シンクレアとクローマーのクリスマス   作:時雨オオカミ

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5日目 赤ずきん

12月19日

クリスマスまであと6日!

 

◯赤ずきんシンクロ

簡単説明

→人間として育てられた赤ずきんな狼シンクレアが、男の子を二重の意味で食い散らかすのが趣味の狼クローマーに襲われてオス狼として目覚めちゃう話のやつ。

 

「ただいま……うわ」

 

 いつものように赤い頭巾で耳を隠したまま家に帰ると、家の中は血まみれだった。ズタズタに引き裂かれた裸の男性の死体が転がっている。

 

「クローマー? ご飯食べるなら片付けまでちゃんとやってよ!」

 

 血がついていないテーブルに荷物を置いて、靴で血の跡を踏まないようにベッドへ歩み寄る。そこには幸せそうに眠り込むクローマーがいた。

 

 先日、僕のお婆さんを食べちゃったこの悪い狼女は、はじめての同族の女の子に狂った僕が逆に襲い返して……僕のお嫁さんになったわけだけど、どうしても野生が抜けなくてこんな感じの日が多い。

 血まみれのまま、水浴びもせず、満腹のお腹をぽっこりとさせて無防備に僕のベッドで寝る。自由気ままだ。

 

「クローマー、起きて。そのまま襲われたいの?」

 

 僕が声をかけてゆすってみるけど、クローマーは目を開けない。くすくす笑う口元が見えるので起きているのは分かっているんだけど、寝たふりを決め込んでいるらしい。襲われることも期待しているんだろう。やらないけど。気分じゃないから。

 今日はもっと人間らしいことをしたい気分なんだ。

 

「クローマー、人間の美味しいものを買ってきたんだ。今日はクリスマスだから」

「おいしいもの?」

 

 むくっと起き上がった彼女は分かりやすく期待を滲ませた顔で見上げてくる。寝たふりはやめたみたいだ。

 

「そう、クリスマスはね……人がなんか……おいしいものを食べたりしつつお祝いする日、みたいな……?」

「ふうん、どんなの?」

「ケーキとワインがあるよ。どっちも食べたり飲んだりしたことないよね?」

「ないわ!」

 

 クローマーの顔や手についた血を雑に拭き取り、水浴びはあとで一緒にすることにして、まずはおいしいものを食べようと椅子に座らせる。血のついていない部分にケーキの箱を置いて、その上で箱を開いてフォークを用意。一口サイズに切ってから彼女に差し出した。

 

「なんだか可愛い〜、あーん!」

「はいはい、あーん」

「んっ!? なっ、なっ、なあにこれ!」

 

 ケーキは多分はじめて食べるんだろう。クローマーは一口食べると頬を押さえて目を輝かせた。猟奇的な姿しか見ないから新鮮だ。

はじめての甘いものに夢中になってしまうところを見ると、なんだかいつもよりもずっと可愛らしく見えてくるくらいだ。

 

「こっちはワイン。どう?」

「くん……うーーーん………………うぇっ、にがぁい! なにこれ毒じゃないの!?」

 

 自然界で生きてきたクローマーにとって、苦いものは毒だと思ってしまうらしい。慌てて否定して別のジュースの瓶を差し出す。

 

「クローマーは甘いほうが好き?」

「んー、口の中がねっとりするからずーっとはそんなに……やっぱり血がしたたってるお肉を焼いて食べるのが一番よね!」

「そっか」

 

 人間のもとで育てられた僕には分からない感覚だ。だんだん慣れてもらうしかないか。

 

「クローマー、そうだ。人間ってこのクリスマスにはおめでとうって意味でメリークリスマスって言うんだって。メリークリスマス! クローマー」

「それくらいのことなら言ってもいいよ。メリークリスマ〜ス、シンクレア!」

 

 ジュースの瓶とワイングラスがガチャンと音を立てて触れ合い、割れた。

 

「わーっ!? 力かけすぎ!」

「ごめーん!」

 

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