ヒロアカの世界に異物を一つ   作:きょうぞうちゃん推し

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第四話「刻々帝」

 刻々帝。

 

 これはデート・ア・ライブと呼ばれるラノベに登場するキャラクター、時崎狂三が使用する天使の名前である。時崎狂三を含む幾人かの登場人物はこの天使と呼ばれる能力を持ち、これを持つ者は精霊と呼ばれていた。詳細こそ省くが登場する天使の中で刻々帝は上位に位置する能力を有していると言えた。

 だからこそこれを用いて戦闘するという事は彼女にとって全力を出しているに等しかった。無論、A()F()O()()()()()()()()()()使()()()()()、あれを使用しようとは考えていなかったため、刻々帝での戦闘が今の彼女の全力だった。

 

「これは本来、私に向けて言われるセリフですがまぁいいでしょう」

 

 背中に巨大な時計を生み出した狂三は不敵な笑みを浮かべてAFOに対峙した。

 

「さぁ、私たちの戦争を始めましょう」

「見せてもらおうか。君の実力を」

「勿論ですわ! 【一の弾(アレフ)】」

 

 そう彼女がつぶやくと、時計より黒い瘴気のような物が銃へと流れ込むと遠慮なくその銃を自らに向けて発砲した。突然の事にAFOは驚きつつも警戒する。伊達に100年以上にわたり悪の帝王として君臨しているわけではない。この程度で隙を見せる程AFOは甘くはなかった。

 だが、そんな彼からしても彼女が視界から一瞬で消え、気づいた時には真横に立ち、銃口をこちらに向けていた時には目を見開いてしまった。発砲された銃弾は紙一重で避ける事が出来たが前装式の銃にしか見えないそれから次々と発砲される銃弾を全てさばいて見せた。

 

「【七の弾(ザイン)】」

 

 そして、次に込められた瘴気の弾は先ほどとは違いAFOに向けて放たれた。咄嗟に振り払おうと腕を上げたところで言い知れぬ不安に駆られた彼はその弾丸を避けた。

 

「あら? てっきり振り払ってくれるものだと思っていましたが……。当てが外れましたわね」

「今の弾丸を危険だと思うには十分すぎる判断材料がそろっていたからね。それにしても……」

 

 AFOは先ほどから彼女が使用する個性?に舌を巻いていた。当初こそ簡単に勝てると思っていた彼女との戦闘はふたを開けてみれば多種多様な能力を使用する彼女がAFOを押していた。彼女の能力を観察しているというのもあるが想像以上に善戦する彼女にAFOも知らず知らずのうちに口角が上がっていた。

 

「ふっ!」

「っ!?」

 

 故に、少々()()()()()()()()()()()()()()()。身体能力上昇の個性×5、筋力増強の個性×2、硬化の個性×3、腕に熱を込める個性を複合した巨腕を彼女がやってくる未来位置に向けて放った。そしてそれは寸分違わずに彼女に命中し、地面へと激しくたたきつけられた。火傷どころか皮膚が爛れ落ちそうな熱量にまで瞬間的に上がった巨腕をまともに受けた彼女は頭部より出血し、咄嗟に手を出した事で左腕はひじから先が完全に消滅。残された二の腕も焼かれる等一瞬にして重傷を負ってしまっていた。

 

「ふむ、まぁこんなものか」

「まだですわ……! 【四の弾(ダレット)】」

 

 そして、再び彼女が自らに弾丸を放ったところ、不思議な事が起こった。彼女の傷がみるみるうちに治っていくのだ。失ったはずの腕すら再生する様子に流石のAFOも純粋に驚き、声を上げそうになった。だが、それを見たことでAFOは確信する。

 

「成程。君の能力は時を操るのか」

「っ! さすがはAFO。ご明察の通りですわ」

 

 自身の流れる時を早くすることで高速移動を可能にし、自分の時を巻き戻す事で傷を負う前の姿に戻る。AFOは先ほど放たれた弾丸も当たっていれば危険だったと再認識した。実際、彼が銃弾に当たっていれば彼の時は止まり、攻撃され放題の状況になっていただろう。流石のAFOも時を止められ、攻撃を回避できない状況にされれば一溜りもない。改めてAFOは目の間の少女への警戒度を上げた。

 そして何より彼女の()()が欲しくなっていた。何かしらの制約がありそうだがそれを補ってあまりある汎用性だとAFOは考えていた。故に、彼女への攻撃は苛烈さを増した。

 

「ふっ!」

「くっ!?」

 

 先ほど放った巨腕を振り回す。人を焼く熱量を持ったそれは掠るだけで彼女の皮膚を焼き、生み出される突風で吹き飛ばしていく。更にそれを両腕で行う事により絶えず彼女を熱風が襲い続ける状態にした。そして、この時点で彼女は刻々帝の能力を使用する余裕がなくなっていた。

 これまで実戦経験は多様なりとも積んできたとはいえ転生してまだ一年足らずの状態。力を完全に使いこなせているとはいいがたかった。とはいえ相手がただのヴィランやヒーローであれば問題はなかっただろう。しかし、相手は100年以上生きている大物ヴィランである。当然ながらそれだけの年月分の戦闘経験があり、今の彼女程度では太刀打ちすら出来なかった。実際、AFOはただの熱を持つ巨腕で彼女を完封しつつあった。

 

「っ!? ぎっ!?」

「漸く当たったね」

 

 そして、熱風で体力を奪われ、刻々帝を使う暇さえ与えられなかった彼女はついに回避すら出来なくなり、両腕による撃ち落としを直撃した。再び地面へとたたきつけられた彼女は先ほどよりも重傷であり、辛うじて息をしているが誰の目から見ても瀕死である事は明白だった。

 

「さて、OFAとの戦いぶりだね。ここまで燃えたのは」

 

 AFOは彼女から個性を奪うべく顔に触れた。そして、これだけの力を持つ彼女に敬意を表し、遺体を何かしらで利用しようかなと考えたところで、違和感に気づいた。

 

「? ()()()()? いや、これは……!?」

 

 彼女に触れた事で分かった事だが彼女は()()()()()()()()()()()。AFOという個性を持つ彼は相手に触れる事で相手が個性を持っているか否か程度なら簡単に判別が出来た。なのに手で触れた彼女に、個性は存在していなかった。

 AFOは予想外の出来事に思わず硬直してしまう。先ほどまで彼女が使用していた能力は個性ではないのなら一体何だというのか? そして、この硬直が大きな隙となってしまい、それを流石の彼女も見逃すはずがなかった。

 

「……【七の弾(ザイン)】」

「っ!? しま……!」

 

 そして、その隙を突き彼女はAFOに【七の弾(ザイン)】を命中させることに成功した。弾丸を受けたAFOの時は止まり、驚愕の表情のまま固まってしまう。

 

「ぐっ! ……【四の弾(ダレット)】! ……ふぅ、流石は魔王ですわね」

 

 瀕死であった彼女は自らの時を巻き戻したことでその傷を癒すことに成功した。しかし、刻々帝を使用するのに必要な霊力と呼ばれるエネルギーは大きく消耗した。彼女は()()()()()()他者から霊力の代替となるエネルギーを摂取する事が出来るがそれでもこれまでの中で最も消耗したことは確かであった。むしろ、AFOと闘い、この程度で済んでいる方が奇跡に近いと言えるが。

 

「本当は追撃したいところですが今の私では貴方に勝つことは出来ませんわね。ですので今回はここで逃げさせていただきますわ」

 

 時を止めているとは言え彼女にはAFOを今の自分で仕留める事が出来ないと考えていた。もし、彼を倒せると断言する時はオールマイトとの戦闘で大きく消耗した時、つまり原作初期の頃である。

 

「それでは、ごきげんよう」

 

 彼女は真下に影を生み出すと今だ時が止まったままのAFOに恭しく頭を下げ、影の中に消えていった。

 

 

 こうして、彼女とAFOとの戦いは終始圧倒された時崎狂三が隙を突き、AFOから逃げ出す事に成功した事で終了した。全盛期の彼との戦闘は彼女に確かな経験を積ませることとなり、彼女は大きく強化されていくことになるのだった。

 

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