ゴジラ、異世界に現る。   作:小鳥 戯遊

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 眠りについたゴジラを中心に、ランドール、魔王、ユーリ、そしてキールが集まっていく。彼らはゴジラをどうするのか、またゴジラは異世界をどうするのか。


5:王宮、陥落す

 ゴジラが寝息を立てている頃、最初に襲われていた漁村「オード村」ではジュレイン町から避難していた住民たちが避難所として村を利用していた。そこには、魔王も身を潜めて過ごしていた。

 

 

「ここなら人間が少ないとみて来たというのに、避難所となっていたとは......。ん?」

 

 

魔王の目に映ったのは、この漁村の浜辺で倒れていた少年ユーリであった。ユーリは昏睡状態から目を覚まさずにただ、看護されているだけだった。

 

 

「おい、この者はなぜ目覚めないのだ?」

 

不審者のようにローブを深くかぶった魔王に、怯える住民であったが彼は目をそらしながら答えた。

 

 

「わ、わからんのです。治療は施しました。でも、まるで起きるのを拒んでいるようで......」

 

 

「私にも見せろ」

 

「あなた、魔法は使えるのですか?」

 

 

「誰に言っている」

 

そう言うと、魔王は手をかざしてユーリの体内を確認した。そして魔王も彼が転生者であることを悟った。その事実を知った途端、魔王は手を光らせた。そのまま何か呪詛のようなものをユーリの耳元に囁き始めた。

 

 

「これでこやつは動けるようになるであろう」

 

 

そう言った途端、ユーリはむくりと起き上がった。その場にいた住民たちは「おお」と感嘆し、魔王であるローブの男を労った。

 

 

「あんた、誰だか知らないがすごいな!」

 

「あまり、気やすく触れん方がいい......」

 

すると、ユーリは起き上がってすぐに去ろうとする魔王の腕を掴んだ。

 

「触れるなと、言ったはずだ!」

 

 

「ゴジラは!? ゴジラはどこいった!!」

 

 

「な? ゴ、ジ、ラ? なんだその発音しづらいものは?」

 

 

「黒い竜をみてないかって聞いてるんだ!」

 

 

魔王はその言葉を聞いて、あの日を思い出した。ゴジラが急に現れて自分の配下たちが無残にも殺された瞬間のことを......。だが、同時になぜこの少年はその竜のことを知っているのか疑問にも思った。

 

 

「お前、その竜のことを知っているのか?」

 

 

「知っているも何も、俺のスキルで具現化したものだ」

 

 

彼にはスキルはない。だが、そのことをユーリ自身は知らない。その勘違いは、魔王も同様である。この珍妙な恰好をした男が自分の領地を荒らした張本人であると確信し、魔王はユーリの胸倉を掴んだ。

 

 

「私の領地を荒らした、その黒幕はお前か!? 誰の差し金か!? いや、言わなくともわかる。どうせ、アホの王帝だろう。今すぐ貴様を殺して、そのゴジラとやらを我が物にしてやる!!」

 

 

魔王の手が禍々しい光と共に発光した。その瞬間、ユーリは自分の能力を明かしたせいでまたも死んでしまうと確信した。だが、こんどは下手な死に方をしたくないと彼に提案を持ちかけた。

 

 

「待て! 俺は誰の指図も受けていない! だから、あんたと俺はいい関係になれるはずだ!! 二人きりになれるところで話し合おう!!!」

 

 

魔王は顔をあげると、二人を取り巻く住民たちが怯える姿が見えた。魔王は正直、この人間たちなどどうでもよいと思っていた。なんなら、まわりの人間ごと殺せばいいとも考えていた。だが、自分を受け入れてしかも公的してくれた人間たちを手に掛けるほど落ちてはいなかった。

 

 

「今日は機嫌がよい。いいだろう、貴様の口車に乗ってやろう」

 

 

そう言って、魔王とユーリは住民たちをよそに集落から離れて、ゴジラによって破壊された洞窟の前まで歩いてきた。魔王は人がいなくなったところで、少年に姿を見せた。少年はその全身が炎につつまれたような人外に驚きはしたものの察しはついていた。

 

 

「あんた、ここの魔王ってやつじゃないのか?」

 

 

「ほう、見る目があるな。我が名はデスペラード。この国では確かに『魔王』と呼ばれている。さて、少年よ。貴様の話とはなんだ?」

 

 

「俺と手を組まないか?」

 

 

「ほう、人間からそれを申し出るか。 続けろ」

 

 

「俺はこの世界を破壊する力を有している。そして、あんたはこの世界を破壊したい。俺は別に、その破壊を止めようとは思わない。俺は面白いと思ったことを行動したいと思っている。倫理観や、正義感とかそういう縛りなんて興味がないからね」

 

 

「ずいぶんと破滅的思考の持ち主だな。だが、気に入った!! 少年、名は?」

 

「ユーリ」

 

「ユーリか。 貴様を生かしてやろう。あのゴジラを使いこなし、我と共にこの世界を破滅させようではないか!!」

 

ユーリと魔王デスペラードは互いに手を組みあった。早速二人は、ゴジラ捜索のため村を旅立つことにした。

まずは浜辺を確認することにした。

 

 

「これが、きっとゴジラの足跡だ」

 

浜辺にはしっかりと、ゴジラの足跡としっぽを引きずった後が残されていた。それは、ずっと王都の方面へと続いていた。

 

 

「ゴジラもなぜか王都を目指しているというわけか。それより、なぜ今ゴジラは貴様の所有を離れている?」

 

「多分、俺がスキルを発動させてすぐに意識を失って、暴走した......。とかかな?」

 

「万能ではないようだな、その『すきる』とやらは」

 

 

さらに足跡を追っていくと、ようやく大きな小山のようなものが見えた。

かの眠りこけたゴジラであった。

 

 

「あれが、ゴジラか?」

 

 

「そうだ! ゴジラだ!」

 

二人の会話を遠くで聞いていた魔法使い、ランドールは二人の近くへと向かっていった。

 

 

「誰だ? な、魔王!?」

 

 

「ん? その、紋章。 王国の魔法使いか......。忌々しい連中め」

 

 

「え? そうなの?」

 

すっとんきょうなユーリの声に、ランドールが気を取られていると魔王が先手を打つように攻撃魔法を仕掛けた。だが、すんでのところで防御で跳ね返す。跳ね返った魔法は地面に衝突し、その土を軽くえぐった。

 

 

「今は我々が戦う時ではない!」

 

 

「ならいつ闘う!? ここで会ったが百年目というだろう! 私はこのゴジラを使い、すべてを破壊しつくす!」

 

 

「ゴ? それがかのドラゴンの真名か!? だが、彼に意思はない!」

 

 

「意思はある! 俺こそがゴジラの意思! 神の意思なのだからな! ゴジラよ、覚醒せよ! そして我らに破壊をもたらせ!!」

 

 

ユーリは天高く腕をあげるも、ゴジラはピクリともしない。ゴジラは寝息を立てながら回復を待っていた。

その様子に、一番食いついたのは魔王であった。

 

 

「まったく話が違うではないか! 貴様がゴジラを扱えると聞いたからここまで来たというのに!!」

 

 

「うるさい! 神に逆らうな! 俺はゴジラ、いや神をすべる者だぞ! オレ様の声は神の声、オレの意思は神の意思なんだよ!!」

 

 

「見つけた......。化け物め......」

 

混乱の最中、引き寄せられるかのように騎士団の生き残りキールがゴジラとそれを囲む人達の前に現れた。

 

 

「騎士団? 君、生きていたのか!!」

 

ランドールが駆け寄ろうとするも、キールはそれを払いのけて眠りに浸るゴジラの頭へ一直線に向かう。

 

「奴は私が殺す! どんな手を使ってでも殺す!!」

 

「あいつ、気でも狂ったか?」

 

「人一人で神を止めることはできない! さあ、目覚めたぞ!!」

 

ユーリが指を差した方向にランドールたちが向けると、すでにゴジラが目を開いてこちらをじっと見つめていた。そして、ゴゴゴという音と共に起き上がっていく。その拍子に、しっぽがユーリたちの方へと振っていく。魔王が瞬間に防御魔法を展開するも圧倒的な破壊力でそれを破り地面もろともえぐり取ってユーリらを吹き飛ばした。

 

 ゴジラは叫びをあげた。これまでにない怒りと殺意のこもった声で、その場にいた誰もが目を開き怯えた。

そしてゴジラは歩き始めた。これだけ守ってきた防壁を破って、進んでいく。

 

 

「逃すか!!」

 

キールは単独で斬りかかろうとするも、ユーリがそれを引き留めてしまう。

 

「俺の神に傷をつけるな!!」

 

 

「邪魔をするな!! 奴は、奴だけはオレが絶対に殺す!! コロス!!」

 

混沌の状況の中、ランドールの魔水晶からノイズと共に王国から伝令が下った。それは、ゴジラに対して超魔導兵器「ディン・ホロウ」の使用を承諾したという旨であった。その威力はジュレインの時の10倍の威力であることはランドールの知識内で理解していた。だからこそ、彼は声を荒げてキールを引き留めた。

 

 

「ダメだ! それ以上奴に近づくな!! 今、勅命が下された!! ここは危ない! ここが戦火になるぞ!!」

 

 

その瞬間、王宮の方から轟音と共にディン・ホロウの光が放たれた。だが、ゴジラもその音とそれから来る脅威を学習していたのだった。ゴジラは背びれを大きくして威嚇させ、放射熱線を撃つ姿勢に入り今度は口から青白い熱線をその攻撃に重ねるように放った。王国製のホロウは電気系の能力を付与されていた。だがゴジラの放った熱線にもまたプラズマに近いものが放射されていた。ホロウと放射熱線の二つは空中で反発、せめぎ合いになり停滞していた。

 

 

 その中で、王宮内ではルード魔法大臣率いる魔法使いたちがホロウを維持するため奮闘していた。

 

 

「絶対に破らせるな!! この魔力量であれば、あの攻撃魔法は超えられまい!!」

 

大臣が息巻いていると、キオが魔水晶を見て青ざめていく。

 

「ダメです! こちらの魔力量急激に減退! 相手の魔物のエネルギー放射量が増大し、向かっています!!」

 

「全エネルギーを防御魔法に回せ!! ただちに!!」

 

「ま、間に合いません!!」

 

 

「全員退避ーーーー! 王を連れて転送し」

 

 

轟音と共に、ゴジラの放射熱線は不落と言われたフルール城、そしてその城を支えていたフルール山の頂もろとも吹き飛ばしていった。その光はキールとランドールを深く絶望させ、魔王とユーリを歓喜させたのだった。

ゴジラは熱線を吐き終わると、口元が焼けただれていた。だが、すぐに細胞が活性化していき、再生していった。だが、エネルギーを使いすぎたのか、ゴジラは活動を停止しうなだれるかのように眠りに入ったのだった......。




不落と言われたフルール城。だが、ゴジラの前に無力であった。
その威力に魅入る者もいれば、絶望に陥るだけのものもいた。
災害級の怪獣に彼らはどう立ち向かうのだろうか。

堕ちた王宮へ、ランドールたちは歩き始める。
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