ヒロアカの世界に異物を一つ   作:きょうぞうちゃん推し

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第九話「八舞耶倶矢」

 オールマイトとAFOが痛み分けで決着した決戦より1年。雄英高校の校長を務める根津は今年入学した一人の少女について考えていた。最初に彼女を目撃したのは入学試験の時だった。町を模したフィールドに配置されたロボを倒す試験だが他の受験生が個性を使用する中彼女だけは格闘術でロボを圧倒していた。

 

『フハハハハハ! この程度の意思無き人形に我が負けるものか!』

 

 壮大な口調と高笑いを響かせながら無双する彼女を見た時は根津も入学間違いなしと心で思ったほどだ。更に言えばそれ以外の加点項目である救助に関してもきっちりと行い、ヒーローとしてやっていくための精神性も持ち合わせていると判明した。

 それ故に主席で入学した彼女は僅かな期間ながら数々の伝説を残していた。

 

-入学式の新入生あいさつでは中二病全開の挨拶を披露し、一部の者に黒歴史を掘り起こさせた。

-個性把握テストではぶっちぎりの一位をたたき出した。

-一方で授業は苦手で基本寝てるか抜け出すかを繰り返す。

-それを受けて切れたとある先生が個性すら使って捕まえようとしたが結局捕まえられなかった(その先生はサーチ系の個性の持ち主)

-空き教室を(勝手に)使用して闇の語録同好会を(許可なく)設立。

-そこで作り上げた中二病全開文集を昼時に爆音で流す。

-やらかす癖にテストでは好成績をたたき出す。

-それどころか途中のテストからテストの点数で遊びだす。

 

 他にも様々な事をしているがその一方で実力はトップクラスと言ってよく、今日始まる

雄英体育祭では優勝候補と目されている程だった。

 

「彼女は誰が見ても優秀な生徒だ。だけど、それだけに危うい面もある」

 

 AFOという巨悪が倒れた事でヴィランによる事件発生数は減少傾向にあるがそれでも予断を許さない状況にあるのは間違いない。特にオールマイトが怪我の後遺症で一日に動ける時間に制限がかかっている以上これまで以上に他のヒーローが重要となってくる。

 

「仕方ない。彼女には少し挫折を味わってもらおうか」

 

 根津は雄英体育祭の開会式が開かれる眼前の光景を見ながら彼女に対して特例措置を考えるのだった。

 ……ちなみに、入試トップの彼女は当然のごとく中二病全開で選手宣誓を行い、この場の者と視聴者に羞恥心を植え付けるのだった。

 

 

 

 

 オールマイトは貴賓席にて今年の雄英体育祭を観戦していた。オールマイトがこの場にいると知られれば周囲がざわつき、あっという間に囲まれる事は確実だが実際にはそんなことはなく、穏やかに観戦が出来ていた。

 というのも原因は今のオールマイトにあり、彼はAFOとの戦いで負った傷から一日に活動できる時間に制限がかかってしまっており、従来の姿とは似ても似つかないゲッソリとやせ細った姿となっていた。無論、ヒーローとして活動する時は以前の姿だがそれを維持している状態であり、限界を超えるとこちらの姿になってしまうのだ。

 とはいえ最初こそなれなかったものの今ではオールマイトとバレない為に好きに動く事も出来る等本人なりに有効活用していたが。

 

「フム……」

「誰か気になる人でもいましたか?」

「ん? いやまだ始まったばかりだし分からないよ」

「それもそうですね」

 

 そんなオールマイトの隣には熱意に負け、サイドキックにしたサー・ナイトアイがいる。まだ知名度がそこまで高くはないためにオールマイト関係者だとバレていない彼は堂々としていた。オールマイトのサイドキックだとバレた際には今の状態のオールマイトは専属秘書の八木俊典として通す事になっていた。

 

「ですが急がないといけません。貴方の個性、OFAを継承するに値する者の捜索を」

「分かっている。分かっているがこればかりは急いで探してもいいことはないからね」

 

 二人が体育祭を見に来た理由。それはただ母校だからではない。オールマイトの個性、OFAを継承する事の出来る人物を探すためだ。OFAは歴代から継承されてきた個性であり、自身が大怪我を負った以上後継者は必須と言えた。

 無論、即戦力として数えるならプロヒーローから探す方が良いが未来に託すという事を考えれば若者が即しているという結論に至ったためにこうして後継者探しの一環として観戦しに来ていたのだ。

 

「む? 今年は障害物競争か」

 

 雄英体育祭では予選と本戦の計3回戦に分かれている。そんな中で予選では大半の生徒が脱落することとなり、精々2クラス分しか本戦に行くことは出来なかった。

 

「あれは……!?」

「入試トップの、八舞耶倶矢ですね。やはり入試トップだけあり一歩躍り出ましたね」

 

 風の個性か? 突風を背に浴びながら序盤の難関であるゲート入口を突破した少女、八舞耶倶矢に二人の視線は固定された。他の者達も悪くはないが風の個性故か彼女が最もリードしていき、あっという間に第一関門に到達した。

 

「一面氷に覆われたフィールド。バランス取りが難しく、前に進むのもやっという感じの障害物ですが彼女には関係ないですね」

「そうだな。入学して僅かだというのに個性をうまく使いこなしている」

 

 凍った地面をバランスを取りながら突風で加速。普通の地面より素早い動きで僅か数秒で突破して見せた。この時点で2位との差は絶望的なまでに広がってしまっていた。この後の関門にもよるが挽回する事は不可能だろう。

 実際、八舞耶倶矢はその後もほぼスピードを緩める事無くコースを突破。障害物競争至上最高のタイムで1位を勝ち取ったのである。

 

「彼女次第ですが候補としては最高と思いますね」

「そう、だな……」

 

 その後も彼女は無双と言っていい活躍を見せた。本戦第一試合は騎馬戦が執り行われ、予選の順位ごとにポイントが振り分けられた。その中でも1位である八舞耶倶矢のポイントは1000万と異常な高得点であり、誰もが彼女を捕食者のように見るが当の本人は「我に相応しい超常の数字! これこそ偉大なる……!」と中二病全開ながらも堂々としており、1位の風格を見せていた。

 そんなこんなで始まった騎馬戦だが彼女はなんと自らの風を使って1000万の鉢巻をはるか上空に飛ばし、誰も取れないようにしたのだ。当然ながら駄目と言われてしまったがならばと彼女たちを中心に暴風を展開。他の騎馬の妨害を終始続けた。結果、彼女たちは無事に1位で突破し、注目度を掻っ攫っていった。

 当然ながら最後の1対1での格闘戦でも彼女は無双と言っていい活躍を行い、見事優勝を果たしていた。そんな彼女に拍手を送るオールマイトだがその表情は険しかった。

 

「? オールマイト、彼女に何か? 表情からユーモアが消し飛んでいますが……」

「……いや、なんでもないよ」

 

 オールマイトはサー・ナイトアイにそういうが表情は険しいままだった。それが何を意味しているのかナイトアイには分らなかったがそれ以上は聞いても教えてくれなさそうだとそれ以上聞く事もなかった。

 

「(容姿、能力、口調。全てが違う。何より年が違うし()()()()()()()()。なのになぜだ? 何故こうも()()()()()()()()()()()())」

 

 オールマイトは心の中で燻る違和感を感じつつもそれを決して表に出すことはなく、気のせいと無視するのだった。そして、それが間違いだったと気づき、後悔するのは10年以上先の事であった。

 




本当は耶倶矢のセリフを書きたかったが中二病っぽいセリフを考えていたら恥ずかしさで死にそうになったので大幅に省略しました。
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