることを言う事さえ出てきていた。

 これは5年10年と活動すれば大物になるとかつての自分の直感を信じてよかったと思いつつ、その手の奴を記憶から探す。が、彼女とて裏でも知られないように動いたためにそういった知り合いや噂の類は分からなかった。

 

「私もその手の人間に心当たりはありませんわ」

「いい。もう先生の手を借りる気はない。その辺は自分で探す」

「まぁ、私も知っておいて損はないですし、勝手に調べてみますわ」

 

 そう言った事に興味も湧かず、調べる事すらしていなかった事を少し後悔しつつ彼女は何体かの分身体に命令を出し、ひっそりと捜索を行わせた。

 

「それで? 仲間はどの程度を想定していますの?」

「俺は接近戦が主目的となる。若しくは後方でリーダーとしてふんぞり返るかだ。だから中・遠距離で攻撃できる奴が一人は欲しい。出来れば範囲攻撃可能な奴だな。それと奇襲が得意そうな奴もな。俺はヴィランだ。態々正面切って戦う必要はない。裏から知られずに忍び寄り、一撃で葬る。そういう事が出来るのが良い。後は移動系の個性を持っている奴が必要だ。逃走なり奇襲なり大人数を動かせる奴がいれば最適だな」

 

 転孤の脳内では仲間に求める能力を決めているのかすらすらと言葉が出てくる。それを聞き、彼女は転孤が求めているのは量より質の少数精鋭だろうと予想した。ある程度の配下は欲しいが強い奴が好ましいというのはゲームをしている彼らしい発想かもしれない。

 

「とりあえず一週間くらいは様子見だ。ニュースで流れ、俺の存在を認知させるのにそれだけあれば十分だろう。あとは探すがこれだけのデビューをしたヴィランに近づかねぇわけがない。そのうち向こうからも接触してくるはずだ」

「まぁ、逆に命を狙ってきそうな奴もいるでしょう」

「望むところだ。返り討ちにしてやるさ」

 

 転孤はそう言って笑う。全てを憎んだ瞳を輝かせながら。

 

 

 

 

 

「こやつは……!」

 

 殻木球大はニュースで流れてきたヴィラン報道に目を見開いた。映像には更地と化した町とそこで戦うヴィランとヒーローの姿があった。それらはヴィランによる蹂躙というべき映像であったがそのヴィランを見た殻木は驚愕していた。何しろ、そのヴィランは後の事を考えてAFOが仕込みを行っていた少年であったからだ。

 成長した事でかつての面影が僅かしか残っていないがあの全てに絶望したような表情は殻木にも覚えがあった。しかし、彼を確保する前にオールマイトとの決戦に挑むことになったAFOは今も意識が戻っておらず、最悪の想定すら考えつつあるほどだった。

 

「なんと……! ここまで、育っておったとは……!」

 

 将来、オールマイトにぶつけるために育成するつもりではあったが自分たちの手でなくともここまで成長していた事に驚きを隠せていなかった。

 

「……ふむ」

 

 一度深呼吸をして落ち着きを取り戻した殻木は改めて考える。志村転孤だけでここまでの成長を見せる事は難しい。それもここまで秘匿した状態で。となれば彼に協力した者がおり、それは殻木やAFOですら把握できない程に隠匿能力が高いという事になる。そのような力を持つ個人若しくは組織がいるという事は把握しておけば今後の役に立つかもしれない。

 

「となれば接触するのが一番かの?」

 

 殻木は即座に今後の動きを脳内で組み立てると転孤に接触させる駒の選定を開始した。

 

「さて、あの小僧に何をくれてやろうかの? ……もったいないがその分能力が高いこ奴が適任かもしれんのぉ」

 

 殻木はそういうといくつものポッドが並んだ薄暗い部屋を歩き、()()()()()()()()()()人間が入ったポッドに手を添えるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。