【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

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05.ガンダム

 教官としての仕事の合間にプロパガンダに協力しているうちに、連邦軍の戦力がマシになってきた。ようやくジムの先行量産型がロールアウトしたのだ。私も、ザニーからジムに機種転換訓練を行った。ジムは非常にいい機体だ。ザクが原型であるザニーよりもエネルギーゲインが高く、ビーム兵器が使える。さらに、機動性も上がっている。

 

 ドラッグキメて電波女の首絞めながら、セックスするような生活をしていたら駄目になってしまう。もう、後方勤務している生活にも飽きた。下手にエースになってしまうと、前線に出してくれないのだ。オーベルも前線に出たがるタイプなので、一緒に上に掛け合っているのだが上手くはいかない。

 

「話が通ったぞ。ようやくルナツーからの転属だ」

 

 飼い主に飛びつく犬のような無邪気さで、オーベルが朗報を持ってきた。オーベルもエースとして私以上に、プロパガンダで引っ張りだこなのだ。親が連邦議員で、高身長のイケメンエースパイロット。プロパガンダのために生まれてきたような人材だ。

 

「アグレッサー部隊だ。新型のテスト要員らしいぞ。まだ赴任地は未定だ。まあ、どうせジャブローだ。それでも、ルナツーでプロパガンダ誌のモデル役をやっているよりもマシだろ」

「それはそう。で、またザニーに乗らされるってわけね」

「まあ、そうなるだろうな。ジムはまだ貴重らしい」

 

 一日千秋の想いで、ルナツーからの転属を待っていた。もう、こんな小惑星嫌じゃ。なんで、クソ退屈な教官任務をずっとしなければならないのだ。

 

「よっしゃ。辞令が降りたぞ。サイド7だ。アグレッサーだぞ。これは、楽しみだ」

「は?」

「ああ、そうか。サイド7は表向きには中立だが、連邦が基地を設けている。サイド6もそうなるようだ。シュマイツァー大佐が上手くやったらしいぞ」

「え? ジャブローは?」

「宇宙軍が、俺たちを地上に下ろしたくないらしい。地上戦でもやって死なれたら広報が困ると言ってたぜ」

「あっ、うん」

 

 アグレッサー部隊は、かなり小規模だった。所属しているMSはたった四機で、整備小隊以外の部隊はついてこない。パイロットも私たち二人だけだった。

 

「なあ、ベル。これ、異常な人事だよな。俺たち、アグレッサー部隊なんだよな? 秘密計画か何かに巻き込まれてないか?」

「さあ、私にはわからない」

 

 ザニーって記載されてるけど、これガンダムじゃん。私、テストパイロットじゃん。クソが。

 

 よく考えると、私にはデメリットが無いな。このまま、ルナツーで飼い殺しにされるよりも、ザニーよりグレードアップした機体で人間を殺せるじゃん。難しく考えるからいけないのだ。答えは、単純だった。アムロとかどうでもいいわ。私、人間殺したいから戦争やってるもん。

 

「行くぞ、ジオンぶち殺しツアーの始まりだ!」

「あの、ユング中尉……ベリング中尉って変わった人なんですか?」

「いや、そんなことはないな。誰だって、グラビアを毎日のように撮影されればおかしくなるだろ。俺も、自分のファンクラブが出来ていると聞いた時には、ジムを奪って逃げようと思った」

「そうですか……うち、お二人に憧れてたんです。雑誌で見るよりも、ユング中尉は格好良くて、ベリング中尉は美人でした」

「あはは……そうなんだ……」

 

 オーベルは、ファンを自称する整備兵に褒められて苦笑している。こんなのが少尉? 軍学校のカリキュラムを短縮しすぎてヤバイんじゃないか。

 

「ベリング中尉は、この機体についてどう思います? このガンダムめっちゃすごいですよね。これ、うちが組んだ教育型コンピュータも入ってるんですよ」

「ふーん。ん? マジ?」

「はい。マジです」

 

 舐め腐った態度だから馬鹿だと思っていたが、天才だったか。天才枠での新米少尉か。わりと、技術小隊もマジな人材を連れてきている。民間の貨物船に偽装し、私たちはサイド7に向かった。道中は何事も起きなかった。

 

 サイド7のノアコロニーで部品単位で持ち込まれたMSが組まれる。アグレッサー部隊用に塗装されたザニー、ジム、ガンダム、ガンキャノンが1機ずつだ。黒を基調とし、モスグリーンのジオン風の塗装が差し色となっている。

 

「めっちゃ楽しいな。コイツ。よく動く。私、これ乗ったあとザニーに乗れない」

「お前、自分が楽しいからって遊び過ぎだ。こっちはザニーなんだぞ」

「選ぶのが遅いから」

「交換しようぜ。俺、今週はザニーだから来週は、そっちにする」

「え、やだ」

 

 4種のモビルスーツを週替わりに乗り換えられる。模擬弾も撃ち放題だ。ルナツーでの退屈な仕事と比べれば天国だ。殴れる女とドラッグが無いのは仕方がない。我慢する以外にどうしようもない。

 

「ベリング中尉。他のテストチームとの演習を、来月に実施するそうです。向こうはジャブローの人たちですよ。ルナツーの宇宙軍としては負けられませんね。うちも応援します」

「うん。アミア少尉も整備頑張って」

「はい。もちろんです」

 

 アミア少尉に酒飲ませて、既成事実作ったら、殴ったり首絞めても許されないだろうか? ちょっと思ったので、お酒を奢ると言って私服でコロニーの街に出た。

 

「ベリング中尉、太っ腹ですね。うち、お酒は大好きなんです。いっぱい飲めるの久しぶりなんですよ」

「うん。奢るからね。たくさん飲んでね」

 

 彼女、めっちゃお酒飲む。気が付いたころには、財布の中身をほとんど呑まれてしまった。

 

「ぬぁ~、もうお金がありまへん。おしまいれす」

「中尉、めっちゃ酔ってません?」

「は? 酔ってないが? 私は正常なんだが?」

「それ、酔った人が言うセリフですよ」

「うるせえ。酔ってないんだよ。あ~人間、ぶっ殺したい」

「重傷ですね……」

 

 アミア少尉は、どこかに電話をしているようだ。憲兵はやめてくれ。捕まってしまう。

 

「うわ、酒臭ぇ。目立つ真似はするなって言われてるだろ」

 

 現れたのは憲兵ではなく、オーベルだった。私はお米様抱っこされ、エレカに乗せられた。ヤバい。車の振動で気持ちが悪くなってきた。

 

「申告! ベル・ベリング中尉、嘔吐します!」

「は? おい、待て! やめろ」

 

 翌日のオーベルは、私と口をきいてくれなかった。ごめんて。

 

 ジャブローチームとの演習は、我々の快勝で終わった。ジャブローのテストパイロットも優秀だったんだが、戦闘方法が教科書通りだったため、定石から外したら簡単に勝つことが出来た。オーベルがガンダムで、私がジムだったが、特にこれといった問題はなかった。ジムもいい機体なのだ。

 

「ジャブローチームは、来週には撤退するらしいぞ。新造艦が迎えに来るんだってよ。そんなのに予算をつぎ込むくらいならジムの量産数を増やしてルナツーに送ってくれって話だぜ」

「その新造艦って、どんな艦なの?」

「あー。確か、ホワイトベーヌとか言ったな。いやベースだ。ホワイトベース。ペガサス級だとよ。シュマイツァー大佐が慣熟航行してるグレイファントムの同型艦らしいぜ」

「ふーん。じゃ、それが撤退したら、私たちはルナツーに逆戻りってこと?」

「ああ。恐らくそうだ」

 

 ホワイトベースが、入港してきたのだがムサイが一隻、ぴったりとついて来ているのだ。ちょうどいいので、出撃を要請したが、この基地の管理者に拒絶された。なんでも、中立地帯だからダメだとか。

 

「嫌な予感がする。オーベルは、ジムに乗ってて。私はガンダムで出る」

「おい。演習場に行くのか? あのゲジ眉少佐が怒るぞ」

「死体は喋らないから、問題はない」

 

 演習場に侵入すると、阿鼻叫喚といった様相だった。侵入してきたであろうザクは、私たちを見て戸惑っていたので手を振ってあげた。名目上、アグレッサー部隊だから、ガンダムもジムもジオンカラーだ。友軍かと思って戸惑うのも仕方ない。

 

「オーベル。撃って」

「おうよ」

 

 間抜けにも、こちらに手を振り返したザクはスプレーガンのビームで吹き飛んだ。爆発でコロニーの隔壁に穴が開いたが、それはコラテラルダメージだ。仕方ないね。

 

「油断しちゃダメっしょ」

 

 ジムが、サーベルでザクのコクピットを潰す。

 

「これで、三機目か。敵の脱出路は封じたな」

「問題は、市街地の方っぽいね」

 

 市街地もまた、悲惨なことになっていた。ザクの流れ弾が避難民の群れを肉塊に変えている。軽装甲車がザクを倒そうとしているが、蟷螂の斧だ。全く、火力が足りない。

 

「あ、繋がった。うちです。うち。アミア・ミア少尉です。今、ホワイトベースの中にいま~す。なんか、このフネの人、みんな死んじゃってて大変なんですよ。中尉のアドバイス通り、ルナツーの権限を押し通して、無理やりホワイトベースの格納庫を接収して正解でした」

「おい、アミア少尉。お前、とんでもないことやってないか? ベルも、何をアドバイスしてるんだよ……」

 

 結果オーライだからセーフ。何も問題はないのだ。それに、実行するとか思ってなかった。戦火に巻き込まれて死んでると思ったのに。

 

「なんか、あのガンダム動いてないか? あーあー、マシンガンの直撃を受けてる。ジャブローの連中、あんな下手くそだったか?」

「オーベル。あれがニュータイプだよ」

「ふん。そんなもの、幻想だろ。で、マジで誰が乗ってんだよ?」

 

 トリガーハッピーになって、油断していたザクのコクピットにサーベルを刺した。オーベルがもう一機のコクピットにサーベルをぶち込む。

 

「こちら、地球連邦軍ルナツー所属、第11教導小隊、オーベル・ユング中尉だ。貴官の官姓名は?」

「あんたら、軍人なんだろ。なんで、こんなことになったんだ?」

「あ? 俺は官姓名を聞いたんだ。質問は受け付けない。ひょっとして、民間人か?」

「そうだと言ったらどうするんだ?「こうする。はい。一丁上がり!」

 

 ガンダムのコクピットを思いっきり殴った。沈黙したガンダムをズリズリとベイまで引きずる。

 

「おい、ルナツーのモビルスーツ。それはジャブローの機体だ。乱暴な扱いはやめてもらおう」

「コクピットに民間人がいる。だから、制圧した。それだけ」

「は? 民間人?」

 

 ホワイトベースに民間人を収容しつつ、沈黙したガンダムも格納庫に放り込む。私とオーベル、そして技術者のアミア少尉と、テム・レイ大尉の立ち合いの元、コクピットロックを解除した。

 

「アムロ。どうしてお前がこんなところに!?」

「うわー、民間人。うちの作ったガンダムに民間人が入り込んでいるんですけどー」

 

 ルナツー側の人間は、全員無事であるし、ちゃっかりザニーとガンキャノンもホワイトベースに積んでいた。それに対し、ジャブローの人間は酷い有様だ。ジャブローのテストパイロットとメカニックは全滅したし、ホワイトベースのクルーも半舷上陸していた連中は死んでいる。

 

「パオロ・カシアス中佐は負傷され休養されています。なので、私ブライト・ノア少尉がブリッジクルーの中で最上位となります」

「ああ。そうか」

「俺は、中尉だがパイロットだからな。フネの指揮はわからん」

「そう。私も同じ意見」

「え~。やだ〜。でも、うちも指揮できない」

 

 技術大尉、技術少尉、パイロットではあるが中尉二名といった連中に囲まれているブライトは居心地が悪そうだった。

 うちの技術小隊はモビルスーツの整備しか出来ないし、そもそも所属が違う。権力構造が複雑化されているのだ。

 

「俺は、ブライトキャプテンに従うよ。ルナツーに着くまでよろしくな」

「はっ。よろしくお願いします」

「あんたが、上位者で俺が下だ。あんたは艦長で、俺が部下。そういうことになる。うちの整備小隊もあんたの部下に入る。上手く使ってくれよ」

「はい! 発言します! アミア少尉です。うちは、ジャブローの連中が嫌いなので嫌です!」

 

 アミアの頭を引っぱたく。何をするんですか? とか言っているがこっちからしたらお前は、何を言っているんだ案件だ。

 

「ベル・ベリング中尉です。私もユング中尉に同意します。アミア少尉も同意すると言っています」

 

 ブライトとアミアが、えっ、みたいな顔をしていたがそれは気にしない。混沌としたメンバーだが果たして無事にルナツーへ辿り着けるのだろうか。

 

 若干、不安になる私を他所にホワイトベースは、サイド7を離脱する準備を終えようとしていた。

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