だが、彼らは諦めずに立ち向かう。
その激動の中、ユーリとキールの覚醒が始まる。
ランドールたちの「ゴジラ追放作戦」が失敗に終わり、ますます王国の方では避難が困難になっていた。さらにはエルフたちの誘導の最中、意識を失って運ばれていたフレアム大臣が目を覚ました。エルフに担がれた彼は目覚めた途端暴れだしてしまう。ユーリはそれをただ、後ろで見ていた。そして、フレアムはエルフや逃げ惑う国民たちを押しのけて1人、王宮の方へ走っていった。国民たちの憐れむ目つきを見つめた後、ユーリは好奇心の一環でエルフの腕を振り払った。
「僕、彼を止めてきます!」
エルフは誰も引き留めない。ただ、他の国民たちの避難で精いっぱいだったということもあるが、エルフはたとえ自国であっても多民族とは不干渉を貫く傍観的中立の精神があるからだ。そのことも知らず、不気味に感じながらもユーリはこっそりとフレアムについて行った。すると、彼は階段を上り始めた。
「ここになにがあるってんだ?」
そのままユーリはフレアム大臣の背後を追いかけていくと、その階段は王宮の地下に繋がっていた。地下であっても豪華絢爛な壁画と複数の松明によって地下の雰囲気を変化させた。
「ここって、お城の地下?」
「ついてきてるのは誰だ? 気配を消さず、不用心な奴め」
フレアムが後ろを向くと、そこにはユーリがいた。
フレアムはユーリを見ると、ため息をついた。
「なんだ、例のゴジラ少年か。なぜついてきた」
「俺になにか、できないことないかなって」
「君にできることなど、なにも......。いや、待てよ......」
フレアムの顔が少し明るくなっていく。
「少年、ゴジラを仕留めたいか?」
「ああ、もちろん!」
「なら、私にいい考えがある。ついてきなさい!」
そう言うと、フレアムは松明を持ってユーリを誘導していく。地下の迷宮のような廊下を右へ左へ移動していくうちに、どんどんと機械的な造形の壁へと変化していった。
「意外と、機械的な文明なんですね......」
「魔法や、魔力を統制するための装置だ。そうでなければ起こせる奇跡も起こせない。そして、その奇跡の積み重ねがこれだ」
そう言うと、フレアムは壁付けにあったスイッチを押した。すると、電球に近いライトの照明が一気につき始めた。すると、フレアム達の目の前には30mの遮光器土偶が彼らを見つめていた。
「え、土偶?」
ユーリは歴史の教科書でしか見たことのないものが目の前にあって驚いた。というより、なぜこれを兵器にしようとしたのかやや困惑していた。彼の困惑を気にせず、フレアムはさらに目の前の土偶の解説を始めた。
「大昔、君と同じような異世界から来た住人がいたらしい。その人自身の知識と、奇怪な能力で作り上げたという。我々はオーパーツと呼んでいるがね。君は好きに呼ぶがいい」
「えぇ......。じゃあ、ド・グゥとか?」
困惑していたユーリは喜びの眼差しに変わっていた。彼の童心がくすぐられるような感じがしていたからだ。
彼は元の世界でも、ロボットは好きな方だった。だが、自分のオリジナルのロボットを駆るのを夢見ていた。
どの世界にも属さない、自分だけの機体に胸を膨らませて彼は操縦席のありそうな胸の部分のハッチを開けてみた。
「よかった、ボタン操作とかじゃなさそう」
操縦席には、綺麗な球体型の操縦桿とそれを固定しているであろう円環の操縦桿のみが浮かんでいた。
それ以外の操作パネルやレバーなどはない。シンプルなデザインであった。
彼が操作用の球体の操縦桿を触ると、暗かった操縦席に電源が回り、操縦者の足元から頭頂部まで全周囲に渡ってモニターが展開していた。ユーリが全方位を見渡していると、コックピットの入り口からフレアム大臣が顔を出してきた。
「操縦、できそうか?」
「説明ガイダンスがついてたんで大丈夫そうです!」
「よろしい! 私は外付けの舞台装置でオーパーツの発進を手助けする。それ以降は全部お前に任せる」
「やります! 発進させて下さい!」
ユーリは一瞬でパイロットの気分になった。この光景を夢に見ていた。
自分の役割をようやくもらったような気がして、嬉しくなっていたのもある。
フレアムの操作により、ド・グゥが乗っていた台座が動き出す。せりあがっていく土偶はどんどんと地上へあらわになっていく。その姿を地上で引き続き避難誘導をしていたキールは間近で目の当たりにした。
「なんだ!? あの巨人は? 腕組みをして城から出て来たぞ!?」
ド・グゥは手足をすべてロケットのバーニアのように見立てて、それらを点火させて発進させてゴジラの元へと向かった。その様子はランドールたち、ゴジラ追放作戦実行部隊の目にも留まった。
「な、なにかくるぞ!?」
「王宮からの援軍? なんにせよ、今は助かる!!」
ゴジラもまた、ド・グゥの進行に呼応して雄たけびを上げる。ユーリはド・グゥの中で高揚しながら、ゴジラの目の前に着地し、そのまま、3本のクローのような右腕を拳に見立ててゴジラの頭部に一発食らわせた。
「縄文文化の拳は重いぞ! ゴジラ!!」
意味不明な言葉を操縦桿内で叫ぶも、ゴジラは気にも留めず頭を横に振りながら頭突きでド・グゥをなぎ倒していく。ド・グゥの円筒形のスラスターの足ではバランスを保つのも一苦労のようだ。操縦席ではジャイロ機能が備わっていて、横になってもユーリは常に地面に垂直であったもののその衝撃は一般の人間に耐えられる負荷ではない。
「ぐはぁっ!!」
少し血を吐くも、ユーリはすぐに操縦桿を握ってド・グゥの足蹴りをゴジラの脚部にお見舞いした。だが、ゴジラの体幹は強く、倒れることはなかった。むしろその足を掴み、そのまま吹き飛ばしていく。
「うわぁ!!!」
ド・グゥの遮光器に似たか細いカメラアイが強制シャットダウンして発光を失う。
周囲のモニターは何個か砂嵐に見舞われて見えない。
「たかがメインモニターの一つや二つ!! くれてやるわ!」
ド・グゥは立ち上がり、ゴジラの顎に蹴りを入れる。ゴジラもまた、その逞しい腕でド・グゥの頭を殴っていく。ユーリは操縦桿内で揺れるも、負けじと叫ぶ。
「ゴジラを倒すだ、追放するだなんだ言ってもどうにもできねえ! それがゴジラだ。 だがな、最後に人間の力に負けるのがゴジラなんだよ!! さっさと
ド・グゥはスラスターで空高く飛び上がり、そのまま右足を突き出しながらジャンプキックをお見舞いする。その一撃はゴジラの頭部に直撃、一瞬ふらつくもゴジラはさすがの防戦一方な戦いに嫌気が差したのか口から放射熱線を放とうとした。だが、その一瞬を見逃さなかったユーリはド・グゥの短い腕でゴジラにヘッドロックをかける。ゴジラは負けじと小刻みに熱線を吐き続ける。乱発される熱線は王都の壁や山を荒らし、ついには王都内のエルフの地下都市へ降り注がれてしまう。
「あぶない!!」
避難先に熱線が吐かれてしまえば、全員死んでしまい希望は潰えてしまう。その絶望は避けなければならないとキールは走り出した。彼の足は一瞬固まってしまったが、意地でも走った。ここで逃げたら、これまで逃げて生きて分が無駄になると思ったからだ。今こそ、騎士になった自分の役割を思い出すんだと自分に言い聞かせて、キールはその熱線の光を自分の剣と、自分の誇り、そして少しの魔法で受け止めようとした。
「さすがに、通常の剣では厳しいのか......!?」
その時、瘴気の森から一筋の光がキールの元に降り注いでいった。
それは、聖剣であった。聖剣はキールの剣に憑依したかのようにキールの持っていた剣に融合していった。
そして、キールは大きな光に包まれていった。
遮光器土偶型最終決戦兵器『ド・グゥ』
体長:30m
体重:10t
メインウエポン:アームクロー
脚部スラスター、腕部スラスター各2つずつ装備。
頭部30mmバルカンポッド1門
脚部、腕部は有線による遠隔操作が可能。