賢者は使い魔   作:超高校級の切望

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土くれのフーケ

 土塊のフーケ。現在トリステインを騒がせる大盗賊だ。

 見張りを掻い潜り夜の屋敷に忍び込んだかと思えば、白昼堂々屋敷をゴーレムで破壊したりとその手口は様々。

 

 共通しているのは錬金を使い金庫や倉庫を粘土や砂に変え穴を開けるということ。『固定化』の魔法を施しても、実力が上回るゆえに『錬金』で簡単に崩される。

 

 そして『秘蔵の○○、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』と文字を残す。

 普通少しでも罪を軽くするために余罪は隠すものだ。それをしないのは、つまり捕まらない自信があるから。土くれという二つ名だって元々は犯行の手口から名付けられたものなのに名乗りだすと言う、何処までも貴族を馬鹿にした態度。

 

 因みに民衆の人気は高い。

 傲慢、高慢。まともに領地経営も出来ない。何一つ口を出さず、懇願を無視し、そのくせ金を絞るだけの貴族も多いトリステインでは貴族は結構嫌われている。貴族の子息に飯を作るマルトーですら、貴族嫌いと言えばどれ程か解るだろう。

 

 そして、フーケは若かった。民衆の言葉にちょっとばかし調子に乗ってしまった。得意げに自分の爪痕を残し、貴族を散々侮辱する。それは、彼女もまた貴族嫌いというのも関係している。

 

 彼女の真の名はマチルダ・オブ・サウスゴータ。アルビオンの王弟モード大公に仕えるサウスゴータの最後の生き残り。

 

 心優しいモード大公や、その愛人であるシャジャルを殺した王家を恨み、没落して、下から世界を見れば腐った貴族の多い事。

 

 恨みは憎しみに変わり、彼女は貴族達を辱め、貶める為に盗賊となった。モード大公の忘れ形見を育てるためでもあるが。

 

「…………う、ここは?」

 

 そんな彼女は今花畑に居た。はて、ここは何処だろう? 何故ここに? 前後の記憶が曖昧だ。

 辺りを見回していると、ふと人影が見えた。それは………

 

 

 

 

「…………はっ!? い、今父様達が花畑で手を振って!?」

 

 その後慌てた様子のシャジャルに吹き飛ばされる幻影を見たような。

 天国(ヴァルハラ)を垣間見た気がするフーケは、ザリッと後ろから聞こえた土を踏む音にビクリと振り返る。

 

「どうした? ほら、もっと魔法を見せろ(抵抗しろ)

 

 ニコニコ良い笑顔で命令(要求)してくる異界の化物(異国のメイジ)。悲鳴のような声で詠唱を唱え、巨大な岩の杭を飛ばす。受け止められる。粘土に錬金。鋼に錬金!!

 

 砕かれた。ふざけんな!!

 

 理不尽が人の形をした化け物相手に未だ自分が捕まっても殺されてもいないのは、向こうが此方を観察しているからだ。

 

 フーケは土を大量の砂に錬金する。上から土塊を落とす。焼き尽くされた。

 

「く、そ………何だって、こんな……………!!」

「手詰まりか? じゃあ、後は体で楽しむとしよう」

「くっ! 殺せ!」

 

 元貴族のプライドなんて持っちゃいないが、女としての意地はある。辱めなんて受けない。

 

「馬鹿を言うな。トライアングルは希少で優秀なメイジ。ちゃんと死なないよう気を使う………なるべく」

 

 あ、これ辱めとかじゃない。本気で研究材料にする気だこの男。

 

「テファ、ごめん………」

 

 フーケが全てを諦めようとした、その時だった。宝物庫の壁が()()()()()()

 

「「…………は?」」

 

 フーケは突然の光景に、ケントは瓦礫に混じるそれに困惑する。

 

 ガシャンと瓦礫と共に落ちてくる人形。見覚えのある、腰辺りに描かれた片目を閉じ舌を出した(テヘペロ)マーク。

 

「ソフィアの──!?」

 

 キュイン! と人形の目から光線が放たれる。漆黒の光線はケントに当たる前に解け無数の文字となって纏わりつく。

 

「しまっ──!!」

 

 慌てている? なんだ、あの人形は。いや、今はそれより!!

 

 フーケは即座に砕かれた壁から宝物庫に侵入する。これだけ死にかけて、無駄足なんてごめんだ。メッセージは書いてる暇が無い。『破壊の杖』と『魔神の心臓』を掴み取り、即座に逃げる。

 

 風の音にすら怯えながら、フーケは闇の中へと消えていった。

 

 

 

「何でここに魔導鎮圧機兵が…………」

 

 ケントは転がる人形を見ながら呟く。その人形を知っている。同じ四騎将、同じ四大公の一人『錬災才女(れんさいさいじょ)』ソフィア・パルラルレルの作りし対魔法使い専用兵器。

 

 機能は()()()()()。普段なら自動防壁で防げるのだが、フーケの魔法を楽しむ為のノイズになるからと防壁を弱め、かつ予想だにもしなかった出現に反応が遅れまともに食らってしまった。

 

 機兵自体はケントを封印する為にコアを限界稼働させた影響で発生した機械熱でコア自体が融解して機能停止したが…………。

 

「まてまて。どういう事だ? 何でソフィアの作品がここにある」

 

 Aの世界のものが2回以上Bの世界に落ちる確率は限りなく低い、筈だ。だが、そもそもルイズが自分の目の前に………前の世界にゲートを繋げたのが偶然の事故じゃなかったとしたら?

 

「まずい。まさか、この世界既に道が形成されていた!?」

 

 ならば、来るかもしれない。師匠(せんせい)が、同僚が、皇帝が…………!

 

「いやいや、落ち着け。まさかまさか………師匠(せんせい)は兎も角、彼奴等が俺に黙っているわけ…………」

 

 つまり師匠(せんせい)が来る確率は微塵も減っていない。こんなことある?

 

「ケント!!」

「………ルイズ」

 

 考え込んでいるとルイズが駆け寄ってきた。

 

「大丈夫!? 何か、されてたけど」

「ああ、魔法が封じられた」

「え?」

「解呪には少し時間がかかる」

 

 なにせこの術式、作ったのほかでもないケント自身だし。ソフィアとの共同制作であるこれはパターンを一秒に425回変化させる。ケントであっても食らってしまえば暫くはまともに魔法が使えない。

 

「………………」

 

 あれ、これってチャンス? とエルザは思う。彼が自分に施した『武器を持つと強くなる力』は健在。今なら…………

 

「これぐらいなら問題ねえが」

 

 ケントが指を鳴らすと大爆発が起こった。エルザは逆らうのは辞めておこうと思い直すのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ………こ、ここまでくれば」

 

 フーケは隠れ家の一つに逃げ込む。死より恐ろしい目に遭うところだった。だが、目的のものは手に入れた。

 

「…………どうやって使うんだ、これ」

 

 『破壊の杖』とやらから、魔法は一切感じない。『魔神の心臓』はガーゴイルやゴーレムに取り込ませると魔神の如き力を与えると聞いていたが、破壊の杖に関しては本当に何も知らない。

 

 フーケは破壊の杖を………杖。杖か、これ?

 振ってみる。何の反応もない。魔法をかけてみる。うんともすんとも言わない。

 

 これじゃあ売れないじゃないか!

 

 どうする? 魔法学院の誰かなら知ってるか? でも、魔法学院を誘い出してあの化け物が来るかも………。

 

「い、いや、こっちには『魔神の心臓』もある!!」

 

 グッと魔神の心臓を握るフーケ。ゴーレムに絶大な力を与えるマジックアイテム。フーケは、これは売るつもりはない。巨大ゴーレムを操る自分に、これ以上無いほど有用なお宝だ。

 

 これならあの化け物にだって、と虚空を見上げる彼女を嘲笑うように刻まれたマークが舌を出していた。

 


 

『錬災才女』ソフィア・パルラルレル

災害を錬成する才女という意味。彼女が趣味全開で機能を搭載すると、70%の確率で暴走する。

後趣味全開でなくとも必ず自爆機能をつける。

 

魔神の心臓は趣味全開。

 

危険なので誰も住みたがらない彼女直轄の領地はホムンクルスが働いているが良く消し飛ぶ。ケントの直轄領同様、一ヶ月に一回は地図が更新されるぞ。

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