今回はユーフォの二次創作において大丈夫かな……と不安になっている回です。
追記:誤字報告ありがとうございます、助かります
窓を開ければ仄かに漂う木の葉の甘い香りに、命の限りを尽くそうとロングトーンよりも波形が長く、ティンパニやシンバルよりも波の大きな蝉の鳴き声。駅までの道のりでも時折聴こえる大合唱とへばりつく日光に、京都の夏も本番なんだと嫌でも脳裏に刻み込まれた。
高校生としてもカレンダー上でも八月に入ってからは、少しだけシフトを増やしたり、ノートに板書をしていた時間帯にキーボードでジャズに触れたり。塚本を含めた友達に京都の街を案内されたり遊んだりしたものの、外気の暑さに比例してピアノにのめり込む時間の方が圧倒的に増えた。
そればかりだと二学期で泣きを見るから、調べ物や宿題も兼ねて夏休みでも学校へ赴くと決めていた。部活動に所属してる生徒は登校するものの、わざわざ図書室にやってくる人間はほぼ皆無。半ば独占状態で本に埋もれる日々を送れている。普段は音楽に埋もれているからこそ、静寂に埋もれる時間も大切にしたかった。家とはまた違う静けさが、夏休みの図書室の好きな点だ。
「……北宇治の蝉もうるせーな」
六地蔵駅を降りてからも別の楽団の大合唱が轟いていた。音量も種類も区別がつかないけど、学者になら分かるんだろうか?あれはアブラゼミだとか、そっちはミンミンゼミだとか。さながら全国大会の審査員みたいに些細な所を聞き分けるのかも。
坂を登り、住宅街を抜けて北宇治へ。普段なら既に授業中といった時間帯に訪れる母校は、サッカーボールの弾む音や陸上部が地面を蹴る振動が不規則に溶け込んでは消えていく。同じ場所なのに、伝わる景色は別物だ。
でも今日ばかりは、景色だけが別世界だと主張している訳じゃない……事前に聞かされていた情報と照らし合わせた答えが、その風景にさり気なくポジティブな情報を入れ込んでくれる。その情報は北宇治にとって、もしかしたら普遍的な高校にとって、誇らしげにせずにはいられない偉業なのかもしれない。
「──すげーな、北宇治」
──北宇治高校吹奏楽部関西大会出場決定。その功績を称える横断幕を、辺り一面に弾けて輝く陽光が照らしていた。
「いやーめでたいっすね田邊先輩!俺も自分の事みたいに嬉しいっす!」
「正直俺達の方が驚いてるぞ?本当に突破出来るとは思わなかったしな」
「まあ良くてダメ金、みたいな雰囲気は一部であったかもね」
「委員長めっちゃ持ち上げてるね、応援に来てなかったくせにぃー」
「しょーがねーだろ井上さん。府大会ですらあんなに倍率が高いなんて知らなかったんだから」
京都府代表に選出された労いとお祝いも兼ねて、パーカッションの面々が集う時間帯を見計らって久し振りに練習前にお邪魔させてもらった。
現地で観覧という手も無くは無かったものの、一般客が取れるチケットは最早難関。午前も午後も隅っこの座席ですら取れずじまい。府大会レベルでこれなら関西も全国も駄目だろうと内心で高を括った。
「応援に行けなかった代わりっちゃ代わりですが……今日は特別にある物を作ってきましてね」
「それって、担いで来てたクーラーボックスの中身だったりするの?」
功績を挙げた吹部を言葉だけで労うのも淋しい予感がして、何かいい案が無いかと家の物置きを漁っていたら、少し煤を被った白い肩紐に青い箱。釣り人とかが愛用していそうな保冷機能ばっちりのクーラーボックスが鎮座していた。それと孤児院での経験を混ぜて捏ねた結果、とある差し入れを持ち込んでみようと思い至った。
「大正解っす大野先輩。幼少期からそのレシピを引き継いで、味見も試作も重ねたとっておきっす!」
「味見?試作?」
「矢田家に伝わる秘伝のレシピで作られた……ジンジャーシロップです!」
キーボードを買ってからも、バイトを続けておいて良かったと胸を撫で下ろした。食材費も馬鹿にならなかったし。
クーラーボックスの白く重い蓋を持ち上げて、保冷剤をこれでもかと詰め込んだ冷気を纏っていたのは、皮を剥いて薄切りにした生姜をはちみつでじっくり煮詰めたシロップと、それから下の自販機で買ったミネラルウォーターに炭酸水。孤児院にいた頃、遊び疲れた俺達を待っていたのがシロップを炭酸水で割った特製ジュースだった。今日はそのとっておきをお祝いの席で振る舞いたくて、押入れの中に仕舞ったノートを引っ張り出した。
「矢田、あんたってこう……不思議と家庭的よね」
「まあなんだかんだ吹部を応援してる一人ですから、頑張ってるのを支えたくなるのが性なんすよ」
「……こういうの、運動部が飲む物だと思ってた」
「俺の場合は家の習慣みたいなもんでな、風邪気味な時はお湯でもいける万能シロップでさ。ジンジャーエールも個人的に好きだし。ただ部活的に、炭酸で割るのはどうしようか悩んだんすけど……ほら、ホイッスルとかパーカス担当じゃないですか」
「今の曲って喉は使わないし、炭酸もありだと思うよ矢田委員長!私は炭酸で割ってみたいな!」
「丁度休憩に入ったばかりだしここまで暑いとなー……俺ももーらい!」
思いの外好評で何より。紙コップにシロップを各々が注ぎかき混ぜ、そして炭酸もミネラルウォーターも均等に売れていった。ただ祝いたい気持ちが走りすぎたのか、シロップも炭酸も数人分余る始末。まあ、これくらいなら持って帰ればいいか。
「いただきまーす!…………っかーうめーなこれ!自販機で買うジュースとは別の甘さっていうのかな、炭酸も効いててとにかくうめー!」
「あざっす、頑張って仕込んだ甲斐がありました!」
「……うん、これなら私でも飲める。美味しい」
「釜屋さん、炭酸無しでも美味いだろ?おかわりもあるからな」
青い絵の具をそのままぶちまけたみたいな快晴で、初夏の水分を全て枯らしたであろう日光で火照らされた身体も、差し入れが冷まし潤わせていった。仕込んだシロップでもここまで喜んで貰えたなら、それはまあ委員長冥利に尽きるってもんだ。
「ありがと矢田、準備するの大変だったんじゃない?」
「んな事ないっすよ!材料なんて生姜とかはちみつ位ですし、費用もそこまでなんで!しかもパーカッション限定メニューですから」
「大会が終わっても、他のパートには黙ってた方が良さそうね……」
幾ら関西大会のお祝いとて、部活全体に配るには費用も手間もかかりすぎる。融通の効く俺でも懇意にしてるパーカッションだけが限界だ。クーラーボックスもあと二つは足りない。釣り人だってそこまで持ち運ばないだろう。
「そういや先輩方、その大会までの練習計画とかはもう決まってるんすか?」
「ああ、府大会の次の日にはスケジュールが配られたぜ。それはもうみっちりとしたやつをな」
「これだよ、委員長」
「どれどれ……うん?」
井上さんが差し出してきたコピー用紙には、確かに練習スケジュールと書いてあるプリントではあったけど……要所的に予定が書き込まれているだけで、とても全国を目指そうと意気込む集団の予定表には思えなかった。思わず首を傾げてしまう。
「なあこれ、予定ガラ空きじゃねーのか?合宿とか大会本番はまだ理解出来るけどよ……」
「矢田君、右上を見て」
「右上?……うわっ」
スケジュールの枠外には午前にパート練習、午後に全体練習と記されていた。暗黙の了解みたいに印刷されたその文字からは、空白だろうと練習からは逃さない。夏休みという単語からは程遠い生活が吹部には待ち受けている事を意味していた。鬼か?
「全国が目標となると、夏休みなんて皆無なんすね」
「これまでは授業の合間を縫ってたけど、これからは練習の合間に休憩って感じになるね」
「いいんちょーも部活に入れば地獄を体感出来るよ〜」
「地獄言うな」
地区銅賞常連校を短期間で全国へと導こうとする先生の指針は理解出来たけど、これで足りるのか?という懸念はある。こういうのって、数だけじゃなくて質も求められそうな……外部からのテコ入れで成長を加速させないと間に合わない気もするけど。
「このスケジュール、滝先生側も大変そうだよな。教師としても休み欲しいだろうに」
「それなんだけどな……滝先生が凄いコーチを呼んだんだぜ!」
「そう!プロだよプロ!パーカッションで世界を渡り歩くプロ!」
「プロ────?」
「おっ、みんな揃って僕の噂話?混ざってもいい?」
「あ、はしもっちゃん!」
パーカッションのプロとは。吹部の技量促進を図った滝先生の一手に思考を割いていると、音楽室の扉側からテナーで陽気な感じの台詞が耳に入った。
その声に釣られて振り返ると──少しだけ日に焼けた小麦色の、とても学校関係者とは思えないようなアロハシャツを着こなした眼鏡の男が立っていた。まるで、海外旅行から帰国したばかりの浮かれた観光客、もしくは日系アメリカ人的な感じの風貌。
「外国人……Are you in trouble? or Can I help you?」
「何々、北宇治高校って英語教育にも力入れてるの?面白いね!」
「やっぱり日本語ペラペラじゃねーか!」
「委員長、はしもっちゃんがパーカッションのプロだよ!」
「この人が……?」
少なくとも、学校どころか北宇治周辺では遭遇しないタイプだ。京都がどれだけ観光地だったとしても、こんな住宅街に迷い込む観光客がいるわけないよなー。
「君、昨日の全体練習にはいなかったよね。病気か怪我で休んでた?君もパーカッションなの?」
「いや、俺は……」
「橋本先生、この子は部員じゃないです。休み時間にピアノを弾きに来てる、なんというか……ピアニスト?」
「同じクラスの委員長なんですけど、個人で私達を応援してくれてるんですよ!」
「へぇーそれは熱心だねえ!名前は?」
「あーはい、一年五組矢田明宏です」
「滝くんの紹介でやってきた橋本真尋といいます、どうぞよろしく。それにしても部員ではないけどピアノが好き、夏休みに時間を割いて献身的にパートを支える姿勢……」
俺に対して何かを値踏みしながらブツブツと呟いている。井上さん達の反応を窺う限りだと本当にプロらしいけど、そんな人が俺の何を品定めしようっていうんだか。ほんの少し、紡がれる二の句が気になった。
「君、ファゴットとか吹いてみない?」
「……ファゴット?ダブルリードの?」
「そう!」
何を言い出すかと思えば、パーカッションのプロがダブルリードを勧めてきたぞ?そこはお世辞でも自分の領域に引き込むのがプロなんじゃねーのか?ほらー先輩達もざわざわしてる。
「あのー、なんでファゴットなんすか?」
「僕のフィーリングかな!君のような縁の下の力持ちには、是非とも低い音域の基盤となってアンサンブルを支えて欲しいからね。ビジュアル的にもその方が似合いそうだし!」
今年の一年にダブルリード、居ないみたいだからね!等と現実的な話も付け足してきた。入部した人間が少ないのは知ってたけど、パート単位でもいないのは初耳だ。だとしても、それは俺が入部する理由にはならない。
「は、はあ……お世辞は嬉しいんすけど、家の都合で入部するつもりはなくて。来年再来年を見越しての勧誘だとしてもちょっと……」
「ああそう?それは残念!気が向いたら僕にでも滝くんでも気軽に相談してよ!」
「ありがとうございます……あ、良かったら橋本先生もジンジャーシロップどうっすか?炭酸水なら余ってますんで割って飲んで下さい。今日暑いですし」
「おっ、それは嬉しいねー!是非頂こうかな!」
案外あっさりと引き下がってくれて助かった、シロップで気が逸れた風には見えないけど。まあいいか!
橋本先生の分のジンジャーエールを準備していたら、制服のポケットにぶち込んでいたスマホが震えだした。まだ正午を過ぎてもいないこの時間、バイト先か?シフトは午後からだったような……?
「すんません田邊先輩、ちょっと電話に出てきます。差し入れも一通り振る舞ったんでこれ持って俺は帰りますね」
「ピアノは弾いてかないのか?全体練習までまだ余裕はあるぞ」
「んー弾きたいのは弾きたいんすけど、大会に向けて本腰入れてるのが伝わったんで。今日は止めときます」
「そうか、んじゃ差し入れご馳走さん!美味かったぜ!」
「また作ってねー委員長!」
そそくさと空き容器を片付けて、先輩達のいる音楽室を後にする。俺のピアノも遊びのつもりではないにしても、その道のプロをコーチとして招く程、指導により熱の籠もるであろう吹奏楽部。どっちが優先されるべきかは、言うまでもなかった。
「はいもしもし、矢田です」
音楽室から離れようと三階まで降りた所で、クーラーボックスを置いて電話に出た。ここまで呼び出し音が鳴るのなら折り返しても良かったけど、着信相手は掛け直す事をせず、ただ辛抱強く待っていた。そこまで緊急の要件なのか?
『あ、良かった繋がって!黒江です、今大丈夫?』
「勿論、どーした?」
三階に降りるまで応答を待っていたのは、意外にも黒江だった。夜に電話で喋る習慣がついていた分、昼前に繋がるのは珍しい。
『えっとね、矢田君には私から伝えたい事があるんだけど……』
「緊張してまで?」
自覚が無かったのか、そう伝えるとせっかちな黒江は軽く息を吸って吐いてを繰り返し、呼吸を整えてお喋りを再開した。
「平気か?」
『うん、もう大丈夫。えっとね…………清良女子高等学校吹奏楽部、九州大会に出場が決まったの!』
「ってことはあれか、ダメ金じゃねえ本物のゴールド金賞って事か!やったなおい!」
清良女子は福岡にあるって聞いたから、つまりは黒江も福岡代表として駒を進めたって話になる。
その一報を耳にした途端、ふっと力が抜けたみたいな、それでいて紐で引っ張って鳴らすクラッカーを鳴らしたくなるような、とにかく祝いたくて仕方のない衝動に駆られた。クーラーボックスの中身で乾杯してやりたいけど、隣に黒江はいない。写真や手紙みたいに贈れる代物じゃないからこそ、酷くもどかしい。
『うんっ!コンクールメンバーに選ばれてからずっと怖かったんだけど、安心しちゃった!』
「ずっと不安がってたもんな、おめでとう黒江!」
コンクールメンバーとして選ばれた話があった日からずっと、私で良かったのかな……と自信なさそうに電話越しに不安を零していたのを知っている。だからこそ、こうやって自ら吉報を報告してくれる黒江が何処となく愛おしかった。
「でもあれだな、コンクールって審査の時間も含めたら早くても夕方まで掛かるだろ?まだ正午を周ってねーぞ」
『う、ううん、福岡大会は昨日だったの。本当は昨日の内に伝えようと思ってたんだけど……』
「だけど?」
『……学校が、違うから。矢田君はきっと、そっちの高校を応援してると思ったから。伝えたらその応援の邪魔になるかなって、思っちゃって』
自分でも深く深く、肺の底から溜め息をついた自覚があった。黒江は自分から進んで行動するタイプじゃないのは知ってたけど、遠慮をしろと言った覚えはない。同じ中学に転校してきた時から俺は、黒江らしい日々を送れるように祈ってきたから。
北宇治を応援はしてる、でも黒江の事だって応援してる、ただそれだけの話だ。
「あのな黒江、俺はお前に遠慮してほしくて関わり続けてる訳じゃねーぞ。ましてや気遣ってほしいとも頼んでない」
『でも……』
「でもじゃねー、いいか?俺はお前の味方だ。その味方が応援してなくてどーすんだ。嬉しい事はどんどん教えてくれ、辛い事も教えてくれ。クラゲみてーに何処かに行っちまう黒江を、何処からでも応援してやる。もし北宇治が敵になるようなら、立場なんて関係なく全力で黒江を庇うと誓ってやる。似たような話、しなかったか?」
俺としては、畏まった関係じゃない。普段の通話でもそこまで話した覚えはない。それでも味方でありたいこの気持ちは嘘じゃない、だからこそ俺も嬉しい事を共有してきたし、楽しそうな黒江の気持ちを電話越しに受け止めてきた。
『……した、かな』
「なら改めて言うぞ──黒江、俺はお前の味方だ。何時だってな」
『なんだか、改まって言われると恥ずかしいね』
「言ってる方が恥ずかしいんだけどなー?」
『ふふっ、でもありがとう』
「……どういたしまして」
電話が掛かって来た時はあっちが緊張してたのに、たった数分でこっちが緊張させられる羽目になってしまった。でも別に構わない、味方で在るって決めたからな。
『そうだ!話は変わるんだけど、九州大会も含めた全国大会までの予定表が配られたの。そこにね、定期演奏会みたいな──』
緊張の糸を少し緩めた声を聞きながら、帰ろうと廊下を歩いている時。俺はそれを目撃してしまった。
髪の長い女子が、口をハンカチで抑えて座り込んでいる。容態を問う暇もなさそうで、階段近くの壁に手をついてへたり込み憔悴している。素人目に見ても只事じゃねえぞ……!
『大きなイベントがあって、それで──』
「悪い、続きは後でもいいか!?誰かが蹲ってる……熱中症だったらやばい!」
『え?あ、うん、大した話じゃないから気にしないで!』
「それでも絶対掛け直す!じゃあな!」
急いで通話を切り、その女子の元へ駆け寄った。三角タイの色は二年生、咄嗟に漁ったクーラーボックスの保冷剤はまだ冷たい。少しは活用出来れば良いんだけどな……!
「どうしたんすか、大丈夫ですか!?」
「気持ち悪い……」
「保健室行きましょう!立てますか!?」
「……いらない、気遣わなくて、いい……」
「そんな風に見えないから気遣ってるんすよ!」
「もしかして矢田君?何を騒いで……うわ、鎧塚先輩!?どうしたんですか!」
押し問答に禅問答になりかけたタイミングで、先日初顔合わせを果たしたばかりの田中先輩直属の後輩──黄前さんが階下から姿をみせた。しかもこの人を知ってるみたいで助かった、だったら色々と頼み易い!
「黄前さん?丁度良かった!廊下でこの人が蹲ってるの見掛けてさ!保健室が開いてるか分かんねーから鍵借りてきてくれ、俺はこの人をおぶってく!」
「わ、わかった!」
「だから、いらない……この音も嫌……」
「音?……気遣われるべき奴はみんないらねえって言うんすよ!とにかく大人しくおぶられてくれ、保健室に連れて行くから!」
見た目以上に非力そうな先輩は抵抗する気力もないのか、なすがままに背負えてしまった。ここまで弱ってんなら急いで保健室に運んでやらねえと……!
今の俺はきっと、見守るだけじゃない、誰かの引いた境界線だろうと無理矢理踏み込む馬鹿野郎だ。気になって近付いて、自分が傷つこうとも危険な場所に立ち入る大馬鹿野郎だ──それでも、考えるより先に体が動いていた。黒江の味方で在り続ける為に、何時でも黒江を守る為に。
背負った女子の先輩も肩から提げたクーラーボックスも、今は風でちぎれる雲や煙よりもずっと軽かった。
再オーディションも府大会も出る余地が無かったので、アニメ2期の1話に飛んだ感じです。流れも変えてます。
元々短編を長編にする時点でこういう描写にするつもりでした。ユーフォ二次なのにコンクールをカットするのはいかがなものか、とは思ったのですが部員ではないからこそ無理矢理ねじ込むのも……と悩んだ挙げ句こうなりました。少し思い切ってます。