ゴジラ、異世界に現る。   作:小鳥 戯遊

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 王宮に戻ったランドールたちを待ち望んでいたのは、跡形もなく消えた王城と火消しの追いつかない王都であった。だが、そこにも小さな希望が芽生えつつあった。


6:対立

 ゴジラの活動停止する最中、ランドールはいち早く王都へ戻ろうとしたがキール達が気がかりでならなかった。

 

 

「そこの騎士、名前と階級は?」

 

「キール......。階級は、上等兵(ルーク)......」

 

 

キールの瞳に生気はなく、その声も以前の覇気はなかった。心配そうにランドールが彼の顔を見つめると、キールは負い目があるかのように目をそらしてうつむいてしまった。ランドールはこれ以上の会話は彼にとって苦痛だと思い、優しく簡潔に話した。

 

 

「そうか。とにかく、生きていてよかった......。共に国へ帰ろう......」

 

キールはうつむいたまま頷いた。次にランドールは少し警戒ぎみに魔王と共に現れた少年、ユーリへ話しかけた。

 

 

「それで、君は一体何者だ? 普通の少年のようだが、なぜ魔王と共にしていた?」

 

 

声をかけるも、ユーリは高圧的な印象を受けたランドールに対して口を開くことはなかった。それよりも、ランドールはおとなしく座り込んでいる魔王に気味悪さを感じていた。

 

 

「それで、魔王よ。君はなぜ生きている?」

 

 

「配下達を犠牲にした。私が生きていれば、いくらでも魔物は生み出せるからな。それよりも、王国はこいつをどうするつもりだ? 殺すのか?」

 

「当たり前だ。この惨状を持って、生かす理由などあるものか」

 

 

「どうだかね。こいつはどう見ても不死身だ。その不死身性を利用しようと思う連中もいるのではないか?」

 

 

「お前のように禁忌を犯そうとする人間はいないと私は信じている。少なくとも、今のところは......」

 

 

「フン......。神を飼いならそうなど、おこがましいにもほどがある」

 

 

そう口を開いたのはユーリだった。ユーリはあの熱線を見て始めて痛感したのだった。自分が無力であったこと、そして自分自身になんのスキルも持っていなかったことを悟っていた。

 

 

「貴様が言うとはな。この痴れ者め」

 

魔王に耳の痛い言葉を投げかけられると、ユーリはしおらしく対応する。

 

 

「俺は何者にもなれなかった......。だから、ここでなりたかった。それで力を得たと勘違いしてたんだ......。でもこれだけは信じてほしい。ゴジラの知識は君たちより豊富なはずだ!」

 

 

ユーリの瞳に嘘はついていないだろうと感じたランドールは、少し間を置いて頷いた。

 

 

「そう、なるのか......。よし、まずは君とキール君を王国へ運び込もう。 魔王、君の処遇はその後だ」

 

 

「いや、私もついていくぞ。お前達人間と、我らさえ手負いにさせたゴジラ。どちらが勝つか興味がある。一番近くでお前達の足掻く姿を見届けてやる」

 

 

「......。私は君を国に入れるわけにはいかない。だが、一人でもここで起きたことを話せるもの、そして魔法使いの人材がほしい。......。君の入国を黙認する」

 

 

「言っておくが、助力はしない。ただ傍観するだけだ」

 

 

「それでもいい。 では、行くぞ!」

 

 

4人はゴジラの元を離れ、一気に王都へと転送された。だが、そこに広がる光景は悲惨と言わざるを得なかった。山の上に建てられていた荘厳な城は跡かたもなく、城下町もまだ火の海で人の声などまるで聞こえてこなかった。

 

 

「これが、我が祖国なのか......」

 

 

ランドールが驚嘆していると、魔王は嘲笑ぎみに腕組みをした。

 

 

「我が軍勢をもってしても果たせなかった光景が、今ここに広がっている。祝いたいところだが、少し複雑だな。やはり、自らの手を持って滅ぼしておきたかった」

 

 

「無駄口叩いてないで、人が残っていないか探すのを手伝ってくれ」

 

 

「すまない、私は手伝えない......」

 

キールは茫然と涙を浮かべていた。幾度となく現れ、蹂躙した光景を見てきた彼の無力さが彼を蝕んでいた。

一時は自暴自棄に戦おうとしたあの活力さえも、あの畏怖の光の前では無碍と化すのだ。

 

 

「今は無理をしなくていい。君の戦力がいつか役に立つときがくる、その時は力を貸してくれ」

 

そう言い残し、地べたに座るキールを置いてランドールたちは生き残りの王都民を探し始めた。

すると、瓦礫を越えた先のエルフの移住区域あたりで人影がみられた。

 

 

「もしや、ランドールか?」

 

 

そこに立っていたは、法務大臣のフレアムであった。

 

 

「フレアム大臣! 生きておられていましたか! それで、ルード様は!? 他の王宮に仕えていたものは? 王は?」

 

 

「まあ、焦らずに。すぐにそこへ案内させる......。ところで、そこにいるのは......魔王か? おやおや、ランドール殿? どういうことか、説明してもらえるでしょうな?」

 

嫌味たらしくランドールに突っかかるも、ランドールは真摯な態度でかつ早急にフレアムに伝えた。

 

 

「我々は、あの巨大生物について報告したいことがあるのです! 魔王も、そこにいる少年も重要参考人かと思います! いまは、互いの諍いなど忘れ、一つになるべきかと......」

 

 

ランドールの目に嘘はないと悟ったフレアムであったが、彼がふと魔王に目をやるも彼は少しも目を合わせたりしなかった。彼は一掃魔王を怪しんだ。だが、ランドール同様に知識は多い方がいいと飲み込んだ。

 

 

「感情では拒絶しているが、理性で受け入れるとしよう。だが、魔王の手綱は君が握ってろ。それが条件だ」

 

 

「承知しました......。というわけだ。念のため、二重に拘束魔法をかける。振り解こうなど、考えてくれるなよ?」

 

 

ランドールは魔王の腕に、魔法で生み出された鎖を駆けた。そして、彼の魂にも同じような拘束をかけた。

 

 

「ほう、魂の拘束とは若造にしては高度な知能を持っているようだな」

 

 

「褒めても何も出ないぞ。ほら、さっさと歩け。君も、さあ」

 

 

「ユーリだ。さっきは、返事をせずに悪かったよ......」

 

 

ユーリは改めてランドールに自己紹介した。ランドールは覚えるように彼の顔や紙をじっと見つめた後、すぐに歩き始めた。フレアムの導きと共に進んでいくと、エルフたちに介護されている怪我人が大勢密集した場所へと来た。さらに進むと、そこには高級そうなベールに包まれた大きなベッドがあった。

 

 

「女王陛下、フレアムでございます......。謁見したく、帳を開けても?」

 

そう言うと、ベッドの向こうにいるであろう女王が凛とした声で応えた。

 

「はい、どうぞ......」

 

すると、フレアムはそのベールを半分開いた。そこには、女王らしき高貴でありながらも複数破れた箇所のあるドレスを着た女性と、白くふわふわとした絹で覆われた小さな赤子が女性の腕に抱かれていた。

 

「こ、子供?」

 

「まさか、女王様......。ここでお生みに?」

 

驚くランドールに、フレアムは頷いた。

 

 

「ああ......。しかも、男の子だ。我々は一安心している。希望が見えたのだ。皆も復興に力を入れんと頑張ってる」

 

 

「では、国王陛下は......」

 

 

ランドールの言葉に、フレアムは言葉に詰まりながらも正直に答えた。

 

 

「すまない......。 ルードが前線に立っていたこともあり、王の避難が遅れてしまった......。我々には、どうすることもできなかった。皆、自分のことで精いっぱいだったんだ......。守れたのは、ごく一部の人間と、地下に居住地を持つエルフたちのみとなった」

 

 

ランドールは希望を持ち始めた。生きていた人たちには、魔法使いも兵士もいる。そして、守るべきものが明確にある。だからこそ、彼らはもう一度立ち上がれると感じたのだ。

 

 

「そうだったのですね。ですが、よかった。じゃあ、早速ですがあの生物についてですが!」

 

 

「ああ。私も『あれ』について興味があってね。専門家を呼んだよ」

 

 

「専門家? 誰です?」

 

 

「騎竜」

 

その瞬間、ランドールの顔は暗くなり、眉をひそめた。

その一方で、ユーリは少しポカンとしていた。

 

 

「きりゅう? なにそれ」

 

「ドワーフ族からなる、ドラゴンを操る傭兵だ。我が眷属の中でも中立などとほざくドラゴンたちのことを一番よく知っている面倒な連中のことだ」

 

魔王は意外にも優しくユーリに騎竜について簡易的に説明した。だが、ランドールにとっての問題はなぜフレアムが傭兵を雇ってきたのかということである......。

 

 

「彼らはドワーフの中でも異端です。また面倒を起こされては困ります」

 

 

ランドールは一歩後ろへ引くと、フレアムは女王に一瞥してカーテンベールを閉じて苦い表情で答えた。

 

 

「彼らと共にあのドラゴンを生け捕りにする。それが可能なのは騎竜だけだ! そうだろう? ザセリ」

 

そう言うと、フレアムの後ろから身長が彼の腰の高さくらいまでしかないひげもじゃの男が手を挙げて挨拶し始めた。

 

「お初にお目にかかる。紹介に預かった、わしがザセリさね。巨大な不死の竜が獲物と聞き、喜び勇みはせ参じたのはいいが、正直わしはやりたくないねえ。あの光線を見た今じゃあ、わしらだって命がなんぼあっても足りん」

 

「なに? 話が違うではないか! 君たちに操れる竜はいないと豪語していただろう!?」

 

 

ゴジラはまだ動きそうにないが、人同士が争う時間はない。

それでも、ランドールはフレアムに協議した。

 

 

「大臣、あれは人が操れるものではありません!」

 

 

「永世国家実現のため、不死の力は必要だ! 他国との交易にも有利に立ち、操ることも可能だ! 絶対的力が手に入るのだぞ!? あれは神からの福音! いや、神そのものといっていい!! 絶対に殺させはしないぞ!!」

 

 

「あれは神ではない!! ユーリくん。君は言っていたね。神を操るなどおこがましいと。確かにそうだ。そしてそれ同様に、人間を含むすべての種族を誰かが何かで操ろうなど、もっとおこがましいことだと私は考えます! あれはただの巨大は生物だ! 現に、この被害をもたらしたのは誰ですか! あれはすべてを破壊する、害獣なんです! 我々、全生命体を脅かすものに、我々は一丸となって戦う必要があるのです! 違いますか!!」

 

 

息巻くランドールにあっけにとられ、反論のタイミングさえ失ったフレアム大臣はただ彼の気迫に負けていた。

フレアムは、少しうつむいた後頭を悩ませていた。言葉を詰まらせ、回答しない彼に変わり、騎竜のザセリが口を開いた。

 

「害獣ねえ。竜ってのは、もとより害獣さね。わしらも昔は手を焼いたもんだ。そういう意味では、捕獲を諦めて奴を討伐する方に舵切った方がわかりやすい。そこんとこ、どう思う? 賢い大臣さんよう」

 

 

「......。騎竜が言うのなら止むをえまい......。だが、諦めたわけではないぞ」

 

 

「感謝します。フレアム大臣」

 

 

ザセリ、ランドール、フレアムの3人は互いの意見の相違をどうにか乗り越えてゴジラ討伐へと一歩踏み出していく。ゴジラの目覚めは近いのか、ゴジラの首元がうっすらと光始めた。

 

 

 




 ゴジラが再度目覚めるまで時間はない。
それでも、彼らは全員の力でゴジラを止めねばならない。
彼らの作戦会議が始まった。
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