ヒロアカの世界に異物を一つ   作:きょうぞうちゃん推し

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ちょっと短め


第三話「巨悪」

 彼女は考える。思考はどんどんと早く巡り、複数の事を同時に考えられるようになるが現状を切り抜ける良い案は一切浮かんでこない。それだけ、目の前の男は規格外過ぎた。

 

「やぁ、君が最近世間を賑わせている“ナイトメア”だね? 初めまして。僕はAFO。この世界の支配者さ」

「……知っていますわぁ。まさかそちらから会いに来るとは思ってもおりませんでしたけど」

「それだけ君の活躍が素晴らしかったんだよ」

 

 なぜこうなってしまったのだろうか。彼女は涼し気な顔を浮かべる顔の裏で焦りながら現状の打開策を考える。

 そもそも、AFOとの出会いは唐突だった。若き闘志にあふれた大学生を殺し、その者のアパートで生活していたがアパートが突如として崩壊。その瓦礫の上空よりAFOが降り立ったのだ。警察やヒーローにすら判明していない彼女の潜伏先を見つけ出したのはまさに支配者としての力があると言えるだろう。

 

「それで? 私の住処を壊して何が目的ですか?」

「ああ、それについては謝ろう。現状において君は僕の敵でもなければ味方でもない。どのような対応をされるのか分からなかったために無理やりにでも話せる状況を作らせてもらったよ」

「……そうですか。出来れば次からは普通に来てほしいものですね」

 

 もはや狂三の口調を真似する余裕もない彼女は引きつりそうな顔で必死に笑みを作り、そう答える。そんな彼女にAFOは愉快そうに笑った。

 

「やはり君は素晴らしい。僕を目の前にしてそんな風に立っていられるのは中々いない。そこで本題だ。僕の部下にならないかい?」

「……」

 

 AFO直々の勧誘。それがどれだけ凄いことなのかを理解できない狂三ではない。ましてや今の彼女はヒーローでも一般人でもなくヴィランだ。そのヴィランのトップである彼についていくのはとても良策と言える。少なくとも彼の配下に居ればヴィランとしてはある程度は安泰だろう。

 ……だが、それは普通のヴィランであればだ。

 

「お断りしますわ」

 

 故に、彼女は拒否の姿勢を取る。そもそも、彼女はAFOに対して魅力を感じていなかった。これが死柄木弔であれば話は変わっただろう。彼女も彼に対してはついていきたいと思わせるカリスマ性を感じていたがAFOはカリスマ性など感じず、ただひたすらに嫌悪感と不信感しか感じていなかった。それはこうして相対する事でより強固となり、彼についていく選択肢は完全に消えていた。

 

「ふむ。一応理由を聞かせてもらってもいいかな? 自分的には断る理由がない魅力的な提案だと思ったのだがね」

「そもそも、貴方の部下という立場自体魅力は感じませんわ。私、貴方の事が嫌いなので」

「はっはっは。成程。それなら断られても仕方ないね」

 

 彼女は啖呵を切った以上AFOからの攻撃を考え、即座に足元に時崎狂三の能力の一つである影を生み出す。……が。

 

「ぐっ!?」

「おいおい。駄目じゃないか。僕の提案を一方的に断ったうえで逃げようだなんて許さないよ」

 

 陰に潜み、逃げようとした彼女は突如として質量を伴った衝撃波に吹き飛ばされる。幸いにも逃走の妨害をするために放ったものであったためにダメージ自体はそれほどではない。だが、AFOから隙を作らない限り陰に潜み、逃げる事は出来ないだろう。想定出来ていたこととはいえ闘争手段がなくなるのは彼女の中で焦りを生み出していた。

 

「さて、断られてしまった以上君を部下にするのは諦めよう。代わりに、君の力をもらおうかな。先ほども見せた君の影らしきものは個性かな? 是非とも知りたいものだ」

「女性の秘密を暴こうとする男性は嫌われますよ!」

 

 避けられる。効かない。そう分かっているが彼女は古風な歩兵銃を取り出し発砲する。現代の銃並みの発砲音を響かせて放たれたそれは硬化したAFOの腕であっけなく払われてしまう。腕だけを動かし、こちらから視線を外さないで行ったそれにAFOの余裕がうかがえた。

 

「その程度かい? そんなわけがないだろう? さぁ、もっと全力で挑んでくると良い。全てを出し切らずに僕を倒せるとは思わない事だよ」

「勿論ですわ。貴方相手に出し惜しみは出来ませんので」

 

 彼女は覚悟を決めた。ここまで全力で戦った事は彼女には一度もなかった。それを使う相手がいなかった事も理由の一つだが何より、こういったときに備えて能力を温存してきた。それは、時崎狂三が持つ能力も含まれていた。

 

「お出でなさい! 刻々帝(ザフキエル)!」

 

 自らの全力をもってAFOを退ける。彼女はこの世界に来て初めての格上の相手との戦闘に突入した。

 

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