【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない! 作:むにゃ枕
14.それぞれの思惑
グレイヴ派は、アクシズの先遣艦隊を攻撃することを決定した。条約により、アクシズ艦隊は中立であるとされていたが、条約を破ってでも仕掛ける旨味が有ると、グレイヴは判断したのである。
フォレスタルのMS隊はジム・カスタムで統一されている。ちゃっかり良い機体を乗せてるじゃん。
「何そのヘンテコな機体? ガザCだっけ? 私の敵じゃないね」
「来るな! 落ちろ! 落ちろぉぉ!!」
「ベル・ベリング、敵旗艦を撃沈しました! デカいだけの雑魚です!」
「旗艦は沈めるなと言っただろうが! 拿捕しろと言った! アクシズの技術を回収するんだぞ! これ以上沈めるな!」
「はぁ〜、これだから技術屋は……」
ブリッジとの通信を切る。沈めた方が気分が良いじゃん。殺そうぜ。デラーズ・フリートは壊滅したし、コロニーの阻止も出来たし気分が良い。今回のコロニー落としを阻止したことで、私は無罪になりました。犯罪チャラです。罪状が公式記録から消えたぜ。顔も元に戻してくれるという。グレイヴ閣下、一生ついていきます!
そこら辺にいた研究員に、銃を突き付けて強化の有無を聞いたら、暗示だけしかしてないと答えてくれた。良かったーー。いや、良くないな。私が素でおかしいということではないか?
「私っておかしくないよね?」
「やめてください。なんでも喋ります。もう痛くしないで……」
「え、質問してんのこっちなんだけど」
「やめて。私は何も知らないんです。だからやめて」
「んじゃ、楽にしてあげるよ。はい、ばーん」
クルーに向かって、自分の正気がどうとか聞きたく無かったので、拷問されていたアクシズの女の子に聞いた。殺すと捕虜虐待とか言われるから銃を向けて、口でばーんと言っただけだ。恐怖のあまり気絶してたけど、息はしていたのでセーフ。なんて素晴らしい倫理観なんだろう。自分で自分を褒めてあげたい。
ジョン・コーウェン中将は今回の責任を取り、予備役入りをした。アルビオン艦長と故人であるトリントン基地司令が不名誉除隊されることとなった。核をジオンに盗まれたからね。仕方ないね。
アナハイムのオサリバン常務は、自殺したらしい。なんでも、連邦軍情報部にマークされていたからとか……
ノイエ・ジールからは2人の少女の遺体が見つかった。2人の身体からは、手術痕が見つかり、ジオンの恐怖の強化人間としてマスメディアが大きく取り上げた。
連邦軍内部はタカ派が優勢となっている。タカ派といっても幅は広い、グレイヴ派のような極右からワイアット派のような典型的な右派まで揃っている。
グレイヴ派は人気だ。危険なスペースノイドを殺そうという分かりやすいスローガンがウケたのだろう。
ワイアット派もなかなか人気である。悪いスペースノイドを駆逐して、連邦軍内のジオンシンパをパージしたい。でも、過激な手段はやめようという真っ当な選択肢である。
ハト派も、なかなか広いラインナップが有るがデラーズのせいで全く人気がない。スペースノイドを優遇しようという頭ジオン星人の極左はデラーズ紛争以前はちらほらいたが、完全に消滅した。エゥーゴ? そんな組織作れる空気じゃない。
経済優先を掲げた保守派は、議会から突き上げに遭っている。軍縮したら大規模テロを喰らったのだ。予測ができなかったという言い訳は効かない。
ジャミトフ閣下とグレイヴ閣下が立案した法律がすんなり通ってしまうほど、議会はガタガタだ。
ジオン残党がコロニー落としを行いかけたが、それを連邦軍が阻止した。素晴らしい宣伝文句である。阻止したことで、連邦軍は非難されることもない。大々的な宣伝が行われた。
でも、弱腰なのはいけない。ということでティターンズが成立した。この組織が成立するまでデラーズ紛争から3年もかかってしまった。
デラーズ紛争から6年経った、0089年の今、現在のティターンズの将官クラスは、ワイアット大将。グレイヴ大将。ジャミトフ大将だ。
総帥であるジャミトフ大将が管轄するティターンズには、大きく二つの組織が存在する。ワイアット派のロンド・ベルと、グレイヴ派のアレキサンドリア隊だ。
アレキサンドリア隊は、スペースノイドの間で、アインザッツグルッペンと呼ばれている。まだデカい虐殺はしてない。せいぜいデモを起こしたコロニーにゲットーを設置し、敵性分子を木星送りにしただけだ。
木星送りとは、反地球連邦的な言説をした人物を地球圏から追放する画期的な刑だ。そんなにジオンが好きなら地球圏から出ようねという素晴らしい解決策である。ちなみに、私が考案した。素晴らしいことに合法だ。木星艦隊は過酷だが、世界のために無くてはならない仕事だ。採掘頑張ってね!
木星艦隊のパプテマス・シロッコ大佐が、素人を送ってきやがって! 何を考えている!? って抗議してきたこともあった。募集人数の定員割れを起こしているくせに、うるさい。調べたらMSを作り、採掘船を武装していたので、ロンド・ベルと連名で不名誉除隊に処した。
ロンド・ベルがうるさいから違法行為はしていない。というか出来ない。ちょこちょこ合法的に、小規模な虐殺はしている。違法行為は、ロンド・ベルに付け込まれるからやっていないのだ。
ロンド・ベルの後援者はワイアット大将、指揮官はブライト・ノア大佐、MS部隊の指揮官はアムロ・レイ中佐だ。清廉潔白を旨とし、規律が高いのが有名だ。名実ともにエリート部隊であり、鈴のマークは士官学校学生の憧れである。
アレキサンドリア隊の後援者は我らがグレイヴ大将。指揮官はバスク・オム大佐。MS部隊の指揮官は私、ベル・ベリング中佐だ。スペースノイドをぶっ殺したい奴はこっちである。ロンド・ベルとは真逆の性格であり、狂犬として一部のレイシストから熱烈な支持を受けている。しかし、スペースノイドからは蛇蝎の如く嫌われている。
反連邦的な犯罪者をコロニーごと虐殺したいのだが、ロンド・ベルがすげぇうるさいので出来ていない。ティターンズ内部は、冷戦状態でバチバチだが、アクシズという共通の敵が存在しているため、なんとか纏まっている。
アクシズ内部は、ジオン・ズム・ダイクンの実子キャスバル・レム・ダイクンこと、シャア・アズナブルがリーダーとなっている。摂政がハマーン・カーンであり、ミネバ・ザビは2人に何かあった時の予備と認識され、象徴として人気がある。ちなみにシャアとハマーンは事実婚状態にあるらしい。
アクシズ内部は、非常に安定している。そのため、地球圏に戻ればサイド3がアクシズを支持する可能性があると考えられている。
ジオン残党のくせに内部闘争をしない理性があるのが、アクシズのいやらしいところだ。なんでも、アクシズのジオン兵の間では、一年戦争の時に味方を人質にした戦法を取られたり、降伏した味方が殺されたりするところを目撃するなどした兵士が多く、味方同士で内ゲバをするよりも、地球連邦軍への復讐をするべきだと考えているようだ。
また、私が起こしたグローブ事件が、ハト派や保守派により大きく取り上げられ、地球圏に宣伝されたことで、ますますアクシズ内部の士気が高くなったという。先遣艦隊が条約を破られ沈んだことも火に油を注いでしまったらしい。彼らは臥薪嘗胆をスローガンとしているそうだ。
アレキサンドリア隊と、ロンド・ベルは水と油である。呉越同舟であると言っても良い。お互いがお互いを排除すべき敵と認識しているが、アクシズが存在しているため内紛を起こさないのだ。
「では、始めよう」
ティターンズの指導部による会議がはじまった。上座には総帥であるジャミトフが座り、彼の副官であるジャマイカンが横についている。
ジャミトフから見て右側には、グレイヴ閣下、バスク大佐、そして私が座る形だ。
左側には、ワイアット大将、ブライト大佐、アムロ・レイが座っている。この会合、正面にいるアムロが私にメンチ切ってくるのがウザい。バスクもブライトと睨み合ってるし、グレイヴ閣下もワイアットの胸ぐらを掴みそうな勢いだ。
ジャミトフは現状に満足しているらしい。コイツは、戦争で人間を減らして、地球の自然を取り戻したいって思ってる究極の環境活動家だから、ギスギスしているのを見るのが好きなのだろう。
「今回の議題はアクシズの移動に関してです。アクシズが地球圏に向けて移動を開始しました。我々はサイド3においてこれを迎撃します。迎撃拠点は移動要塞ゼダンの門です。意見のある方はいらっしゃいますか?」
「ワイアットだ。一言申し上げたい。ゼダンの門は、
「ほう。ワイアット大将は地理も分からぬほど耄碌したようだ。ロンド・ベルなど解散したらどうかな?」
「貴様らが信用できんという話をしている。ジオン共和国に駐屯すべきではないかね?」
「ロンド・ベルは、スペースノイドに嫌われていることすら自覚できないのか?」
「貴様らほどではない。狂人共め」
「ワイアット大将、僭越ながら申し上げる。何度も言っているが、ジオンやスペースノイドの連中は信じるべきではない。私が奴らの蛮行の生き証人だ。このバスク・オム大佐の姿こそ、ジオンの残虐さの実例だ」
「ブライト大佐だ。発言する。バスク大佐、話題が逸れている。この場は貴官の個人的な主張を聞く場所ではない。慎みたまえ」
「ホワイトベース隊の若造が。ぬけぬけと…!」
「はい! ベル・ベリング中佐です! グローブで教育してやったのに奴らは懲りてないんですよ! ここは、我々アレキサンドリア隊がサイド3に駐屯します。ロンド・ベルはゼダンの門に駐留したらどうです? 私たちが、サイド3の愚民を教育してあげますよ」
「アムロ中佐だ。ベリング中佐、虐殺事件を起こしておいてよくもそんな口が利けるな。貴様には、反省という機能が欠けているように見える。将校としての資格が無い。軍を辞せ」
ジャマイカンがえへんえへんと咳をするが、場は収まらなかった。基本的に我々は仲が悪いのだ。
「貴様ら、ジャミトフ閣下の前だぞ! 控えろ! おい! 聞いているのか!」
「双方、素晴らしい提案だな。我がティターンズはアクシズよりも強固な結束をしているように見える」
ジャミトフ閣下の皮肉により、ようやく静かさが戻った。
「ロンド・ベルはサイド3に駐留し、アレキサンドリア隊はゼダンの門を動かし、そこを拠点にする。そういうことで宜しいですか?」
ジャマイカンが青筋を立てながら、私たちに宣言する。異議を唱える人間はいなかった。
「バスク大佐、ロンド・ベルに先を越される前にゼダンの門を動かしましょう。サイド3にコロニーを供出させ、コロニー・レーザーを確保する必要が有ります」
「興味深い提案だな。レーザーでアクシズを滅ぼしたあと、ロンド・ベルに向ければ良い。ふむ、検討しよう」
会議を終えて、バスク大佐と今後の展望について話し合う。ロンド・ベルが動く前に、私たちが動けば、奴らは介入できないはずだ。即断即決である!
「荒れているなアムロ」
「ブライトか。それはそうだろう。俺はあの女の影に苦しめられてきた」
「ベル・ベリングか。戦争犯罪人指定されたが、処刑されずどさくさに紛れて復帰した、連邦の歪みの象徴だな」
アーガマのバーで、アムロは強いアルコールを浴びていた。ブライトは、それを止めはしなかった。
「俺がはじめてガンダムに乗ったとき、あの女はガンダムごと俺を殴った。今にして思えば、民間人が兵器に乗ったんだ。乱暴だったが正しい判断ではあった。
その後の初陣では、味方を盾にして敵を殺していた。恐怖だった。あれは、死神だ。人を人が殺していた。あの女はそれで喜んでいた。あの声が脳裏から離れない……
必死に、死神を払うようにホワイトベースで戦った。その後のことは、お前の方が詳しいだろう?」
アムロの愚痴をブライトは流す。酔ったアムロは、決まってこの話をする。
「ララァ・スンが、死神を払ってくれた。俺は、まだ死神にはなりたくない。アイツを消し飛ばすことが、出来るはずだ。俺のZガンダムなら!」
「そうだな。ティターンズは、正しくなければならない。アクシズを撃退したら、ロンド・ベルも飛躍するべき時が来るだろう」
「やるのか? ブライト」
「あぁ。ワイアット大将も了承している」
アクシズを撃退した後、アレキサンドリア隊もロンド・ベルも互いを攻撃すると決めていた。水と油の両組織だが、その思考は一致していた。
アクシズを致命的な損害なく排除出来ることを、両組織は疑っていない。ティターンズは割れそうでは有るが、辛うじて一枚岩である。また、一般の連邦軍やジオン共和国軍も加えての迎撃戦だ。アクシズが地球連邦軍に勝利できる可能性は低い。何らかの謀略を仕掛けなければ、アクシズに勝利はない。