【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

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13.裏切り者

 ルサルカ隊旗艦、ザンジバル級ユリシーズでは混乱が起きていた。ジェーンのガルバルディが出撃した直後に、メインシステムが突然シャットダウンしたのだ。

 

 「予備電源を起動! 各銃座に兵員を送れ。目視で敵の動きを確認しろ。すぐに直る」

「主電源回復しました。敵に動きは有りません……いえ、ガ、ガルバルディ、シグナル、ロストしています……」

 

 10分後に回復したセンサが捉えたのは、ガルバルディだったものと、こちらに向かってくる白いツインアイの機体。ガンダムだった。

 

「敵機、照合できません。未知の機体です」

「MS隊、出撃しろ! 敵は1機だ。確実に始末しろ」

 

 ゲルググ4機が、見事な編隊を組み、ガンダムに襲い掛かる。が、一分も保たなかった。

 

「なっ!? クロエ、タリア、頼む。アレを落としてくれ」

 

 タリア機が、数回の交差で大破する。斬り落としたクロエ機の首を持ち、ユリシーズにガンダムが迫る。

 

「神様、頼む。助けて……」

 

 ミリ艦長の祈りが通じたのか、ガンダムは引き返していった。

 

「艦長……敵艦の照合取れました……ペガサス級フォレスタルです。グレイヴの乗艦ですよ! 野郎、やっぱり俺たちを切り捨てやがった。ジェーン大尉も死んだんですよ。これから、どうすれば?」

 

 ミリは、キャプテンシートに拳を叩きつける。ガンダムの動き。あの癖のある挙動は間違いなくジェーン・ドゥのものだった。だが、それを暴露して部下の士気を下げても意味はない。

 

「コロニー落としを続ける。私たちを見捨てたグレイヴ、そして連邦政府を叩き潰す。交渉は不可能だ。死ぬぐらいなら華々しく散ってやろうじゃないか」

「はっ。すっかりジオンの軍服が板についてきましたね」

 

 見逃された強化人間2人は、すっかり怯えていた。サラがタリアを抱きしめているが、震えが止まっていない。

 2人が生かされたのは、彼女らをノイエ・ジールに乗せるためだ。ミリはそう推測した。何もかもグレイヴの掌の上だ。

 

「グレイヴ、お前がされたくないのはコロニー落としだろう? 私たちの怒りを思い知れ」

 

 コロニーに仕掛けられた爆弾の起爆装置を脚で踏み潰す。憎しみを込めて砕いたそれは、ミリの決意の表れだった。

 

 

 

 

 ガルバルディを自爆させ、フォレスタルに収容された女の様子は明らかに異常だった。何かに怯え、辺りをしきりに眺めていた。それから、酸素のある空間であることを確認し、ノーマルスーツを脱ぐと、自分の顔にナイフを突き立てた。溢れた自身の血を顔に塗りたくっている。デッキクルーは誰もそれを止めなかった。

 

 騒ぎが広がりグレイヴが、デッキに現れる。狂人はグレイヴの顔を見るや否や、彼の足元に跪いた。グレイヴが、自身の掌が汚れるにも関わらず彼女の頭を撫でる。血に染まった顔に喜悦が浮かんだ。そして、グレイヴは彼女を抱擁した。

 

「よく戻った。ベル・ベリング」

「はい! ベル・ベリング任務に復帰します!」

 

 ベルの顔の傷は、見た目ほど深くなかった。絆創膏を貼られた彼女は、ニタニタと笑みを浮かべている。

 

「わぁ。GP04だ。アレを私にくれるんですね?」

「ああ。敵のMSを撃破しろ」

 

 その有様は、父親からのプレゼントを喜ぶ娘のようだった。グレイヴがアナハイムから強請ったGP04に、嬉々としてベルが乗り込む。

 

「ベル・ベリング、GP04出ます!」

 

 浮かれているのを、隠そうともせずベル機がカタパルトから出撃する。ザンジバル級からは、6機のMSが出てきた。いずれもグレイヴが誂えたものだ。もっともグレイヴには、重要でもない駒の名を覚える趣味はない。

 

「ベリング大尉が圧勝します。彼女はそもそもの強化適性が高く、経験も有りますからね」

「ふむ。GP04が優れた機体ということも有るな。敵の強化人間は殺すなと伝えろ。生かしたら敵はノイエ・ジールに乗せるかもしれん。その時はベリング大尉のテストに使う」

 

 ベル・ベリングというモルモットは、なかなか良い性能をしている。ムラサメ研の成果と言えるだろう。薬物による制御と依存対象を設定したことで、安全性も高い。

 非道な行為が好きであるというデメリットは有るが、部隊運用の経験もあり、かなり使い勝手の良い駒だった。

 

「グレイヴさん、やっぱアレ私に弄らせてくださいよ。本当の本当にちょっとしか弄ってないのに、あの性能ですよ。元々、残酷な性格なのと、ラリってたので強化適性がすごい高いんですよ。ほとんど強化してないんですよ。ほぼ素ですよアレ。2日くらいしか弄ってないんですよ。すごい」

 

 ムラサメ研のレイゼン研究員が、隣で興奮している。グレイヴは不潔なこの女が嫌いだった。しかし、有能なので殺してはいない。

 

 レイゼンが行ったのは、深層心理への介入とアッパー系のドラッグを取り上げて、鎮静剤を与えたことだけだ。

 ベルは薬物中毒者だったため、クスリがなくなったことで急なフラッシュバックが起き、精神が崩壊しかけた。結果として、深層心理への刷り込みが有効に作用したそれだけである。

 

 刷り込みも簡単なものしか行っていない。家族、特に母親や父親。そして、愛情というものに彼女はコンプレックスを抱いていた。そこを突き、グレイヴを父親として認識するよう軽く暗示しただけなのだ。

 

「顔を変えたのはマズかったかな〜? なんか、精神崩壊しかけてて笑っちゃいますよね。やっぱり処刑のトラウマとか有るんですかね? あっ、今、似たようなアプローチを4人目にやってます。3人目まではおかしくなっちゃって、いや〜脆くて困っちゃいますよ」

 

 放っておくと、この研究員は喋り散らかすので、グレイヴは目で合図した。ムラサメ研から出向してきた他の研究員が、無理やりブリッジからレイゼンを引き出した。

 

「ザンジバルを追尾する。ワイアットにも知らせてやれ。私の麾下の部隊を集めろ」

 

 もう間もなくコロニーは、フォン・ブラウンへの落下軌道に入ろうとしていた。

 

「グレイヴ! コロニーを爆破するという話はどこにいった? 部下の統制も取れないのか? 何のためにGP04を納入したと思っているんだ?」

「そちらのご好意でくださったのでしょう? 私は貴方と何か約束した覚えは有りませんね」

「惚けるな! このままだと、コロニーがフォン・ブラウンに落下するぞ! どうにかならないのか?」

「少なくとも、我々には手段が有りませんね。そちらには有るのでしょう? ならばそれを使えば宜しいかと。我々は、貴方に関与しないと約束します」

 

 フォン・ブラウンからコロニーへ、推進レーザーが放たれた。コロニーの進路は地球へと向かった。

 

「ルナリアンでも計算は間違えるのか。愚かだな。地球軌道上に艦隊を集結させてあるな?」

「はい。勿論ですとも。我々は極悪非道なジオンから地球を守る正義の味方ですからね」

 

 フォレスタルは、艦隊集結地点へと向かった。ジャミトフやワイアットには、既にこのことが通達されていた。ソーラ・システムの用意は整っている。

 地球側には、バスク大佐率いる艦隊とソーラ・システムⅡが、後方にはデラーズの逃げ道を塞ぐようにワイアットの艦隊が布陣している。フォレスタルは隷下の艦隊と共に、ソーラ・システム側に展開した。

 

「公国の興廃はこの一戦にあり! 総員奮起せよ!」

「ジーク・ジオン!」

 

 デラーズ・フリートの勝利目標は、コロニーが阻止限界点を突破すること。連邦軍の勝利目標は、コロニーを阻止限界点より手前で破壊することだ。

 

 ソーラ・システムⅡの発射により、戦いの火蓋が切られた。計算上は、一分以上の照射によりコロニーは溶解するはずだった。

 

「バスク大佐、コロニーが未だに健在です!?」

「なんだと? 技術者共め机上の計算すら満足にできんとは!!」

「ジオン艦隊、ミラー正面を迂回し、接近して来ます! 奴ら、コントロール艦を狙っています!」

「二発目を急がせろ!! 早く撃て!」

「コントロール艦、消失しました!! ジオンの大型MAです!!」

 

 ノイエ・ジールが吶喊する。通常のパイロットならば、意識を失っている加速だが、クロエとタリアは違う。HADESに耐えるため強化された肉体や精神が、ノイエ・ジールに異次元の機動を可能にさせた。

 

「GP04、目標は敵大型MAだ。徹底的に破壊しろ!」

「はい! ベル・ベリング了解しました!」

 

「ウラキ少尉、敵大型MAを阻止しろ。死ぬなよウラキ!」

「了解。GP03、コウ・ウラキ出ます!」

 

「バーミンガム、まさか俺にアレを落とせとは言わないよな?」

「ほう。流石はニュータイプ。カンが良いな。レイ中尉、あのデカブツを破壊しろ。フルアーマーガンダムの加速力なら簡単に接近できるだろう」

「無茶を言う。でも、やってみますよ」

 

 ノイエ・ジールが、緊急回避を行ったのは、5隻目のサラミスを沈めた時だった。

 

「来る、死神が……アイツ、私たちを裏切ったんだ」

「やっぱりあの人はおかしかった。サラを、ユリシーズの皆を守らなきゃ。そのために、私たちの力は有るんだから」

 

 身体が軽い。やっぱりアイデンティティが確立されてることって重要だよ。ノイエ・ジールに乗っているのは強化人間ズだろう。何も悪いことしてないのに可哀想。でも、ジオン残党に与してコロニー落としをしようとしているんだから、こうなるのも仕方がない。

 

「知り合いを殺すのって、その人のことを色々知ってる分、すごく楽しめるよね」

「黙れ! 死神! お前がいたせいで全てがおかしくなった! ここから居なくなれぇー!!」

 

 Iフィールドと装甲によって守られたノイエ・ジールはかなり硬い。そして、強化人間が乗っているせいで速い。GP04の武装を実弾系にしているが、装甲と巨大さも有って効きにくい。

 

「そこのガンダム、援護する!」

「助かる。名前は?」

「GP03、デンドロビウムだ」

「違う。あんたの名前」

「し、失礼しました。コウ・ウラキ少尉です」

「私は、ベル。よろしくねコウ。一緒に地球を守ろう!」

 

 デンドロビウムが、実弾系のミサイルやら何やらをぶちまけているが、そんなに当たっていない。それどころか、ノイエ・ジールからの攻撃を結構喰らっている。

 さては、コウ・ウラキ、お前注射してないな。脱糞を必死に堪えるような顔をしていないから、そんな喰らってるんだよ。

 

「ベルさん、敵があんなに速いなんて……どうすれば?」

「え? どうするって? うーん、経験を積むとか?」

「そんな、それじゃ今、どうしようもないじゃないですか!?」

「まー大丈夫でしょ」

 

 ノイエ・ジールに、何十発ものミサイルが直撃する。大きくよろめき、搭乗者の悲鳴が聞こえる

 

「あれって、白い流星、英雄、アムロ・レイ中尉です? まさかお目にかかれるなんて」

「ガンダムが3機。豪華だねぇ」

 

 よろめいていたノイエ・ジールが、再度加速する。目標は、私たちではない。敵わないと決めて、艦艇を狙うつもりなのだろう。

 

「逃さないよ。たっぷり甚振って殺してあげるんだから」

「貴様ッ、その邪悪さ。ベル・ベリングか…!」

「久しぶりだね。アムロくん。ルナツーでのパウロ艦長の葬式以来じゃないかな?」

「グローブ事件で処刑されたはずのお前が、どうして生きている? 味方でなければ殺していたぞ」

 

 何故かアムロにめちゃくちゃ嫌われている。ガンダムに乗ったところを殴って気絶させたり、アミア少尉が通報したせいでルナツーで捕まってたからか? 共にシャアと戦った仲じゃないか。 ひょっとして仲間を盾にしたことを怒っているのだろうか?

 あの時、殴るんじゃなくて殺しておけば良かったかもしれない。今はちょっと厳しいな。

 

「無邪気な殺意…! 絶対悪め」

 

 ヘイトがヤバい。特に何もしてないのに……

 

「ララァって怖くないの? 魘されているんじゃない?」

「……死神、お前の影ばかりを恐れていた。そんな俺を導いてくれたのがララァだ。感謝は有るが恐怖はない」

「あっ、ふーん」

 

 初陣が大変だったトラウマが残ってる感じか? よく分からん。GP04だと相性が悪いので、ノイエ・ジールは2人に任せよう。

 私は、雑魚を狩るのだ。雑魚狩りが私に合ってるよ。

 

「おっ、ユリシーズだ。まだ粘ってたんだ」

「ジェーン、やっぱり生きていたのね!! 私たちを裏切って!」

「誰のことか分からないなぁ。私は、ベル・ベリングだよ」

「この! クソ売女! グレイヴのカキタレが! 死ね! 呪われろ!」

 

 ちょっとイラっとしたので、ユリシーズの武装を潰して、ビーム・サーベルを艦橋に突きつける。ブリッジクルーが怯える中、ミリ艦長が、毅然とした表情で中指を上に突き立てていた。

 

「痺れるねぇ! でも死んじゃえ!」

 

 仲間だった敵を殺すの、すごく快感だな。簡単に絶頂しちゃったよ。気持ちいい。やっぱり、人殺しはやめられない。

 

 ノイエ・ジールの爆発に巻き込まれ、コロニーが崩壊する。仕掛けていた爆弾が誘爆したのだろう。デラーズ・フリートは何もできませんでしたね。私のせいか? ま、どうでも良いな。

 

 ワイアット艦隊が包囲していたため、デラーズ艦隊がアクシズに合流することは叶わなかった。降伏した敵をワイアット麾下の艦が、撃っていたのが印象深かった。

 

「やめろ! 降伏した敵を撃つな! 俺たちまで、死神に飲み込まれる必要はない!」

 

 アムロ・レイがオープン・チャンネルで余計なことを言ったせいで、虐殺は終わってしまった。クソ、私、アムロ嫌いだわ。

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