【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

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20.Epilogue

 グリプス戦役が終わり、地球圏は平和になった。サイド3で生まれた復興需要は、経済を回した。連邦政府による大規模支出は、地球圏から飢えを失くしていった。

 連邦政府は、少しずつ解体され緩やかな国際連合体へと変革していく。変革途上でスペースノイドにも選挙権や自治権が認められ、民主的な手段で争いは解決されるようになっていった。

 

 巨大な一つの国家という体制には無理があったのだ。連邦軍は強力なままだったが、ティターンズを生み出した反省から、文民統制が徹底されるようになっていった。

 勿論、幾つかの危機があり、幾つもの悲劇があった。それでも人類は、前を向いて歩いている。

 

 ベル・ベリングが主導した木星送りから、木星船団にもメスが入った。過酷な環境と厳しい労働条件は緩和された。社会が木星船団を必要な仕事であると認めたことから、船員は高収入のエリートとなっていった。

 火星に逃げ延びたジオン残党は、ロンド・ベルにより撃滅された。

 

 アナハイム・エレクトロニクスには、ロンド・ベルの捜索が入り、ジオン残党に武器を流していた事実が公表された。

 また、ラプラス憲章もロンド・ベルにより発見され、公開されることとなる。この憲章は、開明派の連邦議員により、スペースノイドへの参政権付与運動の起爆剤に使われた。

 

 アムロ・レイはニュータイプ能力こそ失ったものの、卓越したエースパイロットであり、ロンド・ベルの重鎮として部隊をよくまとめた。彼は、チェーン・アギと結婚し円満な家庭を築くこととなった。

 

 ブライト・ノアは生涯現役にこだわり、良識派の将校として奮闘することとなる。家庭生活は円満では無かったが、アムロのとりなしにより離婚を免れている。

 

 ベルシリーズの強化人間であるベル・イレブンとベル・トゥエルブは、薬物や強化の副作用から脱し、ブライトに養子として引き取られることとなった。

 レブン・ノア、エルブ・ノアと改名した彼女たちは、ブライトの実子であるハサウェイと大恋愛を繰り広げるのだが、それは別の話だ。

 

 カミーユ・ビダンは、家族との確執を乗り越え、ロンド・ベルのエンジニアとして働いている。ファ・ユイリィと、なんやかんやで籍を入れた。

 

 ジャマイカン・ダニンガン、シュマイツァー、アミア・ミアらは、司法取引の結果、減刑されたが不名誉除隊されることとなった。なんやかんやで彼らは会社を立ち上げて稼いでいる。

 オーベル・ユングは、議員を引退しシュマイツァーらの会社のスポンサーを務めている。

 

 シャア・アズナブルは、ハマーン・カーンとナタリー・ビアンキと結婚した。重婚は法的に認められていないが、夫婦仲は非常に良好だった。グリプスに一軒の家を買い、ナタリーとハマーンの間に多くの子をもうけた。

 

 ジュドー・アーシタはシャングリラで、妹思いのジャンク屋として平和に暮らしている。

 

 パプテマス・シロッコは、地球でホストとしてブレイクする。その後、一流の芸能人として成功を収め、地球圏のほとんどの人間がシロッコの名を知るようになった。

 

 ミネバ・ザビは、親連邦派の政治家として活躍。平和と反戦を訴え、アクシズ・ショック後のサイド3を、大きく飛躍させた。

 

 グリプス戦役を超えるような大きな戦乱は、その後起きていない。まるで死神が去ったように、世界は平穏を取り戻した。

 

 

 

 

 大きな戦争が有った。連邦軍の内乱だ。サイド3を滅茶苦茶にしたティターンズが、ロンド・ベルによって粛清されたという。

 元ジオン軍人、スベロア・ジンネマンは、ティターンズの粛清に胸を撫で下ろしていた。

 彼が妻子を失ったグローブ事件。その首謀者であるベル・ベリングは死亡したと推定されている。連邦軍の発表では行方不明だが、コクピットユニットを丸ごと失った彼女の乗機が発見されたのだ。死んだと考えていいだろう。

 

 ジンネマンは、1年前までジオン残党だった。ティターンズの目を掻い潜り連邦政府への反逆のために生きてきた。転機はアクシズ・ショックだった。それにより、彼の組織は資金源を失い解散した。

 ジンネマンの恨みは消えていなかった。しかし、多くの反連邦組織がサイド3の民衆により告発され、そのほとんどが消えた。そのため、ジンネマンは祖国の復旧のために、貨物船の船長を担うことにした。ガランシェールは偽装ではなく、本当の貨物船となったのだ。

 

 航行は順調だった。船は間もなくサイド7近郊宙域に差し掛かる。

 

「慎重に航行しろ。ティターンズの残党が居るかもしれん」

「その時は蹴散らしてやりますよ!」

 

 船体が衝撃を受けた。

 

「なんだ? デブリか?」

 

 戦闘が起きた後は、掃海されているはずの宙路にもデブリが出ることが有る。船はデブリに衝突しないようレーダーで探知し、目視でも進路確認を行う。しかし、稀にそれらをすり抜けデブリが船体にぶつかることがあるのだ。

 戦闘後に流れてきたミノフスキー粒子も有ってのこの事態だ。武器を下ろし、荷下ろし用となったゲルググが船体の確認を行う。

 

「ジンネマン艦長! コクピットユニットです! 船体に刺さってますよ。貫通はしてません」

「慎重に除去しろ。船体をこれ以上傷付けるな」

「了解。うぉっ、コイツまだ反応があります」

「生存者か? 見たところ連邦軍のものだな」

「どうします?」

「殺すことは無いだろう。連邦には恨みは有るが、マトモな奴だっている。ロンド・ベルには好感が持てる」

「艦長も丸くなりましたねぇ」

 

 ジンネマン自身もそう思う。生身の連邦軍と話し、共に復興に汗を流すことで、彼の恨みは薄れていた。

 

 エアのある格納庫に、コクピットユニットを運び込む。信号は出ているが、衝突の歪みでハッチが歪み開閉装置は作動しなかった。

 卵の殻を剥くように、慎重にハッチが開かれる。

 

「なんだ、こりゃあ?」

 

 コクピットの中にいたのは、全身を鉱石のようなものに包まれた物体だった。髪が辛うじて出ており、人間がその中にいることは分かった。

 

「生きてるのか?」

「分かりません」

 

 鉱石は脆く、簡単に割れた。繭の中にいたのは、少女だった。年齢は二桁に満たないだろう。着衣は鉱石になったようで、何も身に着けていなかった。

 

「医務室へ運べ」

 

 2時間ほど経った後で、医務室が騒ぎになった。目覚めた少女が、紐で首を吊ろうとしたのだ。たまたま見つけられたから良いものの、誰も見ていなかったら彼女は死んでいた。

 

「せん妄でしょう。稀にあります」

「違う! そんなんじゃない! 私は生きていちゃいけないんだ!」

「この子、かなり力が強い。2人がかりでやっとですよ」

「離せ! 死なせてくれ!」

 

 自殺防止のため、手枷で拘束された少女は、すぐに口を開いた。

 

「私は、ベル・ベリングだ。グローブ事件を起こし、アクシズ・ショックを起こした極悪人だ。お前たちジオン軍人だろう? 見れば分かる。お前たちの仇が目の前にいるんだぞ! サイド3を滅茶苦茶にした犯人が私だ。だから、殺せ。私を殺せ!」

「ベル・ベリングは30代だ。お前とは年齢が合わない」

「嘘だ!? 身体が縮んでいる!? なんで? そうか、サイコフレームか……ミミン、余計なことを。あのまま死なせてくれれば良かったのに」

 

 少女は明らかにパニック状態だった。彼女が舌を噛み切ろうとしたので、ジンネマンは指を突っ込んだ。

 

「痛いな……」

 

 少女は、ジンネマンの指から溢れた血に動揺した。

 

「もう、自分を傷つけるような真似はよせ」

「……でも、私は酷いことをした。世界を滅ぼすところだった」

 

 ジンネマンとて、軍人として人を殺したことがある。だが、失った妻子は返ってこなかった。地球圏に広がった緑色の光は、ジンネマンを夢の中で妻子と再会させた。マリーは、ジンネマンに抱きつき笑っていた。

 

「みんなそうだ。殺し殺されで、相手を人間だと思えなくなっていた。俺だって少し前までは、連邦軍人を人の皮を被った獣だと思っていた。けどな、それをやって殺し合った先では、皆が不幸になる」

「私がやったのは、そういうことなんだってわかっていた。でも、自分のためにやった。楽しかった。でもそんな心がなくなった。どうして、私はあんなことをやったの? 私を殺してよ! 罰を与えてよ! 裁いてよ!」

「そうか。お前さんは死にたいんだな」

 

 少女が大きく首を縦に振った。

 

「じゃあ。俺からの罰は生きることだ。生きるってのは大変だぞ。こんな時代だ。大切な人が死んだり、大切な物や大切な場所がなくなったりする。それでも、真っ当に生きるんだ。これが、俺からの罰だ」

 

 泣き崩れた少女を、ジンネマンは抱いた。彼女の頭を撫でると、娘のことが思い出された。

 

 ようやく泣き止んだ少女に、話しかける。

 

「お前さん。名前は?」

「……ベル・ベリング」

「違う。そんな名前じゃなくて、本当の名前だ」

「……ない」

「そうか。じゃあ、俺が名付けてやろう。こんなおっさんがお前の父親代わりってのは嫌かもしれないがな」

 

 ジンネマンが、少女にどのような名を付けたかは定かではない。しかし、ベル・ベリングがこの世界に再び現れることは無かった。

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