【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

18 / 20
18.カートリッジ

 ロンド・ベルの演説後、地球連邦政府は、ベル・ベリング中佐とバスク・オム大佐に、上官殺害容疑を掛けた。部隊指揮官であるこの2人の逮捕令状が降りた。つまり、地球連邦軍からティターンズを排除すると政府が決定したのである。

 ティターンズの移動要塞ゼダンの門。この要塞攻略に向け、連邦軍艦隊の編成が行われた。しかし、連邦軍艦隊の編成は遅々としたものだった。

 サイド7グリプスに駐留するロンド・ベル艦隊には、幾つかの部隊が合流したが、艦数では、ティターンズの2倍程度にしかならなかった。

 

「結局、誰も奴らを真剣に排除しようとは思っていないんだ。それどころか、アクシズ・ショックで溜飲を下ろして、日和見を決め込む始末だ」

「そうだろうな。だが、私たちに協力する部隊もある。彼らは連邦軍の良心だ。軍の腐敗を嘆くにはまだ早い。ニュータイプがくよくよするな」

「そうだな。奴らを倒してから、俺たちが軍を改革すれば良い。ありがとうブライト。俺には見えないところが多いな」

 

 司令室の扉が叩かれた。緊急の用件だ。

 

「大佐、失礼いたします!」

「用件は?」

「ティターンズ艦隊が接近しています」

「迎撃しろ」

「いえ、それが、敵艦隊司令が降伏すると言っています……何かの罠かもしれません」

「分かった。艦隊司令と話してみよう」

 

 ブライトが戦闘指揮所に入ると、モニタには卑しさの目立つ男が映されていた。揉み手をし、こちらの様子を伺っている。階級章からは大佐であることが読み取れた。

 

「ティターンズ第3艦隊のシュマイツァー大佐であります。我が艦隊はロンド・ベルに降伏します。ベル・ベリングとバスク・オムにはついていけません」

「シュマイツァー大佐。こうして会うのはホワイトベース以来かな? 貴官についての調べはついている。表立っての罪状はないが、べリングやグレイヴ大将とは随分親しくしていたんじゃないか?」

「いえ、私は奴らに利用されただけです。親しくなどそんなことは有りません」

「グローブ事件の際、ベル・ベリングは貴様の部下だった。デラーズ紛争の際も、第364パトロール艦隊の司令官として、怪しい動きをしていたな。ティターンズの将校としても私腹を肥やしていたそうじゃないか」

「そ、そのようなことは有りません。私は、バスクやベリングとは違います。上官を殺したり虐殺を行ったことは有りません。どうか、寛大な処置を……」

 

 私腹を肥やしていたことについて、暗にシュマイツァーは認めていた。

 

「ロンド・ベルは清廉潔白でしょう。アクシズも受け入れたくらいの組織だ。我々とて、なんの手土産なしに降伏しにきたわけでは有りません。アクシズ・ショックの確たる証拠や、ティターンズが強化人間を製造していた証拠。それに、強化人間の現物も確保しています。どうか、我々の降伏を受け入れていただけませんか?」

 

 シュマイツァー大佐は、典型的な腐敗した連邦軍人だった。ロンド・ベル司令に就任する以前のブライトだったら、寛大な処置など考えなかっただろう。だが、組織を預かる立場はブライトを成長させた。

 

「貴官らの降伏を受諾する。だが、戦後には存分に協力してもらおう。罪の清算がこれで終わったとは、思わないことだな」

「感謝します。ブライト司令」

 

 媚びた表情を浮かべるシュマイツァー。彼からはティターンズ内部の生情報を得ることも出来る。ブライトの脳裏には、自身がジャブローのモグラと同じ存在に陥ってしまう未来がイメージされた。

 

「いかんな。権力というものは甘美だ」

 

 そのイメージを振り切り、シュマイツァー艦隊の収容に取り掛かった。

 

 

 

「ベル・ベリングのクローンだと? それを捕虜にしたと?」

「はい。アムロ中佐。こちらです。強化されているので、筋力も高いです。万が一も有るかもしれません。普通の女の子だと思わない方が良いですよ」

 

 ムラサメ研究所の研究員だったというアミア・ミア少佐が、アムロをベリングの強化人間の元に案内する。彼女もティターンズを見限りシュマイツァーと共に脱出した一人だった。レイゼン主任研究員と共に、ベルシリーズの製造に関わったという。

 

「アミア。それはてき? ころす?」

「いえ、イレブンちゃん。違いますよ。味方です」

「ふーん。そうなんだ。でも、いやなけはいがする。ぜんりょーぶったけはい。わたしたちにかってにどーじょーしてる」

「トゥエルブちゃん。アムロ中佐に失礼ですよ」

 

 半裸でお互いを慰め合っていた2人の少女が口を開く。少女の腕には、注射痕があり、すぐそばには注射器が転がっていた。部屋の中は薬物と少女の性臭が甘く充満していた。

 

「彼女たちには前もって、客人の来訪を伝えていたんですけどね。どうも、性行為に没頭していたみたいで」

「ベリングのことは知っていた。だが、彼女たちになんの罪が有ってこんなことを……」

 

 少女たちは、快感の残滓もあってかゆっくりと下着を履き。身なりを正す。

 

「アムロ・レイ。わたしたちのてき」

「おねぇちゃん。この人はてきじゃないよ。わたしたちは、こうふくしたんだよ」

「ふ~ん。で、どれをころすの?」

「ころさないの!」

 

 アムロは、10歳にも満たぬ少女が、薬物を使用し性行為をしている姿に、とてつもない不快感を覚えた。常人ならば、嫌悪感を覚えているはずなのに、案内役のアミア少佐は顔色すら変えていない。

 

「ベル・シリーズはベル・ベリングという高いニュータイプ能力を持つ人物のクローンです。幼い彼女たちは薬物と性的快感で簡単にコントロールできます。モビルスーツを落とせば、その後にドラッグや、玩具による性的快感を得られると理解しているので、現状の暴走リスクも低いです」

「彼女たちに対する罪悪感はないのか?」

「……アムロ中佐は、冷蔵庫や掃除機といった家電製品が壊れたら嘆き悲しむんですか?」

「彼女たちは人間だぞ! 物じゃない!」

「…………っ」

「今すぐにでも、貴様を殺してやりたいよ」

 

 アミアは溜息を吐いた。

 

「たまにいるんですよね。正義ぶった人。うちも最初はかわいそうって思ってたんですよ。でも、どうしようもないじゃないですか! いちいち同情してたら、うちの心がもたないんですよ! この子たちもタナトスの電池にされちゃうって聞いたんで、助けたんですよ! もう、ベルちゃんも終わりだし、最後くらいはいいことしたいなって思ったんですよ!」

「……すまなかった。言い過ぎた」

「別に、もういいですよ。地獄に落ちるのは覚悟してますんで。はー。ガンダムの教育型コンピュータ設計してる時に戻りたいなぁ。人間の可能性なんて余計なもの考えちゃったからだ……アムロ中佐。私は処刑ですか? 覚悟は出来ています」

 

 アムロは、少し迷い口を開いた。

 

「それは俺が決めることじゃない。タナトスの電池とはなんだ?」

「レイゼン研究員とベルちゃん。いえベリング中佐が考えたシステムです。タナトスのバイオシステム、バイオコンピュータ、バイオセンサーの負荷を強化人間に肩代わりさせるものです」

「胸糞が悪いな」

「ええ。だから、うちは投降しました」

「貴重な情報提供に感謝する」

 

 テム・レイと共に設計したνガンダム。格納庫にあるそれを眺める。アクシズの技術を取り込んで組上げた機体は、アムロのニュータイプ能力を十分に発揮できるMSだった。

 

「善良ぶった気配に、勝手な同情か。人は皆、獣だ。だから、俺たちはそれを隠すために理性を纏っている。暴虐を許せば、世界が悪い方へ向かってしまう。よりよい明日を守るために、俺たちは戦うんだ」

 

 アムロの呟きが、誰もいない格納庫に消えていった。νガンダムのツインアイが応えるように瞬いた。

 

 

 

 

「逃亡は駄目! 死刑!」

「ベリング! 貴様のやることは間違っている! この組織はもう終わりだ!」

「はい、ばーん」

 

 大佐の軍服を纏ったおじさんは、眉間にぽっかりと穴の開いた肉の塊になった。このところ、ゼダンの門から逃げ出そうとする将兵が相次いでいる。私が処刑する佐官クラスはコイツで三人目だ。ジャマイカン中佐の裏切りによって、ティターンズの結束に罅が入ったのだ。

 シュマイツァー大佐もアミア少佐も逃げ出してしまった。私たちの仲だというのに。ジャマイカン中佐が逃亡し裏切る前に、シュマイツァー艦隊は、艦隊ごと演習に出てそのままいなくなっていたのだ。耳の速さと逃げ足の素早さは見事というしかない。

 ゼダンの門以外にもティターンズの拠点はあるが、そこの部隊も私たちに協力しない。艦隊を出せと言っているのに、一隻も寄越さず連絡が付かなくなった。連邦軍に投降したのだろう。

 アナハイムも、連邦議員も連絡途絶のままだ。私の戦友のオーベルくんも音信不通となった。君、ジオン憎んでたじゃん。逃げるのは狡いでしょ。

 

 政治力が全くなくなったので、マスコミへの影響力も失ってしまった。私の許可なくベル・ベリング写真集が発売されていたのには驚いた。敵の調査として入手したそれを眺めてみたのだが、グラビア写真などが掲載されていた。元々は一年戦争の時の軍広報向けの写真だ。あと、兵士が隠し撮りしたやつ。私の胸元とか下着が見えている写真も載っている。

 ゴーグルハゲのバスク大佐の頭が男根のメタファーとして描かれ、私がそれを舐めている風刺画もあった。肖像権の侵害だぞ。

 

 メディアの腐敗について憂慮していると、警報が鳴った。

 

「ベリング中佐、先走りした連邦艦隊だ。たった10隻だぞ。奴らそれだけでこの要塞を落とせると思ったのか?」

「威力偵察でしょう。ロンド・ベルに恩を売って出世したかったんでしょうね」

「沈めろ」

「はい。私のタナトスの試運転にちょうどいいですね」

 

 パーフェクト・タナトスを出撃させる。タナトスと違うのは、巨大なサブユニットだ。コイツには、カートリッジとしてベルシリーズを搭載している。

 カートリッジはバイオシステムの負荷の押し付けと、サイコフレームからのエネルギーの抽出に使用される。通常動力に加え、サイコフレームからのエネルギー抽出を行うことで、通常のジェネレータの倍近い推力を得ることが出来る。加工していない強化人間では消費に対してリターンが小さいが、カートリッジに加工することで、消費を抑えられるのだ。アクシズの押収物はいい仕事をした。

 

 パーフェクト・タナトスは、最早核兵器を越えた抑止力だ。これを思いっきり振るえば、ロンド・ベルなど粉砕出来るだろう。

 

「1本使うか。2本逃げ出したから、10本しかないけど、試運転しないでいきなり使うのは危険だからな」

 

 連邦の威力偵察艦隊には、少々大げさな火力だが、ぶっつけ本番というのは避けたい。

 カートリッジを一本使用し、シュヴァルト・メガ・レーザーを放つ。コロニーレーザーの半分といった火力だ。単騎での大量破壊兵器の運用としてはなかなかのものだろう。核ミサイル並みと言っていい。なかなかの威力と範囲だ。黒い憎しみの光というのがいい。強化人間を1人使用して放つビームだ。これぐらいの威力はないと困る。

 

 

「おっほ~。すごい。艦隊が消えたよ」

 

 収束させたため、敵艦隊はデブリ一つ残さず消えた。素晴らしいビームだ。

 

 このシステムを完成させたレイゼン研究員をねぎらってやらなければならない。アレキサンドリアに帰還した私は、格納庫に彼女を呼び出した。

 

「いやー。素晴らしいシステムですね。レイゼン研究員。ご褒美をあげますよ」

「ん? ベリング中佐、なんでボクに銃を向けているんです? まさか、口封じですか?」

「うん。当たりだね。どうせ万が一のためとか思って、バックドアとか仕込んでるんでしょ? 楽しい虐殺に水を差されたら困るからね。はい、ばーん」

「ふひっ。後悔しますよ……」

「むかつくなぁ」

 

 レイゼン研究員は、にやけ面のまま死んだ。綺麗に眉間を撃てなかったし、ムカついたのでワンマガジンを撃ち尽くした。

 

「バスク大佐。研究チームの処分は終わりましたか?」

「ああ。終えたとも。パーフェクト・タナトスは素晴らしい火力だな。これを見れば艦隊の規律も引き締まるな」

「ええ。私たちの勝利は疑いようがありませんからね」

 

 規律を引き締めるには、暴力に限る。ゼダンの門は、3時間後にはサイド7グリプスのある宙域に侵入する。ロンド・ベルとの決戦はもう少しだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。