投稿遅れて申し訳ないです。完結まで残り僅かです。
「何して欲しい?」
月光が差し込む、アルメリアのマイハウス。
ベッドに腰掛け、頬杖をつきながら妖艶な表情を浮かべるアーキ。
アルメリアはもぞもぞし、直視できない妖艶さの彼女から目を逸らそうとする。
「なんでもいいのよ。今日は邪魔も入らないし、気分がいいから。たくさんしてあげる」
アーキは引かない。
ご褒美なんていらない、とは言えなかった。アーキに可愛がってもらえるのが何よりの報酬であり、労いなのだから。
「その……また、あの……」
アルメリアは指で自らを唇を指す。
自分でやっておきながら、顔を真っ赤にした彼女のことをくすくす笑いつつ、アーキはアルメリアに歩み寄った。
「じゃあ、してあげる」
自然と跪いて、彼女の目線に合うようにしたアルメリアは瞳を閉じる。
やわらかい唇が、乾ききってしまった自身の唇と重なり、酷い罪悪感とそれと同じくらい大きな幸福がアルメリアの中を満たす。
頭がぴりぴり痺れて、次第に罪悪感は消え失せて、幸福感で塗り替えられる。
「お顔がとろん、ってなってる。ふふふ……かわいい」
アーキのからかうような声音が、アルメリアの思考を鈍らせる。
もう彼女に全部預けたっていい。
それくらい、今のアルメリアは幸せな気持ちでいっぱいだった。
アルメリアが彼女に身体を委ねる。何をされても無抵抗な心構えだ。
アーキは彼女をベッドへと押し倒し、柔らかな肢体をぎゅうっと押し当ててやりながら、今度は少し強引に唇を重ねた。
彼女の長い舌が口内に入ってきて、アルメリアを喰らうように口の内側を這う。
たまらない擽ったさは、やがて頭を犯してくるような快楽へと変換されていく。
彼女の吐息が、脈拍が、温もりが、肌先で感じることができるまで密着して、二人は愛という人間のみならず全ての生物が根底に持つ本能に身を預けているのだった。
「アルメリア、お口開けて」
べ、と彼女が出した舌へ自らの舌を絡めさせる。
正直この行為には、性的な目的以外の意味はないだろう。
だが、そんな行為を気兼ね無くできる、二人はそこまでの関係になったのだという確固たる証明にはなる。
思考なんてできなくなったアルメリアの惚けた顔。アーキはそれを優しく、さすさすと撫でてやりながら、仄かに赤く染まった耳に唇を近づけた。
ぐちゅ、と彼女の耳をアーキの舌が這う。
唾液と舌の生暖かい感覚が直に脳へと伝わり、アルメリアは情けない声を漏らしながら激しく痙攣する。
「ぅあっ……そんなところっ……」
アルメリアの声など聞こえていないよう、アーキは彼女の身体を隅々まで愛撫してやった。
愛が無ければ出来ない行為。それだけのことができるだけの愛がある。
アルメリアはその事実の愛おしさを、快楽とともにかみしめていた。
「ねぇ? もっと気持ちいいこと、させてあげようか?」
トロトロになった耳から伝わる、禁断の誘惑にアルメリアは息を呑んだ。
もう、それをしてしまったら一線を越えたも同然。後戻りができない関係になる。アルメリアの認識はそうだったゆえに、少し戸惑う。
ハンター。いつ死ぬかなど未知数。
それなのに、大切な、手放すことなど許されない人を持つなど。
これまで会ってきたハンターは皆、同じハンター同士の恋人を持っているか、そもそもいない者だっていた。
彼女に、悲しい思いはしてほしくない。
そう想いながらも、アルメリアは頷く。
「うれしい」
一言、彼女はそう溢してから妖艶な笑みを月の光に重ねた。
アルメリアの餅のような肌を、少し力を込めて握ってから、その顔を歪め、少し寒気のするような表情を吐露した。
「……いただきまーす」
◇
火照る身体に魘されながら目を覚ましたアルメリアが見たのは、もう橙が混ざってきている紺碧の空だった。
ベッドの湿りは依然として取れることはなく、野性味あふれる臭いは暫く取れてくれそうにはない。
アルメリアは起き上がろうとするも、関節の節々が痛み、筋肉が疲弊しきっているためにそれを阻害される。
そもそも、首にがっしりと絡められたアーキの細い腕が力強くこちらを締め付けてきて離さない限りは、アルメリアは身動き一つ取れない。
「起きた? おねえーさん」
初めて会った時の光景が重なり、アルメリアはまた高揚が胸に宿りかける。
頬に口づけしてくれたアーキはにっ、と笑ってくれて、耳元で囁くように話を始めた。
「……前にしたお話、覚えてる?」
「……いつの?」
「祖なる者」
アルメリアは回答になっていない、そんな文言ですぐに思い出す。
あまりに突拍子もない話だったから、よく記憶に残っていたのだ。
白い龍。
孤高な彼女を表すには相応しい表現だとは思うが……アーキは何を思って自分にその話をしたのか、いまいちよくわからなかった。
「まだ気づかない?」
「どういうこと?」
「……ふふっ、これだけはヒミツ。自分で考えて。とっても大切なことだから」
「?」とアルメリアは口に出す。
いずれ自分は、祖龍を狩れとでも言われるのだろうか。そうなったら、多分断らずにはいられないのだとは思う、とアルメリアは楽観的に考えるのであった。