ケントが正式に貴族としてトリステイン魔法学院に籍を置く。
生徒として入っても良かったが、一応扱いとしては教員。異国のメイジなど、と一部の教師が反対したがヴァリエール家家門が刻まれたコインと元の国での地位が大公であることを理由に黙らせた。
結果…………。
「ミスタ・ルイミニア。次の授業は何時ですの?」
「下がりなさい貴方達! 恐れ多くも大公家の子息様、私達のような優秀な生徒にこそ時間を割くべきなのです」
「まあ! 先輩だからって偉そうに!」
「先生! また俺とフライの練習してくれよ!」
「僕
年が近く、大貴族ともなれば女子からの人気は高く、男子から嫉妬を買いこそすれ男女分け隔てなく、迷いを導くケントは人気教師となった。
それを面白くなさそうに見るのはルイズだ。自分の使い魔なのに!
大体、自分は一番弟子ともいってもいい立場なのだ。もっとこう、自分にかまってくれたって………。
初めて系統魔法を成功させた時もきゃあきゃあはしゃいだのは自分ばかりで彼は微笑むだけだったし。これぐらい出来て当たり前、と思われているなら喜べば良いのか悲しめば良いのか。
そう、ルイズは系統魔法を成功させた。
ヴァリエール家から帰った翌日、授業で魔法を成功させたのだ。
どうせ爆発すると距離を取っていた生徒達も、遠くから口が見えるほど大口を開けてポカンとしていた。
その後騒がしいくらい喜んだのはギーシュぐらいだ。モンモランシーに怒られたけど。
あと一応、キュルケが真っ先に拍手を送ってくれた。
因みにケントは時折生徒側として教室に居ることもある。どの授業に出るのかは気分なのか科目も教師もバラバラだが、必ず出る授業がある。
コルベールの授業だった。
メイジの属性は血筋はもちろん性格にもよるとされる。心優しい者は癒しの水の魔法が得意であったり、逆に攻撃的なものはトライアングルの水メイジであってもヒールが苦手であった。
コルベール。彼が得意とする系統は火。破壊を司る系統。火のメイジは攻撃的な者が多く、それを誇りにしているところもあるので、心根の優しい彼は火のメイジからは腰抜けと人気がない。
ただ、フーケの時に見せた動きを見たキュルケはどうにも判断に困っていた。
そんな彼が作った『愉快な蛇君』は、火を破壊だけに使うのは寂しいと作り出した道具。中の油をフイゴで気化させ、発火の呪文で火を付けるとピストン運動するというものだ。
ハルケギニアの誰も興味を示さなかったが、ケントだけは違った。それはケントの国では『
なにせあのバイクという乗り物と言ったら、なんと馬よりも風よりも速いのだ。
ケントは言う。
「こっちに残る俺で良かった」
どういう意味だろうか?
何処かの古びた寺院。
昔は此処に村があり、今は放棄された。何でも恐ろしき魔物が住み着いたのだという。
しかし森の深く、開発中の村のために兵を派遣する領主はおらず、その怪物は今でも住み着いているという。
「ハルルルル」
オーク鬼をボリボリと骨ごと噛み砕く巨大なトカゲ。ギョロギョロと濁った緑の瞳が周囲を睨む。
と、新しい獲物を見つけた。
怪物は咥えていたオークを吐き捨てると小さな獲物に向かって駆け出す。
ローブを纏った人影は鉄をも噛み砕くアギトを回避し、ヒュウと息を吸う。
「ああ!!」
「!!?」
ゴッ! と轟音が響き、怪物の巨体が揺らぐ。オーク鬼の鉄の棍棒すらものともしなかった鱗が砕け、衝撃は内臓にまで達しゴボゴボとドス黒い血を吐き出す。
「か、あ……!」
そんな信じられない威力の攻撃を放った人間は苦しそうに蹲り、怪物は怒りに燃えた目を向け食い千切ろうとし………凍り付いた。
「やっぱお前、氣術が下手だな。魔法学ぼうぜ魔法。復讐も楽になるぞ?」
怪物の氷像に何時の間にか腰掛けていた男が蹲る人影に言う。人影………女はゲホゲホ咳き込みながら男を睨んだ。
「こと、わる。故郷を焼いた、彼奴等と同じ………」
「俺もメイジだし、お前は魔法で村を焼いてないだろ。ま、無理強いはしねえよ」
瓢箪を投げ渡す男。女は中身を呑む。呼吸が楽になった。
「この蜥蜴は?」
「間違いなく俺の故郷のだな。敵国が使ってた生体兵器だ。働き蟻の如く肉を装置に運んで、その肉で自分を強化する。装置は防衛状態になってたから、移動範囲は狭かったみたいだが」
殲滅状態だと最大で10メイルに成長し、しかも数を増やしていたのだという。性格が悪い敵国は、彼の国の民を装置に食わせて兵に変えていた。
「まあ、それだけだな。こっちにきての変質はなし、面白くもない。次だ、行くぞ、アニエス」
「ああ………」
女の名はアニエス。流れの傭兵。
メイジ殺しでもある。
ある日出会った異国のメイジに雇われた。任務内容は宝探し。報酬は、金と力。復讐のために力を求めていたアニエスはこれに乗った。
「………………」
男がタバコに火を付ける。アニエスは顔を顰めた。
「町中では吸わぬくせに」
「子供がいるからなあ、街には。本体は滅多に吸えねえから、俺が吸っときゃ戻った時に吸った気分になれる」
「私もタバコは好かない」
「雇い主は俺。俺が上だ、諦めな」
男はケラケラ笑い歩き出す。アニエスははぁ、とため息を吐いた。
「それで
「ゲルマニア辺りによってみるか。あそこなら、未知のマジックアイテムにあれこれして変質してるかもしれねえし」
「ほう?」
「例えばこの、一夜にして街が黄金に変わった街。魔法の効果を高めるアイテムが錬金を暴走させたのかもな。毎日毎日金が削られているが、いまだ尽きないんだと」
興味ない、と返すアニエス。彼女が興味あるのは平民が魔法を覚えぬままメイジを殺す技術と、前払いとしてもらったハルケギニアでは考えられない連射式の銃等だ。
ガリアのとある街。任務帰り、シルフィードがお腹すいたと騒ぎ出し立ち寄ることになったタバサはシルフィードの案内されるまま店に入る。
「また来やがったか! さっきも言ったろうが、金のねえやつに食わせる飯はねえ!」
実は先程シルフィードは、本を読んでばかりで休憩もしない、ご飯も食べないタバサに業を煮やして一人で向かったのだ。だが、当然金を持っていないので追い出された。
「お金は持ってきたのね!」
「ほんとか? おまけに子供まで連れてきやがって…………」
そこまで言って、店主は杖と五芒星のタイピンに気付く。
「へ? 貴族?」
「ここにおわすお方をどなたと心得るのね。泣く子も黙るガリアの北花壇──」
表向きには存在しない騎士団の名前を堂々名乗ろうとするシルフィードをタバサは杖でポカポカ殴る。
なんだか解らないが貴族ならば金を持っているだろうと席に案内する。
シルフィードの鼻に反応しただけあり、確かになかなか美味い飯だ。嬉しそうに鼻歌を歌う。
「あ? シルフィードとタバサ」
「んきゅ? お兄様!」
そこに新たな客が現れた。ケントだ。
何故ここに? とルイズを探してみるタバサだったが、居ない。また分身して役目をわけているのだろうか?
「あらら、そちらの子はどなたなのね?」
ルイズは居なかったが、代わりに連れている子供が居た。
銀髪の、いっそ作り物めいた美しい顔の少女だ。
「ジョゼット。俺の新しい弟子だ。修道院で拾った」
「はじめまして! ジョゼットと言います」
ペコリとお辞儀する修道女の姿の少女。タバサは首を傾げる。
「何処かであった?」
「? いえ、初対面…………の、筈ですわ。でも………」
「「初めて会った気がしない」」
それが二人の素直な感想。シルフィードはもぐもぐ食事を取りながら、この二人匂いがそっくりなのね! と思っていたが飯を優先することにした。
ジュリオ「あれ、予備が居ない!?」
ジュリオがジョゼットの前に現れたのはジョゼフ死亡の半年前。前から一方的に知ってただろうけど、アルビオンとの戦争が八カ月だからこの時点ではまだ知り合ってないはず。
去り際にイケメンに『今度から君に会いに行くよ』と言われただけで惚れちゃうチョロチョロジョゼットちゃんは、外の世界へ連れ出してくれたケントに何を思うのか。