ゴジラ、異世界に現る。   作:小鳥 戯遊

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ゴジラは異世界の住人たちを苦しめ、その世界を破壊した。
彼らは一縷の望みを元に、不死の生物へ対峙する。
彼らは殺すことにこだわらず、追い出す方へ舵を乗り出す。
「ゴジラ追放作戦」が今はじまる!


8:決行!『ゴジラ追放作戦』

 魔王デスペラードは昔を思い出していた。遠く、まだ魔王へと変貌していなかった頃。彼には夢があった。勇者とともに魔物の調査をし、その元凶を断つこと。だが、その途中で彼はその元凶に魅入った。力に溺れた彼は、魔力が暴走し、復讐と黒魔術の炎に包まれたような異様な化物となっていったのだった。だが、自分以上の化け物との遭遇に、彼の力はゆらぎつつあった。それでも最後に残っていた残り火は、ほんの少しの勇気と希望であった。

 

 

「フッ......」

 

魔王は自身が希望に満ちていると感じ、これまでにない満足感を得ていた。

そのことに奇妙さを感じていた。これまで満ち足りていなかかった部分を満たしているようで気分がよかった。

 

 

「なにがおかしい?」

 

ランドールは不信そうな顔を向けると、魔王は我に返った。

 

 

「いや、別に。 これまでにない戦いの快楽を得られると思うと、つい笑みがこぼれてしまった」

 

 

「気持ちの悪い奴め。よし、もう一度作戦を伝えるぞ! 騎竜隊でゴジラを陽動。その間に私は魔法陣をかき上げる。書き上げたら魔王、君がそこまで誘導し足止めをしてくれ。最後に私が転送魔法を使う!!」

 

 

「ああ、何度も言わなくていい。 ただ、それで本当にうまくいくのか?」

 

 

「やるしかない! 魔王、お前も魔法陣作成を手伝え! お前だって、魔法に精通しているだろう!?」

 

「誰に言っている!? やるぞ!」

 

 

「おっしゃ! やってやるか!!」

 

 

そう言うと、ザセリは指笛を鳴らした。すると、自身の相棒である竜と共に別個体の竜数匹、そしてそれらにまたがる騎竜隊員たちが姿を現した。

 

 

「さて、ここからが俺たちの出番じゃ! 生きてこその物金。死んでも物や金は手元に残らん! 必ず、生きて帰ろうぞ!!」

 

彼の言葉はすべての隊員が、いつもかけられている言葉だった。

それでも、彼らはなんの文句も言わずただ返事を返す。

 

 

「おう!」

 

騎竜隊たちはおのおのドラゴンに乗り、羽ばたいていった。ドラゴンの翼に、朝日が照り付けて金色に輝き始める。その反射でようやくゴジラがむくりと起き始める。ゴジラは自分の周りを飛び交う騎竜を目線で追いかけ、その太い腕で掴みかかろうとする。だが、そうはいかずドワーフたちの華麗な操縦技術でそれをかわしていく。

 

 

「威嚇射撃でいい! 全員矢を放て!!」

 

 

ザセリの合図で、彼らは腰に装着していた小さな小銃に近いフォルムをしたクロスボウを2丁取り出した。彼らがクロスボウの引き金を引くと、一瞬にして小さな矢が放たれていった。矢じりには世界で固いとされるドラゴンの鱗が使用されていて、その威力は同じドラゴンの鱗でさえも穿つという。だが、その威力はゴジラの前ではなんの効力もない。ただ、ゴジラを注目させるにはちょうどいいものであった。

ゴジラは見事騎竜たちの挑発に乗り、彼らを追いかける。

 

「よし、いいぞ! 魔王、円形は私が描く。呪法は君が描け!」

 

騎竜隊たちの作戦が軌道に乗り始めたのを見届け、ランドールはすぐに地面に魔法陣を描く準備に取り掛かった。

彼は魔法陣を描く用の巨大なペンを魔王に手渡した。

 

 

「わ、私がか? 重要な部分だぞ。魔王である、私に任せて大丈夫なのか?」

 

 

魔王は不敵な笑みを浮かべる。だが、ランドールは鼻で笑う。

 

 

「自分でもおかしなことと思っているさ。だが今は『お前を信じる』!!」

 

 

その言葉に、魔王はふと我に返った。自分を信じてついてきた魔物たちの顔がよみがえった。そして、自分自身を生かすために散っていった彼らを思い出した。

 

「貴様ら、友たちを安らかに眠らせるためだ! この魔王デスペラードは、人間と共に戦うぞ! 許せ、友よ!!」

 

 

彼は自分の余りある魔法の知恵を生かして、転送魔法の魔法陣のための呪法を書き記していく。

 

 

「す、すごい......。アカシックレコードの閲覧なしで、呪法をスラスラと......」

 

 

「昔の魔法使いは当たり前にできたことだ。貴様ら現代人は文明で簡易的にしすぎだ。魔術書の近代化? 笑わせるわ!!」

 

魔王は数十分ののちに地面に魔法陣を描き上げた。その美しさに少し見惚れていたものの、ランドールはすぐに我に返って準備を始めた。

 

「始めるぞ! 魔王、後は頼んだ」

 

「お前は死ににいくのか?」

 

「死んだらお前に魔法大臣の座をくれてやる」

 

「冗談はよせ、さっさと行って帰ってこい」

 

魔王の顔は、変わらず炎に包まれて読めないがランドールからは優しい顔つきに見えた。

ランドールは少し安心した顔つきで、自分で空を飛び出した。

 

「さて、我に集いし魔物たちよ。 再び我と共に現れよ!! リ・ゲイン!!」

 

 

魔王が呪文を叫ぶと、地中から魔物がわらわらと湧いてきた。彼らは、意思表示さえないもののその力は生前と同等の力を有した再生魔物だった。魔王の軍隊は、騎竜の陽動とバトンタッチをして魔法陣へと連れていくのだった。だがゴジラもそのままついていくほど馬鹿ではない。その大きなしっぽで魔王軍を吹き飛ばそうとする。だが、それは魔王軍も織り込み済みだった。魔王軍はすぐに散開して、魔王がゴジラの目の前に姿を見せた。

 

 

「ゴジラ、知っているか? 『大魔王から逃げることはできない!』」

 

デスペラードの瞳から暗示がかけられたゴジラは引き寄せられるように、魔王を捉えて離さない。魔王はそのまま魔法陣の元へ誘導していく。その際も、魔王軍はゴジラが逃げないようにその巨大な身体を取り囲んでいる。

 

 

 魔王とランドールが奮闘する一方で、王国ではフレアムが動いていた。どうにかしてホロウを再び動かそうとエルフたちと連携を試みていた。

 

「君たちエルフが人間と対話したくないのも、無理を言ってここを避難所にしてもらっているのもわかっている! だが、今は全員一丸となって行動している! この国に永住する以上、この国の指示に従ってもらうぞ! 早くホロウを再建させるのだ! そして、この国の力を取りもどす祝砲をあげるのだ!!」

 

 

エルフはにこやかに首を横に振る。これまでの印象とまるで違う様子に、ユーリが不思議そうな表情を浮かべる。

 

 

「さっきまで友好そうだったのに、なんでかたくなに拒否するんだろう」

 

「それは、我々がエルフを追放したからだ......」

 

ユーリの疑問に、やさぐれたキールが答え始めた。

 

 

「うお、いつの間に......」

 

 

「さっきから騒がしいから気になってな。またあの化け物と戦おうとするのか......。大臣とて、無謀だとわかっているくせに」

 

 

「なら、なぜ君は一度ゴジラと対峙したんだ?」

 

 

ユーリの純粋な言葉に、キールは言葉を詰まらせた。そしてキールは思い出した。自分がなぜ騎士団に入ることを決めたのか。その本当の理由を。彼は魔王に対する復讐で騎士団へ入団したのではなく、魔王から市民を守るため騎士団に入団したのだと。そして、市民を守る力があるのは自分の役目だと思い出したキールはその目に生気を取り戻していく。

 

 

「私は、ただ復讐のためにゴジラと戦おうとした。だが、そうじゃなかったんだ。私は、誰かを守るために騎士になったんだ! だから、もう私は逃げない! フレアム大臣、進言させてください! 国を思うなら、兵器を捨てるべきです! エルフたちはそれを伝えたいのでは?」

 

キールの言葉に、エルフたちは恐る恐る賛同するように頷いていく。

その光景を見て、フレアム大臣はますます眉間にしわを寄せる。

 

 

「ええい、うるさい!!  私はまだ、永世王国を諦めたわけではないぞ! どんな犠牲を払ってでもゴジラの力を我が手中に収めてやる! 追放? もってのほかだ!」

 

 

「無茶苦茶すぎるだろ! 早く何とか!」

 

 

ユーリが慌てた瞬間、キールは剣を抜く衝撃でフレアムを気絶させた。

 

「申し訳ありません、大臣。ですが、あなたのような戦乱を混乱に落とす存在は面倒だ。今は少し、寝ていてくれ。今は、我々でできることをしよう。最悪の場合を考えて避難をする。君たちエルフは、大臣たちを連れて地下都市から隣国へ避難誘導してくれないか? 亡命の口利きは君たちの得意分野だろう?」

 

そう言うと、エルフたちは静かに頷いた。というのも、アルルタン王国の東隣はエルフ族たちが創設した国であった。アルルタンからそこへ亡命するアルルタン出身のエルフたちがよく地下を通っていたことを彼は知っていたのである。

 

「君も早く行くんだ」

 

避難していくエルフたちを見つめて大変そうだなと他人事のように立ちつくしていたユーリにとっては晴天の霹靂のような言葉だった。自分こそ、ゴジラの専門家だと思っていたからである。

 

 

「え、俺?」

 

 

ユーリはゴジラからキールの方に向いた。その瞬間、彼の体感時間が現実よりゆっくりと流れだす。ゴジラを前に逃げ惑う国民、エルフたち。そして、ゴジラへ抵抗していく騎竜や魔王軍。そして、自分の選択を考え始めた。このまま一国民として、避難してゴジラの顛末を見届けずに終わるか、それとも今ゴジラと対峙して少しでも自分の心を満たすか。それは彼にとって簡単な選択だった。

 

 

「いえ、残ります! 僕は、ゴジラを知ってる! だから、あなたのように騎士となって戦います!」

 

 

「それはダメだ。君には十分情報をもらった。これ以上は危険だ。それに君はまだ子供だろう? 子供が戦場に出てはならない。それは、私の代で終わらせて見せる!!」

 

そう言うと、キールはユーリをエルフたちに引き渡してしまった。キールはそのまま王国に残り、生き残った住民がいないか捜索を再開していく。

 

 

 一方、ゴジラの方はというとランドールたちの誘導のおかげで、魔法陣の真下へ到達していた。

 

 

「今だ! ランドール!!」

 

 

魔王の声がランドールの魔法石に響き渡る。ランドールは王国が小さく見えるほど遠い空の上に浮いていた。キール達の避難していく様も少しだけ観察していた。

 

 

「国民は国を捨てたか。ゴジラが動き出した以上、避けられない状況か。だが、この作戦が通れば住民はこの地に戻ってこられる!! さあ、ゴジラ。お前を追放する!!」

 

 

ランドールは転送魔法を、魔導書の書かれた通りに読み始めた。すると、ゴジラの真下に書かれた魔法陣が光り始めた。魔王軍はゴジラを魔法陣の内側へ必死に押し込めていく。

 

「もう少しだ! 旧き友たちよ!! もっと、もっと押し込め!! ゴジラを押し込め!!」

 

 

ゴジラは諦めずに魔王再生軍たちを払いのけ、引きはがし続けた。そして、魔法陣から抜け出そうとした。だが、詠唱中の転送魔法の外からは脱出できない壁のようなものがゴジラを阻んでいた。その壁は彼の熱線でさえ阻んでいる。

 

 

「やったか!?」

 

 

だが、ゴジラは考えた。魔法陣の壁ではなく、地面そのものを破壊し始めたのだ。ゴジラはまずその強靭な足で地面をドスドスと叩き、その後自分の熱線でその割れ目を広げていく。割れ目のせいで転送魔法の魔力がドンドンと弱まっていく。ランドールは急いで詠唱を続けるが、転送する対象が遠く、さらに大きなもののため時間がかかってしまった。それがゴジラに好機をもたらしていた。

 

 

「ランドール、まずいぞ! 地面が崩れかかっている!」

 

 

「バカな!? 魔法陣は内側からの破壊は不可能なはず!? 魔法陣で強化された魔法陣でさえも奴にかかれば塵芥か!!」

 

 

パリンと、魔法陣が崩れるとゴジラは暴れる限りを尽くして、ランドールや再生魔王軍たちをしっぽや口で振り回したり足で踏みつぶしていく。ランドールと魔王はすんでのところで回避していくも、魔王軍の軍勢はゴジラの前にまたしても破れてしまう。

 

 

「またしても、してやられるか!!」

 

 

「まったく、規格外の生命体だな......。おい、ゴジラが移動したぞ!!」

 

 

ランドールと魔王はただゴジラを見つめるだけで万策尽きていた。

ゴジラの足は、王都の目と鼻の先まできていた。 

 

 

「性懲りもなく、王国の方へ向かうか!? 魔王、騎竜たちと共にゴジラをとにかく王国から離れさせるんだ! これ以上、ゴジラは近づかせてはならない!」

 

魔王は単純な疑問を抱いた。

ゴジラの目的はなんなのかと......。

 

 

「しかし、なぜゴジラは王国へ向かう? 一体、何がそうさせているんだ?」

 

「狙いは王国自体ではない。魔力エネルギーではないだろうか。彼は核ではなく、魔力をエサにし始めたんだ。この世界に適応するために......。その魔力の多い場所を狙っているんだ。だから、王国を......。そして、こんどは自然魔石の多いエルフの国や他国にまで被害を出し続ける......。お前も、いつか食われて死ぬかもな。お前は、魔力の塊だもな......」

 

ランドールの皮肉に、魔王は答えなかった。魔王は魔力エネルギーのことを知りつくしているからだ。

魔力は永遠に存在しているわけではない。人や生命の感情の揺らぎ、魂の数だけ存在していると知っているからだ。ゴジラに永遠の『怒り』が存在している以上、ゴジラは魔力を糧として、核エネルギーに変換して活動を続けると確信した。魔王は、そのゴジラの瞳にかつての自分を重ねて恐怖を覚え始めていた。

 




ゴジラ追放作戦は、ゴジラの圧倒的破壊力に敗れてしまう。
だが、時を逃してしまえばゴジラはまた王都を襲ってしまうだろう。
市民が避難していく王都では、作戦失敗に動揺していた。
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