12月22日
クリスマスまであと3日!
◯センク協会シンクレア
◇
「ねえ、君が飛び入りで相手になるだなんて聞いてないんだけど……クローマー、外回りは別の担当じゃなかったっけ?」
呆れたように言えば、向かいに立っている女は高らかに笑った。
「そんなの終わらせてきたに決まってるじゃない! それより、こんなにちょうどいいことってないわ! さあ、シンクレア……代理決闘しましょう! いつもみたいに……♡」
そう、いつもみたいに。
依頼人は酒場のツケを払う、払わないで揉めていた人達の酒場の主のほう。
そっちに僕が雇われて、決闘依頼を受けた。そこにやってきたのがクローマーだ。ツケの支払いを拒んでいる人に味方して、向こうも決闘依頼として受理して僕へと武器を向けている。くだらない諍いでセンク協会の人間同士の決闘が行われることなんて本来なら滅多にないんだけど。
「あー、クローマー。格安で受けた分は君の給料から引かれるって分かってる?」
「分かってるって! シンクレアが養ってくれるから問題ないよね?」
「あのさぁ……君、僕と決闘したいだけでしょ」
「そのとおり♡」
「はあ……承りました。決闘を受理しましょう。さあっ、手袋を拾ってください!」
「ありがと♡ 決闘のルールは第一段階、相手が参ったと言うまで……でいいよね?」
「そのように」
僕から手袋を投げると、同じくクローマーも地面に手袋を投げつける。お互いに拾ってマントを翻しながら背を向けて一歩、二歩、三歩。
振り返って、剣を構える。
「エトゥ・ブレ?(準備はいいですか?)」
「ウィ・アレ!(もちろん!さあ、はじめ!)」
実力のある者同士での決闘は少しばかり長い。特に一番手軽な決闘であれば、「参りました」の一言がなければ終わらないから、相手が負けず嫌いであればあるほど長くなる。クローマーはその傾向があった。
だから、僕のほうも楽しい。
いつもは決闘裁判以外では殺さないようにセーブする必要があるけれど、実力のあるクローマーが相手ならば遠慮なんてする必要はない。足元が軽い。息ができる。風を切って、スレスレの命のやり取りで高揚感に支配される。
「今日は僕の勝ちだね?」
後ろに倒れたクローマーの首筋に僕の剣が触れて、彼女が笑う。多分僕も高揚で笑っていた。
「あは♡ そうね、参りました〜」
「な!? そう簡単に負けを認めるなんて……!」
「うるさいうるさーい! そもそもツケくらい払いなさいよ」
「はあ!?」
「あと、決闘依頼の代金もちゃんと払ってちょうだいね」
「え!?」
可哀想だけど、決闘代金はちゃんと払ってもらわないといけないんだよね。
「クローマーはちゃんとウーティスさんに怒られてくださいね」
「ええ〜」
「なんのために外回りの区画分けてると思ってるんだよ。毎回毎回僕の仕事についてきて怒られるのは君だろ」
「ちゃんと仕事してるのにペアにしてくれないほうが悪いじゃない?」
「ああ言えばこう言う……」
僕らのやり取りの間にも、野次馬をしていた人達が賭け事の勝敗で一喜一憂している。これもいつものことだった。
「はい、集まった皆さんも解散してください。帰るよ、クローマー」
「えぇ〜、もっと外回りして帰りましょ?」
「さっきの人に支払いをしてもらわないといけないから、連れて行かないと」
「ああ、逃げそうだもんね。せっかくデートできると思ってたのに」
「仕事だって分かっていますか?」
ウーティスさんかドンキホーテさんか、こいつを引き取ってくれないかな……。