ゴジラ、異世界に現る。   作:小鳥 戯遊

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 ゴジラは北上し、魔王軍の住む瘴気の森へやってきた。そののち、魔王軍は彼を敵とみなし、攻撃した。だがその攻撃は空しくゴジラの分厚い体表を貫くことはなかった。魔王は撤退を軍に指示するも、軍勢は引くことを知らなかった。ゴジラの足元からよじ登ったりして対処しようとするも次々と引きはがされ、潰されていく。魔王軍は魔法をつかった。だが、その攻撃さえ当たっても効果はなかった。ゴジラは怒り、彼らに白熱光を浴びせた。魔王軍はその光を浴びて消失してしまう。ただ、魔王だけは彼らの肉の壁により守られ命からがら逃げて行くのだった。


2:黒き竜 ゴジラ

 アルルタン王国北西部に位置する瘴気の森で、魔王軍が壊滅した。 漁村の崩壊を魔王軍の侵攻によるものだと断定していた王帝アルルタン四聖は、この魔族の消失事件を危惧した。魔族よりも危険な生物がいるかもしれないとなると、長い戦いの歴史に混乱が引きおこると考えた。そうして、王帝はこの一連の事件には緘口令を出した。そして、この混乱を収めるため王帝は近衛兵たちに調査団を結成させた。

 

 

「我々調査団の目的は敵地への偵察だ。質問があるものは前へ」

 

調査団団長オルフェウスが言うと、一人の青年が前に出た。

 

「キール、どうした」

 

長い銀髪を揺らす青年、キールは真剣な眼差しで聞いた。

 

「魔王軍を壊滅させたというほどの者、団長はそれを敵と認識しているのでしょうか」

 

オルフェウスは頭を軽く掻きながら、言葉を選びながら話始める。

 

「魔王軍がいなくなった以上、なんであれ敵と判断して差し支えないと私は思う。味方になったとしても、その強さがある以上国が管理できるとは思えない。というより、私は管理したくない......。他に質問は? ......ないようだな、では30分後に出立する。みな、馬の用意と耐魔法甲冑の用意をしろ!」

 

 

『はい!』

 

騎士たちは揃って返答した。そして、魔法使いたちによってエンチャントされた甲冑を装着していった。その甲冑は、闇魔法の副作用「瘴気」を人体から守る役目を担っている。全身が銀の甲冑で覆われた騎士たちは、同じく銀の甲冑を纏った馬にまたがり王国より東に20キロ以上離れた森「瘴気の森」へと向かった。森に入るも、不思議なことに動物はおろか魔族にさえ出会うことはなかった。

 

「鳥の鳴き声も聞こえないなんて......。しかも、土壌汚染がひどい......。闇の瘴気も満ちている」

 

兵士の一人が呟くと、オルフェウス団長は自分の甲冑から取り出した魔水晶をまじまじと眺めている。

 

「たしかにそうだな。魔水晶がどんどん黒ずんでいるということは、魔王も近い。みんな、注意してくれ。......そういえばキール、お前はこの近くに住んでいたって言っていたな。昔もこれくらいだったのか?」

 

キールは森近くの辺境の町に生をうけ、14の時に騎士学校に編入するまではその町でつつましく暮らしていた。

 

「平和そのものでしたよ......。変わり果てたものです。この周辺は......。魔王は僕の故郷を穢した悪です。この手で倒すと誓い、入隊したのに!」

 

「そうだったのか......。お前の甲冑も黒くなってきているな。何度この森を訪れたか知らんが、手入れを怠るなよ」

 

「申し訳ありません......」

 

黒光りするキールの甲冑を軽く小突くも、他の者たちも同じように歴戦の戦士かのように甲冑が黒ずんでいた。団長がこの異変に気付き始めたその時、草むらからガサガサと音が聞こえ始めた。兵士たちはその音の方向を向き、剣を取りだした。

 

「に、人間!? 生物兵器だけでは飽き足らず、自ら侵攻を始めたか! 俗物め!」

 

 

草むらの影から現れ兵士たちを罵り始めたのは、魔王と恐れられた闇魔術の使い手『デスペラード』であった。キールはたった一人の魔王に向かってそれぞれの剣を向けて振りかざす。

 

「魔王デスペラード! 貴様、生きていたのか!?」

 

 

「愚かな人間どもめ! たとえ私一人でも、人類だけは道連れにしてくれる!! ダークネス・サンダー!!」

 

 

魔王もすかさず魔法で対処するも、甲冑のお陰でキールを含む兵士たちは瘴気に負けず攻め入る。

 

 

「迂闊に攻めるな! キール!!」

 

団長の声も届かず、キールを筆頭に兵士たちが森を駆ける。

その時だった。森の奥から地響きと鳥の散開と共にモンスターの鳴き声が聞こえ始めた。山の奥からのようで、やまびこのように反響していく。

 

 

「な、なんなんだ? ドラゴンの鳴き声にも聞こえるが......」

 

 

キールが足を止め、振動した方向に剣を向ける。

だが、魔王もまたその声に震えていた。

 

「お前達の兵器ではないというのか? では、あれはなんだというんだ!!」

 

 

「おまえ、何を言っているんだ?」

 

キールはさらに魔王に近づき、彼の首元に剣を当てる。

彼は首筋に血を流しつつも、必死に兵士たちに訴えかける。

 

 

「我が軍勢も、彼の者に全滅させられた。貴様らも命が惜しくば逃げるがよい」

 

「貴様の言うことなど!!」

 

 

瞬間、山の方の木々がメキメキと音を立てて倒木し始める。また雄たけびとは違う地響きが小刻みに揺れる。まるえ何者かが歩いているかのようだった。兵士たちと魔王は音のする方へと自ずと向かっていった。森のさらに深く、大きな山の上に行くとそれは確かにいた。山の上にどっしりとした竜の頭が見えていた。山の影からどんどんとその姿を現し、その全景をあらわにした。それは山のような龍であった。それはゴジラである。だが、そのことを兵士たちは当然知らない。

 

 

「翼のない、ドラゴン?」

 

「そんなの、調査兵からの情報から上がってないぞ!?」

 

「奴が、来る!!」

 

 

ゴジラは漁村を襲った時よりはるかに大きくなっており、背びれは禍々しく尖っていた。

だが、兵士たちが知るどのドラゴン系の魔族とも一致しなかった。魔王も知るはずもなく、ただ茫然としていた。

 

 

「でも、現にここにいるじゃないですか!!」

 

 

ゴジラは兵士たち、そして魔王までも標的と言わんばかりに殺気を放ち睨みつける。

オルフェウス団長はその殺気に恐れをなし、兵士たちに撤退を命じる。

 

 

「撤退! 撤退!!」

 

 

「何を言うんです! 私達はまだ戦えます! 魔力を込めた弓矢ならドラゴンの鋼鉄な鎧のような鱗をも穿ちます!! 弓兵! 一斉射!!」

 

弓矢に持ち替えた兵は、その竜に矢を放つがゴジラは無傷であった。彼は弓兵たちを獲物を狩る目で捕らえた。大きな足が、弓兵たちを捕らえる。逃げる間もなく、蟻を潰すかのように蹂躙していく。

 

 

「これでわかったろ! 奴は我々では太刀打ちできん!」

 

焦る魔王をよそに、団長はまだ希望を捨てていなかった。

 

「ここで諦めては騎士の名折れ! 私は聖剣に選ばれし聖騎士オルフェウス!! 剣よ!!」

 

団長は背中に帯刀していた剣を天に掲げた。その聖なる虹色の輝きで、騎士たちは平静を取り戻す。そして、全員抜刀してオルフェウスに力を与えんとばかりに彼の剣に集約させた。

 

 

「我が聖剣グラディウスよ! 騎士たちの知恵と、勇気を力に変えよ! 大裂斬!!」

 

 

聖剣が振り下ろされた瞬間、鋭い衝撃波がゴジラを襲う。その衝撃はゴジラの体表、そして片目にダメージを与えた。だが、それはただゴジラを怒らせただけに過ぎない。ゴジラは攻撃してきた団長の方へ巨大な尻尾を振りかざす。その風圧は突風、いや大嵐に匹敵するもので団長は大木に吹き飛ばされてしまう。オルフェウスはその衝撃に血を吐き出し、倒れ込む。

 

「あ、ああ......。うああああああああああああ!!!!」

 

 

 キールはその光景を目の当たりにして、やっと魔王の言葉を理解した。

 

「ここで死ぬ気か! さっさと逃げるぞ!!」

 

怖気づいて身動きのとれなくなっていたキールに魔王は舌打ちをしながら、彼の手を引いて撤退していく。

だが、正気に戻りつつあったキールは魔王に手を引かれて逃げる自分に腹を立たせていた。同時に、魔王の手を振り払い、魔王とは別の方向へ走っていた。ただキールはどこへ行くかも考えていなかった。ただ、何もできない自分を振り払うように走っていくのであった。

 

ゴジラは、去る者を追わず。そのままキールたちを見続けるかのように制止していた。

そして、まるで勝ち誇ったかのように夜の月に吠えた。

その声は何十キロと離れた王都にも響き渡ったという......。

 

 

 




ゴジラスペック

ep2ゴジラ


ゴジラ:体長50m 推定体重2万t
造形イメージはいわゆる初代(1954年)のゴジラ。
初代を視聴したとき、山から出てくるゴジラが衝撃的すぎて今でも忘れられない。
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