【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

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02.サイコ女とヘタレ男

 RRf-06。ザニーと呼ばれることになる機体は、あまり一年戦争で目立った活躍をしていない。私の愛機となった個体は元々がMS-06B。いわゆるザクがベースとなっている。

 このザニーは、空母エンタープライズにたった一機しかない。連邦軍は、基本的に同程度の性能を揃えて数で押す。という分かりやすいドクトリンを持っている。ザニーが一機有ったところで、戦局を覆すようなことも出来ないし、むしろ補給が大変になるだけだ。

 

 私が懸念していたことは、上層部も考えていたらしい。シュマイツァー大佐が、闇ルートでジオンからザクを仕入れたとかなんとか。サイド6は、それを完全にバラしてラインを立ち上げたらしい。

 サイド6としては、連邦にはザニーの部品を、ジオンにはザクの部品を売るつもりなのだろう。汚い。流石商人。汚い。

 

 ということで、エンタープライズに、2機目のザニーが納入された。予備部品や消耗品も付いてきている。ザクベースでは有るが、連邦軍のサービスマニュアルも早々に発行されていた。サイド6も絡んでいるらしく、動きが非常に素早かった。

 

「ベル。俺もモビルスーツに乗れるぞ」

「そうですか。良かったですね」

「なんで、お前はいつも無表情なんだよ!? バディの俺のことどう思ってるわけ?」

「どうもこうも、単にバディとしか思ってませんが」

 

 オーベルは、打ちひしがれたという表情をしていた。私をしきりに誘ってくる辺り、彼は私に気があるのかもしれない。私は、どうも思っていないが。

 

「ほら、共に死線を乗り越えたんだぜ。俺に、異性として思うことはないのか?」

「特に有りません」

 

 口をパクパクしながら、何か言おうとしていたが、彼が言葉を発することはなかった。ヘタレだ。議員の息子と言うやつはダメである。

 オーベルは、育ちが良いこともあり、直接的なアプローチには出ない。そういうところは良いと思う。両親のこともあり、私は恋愛に興味が無いし、むしろ嫌悪しているかもしれない。愛など粘膜の作り出す幻想に過ぎぬ。そう言われたら同意しそうだ。

 

「でも、頼りになるバディとは思ってますよ」

「デレた……ベルがデレた」

 

 コイツ、声がデカいから小声でも聞こえてるんだよな……だからどうとも思わないが。オーベル・ユングは連邦議員の息子である。聞いてもいないのに、話してきたので何故か知っているのだが、彼には二人の妹がいるそうだ。

 良家のボンボンって感じで、私のコンプレックスを煽る存在だ。殺したらめちゃくちゃ快感だろうけど、バディだし、友軍だ。利用価値も高い。欲望が理性を上回らない限り、後ろから撃ったりはしない。はずだ……

 

 対艦ミサイルを積んだセイバーフィッシュでの戦闘。初めての実戦だったが、オーベルは私の意図を汲み取り的確な行動が出来ていた。僚機として優秀な男なのだ。

 

 宇宙での戦闘ではBeyond-visual-range、つまりは視界外射程が有効である。遠距離からミサイルやビームを一方的に撃つことができれば強い。至極当然だ。このBVR戦闘は連邦宇宙軍のドクトリンだった。

 しかし、ミノフスキー粒子の登場により、BVR戦闘は、ほぼ不可能となった。代わりに視界内でのWVR戦闘が主流となっていく。

 

 赤外線誘導と画像誘導は、ミノフスキー粒子によるパラダイムシフト後でも有効である。ミノフスキー粒子下での戦闘では、この二つが主に使われる。

 ミノフスキー粒子が散布されなければ、普通にレーダーに映る。

 

 先の戦闘では、私は距離1500でフレアをばら撒くことで敵にミノフスキー粒子を散布させた。そして機体出力を切り慣性航行で赤外線レーダーをすり抜け、対艦ミサイルをぶち込んだ。

 敵がミノフスキー粒子を散布しなかったら、普通に対空レーダーに映っていただろう。そこは賭けだったが私は勝った。 

 

 つまり、これを理解し私の行動に従ったオーベルは、頭も悪くないということだ。緊張して没思考的に私に従ったのかもしれないが、そうであればそれでも良い。

 

 オーベルは、私に好意を持つように女の趣味は最悪だ。しかし、頭も腕も良いし顔も悪くない。自己肯定感の高いところは嫌いだが。

 

 3機目のザニーの納入は、0079の二月を予定しているそうだ。開戦に、間に合わないのは明白だ。ないものは仕方がないので、私とオーベルの2機で模擬戦闘を行ったりシミュレーターを行い、練度を高めていった。

  

 

「ハッピーニューイヤー!!」

「ユング中尉。今年もよろしく」

「おう。よろしくな」

 

 新年を迎えるということで、パイロット連中は官舎でニューイヤーパーティーをしていた。私は空気が読める女なので、パーティーに参加した。会場の隅っこでひたすらウイスキーを呷っていると、オーベルがブンブンと手を振りながらこちらに近づいてくる。

 

「ベル。ハッピーニューイヤー!」

「……新年、おめでとう」

「君は、ちっとも笑わないな。新年のめでたい場だというのに」

「もうすぐ、戦争が起きるというのに、よくも愉快に笑ってられますね」

「戦争? サイド3か……あれは、ブラフだろう? 戦力も国力も連邦とは違いすぎる。まともな頭が付いてる奴なら宣戦布告なんてしないよ」

「ギレンにまともな頭が付いていると良いですね」

「一国の宰相だ。国民を犠牲にするような暴挙を起こすはずが無いだろう」

 

 どうも、世間一般の認識はこの間抜けと同じらしい。私が異常なのかと思ってしまう。

 

「もう良いです。頭パッパラパーのお坊ちゃんじゃ、話になりません」

 

 オーベルは、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。頭パッパラパー? 俺が?などとボヤいていた。そうとも、お前以外に誰がいるんだ。

 

「おい、ベルふらふらじゃないか。どこに行くんだ?」

「大佐のところですけど、何か?」

「あんな、エロ親父のところに、酔ったお前が行くなんて、何を考えてる? バカなのか?」

 

 オーベルの説教を聞いているうちに、段々と眠くなっていった。めちゃくちゃ慌てた顔のオーベルが、面白かった。

 

 目を覚ますと、すっかりコロニーの空が暗くなっていた。ベッドから他人のニオイがする。床には、オーベルが転がっていた。痛飲した私は、寝てしまったらしい。

 着衣に乱れはない。ヘタレはヘタレだった。転がっている奴を軽く蹴ると、呻き声がした。

 

 翌日の2日には、艦隊クルーが召集された。空母エンタープライズは2隻のフリゲートを連れ、速やかにサイド6を離れた。そして、翌3日。三交代制のため、時刻にして10時くらいに目覚めると、既に宣戦布告がなされていたらしい。ドアが叩かれる。ドアを開けると、隣室のオペレーターちゃんが、興奮やまないといった表情で私に捲し立てた。

 

「戦争です。ベリング中尉。戦争が起きましたよ。これから私たちどうなっちゃうんですか?」

「どうもしない。ご飯食べて、仕事して寝るだけ」

「なんで冷静なんですか?? 大変なことになっているんですよ」

「パイロットは、冷静じゃなきゃ務まらないから」

「はあ。なんか、私まで落ち着いてきちゃいました。慌ててたのが馬鹿みたいです」

 

 オペ子と、一緒に軍服に着替えブリーフィングに向かう。午前組から申し送りを受けブリーフィングに参加する。サイド6から離脱し、ルナツーへ向かう宙路において、敵と接触する可能性が高いらしい。

 

「ジオンとは、サイド6を通して話が付いている。この艦隊は襲われない。そういう手筈になっている」

「艦長、質問です。接敵しても艦載機は出さないということですか?」

「そうだとも、マイヤー少佐。セイバーフィッシュ隊は出すな。相手に失礼だろう」

 

 シュマイツァー大佐と、飛行隊長であるマイヤー少佐は阿吽の呼吸である。見事な腐りっぷりだ。ブリーフィングが終了し、パイロットは持ち場に付いた。私もその例に漏れず待機所で出撃を待つ。

 二時間ばかり艦隊は無事に航行していた。ルナツーの勢力圏には、あと30分ばかりで差し掛かるという距離だ。

 

「警報。距離5000に熱源反応。ミノフスキー粒子、急速上昇。熱源体、画像出します」

 

 ブリッジのモニタに映し出されたのは、2隻のムサイ級だった。

 

「ベリング機、ユング機が、発艦許可を求めています」

「却下だ。いたずらに敵を刺激する必要はない」

「ムサイ級より高熱源体射出。数は8機です」

「まったく。抜かりが無いな。仕事をしたように見せかけるとは。勤勉なことだ」

 

 ブリッジには、焦った様子はなかった。それもそのはずだ、なにせ敵とは密約があるのだから。

 

「周波数237でチャンネル開け。コード339を送信」

「237でチャンネル開きました。コード339を送信完了」

「これで、我々だと分かるだろう。敵は引くはずだ」

「ムサイ級より通信、開きます」

 

 ミノフスキー粒子により通信感度は悪い。映像と音声が遅延している。

 

【シュマイツァー、我々・・・は、仲・間を、失って・・・むざむざと、・・仇を、見逃すような・・・根性なし・・・ではない・・・クタバレ連邦のカスども!!】

 

 ブリッジにざわつきが広がった。大佐は、あんぐりと口を開く。

 

「セイバーフィッシュ隊、スクランブルしますか!?」

「出せ。セイバーフィッシュ隊を急がせろ!! ユキカゼ、カミカゼは前に出て砲撃しろ!!」

 

 エンタープライズを、衝撃が走った。

 

「なんだ!?」

「ザニー2機が、カタパルトで出ています!」 

「チッ。今回ばかりは大目に見てやる。やってやれ。ジオンに契約違反のツケを払わせてやれ」

 

 カタパルトで、宇宙へ射出されるのは、ロマンである。それに、私という死神の前に、生贄のジオン兵が供されるのだ。御馳走を前にお預けをくらっている犬の気分だ。しかし、格納庫をぶち抜いて出るような野蛮なことはしていない。オペ子にちょっとした賄賂を渡し、合法的に出撃したのである。

 

「ベル、母艦を狙うか?」

「いや、フリゲートを餌に、かかったやつを一撃離脱で落とす」

「おう……了解」

 

 ウキウキして釣りをする。私は、強敵とバトルするよりも、自分は安全圏にいながら、弱いやつを甚振って殺す方が好きだ。それに、前回の攻撃でこちらの手の内がバレている可能性が高い。警戒しているはずだ。

 

「ベリング、一機撃破」

 

 フリゲートに取り付こうとした奴を落とす。

 

「ベリング、続けて撃破」

 

 そいつのバディだっただろう奴が追いかけてきたので、オーベルを餌にしドッグファイトに入ったところを、後ろから撃ち落とした。

 

「愉しい。弱いやつばっかり。弱い者いじめ、わたしだーいすき」

「ベリング機聞こえていますか!? ユキカゼへの援護をしてください! もう持ちません!!」

「弱いのが悪いんでしょ? ね。オーベル?」

「い、いや、違うだろ。援護すべきだ」

「餌のために、海に飛び込むなんて馬鹿げてる。私は、死にたくないしリスクを取る必要なんてない」

「俺たちは、軍人だぞ。友軍を救うべきだ」

「はい。時間切れぇ~」

 

 オーベルとのお喋りが長すぎたのだろう、ユキカゼのブリッジが吹き飛んだ。勝利の余韻に浸って油断している奴を後ろから撃った。

 

「3,4機目」

「味方を囮に、す「いいから、手を動かして。口ばっかりで逃げてばっかり。優柔不断のヘタレ」

 

 のろのろとようやく出てきたセイバーフィッシュ隊が、ザクに落とされまくっている。セイバーフィッシュに夢中なザクを後ろから撃った。

 

「5機目」

 

 ムサイの砲撃をひきつけていた、カミカゼがデブリになっていた。

 

「おい。ベル。不味いぞ。エンタープライズが丸裸だ」

「大丈夫。敵の時間切れ」

 

 2隻のムサイは、巨大なビームの軌跡に貫かれていた。マゼラン級戦艦のビーム砲である。ルナツーの支配宙域から30分余りの場所でドンパチしてれば、ルナツー艦隊が来るのは当然だ。敵艦隊の敗因は時間を使い過ぎたことである。

 戦争は意志の戦いというが、戦友の仇を討ちたいという純粋な思いだけで、勝てれば人類の歴史はもっと平和だっただろう。

 

「降伏する」

 

 母艦を沈められた3機のザクは、それぞれ武器を捨て両手を上げていた。オープン通信で降伏。非常にクレバーな選択である。でもね、ここは戦場なんだ。

 

 私は、ザクが手放したヒートホークを握り、ザクの右足を斬り落とした。

 

「やめてくれ。私は、降伏した。国際法違反だぞ」

「あーあー、聞こえないなぁ。だって、条約なんて結んでいないもん」

「やめろ。降伏する。降伏すると言っているんだ」

 

 左足を斬り落とす。気丈な女性パイロットはあくまで平静を装っているが、もうすぐ恐怖が滲んできてもおかしくはない。

 

「やめてくれ。頼む。なあ、聞こえているんだろう? やめてくれ」

「その撃墜マーク。うちのセイバーフィッシュですよね。あなたは、私の仲間を殺したんですよ。自分だけ助かろうなんて虫が良くないですか」

「ちがう。ちがうんだ。殺したくて殺したわけじゃない」

 

 右腕を斬り落とす。彼女の声は震えていた。

 

「子供がいるんだ。3歳の女の子なんだ。私は、あの子のもとに帰らなきゃならない。私が死んだら、あの子が一人ぼっちになってしまう」

「じゃあ、無事に家に帰ったらその子に私の仲間を殺したって言うんですね」

「違う。そんなことはしない。頼む。殺したくてやったんじゃない」

 

 左腕と頭を斬り落とした。

 

「はい残念。私は、自分が殺したくて戦争をやっています。娘さんから、愛してもらって幸せでしょうね。娘がいるんだから、愛する人もいたわけでしょう。あああ、羨ましい。でも、私に殺されるんですよ。だって、私の方が強いから。たまらないですよね。自分より愛されてる人を殺せるってこと」

「おっと、話し過ぎましたね。じゃ、さようなら」

 

 ヒートホークが、すんでのところで止められる。想像よりも早かった。はあ、ついていない。折角、会話までして内面を知れた相手を殺せたというのに。私のタイミングが少し遅かった。

 

「ベル! 君は、なんてことを! 捕虜だぞ!」

「でも、味方を殺した敵です」

「それは……そうだ。だが、犯罪だぞ。国際法に乗っ取らなければ、それはただの犯罪者だ」

「ふぅん。いつまでも、その調子が続くといいですね」

 

 オーベルは、しきりに私に国際法の重要さを説いていた。果たして彼は、ジオンがコロニーの住民を虐殺したことを知っても、コロニー落としを見ても同じことが言えるのだろうか。

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