北宇治のまえせつさん   作:コーヒーまめ

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この話を書いている最中にイベントで劇場版製作決定(届けたいメロディ的な?)の映像が流れてきて驚きました、来年だそうですがそれまでに三年生編へ行けるかな……。


12 ちらつく輪郭

 

 その日は珍しい依頼が舞い込んできた。放送部に入っているクラスメイトから、校内で良い感じのロケーションを探して欲しい、という建前の物だった。

 

「体育館前プラザはガラガラ、四階渡り廊下は駄目、東広場もそこそこ……と」

 

 そんな建前に隠されていた理由、それは吹奏楽部員の個人練習が何処で、かつ何時頃行われているか知りたいという探偵じみた調査依頼だった。コンクールに向けて映像作品を撮ると放送部で決まったは良いものの、役に入ってる最中にトランペットや打楽器の音を拾うと台無しになるんだとか。

 その調査は俺じゃなきゃ駄目か?と聞き返したら『吹部と仲が良い矢田なら個人練で出没する傾向を掴みやすいだろ』との事。比較的関わりがあるのは確かだけど傾向ってなんだ、楽器を持った希少な生物にでも見えるのか。なんにしても、好きな場所で練習を始める吹奏楽部と雑音を混ぜられない放送部は相反する部活らしい。

 吹部の真剣さは既知ではあったけど、放送部員も伊達や酔狂でやっていないのは依頼を通じて伝わった。それなら引き受けてやろうと席を立ち、授業終わりに校舎の散策に自らを駆り出して目を光らせている。けれども見た感じ、全員がパー練の教室を離れてる訳でも無いっぽい。

 

「藤棚まで個人練に行くのは遠いし、校舎裏でも見て終わるか」

 

 粗方吹部が個人練に使う場所の目星を付けた所で、中庭から校舎を通ってゴミ捨て場までやってきた。この前吉川先輩と密約を交わした場所だ。もしかしたら写真を受け取る為に待ち伏せてるかもしれない。

 実際に来てみれば、背の高いリボンの面影どころか人の気配すら感じなかった。それもそうだよな、雨は凌げても何処となく居座る様な場所でもないし。

 踵を返して下駄箱に向かおうとした俺を、辛気臭さたっぷりの雰囲気を断ち切る様な鋭い金属音が興味を引いてきた。

 

「曲……じゃないな、これ」

 

 奏者が見えないけど木霊して聴こえる音に耳を傾けてみた。心地良く眠れる曲でも士気を上げる曲でもない、ただただ一音ずつ上げて鳴らすだけの半音階。それだけなのに思わず足を止めてしまったのは、迷いなく上がり続ける音階に、その楽器で素人が鳴らせるとは思えない音域でも狙って吹ける技術を感じたから。

 鳴り止んだのを見計らって、音の鳴っていた方へ向かってみる。依頼をこなしたいという意思に加えて、音の主を確かめたい探究心が校舎裏への足取りを軽くした。黒江じゃなければ、北宇治でユーフォを鳴らす人間は少ない。

 

「こんちわっす、田中先輩」

 

 確かな技術と技量を感じさせた音の主は田中先輩。何時だったか、渡り廊下で聴いた時点で上手いのは分かっていたからそうだろうとは思っていた。中川先輩も名前も知らない後輩の腕前も知らなかっただけに、半ば消去法ではあったけど。もしも黒江がそこにいたとしたら、あまりにも心臓に悪い。同じ型のユーフォを持っているから余計に。

 

「何?相手してる暇無いんだけど」

 

 そんな田中先輩の様子が少し変だった。俺の知っている先輩なら陽気に肩でも組んで来そうなテンションで絡んで来るのに、視線を譜面台から微動だにさせず素っ気無い言葉を返してくる。出鼻を挫かれた気分だ。

 

「あーいや、誰かが野外ライブでもしてるんだなーと思いまして。気になって来てみれば先輩がいたんで声を掛けようと」

「それだけ?」

「えーっとその……あー思い出しました、あがた祭りの写真が出来たんで渡せたらと思ってたんすよ」

「それ、香織か晴香に渡すのじゃ駄目なの?」

 

 俺の煮え切らない言葉を待つ暇も惜しいのか、ユーフォのバルブに掛けた指をトントンとひっきりなしに押している。落ち着きが無いというより、鳴らしたくて仕方の無い指だ。

 

「それでも良いんですけど、こういうのは本人に手渡さないと俺の気が済まないっていうかなんていうか……」

「……あっそ」

 

 それっぽい後付けの理由を聞き遂げた先輩は、譜面台に置いた楽譜を捲る。やがて捲る手を止めたかと思えば、これから吹く小節を指で確かめながらこう呟いた。

 

「じゃあそこで待ってて。まだ練習中だから」

 

 最早俺の返事を待つでもなく、マウスピースを口元に当てて譜面の音符をなぞり出した。

 

 その曲は音楽室でそれなりに聴いた経験がある。吹奏楽コンクールの課題曲でもある『プロヴァンスの風』だ。出だしから何処かのパートが引っ張らずクラリネットにフルート、ホルンやトランペットに至るまで、一斉に勇ましく始まる印象の曲調だ。激しいイントロとは打って変わって木管を中心に場を整え、示し合わせるみたいに再び勇ましくなる。壮厳なマーチとでも表現できるそれは、前向きか後ろ向きかと問われれば間違いなく前向きな課題曲。

 そんな音楽の中でユーフォが奏でる音は、言い方は悪いけど埋もれがちな面がある。控えめな小節だとしても低音パートと銘を打つ性なのか、注目しないとトロンボーンやサックスに埋もれて聴き取れない。そういう定めなのが低音パートなんだろう。だからこそ、ユーフォニアムの課題曲ソロは中々に貴重な時間だった。

 

「ふぅ……」

 

 演奏に注力していたのも束の間、長めの休符が挟まった段階で先輩は演奏を切り上げた。俺の感覚が正しければもう少し続いた筈だけど。

 

「上手いっすね、やっぱり」

「矢田、何か意見はある?」

「意見っすか」

「そこで聴いてたんだから何かあるでしょ」

「上手い、じゃ駄目っすか」

「私だってオーディションを受けるんだから。畑違いでも音楽経験者でしょ、客観的な意見があるなら頂戴よ」

 

 なんというか、今日の先輩はガワの違う他人だと思い込まされる。仕上がってるかどうかなんて同じパートで聞けば良いし、酔狂で素人に意見を乞う性格とも思えない。もう少し飄々とした感覚なら雑に返せるんだけど、今の先輩は苛つきと淡白を混ぜた別の接し難さを感じる。満足して貰える内容かは分からないけど、感じたままの返答で先輩を褒めた。

 

「そうっすねー……パーカスの人達とCD音源を聴いた時はその、注力してやっとユーフォの音が分かるレベルでした。ただ今のソロを聴いた限りじゃ、先輩がオーディションに落ちるとは思えないっす」

「根拠はある?」

「まずさっきの半音階でしたけど、ユーフォの音域で鳴らしにくい高い『ド』、言い方を合わせればhighC。それよりも高い音もユーフォで狙って出せていたんで面食らいました」

 

 highCってのは、ピアノの鍵盤の真ん中にあるドを基準にして一オクターブ高い位置のドの事を指す。それを低音パートとして分類されるユーフォで鳴らすのは難しい。五線譜からはみ出せばはみ出す程難しい筈。そこは黒江も苦労したと言ってたけど、出逢った頃には当然の様に鳴らしていたから黒江の上手さも改めて実感した。

 

「同じ運指で違う音を出さなきゃいけないのに純粋に尊敬します、ピアノなら叩く鍵盤を変えるだけなんで」

「曲の方には意見は無いの?」

「具体的には……ちょっと楽譜を失礼しますね。俺の感覚だとこの二十一小節からのアクセントの連続、一瞬置いてユーフォだと厳しそうな音階が来た後。またアクセント地獄に高音域があったじゃないっすか、ここのブレスも運指も淀みや揺れが無かったんすよ。ここまでやれて先輩がオーディションに落ちるのなら……滝先生に抗議したって良いです」

 

 抗議、の部分で田中先輩と目が合った。茶々の一つも入れずに黙って意見を訊いてくる眼鏡の向こう側には、何処までも見透かしそうな眼光で何時だって貫ける、何処までも真っ直ぐな瞳があった。対面時に邪険に扱ってきた人間と同じ雰囲気とは思えない。

 

「ねえ矢田」

「なんすか」

「あんたもやっぱり、ユーフォ経験者だったりしない?」

「んな訳無いっすよ」

 

 一頻り演奏を終えたからなのか知ってる限りの知識で褒めたからなのか、対面前よりは語気が軟化した田中先輩。それでも何処か扱い難い様子のままに突拍子もない事を尋ねてきた。

 

「だってそうでしょ。課題曲の出来だけならピアニストらしい視点で感心したけど、ユーフォで出しにくい音程の話も、運指の話だってそう。吹いてたけど辞めちゃった感じ?」

 

 俺自身はユーフォを吹くどころか担いでもいないし辞める以前の問題だ。授かった知識を参考に語っただけでこの反応……先輩と黒江との間には楽器の型が同じというだけじゃなく、同質の努力や才能を有しているのかもしれない。

 

「……友達が吹奏楽部でユーフォを吹いてるってだけです、その友達からの単なる入れ知恵に過ぎないっす」

「ふーん、入れ知恵にしては中々に饒舌だったけど。その友達って黄前ちゃん?」

「オウマエちゃん……前々から思ってたんすけど、人の名前っすよね。誰ですそれ?」

 

 ところで、世の中には知らない物が沢山ある。ここ北宇治でもその洗礼を受けている訳だけど、『オウマエ』なんて人間は知らない。どんな漢字で表されるのか検討もつかない。確か中川先輩もその名前を口にしていた覚えがある。

 会話の流れとこれまでの記憶を頼りにするなら、低音パートに加入した後輩の一人。その人こそが『オウマエちゃん』なんだろう。そして、黒江と同い年のユーフォニアム奏者。

 

「あんたと同じ一年だよ、入学から三ヶ月は経つのに知らないの?」

「少なくとも俺のクラスにはオウマエなんて人間はいないっす。なんて字を書くんですか?」

「黄色と前後の前、それで黄前ちゃんだよ」

「……知らないです。もしかして、以前話してた低音に入った後輩の一人が黄前さんなんすか」

「素直な良い子だよ。部員じゃない割には吹部とベッタリな矢田でも、知らない事があるんだ」

「部員じゃないのに全部知ってる方が怖いっすよ」

「それもそっか」

 

 黄前って人は大変だろうな、田中先輩直属の後輩だなんて。技術面でも精神面でも鍛えられるって意味では聴こえは良いけど、こうも気分屋だと俺より振り回されてるに違いない。南無三。

 

「矢田、まだ時間ある?」

「今日は友達の部活終わりを待って出掛けるんで、それまでは」

「じゃあ自由曲の方もやるから聴いていって。あんたなら私にも遠慮しない意見をくれるでしょ」

「パートの人達じゃ駄目なんすか?」

「……私情を持ち込んで練習出来なくなってる場所に戻ったって無駄だから」

 

 私情、その言葉を発した田中先輩の眼光は心なしか鋭くなった。初夏に割り込んだ梅雨の空気が、呟きと共に喉元を軽く締め付けてくる。だったら俺も追い払えば良いじゃないですか、とは言える気分にはなれなかった。成る程な、中川先輩がお礼を言ってくるのはこういう側面を見せられたからか。

 

「仮に戻ったって、低音の連中はみんな私に気を遣ってくるし。あんたみたいな距離感が丁度良いのよ」

「……さっき以上の技術的な意見、期待しないでくださいね」

「今の教室よりはまともだよ」

 

 

 了承の代わりに紡いだ返答を皮切りに、先輩は自由曲の楽譜を捲っていった。最早言葉も惜しいのか、黙ってびっしりと書き込まれた曲の覚え書きを黙読している。やがて最後の終止線まで確かめ終えてからマウスピースを口元に当てるまで、そこまで時間は使わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わりぃな!練習明けで疲れてるだろうに」

「気にすんなよ、ジャズのCDを薦めたのは俺だし」

 

 結局、あの後も田中先輩の練習に付き合った。邪魔しちゃ悪い気もしたけど、先輩側から寧ろ歓迎の意思を示されて出来る限りの助言を出した。ユーフォ素人の意見すら楽譜に書き込むその貪欲さは何処から来るのか、知るより先に先輩は満足して練習を切り上げた。

 

「レコード店に行って、それから家電量販店まで。今日マイ楽器を買えると思うとソワソワしちまうよ」

「矢田、さっきからずっとそれだよな」

「わかってねーな塚本。なんだかんだバイトして目標金額まで貯まったのとやっと自宅でもピアノが弾ける、プラスの感情同士を掛け算したんだぜ?嬉しくない訳がないだろ」

 

 キーボードを買うなら譜面も一緒に買う、その意気込み通りに今からその約束を果たしに行く。塚本の部活終わりを待ったのは単純にジャズのおすすめを選んで貰う為だ、荷物持ちじゃない。未知のジャンルを探るなら先駆者の知恵を借りるのが入りやすくていい。

 

「すげーな本当に、学級委員長もやってバイトもやって、中間試験でもそれなりに結果出して。俺も負けてられねえよ」

「そっちだって土日もトロンボーン頑張ってるし、負けてる訳ないじゃねーか。手応えとかはあるだろ?」

「……まだ数ヶ月なんだけどな、マジで全国行けたりしてって思うんだよ。それだけ全員が上手くなってきた感覚があってさ」

「ほら手応えあるじゃねーか、四月に同じ質問したら絶対ネガティブな答えになってたぜ」

「後はオーディションに受かれば……胸張って吹けるんだけどな」

 

 揺れる各停電車の座席で練習に裏打ちされた自信と定まらない未来への不安を吐露した塚本。気分転換にもなると思って誘ったのは、間違いでも無さそうだ。

 

「滝先生は落としてくる、ってか?」

「トロンボーンって一年だけでも三人いるんだよ。あり得ない話じゃないだろ」

「不安ってのは頑張ってきた証拠だぞ、だったら後は五十五人の中に入ってやる!って気持ちで挑むしかないぜ」

「それでも、落ちたらどうすんだよ」

「そん時はそん時だ、大会に出る奴の背中を押せばいい。んで託す。俺の知る範囲で落とされた奴を気にも留めない部員なんて、誰一人としていないからな」

 

 吹奏楽部のコンクールは一編成で五十五人まで。現状所属しているのが六十人程度とは聞いたから、狭き門とは思えない。塚本が落ちるとも思ってない。何故なら隣のトロンボーン奏者の手のひらに出来た豆の数々が、それを物語っているから。部内で賛否分かれる滝先生だって、そういう所は見抜くに違いない。

 

「まああれだ、通ったら通ったで祝ってやるし落ちたら落ちたで残念会でも開いてやるよ!気楽にな!」

「……おう、ありがとな」

 

 なんにせよ、俺に出来るのはこれくらいだ。朝練にだって顔を出しちゃいない以上、苦楽を分かち合えたりはしない。オーディションの後もそう。これは、同じ目標に向かう人間の特権だから。

 

「キーボードを買ったら後は自由だからな、無理のない範囲で奢ってやるよ。ところでよお、聞いときたい事があるんだわ」

「なんだよ急に」

 

 こいつとの部活の話は一旦終わり。それはそれとして、塚本個人に対してどうしても気になる話がある。聞きそびれたというか、本人が話したがらなかったというか。電車という多少隔離された空間だからこそ聞ける話。

 

「あがた祭の後はどうなったんだよ。例の幼馴染は誘えたんだろ?」

「へ、変な事聞くなよ!」

「普通だろ別に、なんなら聞くタイミングを伺ってた位だぜ?ほれ、ガラガラな車輌なんだから話してみ」

「そんな気軽に言われてもなあ……」

 

 こいつが女子と二人きりで歩いてた現場は目撃している。相談に乗った立場からすれば、その後の経過が気になって。

 

「……誘えなかった」

「は?なんて?」

「だから、誘えなかったんだよ!何度も言わせんな!」

 

 あがた祭を二人で歩いてた事実と今の台詞の矛盾に少し頭を捻った。誘えてないんなら、あの時の女子は誰なんだ……?ちょっとカマ掛けつつ探ってみるか。

 

「誘ったけど振られた、じゃねえんだな」

「タイミングが悪くてさ。そいつとは一緒に行けなかった」

「じゃあ一人であがた祭に?」

「そうじゃなくて、違う女子に誘われたんだ」

「んー……てことはあれか、その誘いを断れずに幼馴染以外と巡った訳だな」

 

 凡人並の推理に隣は黙って頷いた。そのパターンがあるとは思わなかったなあ?塚本はモテ期とやらが到来、幼馴染は誘えずとも異性とは祭りを楽しんだと。色男だねえ。

 

「その後の話、聞いても良いか?」

「まあ、そうだな…………向こうからその、告白されて、断った」

「後腐れは無かったか?」

「まあ、な」

「そっか」

 

 無言のままに電車が二度揺れる。一途だねえ、誘えなかったから乗り換える様な軟派な野郎じゃない気はしてたけど、勇気を出した女子も、断れた塚本も応援したくなっちまう。

 

「俺からもひとつ、いいか?」

「答えられるなら」

「矢田の方こそ浮いた話はあるんじゃないのか?昨日朝練で噂になってたぜ。小笠原先輩や田中先輩、中世古先輩と祭を歩いてたらしいじゃん」

「お前も知ってんのかよそれ……」

「五組だったら井上や堺と仲良いから、俺はそのどっちかだと思ってたけどな」

 

 しっぺ返しとはこの事か、モテ期到来野郎みたいな浮ついた事情じゃねえんだけどな。

 

「一緒だったのは事実だけどそんなんじゃねえぞ、井上さんも堺さんもパートの一年で周ってたらしいし。元々一人で行く予定だったからな」

「じゃあ興味とか、ねえのかよ」

 

 何に、が抜けてるけど言いたい事は分かる。塚本は俺に色恋の事情を聞いてきている。期待に沿えられないけど、踏み込んで悩んだ過去は特に無い。

 強いて言うなら、心がざわついた時期が少しだけあった。黒江が転校してきて暫く経ったある日、クラスの男子に告白されたという。『付き合うとかよく分からなくて、やんわりと断ったの』とは言われたけど、数日悶々としたまま過ごしていた。二人で合奏する内にそんな刺々しい感情は薄れていったけど、惚れた腫れたの類いじゃないと結論づけて今に至ってる。それが、黒江の幸せに繋がるんだと信じて。

 孤立無援とも言える状態でやってきた転校生相手に、男子だの女子だの性別で対応を変えたくなんて無かった。ただクラスのみんなで仲良くしたかった。その振舞いが正解だったかは、黒江のみぞ知る話。

 

 

「無いな、んな暇あったらバイト増やすかピアノ教室でも通ってら」

「さっぱりしてんなー、まあそういう所が矢田らしいか」

「そりゃどうも。あれこれ喋ってたから電車も着いたぜ、そんじゃレコード屋への案内よろしくな」

「りょーかい、曲選びは任せとけ」

 

 

 こんな住む場所も離れている俺と今でも習慣みたいに電話をしてくれる、俺にはそれだけで十分過ぎる程の関係を築けているからそれでいい。今はただ、あの時間に甘えていよう。

 改札を出てレコード店や家電量販店まで向かう足に、心の枷は付いていなかった。




ここからのお話ですが、吹奏楽部員ではないが故の視点になってしまうので原作らしさはほぼ無くなると思います。オーディションは当然ながら府大会にも矢田君は出ませんので。
その2つがユーフォの根幹を担う内容だとは思うのですが蚊帳の外……とまでは言わなくても本筋に深く絡めません。時系列は原作orアニメなのに番外編の様な作品になります、ご了承下さい。

入部させた方がもっと書きやすかったかなあ、と自分のプロットやら更新速度やらをを見ていて思います。()
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