12月24日
クリスマスまであと1日!
◯握握の世界線
◇
「おい、お前シンクレアだろ!? なんで、なんでこんなこと……! 俺達友達だったじゃんか! 頼むから見逃し――」
鈍く重い音が地面に吸い込まれ、僕は顔をあげた。ハルバートで地面に叩きつけた機械の体が歪に歪んでガンガンと言葉にさえなっていない不快な音が耳を打つ。
暫しその声に聞き覚えがないかを考えてみるが、すぐにやめる。不潔な義体を相手に、かつて交流があった相手がどうか考えるだなんて無意味なことだ。だって、機械の体を手にした瞬間、僕の知っていたその人自身はもうそこにはいないんだから。
「さあ、覚えていませんね。浄化されるべき義体と友達だったことなんて、一度もありませんから」
足蹴にした機械にもう一度ハルバートを振りかぶり、上から力一杯叩きつける。体格上、切り付けるような動きよりも叩きつけるほうが威力が出ることを僕は知っていた。
クローマーに戦闘のレクチャーを受けてから、ずっとそうしているだけだけれど、この方法で僕はいいと思っている。鋭く切りつけて一瞬で絶命させるよりも、叩いてその苦しみを長く味わわせることができるから。
そして、ようやく沈黙した義体にメラメラと燃える家屋から廃材を一欠片取って捨てると、爆発とともに燃え上がる。
かつて故郷だったその場所で、家屋や樹木にはそこかしこに機械と肉がぶらさげられ、さながらクリスマスツリーかイルミネーションのように飾り付けられていた。
「〜♪シンクレア、順調?」
機嫌の良い口笛の音が響く。
機械の擦れる不快な音と、金切り声。怨嗟の声。そんなものばかり耳を打って沈んでいた気分が、僕に向かって歩いてくる彼女の足跡と声色によって浮上する。
「クローマー……あと少しで終わると思う。残党は皆、僕の家に集まってるみたいだけど……」
「もう誰も住んでないけど、あくまで君の家だもんね? どうして部外者が普通に出入りしてるんだろうって、きみ、今すごく嫌そうな顔してるよ!」
「そりゃ……嫌だよ。僕の家だし」
「両親を殺したのは君で、家を出て私についてきたのも君だけどね」
「でも、明日は僕の家に用事があるんでしょ?」
「もちろん! 廃墟にはなっててもいいけど、鎮火はしていてもらわないと困るから……あと一時間で殲滅を終わらせましょう!」
「分かった」
「明日は休みをとってあるから、クリスマスの特別な日……君の家でこれからとずっと、ずーっと一緒にいるって誓いを立てるのよ。そうでしょう? シンクレア」
「そのために早く仕事を終わらせようとしてるんだろ。早く行こ……クローマー、もう一回、口笛を聴かせてもらってもいい?」
「ふふ、シンクレアったらすっかり私のこと好きね。〜〜♪」
「もう、君しか、いないから」
「〜〜♪」
目を閉じる。
心に侵食し、僕を掌握しようとする彼女を受け入れる。そう、だって。義体手術を目前に家族を殺してしまった僕には、もうクローマーの手を取るしかなかったから。
そばにいるのは「僕は悪くない」って肯定してくれる人でないと、いけなかったから。
僕のしたことを否定されたら、もう生きてはいけないだろうから。
クローマーは、この罪悪感を打ち消して、それでいいよと生きる理由を与えてくれる人。
「明日、私達で誓いましょう」
「うん」
君に侵食され、侵食されて生きていく。
ああ、明日は特別なクリスマスだ。