12月25日
メリ〜クリスマ〜〜〜ス
◯握握
昨日(前回)の続きだよ!!
◇
月明かりのさす廃墟の中、僕は天井に空いてしまった穴から入り込む光を浴びてクローマーを待っていた。
「お待たせ〜シンクレア!」
玄関からヴァージンロードでも歩くようにグイドさんと歩いてきたクローマーは、僕の隣に立ち奥に作った祭壇へ向かう。
「グイド、もういいから。明日迎えに来るように」
「はい、握る者のお心のままに」
父親役をしていたグイドさんがその場から退散し、僕ら二人だけになる。
わざわざウェディングドレスを着込んできたクローマーは、ヴェール越しにくすくすと笑いながら僕と向かい合う。肩に添えられた手が顎へと移動し、すくいあげられる。
そうして、クローマーは機嫌良く口笛を吹きながら遠慮なく僕へと唇を重ねた。
深いキスのあとに、息が乱れたクローマーがようやく離れる。
「誓いのキスは〜とか、そういうのはやらなくていいの?」
「面倒臭いことはしなくてもいいじゃない。必要なのは、今後君が私とともに一生居てくれることを誓ってくれることだけだから」
「誓うよ。僕には君しかいないから」
「私じゃないとダメって言ってくれたら百点満点だったのに!」
「……採点されるの?」
「いいえ、そのほうが嬉しかったってだけ。さあ、シンクレア……確か二階のベッドは無事だったよね?」
「うん」
尋ねられたので答える。僕の家は全焼して廃墟になっているが、金槌達に一番綺麗に残った部屋を整えさせてあるから、かつて僕の部屋だったそこだけは泊まることができる。
クローマーがしたいことは明らかだった。けれど、それもいつも通りと言えるのでもはや疑問には思わない。求めてもらえるなら、応えてあげようと思う。気持ちの良いことと悪いことをするときが一番、罪を忘れて生を感じることができるからというのもある。
「それじゃあ、ご両親に私達の初夜を見てもらおっか♡」
「え?」
さすがにそれには耳を疑った。
クローマーがその辺に転がっていた義体の頭を拾い、僕に手を差し出してきたから。
「偽物に成り変わった異端ではあるけど、君のご両親を名乗ってたものだからね。息子の晴れ姿、見てもらいたいじゃない?」
「……趣味が悪いよ、クローマー」
僕が苦い顔をしてもクローマーは意に介した風もなく勝手に手を繋いで階段へと向かう。燃えてボロボロになった階段でも、そこだけは問題なく上階に上がれることが分かっていたから。
小脇に抱えられた義体の頭に複雑な気持ちになるが、クローマーが決めたことは僕がいくら意見したところで覆らない。
だから、その義体の見た目で両親が判別できなくなっている自分の気持ちに蓋をした。クローマーに言われてはじめて気がついた、家族のかつての姿。
「ああそうだ、シンクレア」
「なに?」
「メリ〜クリスマス! 愛してるよ、私の英雄。これまでも、これからも、ずっと!」
「……メリークリスマス、クローマー。愛してるよ、君がそう望むなら」
あたたかく整えられた特別な部屋に入って、僕らの聖夜が始まる。
ここまでが去年のやつ。