【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない! 作:むにゃ枕
アイランド・イフィッシュの落下は、全世界に多大な衝撃を与えた。しかし、連邦軍の交戦意思を挫くというギレン・ザビの意図は達成されなかった。地球連邦政府は、断固として交戦を続けている。
空母エンタープライズは、艦載機が全滅したため開店休業中だ。解散はしていないものの、エンタープライズのクルーは歯抜けとなっている。如何に巨大組織である連邦軍といえど、人員が勝手に畑から取れるわけではないのである。
「俺たちが教官かよ。俺は前線でジオン星人をぶっ殺したいっていうのに」
私は激しく頷いた。そうだとも。わかってくれて嬉しい。やっぱり人間を殺さないと生きた心地がしないもん。すっかり倫理観を失ったオーベル。彼は、自分が忌み嫌っていたカスの仲間入りを果たしたようだが、どうも自分ではそうは思っていないらしい。
彼の家族は、無事だったらしいが、シドニーに旅行にいっていた旧友を失ったそうだ。ちなみにべリング家は、コロニーの落下で全滅した。唯一の生き残りである私の元に、遺産が大量に舞い込んできた。おかげで小金持ちになっている。
「ごめん。ベルはもっと辛い思いをしているのに、俺ばっか文句言ってるよな。一緒に
「アッハイ。ソッスネ」
ルウムでデカい艦隊戦をやったわけだが、私はそれに参加できなかった。非常に残念だ。人間を殺したかったのに……
とはいえ、部隊再建は必要だ。私の盾がいないのは困る。消耗品の盾を育てるのに、コストを払うのは馬鹿馬鹿しい。しかし、碌なものを得られないのに戦争をやっているのだから、現実はもっと馬鹿らしい。そんな戦争のおかげで合法的に殺人が出来て、私は助かっているのだが。
「ザニーは、もうお払い箱らしいぜ。純連邦産のモビルスーツが、すぐにロールアウトするって話だ」
「ふーん。私たちは、急造品の間に合わせの訓練ってことか」
「そうだな。まったく、嫌になる」
どうも、サイド6はザニーの部品供給を渋っているらしい。ジオンと連邦の間で上手く綱渡りしているようだ。ザニーの供給を絞られた連邦は、自力でのモビルスーツの生産に着手した。それにより、ザニーの価値は下落しているようである。
事前に、行われたオリエンテーションによると、私たちはザニーの教官として3ヶ月ばかりルナツーで後方勤務だという。
前線に出た兵士を後方に回しローテーションをさせるということは、全くもって軍事的にも人道的にも正しいのだが、私にとっては大問題だ。私は、思想のためや給料のために軍人をやっているのではない。ただ、趣味と実益を兼ねて軍人をやっているのだ。
指導教官として、ザニーのパイロット候補生を教えるのは、私のやりたいことではない。でも、仕事なのでやるしかない。候補生リストを捲りながら、オーベルが呟いた。
「俺たちが教える奴等の経歴、見たか? ほとんどが戦闘機乗りだぞ。しかも、エース連中も混じってる。MSの時代なんだってことを実感するな」
「うん。ジオンにあれだけの損害を与えられても、旧来的な装備を運用してるような軍なら、もう負けているはずだよ」
パラダイムシフトというやつだ。連邦軍は、上手く転換出来ているようで何よりである。
慣れない座学の教官やら、シミュレーターの指導役をし、一か月が過ぎた。慣れない仕事へのストレスも有ってか、私の殺人衝動はすごいことになっていた。滅茶苦茶人を殺したい。多分、コロニー落としという最大級の虐殺を目撃したことで、何かネジが外れたのだろう。以前なら、なんともなかったはずなのだが、我慢が出来ない。
私が、ギレン・ザビだったらコロニー落としの瞬間に、射精しているはずだ。もしかしたらテクノブレイクしているかもしれない。あれを、自分でも起こせたらと想像するだけで、ムラムラする。コロニー、落としたいな。
エンタープライズの女性陣と飲みに行った日の、翌朝のことである。私は、誰かの部屋で目を覚ました。隣を見ると、オペ子がいた。彼女の首には、手で絞められたような真っ赤な跡がついていた。
「やべ、殺しちゃった?」
酒を飲んでも、記憶が残るタイプなので、自分がやったことを私は克明に覚えていた。酔っぱらった私は、オペ子に介抱され彼女の部屋に泊まることになったのだった。寝ている彼女の首を絞めて、殺人衝動と性的欲求に任せて犯した。失禁し、苦しそうに呻いていたのは覚えている。
オペ子の口元に、手をかざすと息をしていた。セーフ。圧倒的セーフ。
「あ、ベルちゃんおはよ」
「……おはよ」
ピンチである。普通に、暴行と強姦で憲兵に捕まってしまう。
「昨日のこと、覚えてる。首絞められるのって気持ちいいんだね。最初は、いきなりで怖かったけど、嫌だって言ったらやめてくれたし、最後は優しかった。ようやく、ベルちゃんのことが分かった気がするんだ」
「そ、そうなんだ」
「うん。苦しかったんでしょ。誰にも愛してもらえなくて。だから、私が愛してあげるね」
話が、まったく分からない。ただ、欲求のまま犯しただけなのに……
「ベルちゃんに首を絞められた時に、目の前が極彩色になって心と心で繋がった気がしたんだ。ベルって名前、お母さんが付けてくれたんだね。美しい子になるようにって。でも、お母さんもお父さんも、ベルちゃんを愛さなかった。だから、ベルちゃんは愛されたかったんだよね。前世があったってことも影響したのかな??」
「黙れ! 知ったような口を!」
馬乗りになって、顔を殴った。それでも、女の口は止まらなかった。
「それしか愛情表現を知らないんだよね。でも、私なら受け止めてあげられるから。あなたの愛を受け取ってあげるから」
「うるさい……」
私は、彼女の抱擁を拒否することが出来なかった。歪だ。どっちもおかしい。
「コロニー落としによって起きた津波に呑まれて、私のお母さんは死んだわ。唯一の肉親だった。だから、私も死のうと思ってたの。それを、ベルちゃんが救ってくれた。あなたは、私の優しい死神よ」
オペ子こと、ミミンはすっかり私の彼女面をするようになった。セーフワードを決めてから、お互いにドラッグを打つ。それから、私は彼女の首を締めたり、肌を刃物で傷つけたり、殴ったりした。
ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ論なんてものは、信じていない。でも、人は生死の縁で狂気に嵌るらしい。
電波と接続したマゾ女を嬲る。それでなんとか気を紛らわせているうちに、前線勤務がやってきた。
「なぁ、ベル。お前最近、香水か何か使ってる? なんか、甘い匂いするんだけど」
「別に、香水は使ってません」
甘い匂いのするドラッグは使っているが。
「まあ、いいや。エンタープライズの艦載機はボールだってよ。シュマイツァー大佐のやつ、政治力を失くしちまって、ザニー隊の割り当てを貰えなかったんだと」
「は? 私にあんな工業用ポッドに乗れと?」
「二機分のザニーは確保したらしい。俺たちは、エースだから好きな機体色にしていいってよ」
「ご機嫌取りが下手くそですね」
「まあ、ないよりはマシだろ?」
「そうですけど」
手をかけ育てた、パイロットが私の盾にならない?? 盾を育成するために、クソみたいな後方勤務をしたというのに……
エンタープライズの格納庫には、残念ながら、ボール一個中隊が所狭しと並べてあった。ザニーは、前の方に追いやられている。私の機体はしっかりと黒赤に塗装されていた。オーダー通りの色だ。オーベルの機体は、白青に塗装されている。差し色の配色が似通っていて、お揃い感がある。なんか、嫌だ。
「おー!! 俺の機体。カッケー!! やっぱ、白に青の差し色は連邦カラーって感じだよな。ベルのも悪役っぽくてカッケーじゃん」
「一言、余計なんですけど」
エンタープライズの主任務は、単艦での機雷敷設になる。ジオンの輸送艦やパトロール艦隊が通ると想定される航宙路に、艦載ボールで機雷をばら撒くだけの簡単なミッションだ。
「クソ、ジオンの奴らをこの手で殺せないなんてつまんねぇ!」
「あーそれ、めっちゃわーかーる」
機雷敷設艦は、敵に発見されたらお陀仏である。なので、敵との交戦機会が全くない。護衛機として、通常武装のボールを引き連れ艦を警護しているが戦闘は生じていない。
「うむ。ジオンの内通者はいい仕事をするな」
「艦長、まだそんなことしてるんですか? 騙されたの覚えてないんです?」
「それはそれ。これはこれだ。連邦情報部と、ジオンの内通者からの情報を組み合わせ、総合的に判断している」
「愚者は、経験に学び、賢者は歴史に学ぶってことですか? 俺は、また騙されると思いますけどね」
シュマイツァー大佐の持つパイプは中々広いが、正直信用できない。上層部も私と同じように判断したのだろう。だから、ザニーではなくボールが回ってきたのだ。機雷敷設艦なら通常のサラミスでも出来るだろうに、貴重な空母を酷使することも、裏付けを与えてしまう。
十数回目の機雷敷設の際、ついにエンタープライズは敵に見つかった。
「推定ムサイ級二隻、距離3000。高熱源体放出しました」
「機雷敷設中止。ボールを収容しろ。護衛機はスクランブル。迎撃しろ」
「敵8機のうち、4機、速いザクがいます。赤が一機、黒が三機です」
「チッ、撤退する。収容作業中止。宙域に警報を出せ」
シュマイツァー大佐は、歴戦の軍人であり情報を得るのも早かった。その第六感が、逃げろと警報を鳴らすのだ。彼が、それに従うのも無理はない。
「艦長、どういう「あれは、赤い彗星と黒い三連星だ! 俺たちはやり過ぎたんだよ!」
オペ子からの通信で、私は獲物がきたことを知った。やったぜ。ぶち殺してやる。しかし、様子が変である。エンタープライズは、私たちを見捨ててケツを捲って逃げる準備をしている。というか、後退しはじめた。そして、ムサイ級がもう主砲やらミサイルやらをバカスカ撃ってきている。いや、ジオンのMSいるじゃん。コイツらフレンドリーファイアを恐れてないのか?
「ベリング中尉、どうします? エンタープライズが撤退してます」
「マツダ隊、ヤガミ隊は敵を足止めしろ。その間に、他小隊は撤退し、エンタープライズの直掩に向かう」
「「了解」」
敵の練度が、嫌に高いことを認識したので、私は撤退することにした。ボールには、弾避けになってもらう。エンタープライズも、デカいから弾避けになるだろう。
「マツダ、誰を撃っている!! マツダァぁぁ!!」
「うわぁぁぁ!!」
足止めのボール小隊が、秒で溶けた。薄々感じていたが、これ敵の練度がかなり高いな。エンタープライズが逃げるのも分かるレベルだ。
「ボール隊、エンタープライズを死守しろ。私たちは敵母艦を叩く」
「よし、ベル。やるぞ」
4機の動きが良いザクによって、味方がみるみる溶けていく。ちょっと、ヤバイ。余裕だと判断したのだろう。8機のうち半分のザクが私たちを追ってきた。なんか、こいつらの動きを私は知っている。この前のコロニー落としで、やりあった奴らだ。
「ガイア、マッシュ、オルテガ、ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!」
「シャア! お前が、俺らに指図するんじゃねぇよ!」
「ベル中尉、助けてくださいっ。中尉ぃぃ」
「ああ、味方がやられていく」
後ろから、追いすがってくるザクを1機落とす。こいつら兎に角、連携がうまい。ベテランとやり合うのは嫌になる。弱いやつを一方的に殺したい。
「おい! オーベル! ムサイ沈めてこい!」
「わ、分かった。死ぬなよベル」
敵さん、普通に操縦が上手い。死角をカバーしながら面で制圧しようとしてくる。こっちが逃げるスペースが的確に削られていくのだ。三機を拘束しているのは、非常に骨が折れる。オーベルくん、早くムサイを沈めてくれ!!
じりじりと劣勢になっていく。ちょっとマズイ。時間が引き延ばされ、数時間もの間、逃げ続けているように錯覚してしまう。実際は数分なんだろうが、苦しい時間ほど長く感じてしまう。
「よし! やったな!」
「なんだっ?」
タイミングを見計らって、私は一機のザクに突貫した。そして、スラスターを潰し、そのまま盾にする。だが、敵はムカツクほど冷静であり、盾ごと撃ってきた。味方殺しの栄誉を彼らに与えてあげると、敵の動きが雑になった。
「へぇ、味方を殺すのだけは上手なんだね」
「貴様ぁ、よくもそんな卑怯な手を!」
「許さない! あなたを!」
おっさんが乗ってる方のザクを落とす。特注させていたヒートナイフで残ったザクのコクピットをこじ開ける。
「嫌あぁぁぁ!! やめてぇぇぇ」
「うるせぇな」
パイロットを潰さないように慎重に取り出す。そのまま掌で捕まえる。
「オーベル、一隻しかやれなかったのか?」
「すまん。もう一隻は弾幕が濃かった」
オーベルくんのザニーは左脚が吹っ飛んでいた。コイツ、新車なのにぶっ壊しやがった……
エース3機が、こっちをターゲットにしたようだ。エンタープライズが、しきりに戻って艦を守れと言ってくる辺りまだ沈んでいないのだろう。
「よくも、俺たちのフネを沈めてくれたな!」
「マッシュ、オルテガ、コイツだけは逃がすな!」
こんな時のための捕虜だ。掌を開き、存在をアピールする。多分、潰して殺してはないはず。
「貴様ァァ! この外道が!」
「ほら、取ってこい」
捕虜を思いっ切り投げつける。思わずザクも釣られて動いてしまったようだ。バズーカを捕虜めがけて撃つと、見事に黒いザクに命中した。
「オルテガッ」
「黒い三連星が、双子星になっちゃったねぇ」
「殺す! ぶっ殺してやる!」
ジオン側の時間切れだ。エンタープライズの宙域警報によって、連邦軍のパトロール艦隊が向かってきている。私たちが機雷をバラまいたせいで、ジオン側はパトロール艦隊を解体し船団護衛に充てているのだ。いやー、ジオンに兵なしで助かった。
「ガイア曹長。引き時を見誤るな」
「シャア! 貴様!」
「敵の増援が来る。目標は達成した。撤退するぞ」
「クソッ! オルテガの仇は、いつか必ず討たせてもらう」
エンタープライズは、格納庫がふっ飛ばされていた。大破だ。ブリッジは無事だが、それ以外は原型を留めてない。ボールが身を挺して守ったようだ。めっちゃ偉い。
飲み友の整備兵ちゃんは死んだそうだ。私の機付き長も死んでる。せっかく再建したのに、エンタープライズ隊はボロボロになってしまった……
シュマイツァー大佐は、生き残りのクルーに殴られて蹲っていた。確かに、コイツの内通者が情報をバラしたからエースが4人も来たと考えるのが自然だ。オペ子も、大佐の脇腹に鋭い角度の蹴りを入れていた。
エンタープライズが大破したので、私は、後方に送られることとなった。また、教官らしい。シュマイツァー大佐とブリッジクルーは、空母運用の経験があるので、新造の揚陸艦の乗組員となるそうだ。
新造艦の名前は、ペガサス級揚陸艦グレイファントムだとか。私もそっちに乗りたかった。なんでまた、教官なんだ……