ゴジラ、異世界に現る。   作:小鳥 戯遊

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 「ゴジラが異世界に現れたら?」っていう妄想が一時期ツイッター(自称X)で話題になってたので、ちょっとまとまった話を作りたいと思ったらだいぶ時間がかかってしまった。
もう話題も過ぎ去ってるのに......。 とりあえず、最後まで完成させたのでよければ読んでください。


1:オード村の呉爾羅

 ここは、アルルタン王国。王帝アルルタン四聖の下、統治された魔法国家である。街では魔力をエネルギーとして、多くの人間の他、異種族たちが豊かに暮らしている。その王国の遥か南西のに位置する海側に小さな村「オード村」があった。オード村では魚たちの死骸が海に浮き出たとき、海神『リバイアサン』が現れるという伝説が語り告げられていた。そして、今朝方釣りに出掛けた村民が浮き出た魚の死骸を目にした。すぐに村長に報告すると、村長は祭りの準備と1人の少年を村長の家に招き入れるのであった。

 

 

「あの、俺まだ何もやってないんですけど?」

 

少年はか細い声で村長に伝える。だが、村長は彼の言葉を無視する。彼の祖父で、育ての親であるノルジは少年に粛々と祭りについて話した。

 

 

「これは決まり事なのじゃ。ユーリよ。わかってくれ。荒神様を収めるには、巫女が必要なのじゃ......」

 

 

「いや、巫女って。俺、男ですが?」

 

 

その言葉に村長が反応する。

 

「最近おなごの生まれが悪くてのう......。仕方がないんじゃ。それに、お前さん顔だけは女のようにかわいいではないか......。大丈夫! 巫女姿もきっと様になるじゃろう」

 

 

「それ村長の性癖入ってません?」

 

 

「公私混同は......しない!!」

 

 

 

村長は顔を背けながらも大声を張り上げた。ユーリは目を細めて彼を不信がった。

そして彼は『どうしてオレは転生して早々こんな目にあってるんだ』と自分の生まれの不幸を呪った。そう、彼はいわゆる”前世の記憶”というのを持ち合わせていたのだ。いわゆる異世界転生という生まれにある。だからこそ彼は、今やりとげるべき役割から逃げたしたかった。

少し考えて、ユーリは彼らが望む自分の役を演じるふりをして逃亡する計画をたてようと考えたのである。

さっそくユーリは村長に語り掛けた。

 

 

「......。でも、みなさんを守るためなんですよね。 わかりました! 私が、生贄の巫女となりましょう」

 

 

 

「ほ、本当かね!? さ、さっそく、この巫女衣装を着てくれるかな??」

 

 

そういうと、村長が手を叩くと侍女が数人ほどユーリの元にやって来て畳まれた巫女衣装を持ってきた。

ユーリがその畳まれた衣装を手に取ろうとした瞬間、侍女たちがその手を止めて彼女らの手で着付けを行っていく。ユーリはみるみる着ていたみすぼらしい村人装束から、白と赤の日本神社によくあるような巫女袴に似た着物へと変貌した。だが、その衣装は正当なものというより少し着崩したような肌色をあえてみせているような箇所が散見された。

 

 

「なあ、これがほんとに祭祀の巫女かぁ? どう見てもエロ同人でしか見たことないんだけど? 村長、本当にここの現地の人?」

 

「なにを言うとるんかさっぱりじゃが、やはりその姿は破廉恥なのかのう......。君を送り出す前にいた娘も同じような文句を言っていたのだが、これは昔から伝わる伝統衣装なのじゃよ......。」

 

 

正直、どうでもいいと思いながらユーリは着せられた衣装のまま村長とともに儀式の場となる王国最南端にある洞窟へと向かった。その洞窟の入り口前にはドラゴンを模した像が狛犬のように2匹向かい合わせで並んでいた。

そのドラゴン二匹の視線をくぐりながらユーリは洞窟を前にする。

 

 

「あっ! 怪獣だ!!」

 

わざとらしい口調で、ユーリは海の方を指さす。今だと言わんばかりにユーリは駆け抜けようとした。

あまりにもずさんな逃亡計画を遂行しようとしたその時である。海がとたんに静かになったのだ。

荒々しかった波が、元気にしていた魚たちが死体として浮かび上がっていく。

その光景に、村人はどんどん怯えた表情に変わっていく。

 

「な、なんだあれは!?」

 

その場にいた誰もがその方を見ると、黒い影がじっとこちらを睨みつけているように感じた。

ユーリは逃げるのも忘れて、茫然と立ち尽くす。

 

「ほ、ほんとに怪獣が?」

 

何が起こっているのかわからずにいると、祖父ノルジが叫んだ

 

 

「か、海神様!!」

 

だれもが海神リバイアサンの到来を肌で感じていた。だが、村長だけは違った。

 

「違う! あれは、リバイアサンではない! 文献の絵と全然違う!!」

 

「では、なんだというんです!?」

 

「わしにもわからん。黒い、ドラゴンだとしか......。とにかく、みんな逃げるんじゃああ!!」

 

 

村長の言葉に、その場に居合わせた村民たちは慌ててユーリを置いて蜘蛛の子を散らすように消えていく。

怪物のようなそれは、その黒き肌とぎょろりとした瞳を有してそれは上陸した。

ひとたび、その怪物が雄たけびを上げると、鋭く尖った牙があらわになる。

そしてドシ、ドシと踏み荒らしながら村民たちは踏み殺されてしまう。

 

「こ、これはチャンスか? だが、あの生物に踏みつぶされるのはまっぴらごめんだ......」

 

ユーリはあの黒い竜に見つからないように息をひそめるしかなかった。

だが、ユーリはこの光景がどうも初めてではなかった。まるで映画の世界のような出来事に、彼は息を呑んだ。

そして、彼はその黒い竜を間近で見た瞬間思い出した。それが怪獣王であることに......。

 

 

「......。まさか、ゴジラ?」

 

 

まさしく、ユーリの見たものはユーリ自身が前世時代の映画で見た破壊神「ゴジラ」

いや、正確には大戸島の伝承にある『呉爾羅』に近い前傾姿勢の姿をしていた。

呉爾羅はユーリなど目もくれずなぜか村民や村長を襲っていく。それを見たユーリはいい気味だとほくそ笑みながら、呉爾羅に声援を送る。

 

 

「いいぞ、ゴジラ! あいつらなんかやっつけてしまえ!!」

 

 

彼の声に呼応したかのように呉爾羅は、彼らを蹂躙していく。

そして、あらかた終わると呉爾羅はユーリを気にも留めず背後の洞窟を、その小さな手や強靭な顎で壊していく。

だが、目的が終わったのか呉爾羅は止まり、そのままなにもせずにまた海へと戻っていった。

 

 

「こ、これは!! そうか、これが俺のスキルか!? オレのスキルは『怪獣を呼ぶ力』なんだ! きっとそうだ! これで、オレはオレ自身の力で生き抜いてやる! そして、気に入らないものはすべてゴジラで破壊してやる!!」

 

ユーリが自身に酔いしれていると、身体の芯が抜けるような感覚に陥った。

 

「あれ......。なに、これ......」

 

気づくと、彼は鼻血をたらりと流していた。そして、そのまま倒れてしまった。

ユーリ自身はスキルの代償であると勘違いしているであろうが、実際は呉爾羅が雄たけびを上げたときの唾液や体液に含まれる放射性物質で被爆したと思われる。

 

 

呉爾羅はユーリの意志に関係なく、また海へと戻り北上していく。すると、突然呉爾羅の遊泳していた海に変化が訪れた。北西部の瘴気の森には、魔王軍が潜んでおり彼らの魔法は人類、あるいは通常生物を異常状態にする『瘴気』を帯びていた。瘴気は森に流れる川から、海へ流れやがてそのあたりは魔物の巣窟と化していた。

奇しくも呉爾羅も、その瘴気に当てられ一度は瀕死になるも、驚異的な回復能力でそれを学習、克服し大きな体へと変貌していった。

 

 

それはまさしく「ゴジラ」そのものであった。

 

 

 

 




※アルルタン四『聖』の表記について。本来日本において同名の王が王位についた場合「四世」というように「世」の字で表記するのが正しいのは間違いないですが、『異世界感』をより強く表現したいと考えて「聖」の字を使ってます。

今回のゴジラスペック

ep1のゴジラ

呉爾羅:全高15m 体重7t

「ゴジラ -1.0」冒頭にて登場する大戸島の呉爾羅と類似。
どのようにして異世界にやって来たのかは詳細不明。
マイナスワン同様、獰猛な性格で人間に危害を加える。
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