【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

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17.失墜

 アクシズ・ショック後、ロンド・ベルとティターンズの関係は悪化する。アクシズの生み出した惨劇により、反スペースノイド的なアレキサンドリア隊がティターンズの中核となった。

 ロンド・ベルが、ハマーン派の武装解除や条件付きの降伏を受諾したせいで、アクシズが暴走したと責める意見まで出る始末である。

 

 ティターンズや連邦軍は、サイド3が落ち着くまで支援を行うこととなった。ロンド・ベルとアレキサンドリア隊が衝突寸前では有るが、対立を抜きにして復興支援をせざるを得なかった。

 ハマーン派の降伏組は、ジオン共和国による保障を受けられそうにない。アクシズにより首都バンチが破壊されたのだ。ハマーン等を受け入れてしまえば、親ジオン公国である共和国でも、国民感情が悪化するのは確実だった。

 

 また、共和国内では、ジオン残党を当局に密告したり、反連邦派の議員が暗殺されるなど、治安が悪化していた。共和国国民は、ギレン・ザビの残滓をようやく本気で洗い流そうとしたのだ。

 

 ジオン共和国首相らは、必死に復興支援を行っていたが、反連邦派である与党の失脚は誰の目にも明らかだった。

 その後、与党は失脚し、親連邦的な野党が政権を奪取した。

 連邦政府は、ジオン共和国軍がアクシズと内通した証拠を突き付けた。それを受け、政権はジオン共和国軍を解散した。共和国軍は、共和国警察予備隊へと縮小されることとなる。 

 

 

 アーガマの食堂で、ハマーンとシャア、ブライトとアムロの4者によるこぢんまりとした晩餐会が開かれていた。

 

「シャア、はい、あーん」

「ハマーン。やめてくれ。1人で食べられる。くッ、顔の傷が染みるな」

「ほら、食べさせてあげるわ」

「アムロの前だぞ。本当にやめてくれ」

「仕方ないわね」

 

 ハマーンが提示した降伏条件は、降伏したハマーン派の兵士、将校の安全確保だった。彼らが理不尽に処刑されたり、罪を負わせられたりしないという条件のもと、ハマーン派は降伏したのである。

 

「ナタリーの一家も、ミネバ様も無事よ。あなたも、ブライト大佐の慈悲に感謝しなさい」

「ブライト、感謝する」

「ごめんなさいブライト大佐。うちの旦那はいつもこんな感じなの」

「大丈夫だ、気にしていない」

 

 アクシズの非戦闘員やハマーン派の将校の受け入れが、ロンド・ベルの課題だった。ジオン共和国は混乱のさなかにおり、どさくさに紛れてアクシズ難民を殺傷する可能性があった。

 アレキサンドリア隊のバスク・オムは、アクシズ難民に対し、強制収容所を設置し、G3ガスを用いたガス室で殺害するとまで公言していた。

 

「アクシズ難民に関しては、我々ロンド・ベルの本拠地であるサイド7、グリプスで保護しよう。だが、バスクらが攻めてくる可能性もある。確実な安全の保障は出来ない」

「連邦の支配下に入るなど…!」

「シャアは黙ってて。ブライト大佐にも迷惑かけたんだから。

 私は、ジオン共和国に行くよりマシと思うわ。あそこに居たら、ヘイトクライムで殺されてしまうかもしれないから」

「その方向で調整しよう。アクシズを止められなかった我々の力不足だ」

「元はと言えば、私の政治力の不足よ。結局、多くのアクシズの兵士たちが連邦と戦うことを選んだわ。そして、バスク・オムとベル・ベリングにより殺された。遺体すら残されなかったのよ。

 私が、一緒に降伏するように説得したけれど、全然ダメだった。たくさんの人に、家族を頼むと言われたわ。ジオニズムに殉じるよりも、貴方に生きて欲しいと言ったのに、みんな聞かなかった。

 泣きながら私に家族を託すぐらいなら、はじめから戦場に行かなければ良いのよ!!」

 

 ハマーンが、嗚咽する。シャアがその肩を抱いた。

 

「すまない。厳しいことを言う。戦闘に参加したアクシズの将兵はおそらく、大多数がコロニー・レーザーによって亡くなった。軍事的にはアクシズは完敗したんだ」

「……本当に男ってバカよね」

「ハマーン。貴女の選択は正しかった。我々ロンド・ベルは敬意をもってアクシズを遇する。我々は、アレキサンドリア隊とは違う」

「ありがとう。本当に感謝しているわ」

 

 シャアが、ハマーンの感謝に対して、何か言いたそうにしていたが結局、口を開かなかった。

 

「シャア、何か言いたいことでも有るのか?」

「ああ。アムロ、私はお前と戦いたかったんだ。お前に怯えていた自分が嫌だった。だから、正面から宣戦布告しようとしたのだが、痛ッ」

 

 ハマーンが、シャアの足を踏んだ。シャアは黙った。

 

「シャアはこんなんだけど、一応はニュータイプよ、そして私もそう。降伏したアクシズの兵士も、戦力として数えられるんじゃないかしら?」

「それは無理だ。言葉は悪いが、ロンド・ベルは、スペースノイドを弾圧する側だ。それにアクシズの評判は地に落ちている。共闘する政治的リスクが高過ぎる」

「うーん。アクシズの技術もあまり提供出来なそうね」

「サイコフレームはどうだ? 最近実用化されたアクシズの技術だ。まだ実験段階だが、ニュータイプの能力を引き出す効果が有る」

「眉唾だな。だが、賭けてみる価値は有るかもしれん。Zのバイオセンサーが、ベル・ベリングのタナトスに押し負けた。奴を排除するには、必要かもしれない」

「決まりだな。アムロ、私も手伝おう」

「余計なことしないの!」

 

 ハマーンに肘打ちをされたシャアは、頭を下げて小さくなった。

 

 ロンド・ベルはサイド7に戻り戦力を再編し、正式にティターンズから独立した組織となった。後ろ盾であるワイアット大将らが、議会で運動し辛うじて議決をもぎ取ったのだ。

 ティターンズとの決戦に備え、ブライトらが、各コロニーを回り、数発の核ミサイルを手に入れた。しかし、コロニー政府も、地球連邦軍もロンド・ベルに対して冷淡だった。

 

 ティターンズの苛烈な行動もあり、連邦軍将校の多くは政治から距離を置いていた。彼らの多くはスペースノイドを虐殺したいわけでもなければ、積極的に虐殺を阻止したい程の熱量もなかったのである。

 ロンド・ベルに協力を求められても、面倒事に巻き込まれたくないという思いから、協力を渋ってきた。ティターンズに対しても同様だった。

 

 ロンド・ベル、ティターンズらの権力拡大や、戦力増強に対して、ゴップ大将ら保守派は、地球連邦軍の中立化を宣言した。連邦軍は、ティターンズ、ロンド・ベルの何れにも与さないということが、公式な宣言として表されたのである。

 両者は、濃淡は有るが右派組織である。ジャブローのモグラからしたら、どっちが勝っても連邦軍の軍拡は止まらないし、反連邦勢力への締め付けは厳しくなる。軍全体が右傾化する中で、極右が勝とうが、右派が勝とうが、穴の中から見た彼らの狭い視界では同じだと判断したのだ。

 

 ロンド・ベル、ティターンズ、両者共に相手を圧倒できる戦力を得ることができぬまま、戦端が開かれることなく、1年が経過した。

 停滞が切り崩された切っ掛けは、ティターンズ総帥ジャミトフ・ハイマンと、グレイヴ大将が殺害されたことだった。

 

 

「バスク大佐、まだ我々はロンド・ベルに仕掛けないんですか? 私のタナトスが血を吸いたいと言っているのに…!」

「まだだ。連邦議会が思うように掌握できん。ワイアット派も、ゴップ派も切り崩せん」

「オーベル・ユング議員は頑張ってるはずですけどね」

「そうだろうとも。だが、予想以上に議会が粘る」

 

 合法的にロンド・ベルを潰そうとしているのだが、上手くいかない。また、一般連邦軍からも援助は得られていない。ロンド・ベルには核ミサイルを渡しておいて、こちらには渡さないとは舐められたものだ。 

 武力で上回ることが出来れば、ロンド・ベルなど捻り潰せるのだが、拮抗している以上、慎重にならざるを得ない。

 

「我々がアクシズを打倒し、ジオン残党の支援国家であるスペースノイドを排除したというのに、軍は及び腰ですねぇ」

「ロンド・ベルの宣伝が効いているのだろう。ベリング中佐、貴様の悪評もあっての現状だ」

「バスク大佐こそ、悪評すごいですよ。G3ガスで満たしたガス室で、アクシズの捕虜を処刑してやるなんて言うからみんなドン引きしてるんですよ」

「貴様のグローブ虐殺が掘り返され、ロンド・ベルにより宣伝されているからだろうよ」

「むぅ。困った」

 

 バスク大佐と私は仲良しなので、仲違いするということはないが、このままズルズルと戦わないと、黒い噂のないロンド・ベルの方が権力を握ってしまう。ティターンズは評判が悪いのだ。

 

「火種を起こしましょう。ジャミトフ閣下とグレイヴ閣下にはティターンズ栄達のための犠牲になっていただきます」

「ふむ。名案かもしれんな。ロンド・ベルに泥を被せれば、こちらに有利な世論を形成できるかもしれん」

「お任せください。上手くやってみせますよ」

 

 私の今回の愛機はジムⅢだ。性能は落ちるが使いやすくて良い機体である。ロンド・ベル仕様なので鈴のデカールが機体には貼られている。ロンド・ベル・ベリングというわけだ。

 寝返ったわけではない。ロンド・ベル仕様の機体でジャミトフ閣下とグレイヴ閣下を襲撃するだけだ。私だけではなくベルシリーズもジムⅢに乗せている。

 

 機体が共通化されているし、艦艇も同じなのでマークさえ誤魔化せば偽装できるのが良いところだ。サラミス改から、私のジムⅢが出撃する。

 目標は、ドゴス・ギア。クソデカ戦艦だ。クソデカなことにあぐらをかいて、護衛艦はいない。

 

「止まれ。止まらないと撃墜するぞ! 貴様ら、ロンド・ベルか?」

「判断が遅い!」

 

 ティターンズカラーのジムⅢが悠長にこちらを誰何する。撃ってくる前に、ビーム・ライフルで吹き飛ばした。

 

「機体の性能も重要だけれど、パイロットの腕が結局、モノを言うんだよ」

 

 リミッターを解除したジムⅢはなかなか良い速度が出る。こちとらニュータイプと強化人間だぞ。一般兵に今さら負けるかよ。

 ベルシリーズもなかなか優秀だ。欠点は、自分の顔をしたロリが、ロリ同士でキメセクしてるのを見て、私がげんなりするくらいだ。

 ドゴス・ギアの格納庫と、推進系、武装をちまちま潰したら。メインディッシュの時間である。広域音声でグレイヴ大将に呼びかける。

 

「ロンド・ベルのジェーン・ドゥ中佐だ。ティターンズ、貴様らの悪行もここでおしまいだ。覚悟しろ」

「貴様ッ! ベル・ベリング!? この私を裏切るのか? 私は貴様の主のグレイヴだ。狗は狗らしく従え!」

「お父様とでも呼べは良いのかな? 嫌だな。母を捨て、体面だけを気にし、私を愛さなかったあの男が思い出される」

「従え! 私に従え! ベル・ベリング!」

「イニシエーションですね。子供は親元を離れるものなんですよ。さようなら、グレイヴ閣下」

 

 ビーム・ライフルが艦橋を貫いた。グレイヴ閣下殺すの気持ちぃぃぃ!! 命の恩人をブッ殺すの素晴らしい快感だ!!

 肉親を殺したらこうなんだろうな! 枷が無くなった!

 

「お゛っ゛!! イクッッッ!! さ〜いこ〜!! 快感ッ!! 気持ちいぃぃぃ!!!」

 

 そもそも、私が殺人嗜好に目覚めたのも、家族のせいだ。多分、ずっとアイツらを殺してやりたかった。狂った母も、私を愛さなかった父も、父の愛を一心に受けていた妹も。みんな、コロニー落としで死んだけれども。コロニーが落ちる前に、この手で殺してやればよかった! 今になって悔しさが湧き上がってくる。

 

「おい、そこのジム。記録したな? 私はロンド・ベルのジェーン中佐だ。この映像をジャマイカン中佐を通して、バスク・オム大佐に渡せ。貴様を生かした意味はそれだけだぞ」

「……あぁ、ドゴス・ギアが。どうして、僕が……生き残って」

「メッセンジャーだぞ! シャンとしろ! 殺すぞ!」

「はっ、はい」

 

 あとは、このジムⅢのパイロットがガンカメラで捉えた映像をバスク大佐に渡すだろう。そうすれば、ロンド・ベルは失墜する。なにしろ、連邦軍の大将を何の法的根拠なく、いきなり2人も殺害したのだから。

 

「ロンド・ベル司令、ブライト・ノアだ。この映像は全地球圏に向け放送している。ティターンズの総帥ジャミトフ・ハイマン大将、グレイヴ大将の死の真相が分かった。我々に証拠を提示してくれたのは、元ティターンズのジャマイカン・ダニンガン中佐だ」

 

 映像を見ると、ジムⅢが艦橋を破壊しているのが明確に映っていた。そして、私がグレイヴ閣下と会話し、その後に嬌声を上げ絶頂している音声記録が流された。

 私がイク音声が地球圏全てに流されてしまった!? おい、人の心は無いのか?? それ本当に流す必要有った? グレイヴ閣下との会話だけで十分だっただろ!

 アクシズ・ショックが自作自演であったことなどが、ジャマイカンの口から暴露される。

 

「ジャマイカン! 裏切ったな! クソ! オーベル・ユングら議員との連絡がつかん。アナハイムもだ! 連中、我々を見捨てたぞ!」

「バスク大佐、ゼダンの門をグリプスへ前進させましょう。私のタナトスが全てを無に帰します。死者は何も喋りません」

「そうだな。ベリング中佐、貴様に期待している」

 

 楽しみだなぁ。直に連邦軍も私たちの粛清のために動き出すだろう。完成したパーフェクト・タナトスの力で生意気な奴を皆殺しに出来るのが楽しみでならない。

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