【完結】TS連邦士官ちゃんは、人殺しがやめられない!   作:むにゃ枕

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06.それでも?

 ホワイトベースは、避難民を満載しサイド7を離れた。ムサイ級は、迎撃する素振りを見せなかった。艦載機のザクを5機も失っているのだ。出せる機体が無いのだろう。

 

 ルナツーの支配領域に、ホワイトベースは無事に入った。嚮導艦のサラミスがホワイトベースを先導する。ムサイ級は、ルナツーの外縁部をウロウロしているだけだった。

 

「あのムサイ、ちょっかいすら出して来なかったな」

「うん。多分、ザクが残ってないんだと思う」

「それなら良いんだが」

 

 ホワイトベースが、接岸したとたん艦内の電源が落ちる。人間が争う音がそこらからした。

 

「あーあー。やっぱこうなったか」

「そりゃあ、うちが連絡しましたからね。ジャブローの狗なんてこうなって当然です」

 

 アミア少尉が、怪しいとチクったらしい。同じ連邦軍とはいえ、ジャブローとルナツーでいがみあうのはどうかと思う。非効率だ。

 

「その女、誰なんです?」

「げっ」

 

 ルナツーのお偉いさんへの説明のためホワイトベースを降りると、ミミン少尉とばったり会ってしまった。別れ話も何もしないで、サイド7に行ったから彼女は怒っているはずだ。

 

「うち、単なる整備兵ッスよ」

「ふ〜ん。へ〜。そ〜ですか〜。ま、ベルちゃんが無事で良かったです」

 

 許された。夜まではそう思ってました。まさか、逆に私が首を絞められるとは思わなかった。苦しくて、イロイロと漏らしたので不快だった。二度とされたいとは思わない。

 こいつ、電波と接続してるから記憶読んでくるんだよな……しっかりアミアに酒飲ませて、ワンチャン狙ってたこともバレている。

 

 ホワイトベースの嫌疑も晴れ、目出度く出港となった。私は、ホワイトベースから降りたので、つまらないルナツー生活に逆戻りだ。憂鬱だなぁと思っていたがどうやら違うらしい。

 

「俺たちも、グレイファントムで大気圏まで援護することになったぞ。あいつら民間人ばっかだからなぁ」

「ワッケイン少将がよく許可したね。あの人、消耗抑制派なのに……」

「なんでも、死んだパオロ艦長ってのが軍学校の恩師だったらしい。それで、情が芽生えたんだろう」

 

 グレイファントムのブリッジクルーには、見覚えある姿がちらほら有るが、知らないメンバーも多い。ほとんど、新兵に毛が生えたような連中だ。MSパイロットが特にひどい。コイツら、素人だ。シミュレーター数十時間しかやったことない連中で、士気は高いがそれしか取り柄がない。多分、ボール部隊の方が経験があった気がする。

 

「スカーレット隊ねぇ……ボンボンの集まりじゃねぇか」

「うーん。彼らも、議員の息子にそう言われたくないと思ってるよ」

「そう言われたらそうだけどよ。でも、お前に比べたら格が落ちるが、一応俺もエースなんだぜ」

「そうだね。彼らに必要なのは、まず生き残ることだよ」

 

 ジャブローへの降下予定地点まであと1時間。まだ、敵の妨害は来ていない。来るとしたらここらへんだろう。そう思っていたら、アラートが響いた。

 

「ムサイ級推定2隻。高熱源体10。MSと推定されます。赤い彗星、黒い連星の三機を確認」

「はーい。了解。ベル・ベリング。ガンダム、行くよ」

「オーベル・ユング、ジム出る」

 

 とりあえず、艦隊防空を行わなければならない。ホワイトベースも、グレイファントムも防御火器が低調だ。艦隊防空用のサラミスが数隻欲しい。

 

「あいつら、まともに飛べてないぞ……」

「ホワイトベース隊の方が、まともに動いてる」

 

 スカーレット隊は酷いものだった。編隊すら組めず、搭乗員が機体に振り回されている。せっかくのジムだが、数に数えることはできない。

 

 敵のザクも速度が遅い。平均的な速度のエース3機が突出してしまっている。他の7機は下手な編隊を組んでこちらに向かっている。

 

「敵も同じみたいね」

「ああ。素人と素人の戦闘か。なんのための戦争なんだか」

 

 ビームライフルを見越し射撃で撃つ。はい撃破。知らないってのは怖いね。もう、単なる黒い星じゃん。かわいそう。

 

「ベリング1機撃破」

「ガンダムってのは、規格外だな。ジムにもそのパワーが欲しいぜ」

 

 普通の速度のザクなら、私の敵ではない。ビームライフルを初見で避けられたらすごいよ。シャアと黒い星は乱数機動回避をはじめた。

 

「あいつらは、こっちを警戒しているだろう。敵の目的は、ホワイトベースだ。俺たちはグレイファントムとホワイトベースを守ればいい。簡単な話だ」

「そうだね。じゃあ、ホワイトベース隊とスカーレット隊を前に出して、混戦に持ち込んだ方が良いね」

「素人さんが、盾になって時間を稼げってか。全く、嫌な時代だねぇ」

 

 スカーレット隊のジム8機、ホワイトベース隊のガンダム1機とキャノン2機。合わせて11機が9機の敵MSと正面からぶつかっていった。赤い彗星が、みるみるうちにジムを減らしていっている。

 

「俺たちは軍人だ。少年、俺が前に゛ぐぉ゛」

「ああ、小隊長!? 小隊長!?」

「連邦も相当、疲弊していると見える」

「アイツだ、アイツがマッシュとガイアの仇!! クソ、雑魚が俺の邪魔をするな!!」

 

 ジムが、見る見るうちに溶けてしまった。敵のザクも2機が落ちた。それでも、8機が残っている。赤い彗星と3機のザクがホワイトベース隊を叩いている。ガンダムが滅茶苦茶撃たれているが、まだ粘っている。

 

「スカーレット隊全滅しました。ベリング中尉、オーベル中尉が援護しなかったからですよ!!」

「あんな飛ぶだけがやっとの素人をどうしろって言うんだ。軍は託児所じゃないんだぞ」

「作戦目標は、ホワイトベースの予定地点までの護衛。敵のMSの殲滅は主目的じゃない」

「オーベル中尉、ベリング中尉に汚染されてません?? あなたは、味方を守るためになんでもするような人でしたよね?」

 

 オーベルの顔は見れないが、苦虫を嚙んでいそうな気配がする。

 

「突出して勝手に孤立して味方を危険に晒した俺に、素晴らしいアドバイスだな。無茶をするだけが、戦争じゃないぜ」

 

 黒い機体を先頭に、4機のザクが近づいてくる。オーベルにサインを出すと彼は、親指を立てた。

 

「よう、黒いやつ。お前の相棒は二人とも星になっちまったな。黒い三連星ってのはどうも、噂だけだったらしい」

「貴様ァ! 殺してやる!」

 

 ジムと、黒いザクが踊っている間に、私は残りを丁寧に弄びながら墜とした。敵が雑魚過ぎて笑えてくる。多分、エンタープライズで機雷を播きまくったせいで、ジオンの補給や諸々が停滞しているのだろう。人材までも停滞してしまうとは、ジオンも大変だ。

 

「オッサン、時間切れだぜ」

「ほざけ! 若造が!」

 

 オーベルは、メインカメラを吹っ飛ばされたらしい。黒いザクは左手がなくなっている。激闘だったのだろう。私は、ビームライフルで、ザクを吹き飛ばした。

 

「ベル! こちらグレイファントム! 何遊んでんの! ホワイトベース、やられてんだけど!」

「え~、自己責任でしょ」

 

 見ると、赤いザクが、ホワイトベースのブリッジにバズーカを突きつけようとしていた。当たらなくて良いので適当に牽制射撃を撃つ。敵は逃げ時と判断したのだろう。引いていった。流石シャア。逃げ足が速い。

 

「大敗だな。作戦は失敗だ」

「味方が貧弱だから……」

 

 ホワイトベース隊のガンダムは、装甲のおかげか中破程度の損傷で生き残っていた。キャノンも中破が1機、もう1機が大破と散々な結果だ。ザクは2機だけ落としたらしい。使えねぇ~。ホワイトベースはエンジンに被弾したようで、予定コースから逸れて北米へと落下していった。

 

 敵のザクを8機撃破したが、味方のジム8機が撃破された。オーベルのジムは頭が吹き飛んだし、ホワイトベース隊は立っているだけで精一杯といった有様である。赤い彗星も大気圏で燃えないかと思っていたのだが、普通に逃げ延びてしまった。

 

「シュマイツァー大佐、スカーレット隊が全滅しましたけど、補充の当ては有ります?」

 

 大佐は、眉間に皺が寄っていた。どうも、スカーレット隊は重要な連中だったらしい。全滅してしまうのは想定外だったようだ。

 

「ベリング中尉。私は、アイツらを盾に使っていいとは一言も言っていない。貴様の実力なら全滅は防げたはずだぞ」

「買い被りですよ大佐。それに、守れとも言われていません。あんな、素人をMSに乗せても無駄です」

「誰だって初めは素人だぞ。彼らは、お前の盾になって死ぬためにいるんじゃない。貴様は、いつも美味しいところだけ取りやがって。死神め! おい! オーベル! お前もなんとか言ってやれ!」

 

 ジムの頭が吹っ飛んだので、整備兵に謝っていたオーベルは突然の流れ弾に目を白黒させていた。

 

「俺は、ベリング中尉の行動が正しかったと思いますよ。乱戦に突入せず予備となり敵の突破に備えていたのは正解です。現に黒いザクが突破してきましたからね」

「オーベル! お前まで! べリング! 貴様がザクで遊んでなければ俺のスカーレット隊は全滅しなかったんだぞ!」

 

 わあわあと喚いている大佐は、哀れだった。この男が、出世街道を外れているのは間違いないのだ。もう、どうしようもないだろう。吊っていた水筒を一気に煽った。強い酒精の臭いがブリッジに広がる。 大佐は、項垂れながらキャプテンシートに沈んだ。

 

 ルナツーへ戻ると、プロパガンダが私たちを待っていた。オーベルファンクラブはついに4桁を突破したらしい。私のファンクラブとかは聞きたくない。知らない。

 なんか、私の胸元とか下着が見えている写真が出回っているらしいが、多分気のせいだろう。

 

 ガンダムがあるおかげで、私はちまちまジオンへのハラスメント攻撃に出られている。もっぱらジムやボールの実戦を援護する教導機としてサラミスで出撃しているのだ。グレイファントムはサイド6に秘密裏に入り基地を設営している。何やら、ニュータイプの研究をしている連中と手を組んで後ろ暗いことをはじめたそうだ。

 

 ジムとボールを満載したサラミス二隻に私とオーベルは分乗し、パトロールに向かった。目標は、ジオンの輸送艦の拿捕だ。ジオンも船団護衛方式を採用したため、そこそこの規模の戦闘が発生する。

 

「こちらブリッジ。敵艦隊を発見した。ムサイ級が一隻護衛についている。三隻は輸送艦だ」

「了解。ベリング機はボール隊を援護する」

「オーベル機はジム隊を援護する」

 

 ムサイからMSが射出された。輸送艦からも4機のMSが出てくる。敵は8機だ。サラミスはムサイ級と撃ちあっている。

 

「全機、無事に帰還するぞ。ジム隊は、隊列を崩さず俺に続け」

 

 オーベルは部下思いの良いやつである。味方を全機帰還させるために、私はビームライフルを乱射した。まずまず当たる。敵の2機がもうデブリに変わった。

 

「ベリング中尉、敵のMSザクじゃ有りません!? あれは、新型ですか?」

「いや、旧型だ。型落ちの機体だね」

 

 ヅダだ。初めて見る。ドッグファイトを仕掛けてきたので応じたら1機は勝手に爆散し、もう1機もスラスターから火花が出ている。

 

「敵は旧型だ。武器は私が落とす。回避も遅いだろうから君らで沈めろ」

 

 ヅダの対艦ライフルを奪い、ボールに指示を出す。囲んで撃たれまくっているヅダは、鼠花火のようで面白かった。オーベルの方のザクを2機減らし、ムサイの料理にかかる。砲を無力化し、ジムとボールにやらせるのだ。

 

「降伏する。こちらは輸送艦だ。我々には戦闘能力がない。南極条約に基づいて降伏を受理してほしい」

「コロニーを落としておいてよくそんなことが言えるな。各機、攻撃を続けろ」

 

 国際法を守るべきです! 捕虜を取りましょう! と意見するやつがたまに現れるが、私の家族がコロニー落としで全滅したんだよね~と匂わせると態度が変わる。それでもと言い続けるような芯のあるやつはまだいない。

 

 ホワイトベース隊は活躍しているらしい。そろそろオデッサで大きな戦闘がおこる頃だろう。

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