賢者は使い魔   作:超高校級の切望

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プロローグ

 賢者。読んで字のごとく、賢い者を指す。

 

 仏教では真理に悟っていない凡夫に留まる者を指す。

 

 ()()()()()()優れた魔法使いを指す。

 

 まあ、スキルとかで知識がないまま魔法が使える馬鹿でも賢者になれてしまうのだが。

 生憎と俺は違う。神様とやらから貰ったのはほんやくコニャック一瓶。

 

 異世界転移後第一村人と接触後飲んで吐いて気絶して最悪だった。未成年に何を持たせてるのか。

 その後異世界人であることがバレて不法入国者として捕まったあと、賢人の塔に連れて行かれ人権無いのを良いことに人体実験受けまくった。

 

 その後腹黒バ美肉ロリジジイこと師匠に弟子入りという名の奴隷契約を結ばされ、今では塔に10人しか存在できない賢者の末席に身を置ける立場に。

 

 師匠は賢者を育て上げた功績として、小さな異世界『箱庭』を所有出来る賢老の一人となってさっさと扉の向こうに消えていった。

 

 さて、師匠を失った俺はと言えば当然差別を…………受けることは無い。

 この世界の魔法使いに、物語でよく見る技術の独占とか一子相伝とかいう概念はない。一応あるにはあるが、それは魔法使いというより貴族としての在り方が強い者達。

 

 賢人の塔の住人にとって自分以外の魔法使いとは、互いに知識を高め合い真理を探求する仲間。なので元奴隷だろうと、王族であろうと智を持つのなら等しく同胞。でもさ、お前等さ、俺を切り刻んだり臓器足したりしたよね?

 

 え? 昔の話? そうですか。そうだろうなあ、此奴等。おい、懐かしいなと笑うんじゃありません。

 

 まあとにかく、此奴等は頭がおかしい。付き合ってられん! 俺は帰りたい!

 仕えてた国ももう俺居なくて平気だろうし、早いとこ別れたいので、賢老を目指すことにした。

 そこで現代文明に近い文明を生み出して隠居しよう。扉は内側から破壊して二度と出入りできないようにして、それから…………あ、まずは賢者になれるだけの弟子を探さなきゃか。

 

 面倒くさいな。どっかに資質持ってる子供捨てられてないかな。

 

「…………ん?」

 

 と、師匠から譲り受けたネックレスが熱を持ち、眼前に何かが現れた。鏡のようなそれは、空間転移の術式だ。いや、空間どころか別の世界に繋がって…………別の世界!?

 

「マジで?」

 

 世界とは無数の泡のような物。それが無秩序に漂っており、(アンカー)(マーカー)を打って置かなければ同じ世界の移動は不可能とされている。

 

 だけど師匠なら、俺が渡界魔法を使っても普通に追ってくるだろう。魔力を追って………しかし、これは他人の魔力!

 

 残滓が消えるまでに俺と結びつけられなければ、逃げ切れるか? とりあえず封印して部屋に持ってこう。これが俺を指名している召喚にしろ、何かの事故にしろこの世界とおさらばするチャンス!

 

 部屋に戻って宝石類や魔導書を『箱』に詰め込む。後は、特にないな。遠征申請出して、なるべく遠くに移動してから異世界へ移動しよう。

 

 …………ネックレスは捨てとこ。

 

 

 

 

 

 ハルケギニア。魔法を扱う貴族達が平民を支配する世界。

 そこに一人の少女が居た。名はルイズ・フランソワーズ・ヴァリエール。トリステイン王国公爵家の三女にして、トリステイン魔法学院に通う公爵子女。

 

 今日は進級を賭けた重要な儀式『春の使い魔召喚』。自身の得意系統に合った使い魔を召喚する儀式は、時にはまだ得意系統を知らないメイジが何を極めるべきかの指針にもなったりする。

 

 それはルイズにとって希望となるはずだった。彼女は魔法学院に通う生徒でありながら、その魔法は失敗続き。魔法の使えぬ貴族と見下され、嗤われる日々を過ごしていた。

 

「ゼロのルイズ! 早く諦めろ〜」

「私達、早く帰りたいんだけど〜?」

 

 今だって彼女を笑う声が響く。

 呪文を唱え、杖を振るう。起こるのは爆発。

 

 嘲笑が響く。屈辱で顔を歪めるルイズにコルベールは止めるべきかと声をかけたが、それでも最後のチャンスを与えることにした。

 

「宇宙の何処かにいる私の下僕よ!」

 

 ザワッと周囲が困惑する。それはどう聞いても本来の呪文ではないからだ。

 

「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに応えなさい!!」

 

 そして爆発。土煙が舞う。

 またか、と誰かが叫ぼうとした時、突風が吹き荒れた。

 

「はははは! ざまぁみろ、ロリジジイ! 逃げ切ってやったぜ!!」

 

 男が居た。

 黒い髪に白と青のメッシュ。ズボンは履いているが、上半身は裸にローブという格好。鍛えられた体に刻まれた文字のような模様のような入れ墨は端正な顔の左頬まで広がり、黒いローブは陰鬱な印象を与える。

 

 物語に登場する悪しき呪禁師(ヘクサー)とはこの様な姿をしているのだろう。そう思わせる不気味な男はルイズに視線を向ける。

 

 コルベールが思わず前に立った。

 

「失礼、ミスタ。貴方は何者か…………」

「んん? 俺を呼んだのはお前等だろ? ああ、呼び出すのはランダムか。ふむ、本来は動物幻獣の類を呼ぶのか」

 

 キョロキョロと周りを見回す男。理解力は高いらしい。

 

「まあ、良い。良いさ………俺が彼処から逃げられた事には変わりない。ところで、お前の年は?」

 

 と、コルベールに何故か年を尋ねてきた。警戒しながらも、刺激しないようにコルベールが己の年齢を答えるとふむ、とルイズを見る。

 

「俺を呼び出したご主人様。お名前は?」

「ル、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」

「了解ルイズ様。ではこれより、我が身は貴方の盾にして、貴方の杖であり剣。死が分つまでは、全霊をかけて貴方に尽くそう」

 

 膝をつき、手を取り、唇で軽く触れる。

 流麗な所作にほぅ、と感嘆するルイズ。剣を待ってるし、もしかしたら何処かの貴族に仕える兵士だったのかもしれない。見た目は変だが………。

 

「良いわ。特別に、契約してあげる」

 

 コルベールに再召喚を頼みそうだったルイズは機嫌を良くしてふふん、と胸を張ると杖を男の頭の上で振る。

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

 と、ピタリと止まるルイズ。何やら恥ずかしがっているようだ。

 

「…………特別だからね。感謝しなさい」

 

 そう言ってルイズは膝まづく男に顔の高さを合わせ、唇を重ねた。

 

「……………お」

 

 男は左腕に現れた模様を見つめる。見たことがない文字をコルベールがメモをしたいというので見せた。

 

 使い魔は契約することで主人に逆らわなくなるという。人間相手は知らないが、少なくともこれでめったなことにならないだろうと一息つく。

 

「『サモン・サーヴァント』は何度か失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来たね」

 

 コルベールが嬉しそうに言ったが、生徒達は平民だからだろうと嘲笑う。ルイズと口論になり、コルベールが止めた。

 

「さてと、それでは皆教室に戻ろう」

 

 コルベールがふわりと浮き上がると生徒も続く。ルイズは地上にいる。

 

「『ゼロ』のルイズ、お前は歩いてこいよ!」

「彼奴『フライ』はおろか『レビテーション』すら使えないんだぜ」

「その平民、あんたにはお似合いよ!」

 

 笑いながら飛び去る生徒達にルイズは俯く。良くなりかけた気分はすっかり沈んだ。

 

「ついてきなさい…………ええと、名前は?」

「ケント」

「ついてきなさい、ケント」

 

 

 

 

 

 いやはや、まさかいきなり洗脳魔法を使ってくるとは。そこまで強いものではなく、好感を持つ程度の暗示だがこちらの世界の魔法使いもそれなりにクソ野郎だな。

 

 まあ、魔法の形は既に決められていて、開発者がクソなだけで本人達は知らずに使っている可能性もあるが。

 

 使い魔のルーンは解析してみると特定条件の『解析』と『反映』。そして『身体強化』と『鼓舞』と出た。

 

 自身に刻まれた別の術式と干渉しないように調整するのは少し大変だった。簡単に消せてしまいそうで。

 

 魔法学院は、まあ貴族学院と同じ感じだろう。魔法を研究、開発する魔法そのものが目的の魔法使いではなく魔法を手段をなす術として使う魔術師の在り方。

 

 新しい魔法の開発とか積極的に行われていないんだろう。つまり、異世界魔法は遅れてる!!

 

 仮にも賢者となった身。魔法を学ぶのは、やはり好きではあった。学院で何処まで学べるか………。

 まあ、寿()()()()()()()()()()のだ。ルイズが死んだ後、ゆっくり旅でもして探してみるのも面白そうだ。

 

 

 

□■□■□■□■□■□

 

 

 

 トリステイン魔法学院で働くシエスタは、ふと茂みに何かが落ちているのに気付く。拾い上げると、ネックレスのようだ。血のように赤い宝石にはまったネックレス。

 

 生徒のものだろうか? 教員に届けて………。

 

「……届けなきゃ」

 

 そう呟いて、シエスタはネックレスを懐にしまった。

 

 


 

賢人の塔所属十賢者第10席兼元セザル王国四騎将筆頭『戦狂の賢者』ケント・ルイミニア。

本人は常識人ぶってるが戦争を新しい魔法の実験場と思ったりするなど立派に魔法使いの仲間入りを果たしている。

セザル国は嘗ては帝国であったが肥沃な大地と高純度の霊脈を狙われ、豪族に裏切られ滅亡寸前だった。

現在はケント含めた四騎将のおかげで国土を取り戻し侵略者から国を守り続けている。ルイミニアは師から受け継いだ名前。

 

四騎将

全員他の四騎将を頭おかしいと思ってるがそれはそれとして友達。人はそれを類友と呼ぶ。

 

四騎将『錬災才女』錬金術師。魔法道具の開発で国を発展させた。ほぼ全てに自爆機能をつけホムンクルス兵に飛行魔導具を持たせる。自爆しかありますまい。

 

四騎将『十三界断』元処刑人。魔法も万の軍勢も剣の一振りで切り裂く。首は丁寧に化粧して私有地の山の頂上で燃やす。

 

四騎将『商利の政女』公爵令嬢。四騎将最弱だが交渉と先見の才能があり、セザル王国を大いに盛り返した。兜を素手で握りつぶす程度の身体能力しかない。

 

四騎将『影』暗殺者。表向きには存在しない5人目。他の皆とは仲が良い。綺麗に心臓を抜き取れると嬉しくて部屋に飾る。

 

皇帝。胃薬中毒者

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