賢者は使い魔   作:超高校級の切望

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国を殺す力

 ルイズはハッと目を覚ます。

 見覚えがある天蓋。ここは、ヴァリエール領にある屋敷の自室。何でここに? 確か、姫様の依頼を受けて、ワルドと結婚式を挙げることになって、母様がががが……!!

 

 いや、でも、叱られなかった筈。それどころか抱きしめてくれて。

 

 でも、アルビオン王家は救えなくて、ケントは何かようがあると…………ケント!?

 

「ケント!」

 

 ルイズは飛び起きる。シーツを乱暴に放り捨て、扉をバンと開けて廊下に飛び出す。

 

「お、お嬢様!?」

 

 ルイズが起きた時に備えていたのだろう。メイドがビクリと肩を震わせる。

 

「ケントは何処!?」

「ケント? ああ、ルイミニア様なら、旦那様より最上級のもてなしをするようにと………お嬢様!!」

 

 最上級となれば、あそこだとルイズは走る。嘗てアンリエッタも泊まった部屋だ。ノックもせずドアを開ける。

 

「…………あ」

 

 そこに、確かにケントは居た。ケントだけでなくエルザも居た。

 エルザは『やべー、見つかった!』とでも言うように目を丸くし()()()でケントが眠っている。

 

 首元あたりがぬらぬら輝き、エルザの赤い唇も唾液で輝く。ケントの首傷を舐めていたのだろう。

 幼い見た目に似合わぬ淫靡な痴態にルイズの顔が一瞬で茹でダコのように赤くなる。

 

「な、なな………なに、なになにを…………!!」

「ええと………汗を、舐めてました。はい」

「どどどうして!?」

「ん〜と………好きな味だから?」

 

 ルイズは真っ赤だ。ぽーっ! と頭から湯気が噴き出しそう。ケントに仕える一族と聞いて、でもまだ小さくて、末のルイズはどこか妹のように思っていたのに!

 

「あ、その………お兄ちゃんには内緒に………ルイズ様?」

「きゅう…………」

 

 ルイズは気絶した。頭が茹だったのだ。

 

 

 

 一方、トリステイン王都。

 飛行禁止令がされた王宮に舞い降りる影。決闘に負け落ち込んでいたヒポグリフ隊隊長は、その影に気付き駆け出した。

 

「うおおー!!」

「きぃー!」

 

 相棒のヒポグリフが帰ってきた。人前では甘えてこないのに、すり寄ってくる。かわいそうに、強奪者によほど恐ろしい目に遭わされたのだろう。

 

「申し訳ありません。後で謝礼の品を贈ります」

 

 自分の相棒を奪った憎き騎士に、主従揃って後ずさる。マンティコア隊の隊長衣装の何者かに衛士達が杖を向ける。と……

 

「杖を下ろしなさい」

 

 凛と響く声。振り返り、衛士達は目を見開く。

 

 アンリエッタに似た、それでいて王族の威厳を濃くし、成長させたような女が居た。

 

「じょ、女王陛下!」

「────」

「マ、マリアンヌ様………」

 

 その言葉に、ジロリと睨まれ慌てて言い直す。彼女は自分はあくまで王后であり、トリステインの母であると主張し王位を継がない。故に女王陛下という呼び方を受け入れないのだ。

 

「久しぶりですねカリーヌ」

「お久しぶりです。このような掟破り、どうぞ後ほど如何様な罰を………」

「貴方がそこまで慌てるのだもの、余程の用なのでしょう? 不問に致します。我が国の伝説を、そこまで慌てさせるような有事なのですから」

 

 マリアンヌはそう微笑む。懐かしい、女と知らずに初恋の相手だった親友に会えて彼女も嬉しいのだろう。

 

「アンリエッタ姫殿下にお目通り願います」

 

 

 

 

「カリーヌ夫人!」

 

 案内された客間に飛び込んでくるアンリエッタ。姫らしからぬその態度は、普段のカリーヌなら窘めながらも微笑ましく思ったろう。だが、今は彼女の胸中はひどく冷えている。

 

 アンリエッタは客間を見回し、尋ねる。

 

「ウェールズ様は?」

 

 カリーヌの心は更に冷えた。しかし落ち着かせる。自分がこうして客間で待っていたからこそ、ルイズは無事であると判断したのだろう。

 

「………やはり、あの方は父王に殉じたのですね」

「はい。姫殿下の手紙も、既に燃やされておりました。恥知らずの貴族派の手に、渡ることはないでしょう」

「燃やされて? そう、そうなの。ならば、わたくしの頼みなど聞くはずもありませんわね。わたくしより、名誉を選んだのね」

「いいえ、姫様。ウェールズ様は、貴方を愛していたのでしょう」

「では、何故? やはりあの使い魔に脅されたのですか?」

 

 あの使い魔………ルイズに魔法を目覚めさせてくれた恩人か。やはりということは、姫相手に亡命をさせないと言っていたのか。

 

「わたくしには、ウェールズ様と彼は互いに敬意を払い、友情を築いているように見えました」

「まさか、そんな筈ありませんわ。出会ったばかりなのに」

 

 そう、出会ったばかりだ。友になったばかりのウェールズを見送った彼は、何を思っていたのだろうか。

 

「気が、合ったのでしょう……」

「そうでしょうか」

「あの2人は似ていますから」

 

 何処が、と言われると言葉には出来ない。

 カリーヌも、ウェールズはともかくケントを詳しく知らないからだ。

 

「彼はウェールズ様を脅したりしません。ウェールズ様は、貴方のために、あの国に残ったのです」

「わたくしのため?」

「反乱勢に攻め入る格好の口実を与えるだけですから」

「ウェールズさまが亡命しようがしまいが、攻めてくるときは攻め寄せてくるでしょう。攻めぬ時は沈黙を保つでしょう。戦とは、個人の存在だけで発生するものではありませんわ」

 

 フツフツと、湧き上がるその感情は怒り。

 アンリエッタにではない。彼女を放置し続けた宮廷貴族達と、それに気づかなかった自分達への怒り。

 

「いいえ、起こりますとも。密告が遅れ、救援に間に合わずルイズが死んでいればわたくしはこの国を滅ぼしていたでしょう」

「…………え?」

「当然でしょう。わたくしにとって、ルイズはそれだけの存在です。それを、死地に送るような」

「し、ち………?」

「いいえ、あの恥知らず共に可愛いルイズが捕まれば、慰み者にされていたやもしれません」

「あ、え………?」

 

 アンリエッタの顔が蒼白となる。考えもしなかった恐ろしい可能性に、酸素がうまく吸えない。

 

「グラモン家の子息も使っていたそうですね? 彼ならば、わたくしのような愚行はなさらないでしょうが、子を失っても、向かわせた貴方に何も言わず、黙って従い続けるのはどれほどの苦痛か」

「………………」

「貴方は、自分を籠に囚われた小鳥とでも思い、悲劇に酔っているようだ。とんでもない、貴方は鎖に縛られた竜だ」

 

 その咆哮(こえ)は国を揺らす。

 その羽搏きは国を乱し、その身動ぎは国を壊し、逃げようと鎖を引けば国をバラバラに引き裂く。

 

「忘れないでください。貴方は国に縛られた哀れな娘である前に、国を支える楔であることを」

 


 

因みにケントがウェールズに召喚された場合、2人揃って問題ならない程度に政務をサボってケント製飛行小型船でレースしたりしてた。

 

ジョゼフなら仕事を片手間に済ませながらゲームで遊びまくる。弟の真実にも割と早めに気付く。

 

エルザが変態すぎないと思ってる人は、ルイズの母ちゃんの子供時代の烈風の姫騎士を呼んでみよう。めっちゃペロペロしてるぞ。

因みに女同士で。だからなんだって話だけど。

 

 

ケントは王冠、始祖のオルゴール、風のルビー(一応カリーヌがアンリエッタに届け)の3つを王家直々に渡されてるので、実は王権こそ持たないもののアルビオン王の決定権を持ってたりする

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