賢者は使い魔   作:超高校級の切望

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謎の秘薬

 ケントは爵位の代わりに貰った金で三人娘にそれぞれ買い物をしてやった。

 ルイズはネックレス、エルザはブレスレット、ジョゼットはバレッタだ。

 

 道中ギーシュに出会った。女の子を3人連れているケントに女の子が喜ぶものを聞いてきたので、指輪でも贈れと助言してやった。

 

 

 

 コルベールはエンジンを分解していた。それだけで一度飛んだら部品の摺合せを行う必要があると見抜いて調整していた。

 

「ふむむ………回転の力をこの様に」

「ちなみにこの車、なんと前にだけでもない後ろに。その構造は……」

「ほうほう……」

 

 

 

 

 モンモランシー。

 ギーシュの恋人である。いや、元恋人というべきか。

 

 ギーシュの浮気が原因で別れたのだ。だが、彼女はチョロかった。今でもギーシュを想っている。

 ギーシュもモンモランシーが本命なのか、あの後もずっと口説いてくる。

 

 プライドの高いトリステインの貴族の女としては浮気なんて許せないが、そういう態度は嫌いじゃない。でもやっぱり他の女に目が移るし………。

 

 

 

 

 モンモランシーはコソコソと材料を買い集めていた。

 何故こっそり? それは、今から作ろうとしているポーションが国に制作、所持を禁止されている禁断のポーションだからだ。

 

 戦勝ムードで人の多い町中を、人目を気にしながら歩く。大きな声が聞こえるたびにビクリと震える様は、どう見ても不審者であった。

 

「おっと」

「きゃ!」

 

 そうやってあたりの視線を気にして進行方向を見ていなかったモンモランシーは、ドンと人にぶつかる。

 

 キッと睨みつけ叫びそうになるが、相手を見て固まる。

 

 とても美しい女だった。年の頃は、モンモランシーより1つか2つ上だろうか?

 若くも見えるし、歳を重ね美しさを熟成させたようにも見える。

 

 何より着ている服。かなり上等………貧乏貴族のモンモランシ家では先ずお目にかかれない。高位の貴族? とサッと顔を青くするモンモランシー。

 

 が、少女はニコリと微笑む。美しい笑顔だ。

 

「ごめんね。余所見してた、余所の国に来て、舞い上がっていたみたい」

「あ、いえ………」

 

 他国の貴族……確かにこんな綺麗な人なら噂になるか、と見惚れるモンモランシー。少女は散らばった素材を見回す。

 

「ひょっとして犯罪を止めたのかな?」

「え、あ!?」

 

 幾つかの瓶が割れている。禁断のポーション、材料は当然違法なので高く、ギリギリの量しか買えなかったのに!!

 

「あれ………」

 

 この人今、犯罪って言った?

 何を作ろうとしたか、バレてる?

 

「あ、あの!」

「はい」

 

 と、言い訳しようとしたモンモランシーに渡されたのは小瓶。

 

「代わりに使って」

「え、あの……これ」

「貴方が作ろうとしてたもの。内緒よ?」

 

 モンモランシーが作ろうとしていたのはおもっきり犯罪薬だし、それを目の前の美少女が必要とするとは思えない。

 

 なのだが、何故か………モンモランシーは彼女の言葉を信じてしまう。

 

 

 

 

「モンモランシー、これを受け取ってほしい」

「…………え」

 

 ギーシュが指輪を渡してきた。モンモランシーは、薬を使う必要なんてなかったと舞い上がる。

 

「この前のお詫びさ。ケティにも渡してくる」

 

 違った、ただのクソボケであった。

 

 モンモランシーは決意した。必ずや奢侈淫佚のクソ野郎に鉄槌を食らわせると。

 

 

 

 

 そして翌日。ギーシュは何時ものケントの授業。

 実はラインにランクアップしたギーシュは14体のワルキューレを出し、巨大な岩の怪物と戦わせている。

 

亀巌(きがん)、もうちょい動き速くしていいぞ」

 

 岩の甲羅を持った陸亀はキュイと鳴く。土精霊の亀巌(きがん)だ。亀の見た目をする事から解るように、移動速度は遅い。代わりに土や岩であらゆるものを構築して手足のごとく操る。

 

 最近は同じ土属性のギーシュを鍛えるのに使用される。

 

「はぁ、はぁ………」

「やっぱ事前に内部機構を………いや、本人は薔薇から出すのにこだわってるしなあ」

 

 ケントとしては『考えうる限りのライン最強ゴーレム』の構想が頭にあるのだが、ギーシュ本人はその場で作ることにこだわっている。

 

 かといって、すぐに作れるような機構でもない。コルベールなら間違いなく可能だが彼の本質は『火』。

 

「次は私」

 

 と、タバサ。氣を練れるようにはなっている。後は実戦に活かせるようになれば合格だろう。と、その時………

 

 

 

「きゅう………」

 

 目を回し倒れるタバサ。よしよしと膝枕しながら頭を撫でてやるキュルケ。と、そこに……

 

「み、みんな、お疲れ様………」

「誰?」

「モンモランシー! もしや、僕に会いに来てくれたのかい?」

 

 ワイングラスが乗った盆を持ってきたモンモランシーが現れた。貴族としては珍しい。

 

「え、ええ。ここにいると聞いて…………こ、こんなに人が居たのね〜」

 

 ワイングラスは2つだけ。ギーシュと自分の分だろう。

 

 キュルケは健気ね〜、とニヤニヤしている。

 

 ケントは片方のワイングラスに僅かに付着した液体を見る。暗闇だと分かりにくいが、何か塗られている。

 

 モンモランシーがワインを注ぐと何かを混入させた方のワイングラスをギーシュに差し出した。

 

「いや、気持ちはうれしいけど一番疲れているのは師匠(せんせい)だからね、僕が一人、飲むわけには行かないよ」

「ん?」

「え」

 

 ギーシュは渡されたワイングラスをケントに渡してきた。モンモランシーはサッと顔を青くする。しかし、ケントは異国の大公爵で、ギーシュの言葉も正しい。飲んでは駄目とは決して言えない。

 

「………………」

 

 ギーシュに飲ませようとしていたあたり、毒ではないだろう。この人数の前で媚薬を飲ませるわけもあるまい。

 

 好意は未だあるギーシュにだけ飲ませたい………となると、惚れ薬?

 

 ケントは精神操作の薬は自動的にレジストするが………この世界の惚れ薬……。

 

「いや、ギーシュ。お前の為に用意してくれたんだ、お前が飲むと良い」

 

 とりあえずギーシュに飲ませよう。

 

「え、いや。そういうわけには行かないよ、先生」

 

 しかしギーシュはこういう所は譲らないらしい。軍人気質で目上を立てることが染み付いているのだろう。と………

 

「じゃあ、私がもらう」

 

 気絶から復活したタバサが飲んだ。

 

「「あ」」

 

 ケントとモンモランシーの声が重なる。と、タバサの体が光り輝く。

 

「え、え!? な、何が起きてるの!?」

「何故お前が困惑してんだ」

 

 一人だけ何時の間にかサングラスをしていたケント。光が収まると、タバサの服がその場に落ちていた。

 

「タ、タバサ………?」

 

 マントがモゾモゾ動き、青い髪の赤ん坊が出てくる。

 コシコシ目をこする赤ん坊は最初にケントを見た。テチテチと近寄ってると、足にキュッと抱きつく。

 

「おとーしゃま」

「ん?」

 


 

謎の女

愉快犯

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